五月雨 珊瑚
性別
女性
表の職業
アイドル
スタン
推しへの感情により、自身を強化する能力。能力そのものは常時発動している。より強い感情であるほど強化される。
能力原理
「推しの悲しんでいる姿を見たくない」「推しのために何かをしたい」という感情によって、自身の能力を強化する能力。
参戦動機
自分が所属するアイドルグループ「リシアンサス」をトップアイドルにしたい。
会員との契約内容
自分が所属するアイドルグループ「リシアンサス」のへの妨害の停止と大型フェスへの参加。
大型フェスへの参加は勝利を条件としている。
キャラクター説明
4人組アイドルグループ「リシアンサス」のメンバーの一人。
18歳。
真っ黒な髪で房の大きなツインテールに珊瑚の髪止めをつけた少女。
どちらかと言えば物静かな性格で丁寧の口調で喋る。グループ内ではクール担当。
事務所から公表されているプロフィールではアイドルになる前の経歴は公開されていない。
かつては忍者の里で生まれたくノ一だった。抜け忍。高い戦闘能力と情報収集能力を持つ飛耳長目の忍者。
あるアイドルのライブを見て、アイドルを目指した。
学校に通ったことはない。
「リシアンサス」
小さな事務所に所属しているアイドルグループ。
メンバーは
メンバーは
センターを務める努力家大星冬
最年少、西洋人形のようなキュートなビジュアル系麦穂スピカ
礼儀正しいクール美少女五月雨珊瑚
スタイルのよい関西弁の最年長リーダー獅子王こころ
の4人
プロローグSS
それは満天の星空で最も輝くシリウス。
今でも私の心を焼き尽くすように目に焼き付いている。
私は猟犬のように追いかけていた。
北斗七星を追うアークトゥルスのように。
手に届かなくても良かった。
ただずっと輝いていて欲しかった。
だから私は―――
小さなライブハウスは満員御礼。
「スピカちゃーん!!」
「こころー!」「冬ー!」
熱気を帯びたファンの叫び声とともに、色取り取りのペンライトが観客席で波を打つように揺れている。
スポットライトがステージを照らす。
立っているのは4人の少女達。
『リシアンサス』
BGMの始まりとともに、少女達が音楽に合わせてステップを踏む。額から零れ落ちた宝石のような汗をスポットライトが照らしている。
彼女たちのパフォーマンスは洗練されているとは言いがたかった。それでも観客達は熱狂的な声援を送っている。
スピカが軽やかなステップとともに客席にウインクをする。西洋人形のような可憐な顔立からくり出されると激しい動き。そのギャップが彼女の魅力だった。観客席から再び悲鳴のような黄色い歓声が上がった。
サビの盛り上がりに合わせて、空気を切り裂くように冬が大きく飛んだ。
時が止まる。
着地とともに冬の髪が翻る。珊瑚は冬を支えるようにバックで正確にステップを踏んだ。
次の瞬間、これまでにない大歓声がライブハウスに巻き起こった。
ライブは大成功。これが彼女たちの輝かしい未来の始まりの瞬間。
そう誰もが思っていた。
そのはずだった。
—-
ライブから数日後、「リシアンサス」の事務所は重苦しい空気に包まれていた。
「どういうことや?来月使う予定やったライブ会場が急に使えんようになったいうんは?」
マネージャーからの報告に、事務所の椅子に座っていたこころが、眉間に皺を寄せる。
「意味わかんない。スピカ達のライブの日に急に設備点検が必要になったって何なの?」
隣に座っていたスピカが真っ赤に染まる。西洋人形のような顔が今は怒りに震えていた。
「おそらく、大手事務所の妨害だと思います。最近目立っていた我々が目障りだったのでしょう」
真っ青な顔をしたマネージャーが、溜息をつく。眠れていないのか彼の眼の下には隈が見える。
「だ、大丈夫ですよ。今から他の会場を探せば」
冬が二人を落着かせようと努めて明るく声を出す。だが、その声は震えていた。
「それが、その日はどこの会場ももう予約で埋まっているという話で……。それどころか別の日の予約も受け付けられないと」
「はぁああああ!?そんなわけないでしょ。ふざけてんの!!?」
怒りに任せてスピカが勢いよく立ち上がり、目の前のテーブルをドンと叩いた。
ガタンという音とともに彼女の座っていた椅子が転がる。
「待て!!どこへ行く気や!?」
今にも事務所を飛び出そうとするスピカを、慌ててこころが止める。
「決まってるでしょうが!!こんなくだらないことを考えた馬鹿共を探し出してスピカが全員ぶん殴ってあげるのよ」
「アホか!!そんなことしたら余計に思う壷やろ。そもそもどこかわかっとるんか?」
「だってスピカ達、あれだけ頑張ってきたんだよ!納得できる!?」
自分の努力が踏みにじられたことよりも、仲間の努力が踏みにじられたことの方が彼女にとっては余計に怒りを覚えるらしい。
「納得しとるわけないやろ。けど、そんなことしても何の解決にもならん」
「じゃあ、どうすんのよ!!」
怒りに任せて再びテーブルを叩くスピカ。
声を荒らげ、喧嘩にでもなりそうな二人をみて、困った様な表情を浮かべている冬。
事務所の壁にもたれながら、珊瑚が三人の様子を微動だにせず冷静に見つめていた。
「……私がなんとかするしかないか」
と珊瑚はその場の誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
その瞳はアイドルとしての温かなものではなく、かつての冷たい輝きを放っていた。
—-
月が輝く美しい夜だった。
高級ホテルのエントランスの前に、黒塗りの自動車が静かに停まった。
黒服の護衛が先に降り、周囲を警戒する。そしてその後にスーツを着た壮年の男が降りようとしていた。
彼―――黒澤はプロモーターとして音楽業界に強く影響力を持った人物である。誰もが知っている大規模なフェスの開催者として知られており、彼の鶴の一声でその参加者が決まるため、誰もが彼に頭を下げる男だ。
そして黒澤が車から降り、エントランスに踏み入れようとした瞬間――
影から少女が黒澤の目の前に現れた。
「黒澤さんですね?」
少女がスカートの裾を摘まみ、恭しく礼をする。護衛達は即座に反応したが、黒澤がそれを片手で制した。
「何者だ?」
「『リシアンサス』の五月雨珊瑚と申します。この度は私達を支援してほしくてお願いに来ました。今ライバル事務所の妨害に困っているんです」
「それで私に何のメリットがある?」
当然の疑問を口にする黒澤。
「そうですね。魔人闘技会。優れた闘士が欲しいと思いませんか?」
珊瑚の提案を聞き、黒澤の表情が変わった。
「確かに私は会員だ。だが、どこでそれを?」
魔人闘技会の存在は秘匿されている。一介のアイドルが知れるようなものではない。
「秘密です」
珊瑚が口元に人差し指を当てて悪戯っぽく微笑んだ。
魔人闘技会のことは元から知っていた。昔の仕事の関係で調査をしたとき偶然知ったのだ。曰く契約により多額の報酬を得ることができる、魔人同士の戦いを楽しむ社交イベント。
これなら自分たちが陥っている苦境をなんとかできるかもしれない。
そこで自分達に都合の良い会員を探し出し、接触することにしたのだ。
「まあいい。優れた闘士とはお前のことか?」
「ええ。闘士として契約してもらえるなら、そこにいるつまらない人たちより結果を出して見せてみますよ」
護衛の方を見て、彼らを挑発するように珊瑚が笑う。
「何!?」
「つまらないだと!?」
怒りを露わにする護衛達。だが、黒澤は至って冷静だった。
「面白い。その言葉、誠かどうか試してやろう。」
その言葉とともに護衛達が珊瑚に襲いかかった。
彼らとて決して雑魚ではない。魔人闘技会の参加者にふさわしい実力を持ち合わせていた人物ではある。
護衛の一人が魔人能力で筋肉をパンプアップさせ、地面を蹴って突き進む。そして珊瑚の顔面をその拳で狙った。
珊瑚はステージでそうするように軽やかにステップを踏み、背後に下がった。
そして、夜風でスカートが翻り、その場で舞い踊るように蹴りを放つ。それはまるでアイドルがステージで見せる華麗なパフォーマンス。
真っ黒なタイツに包まれた脚が、護衛の頭部に突き刺さった。
そのまま倒れ伏す護衛の肩を手で掴み、そのまま踏み台として、その場で前方に宙返りをする珊瑚。
「これならどうだ!!」
もう一人の護衛が指を突き出す。そして指先から弾丸を放った。
珊瑚がステップを踏みながら、紙一重で回避していく。
艶やかなポニーテールがふわりと揺れる。
夜の道を照らす街灯が、スポットライトのように珊瑚の姿を照らしている。
攻撃を回避しながら、思い浮かべるのは、リシアンサスの仲間のこと。
自分に微笑みかけてくれた冬の姿。
あのような理不尽に屈するわけにはいかない、珊瑚の光が失われてはいけない。
冬が落ち込んでいる姿を見たとき、私がなんとかしなくてはいけないと思った。
次の瞬間、珊瑚の身体が加速していた。珊瑚の魔人能力『スタン』の効果だ。
強い想いは彼女に力をくれる。力強くステップを踏むようにまっすぐに前に進んでいく。
そして、そのまま地面を蹴った。跳躍。そして、くるりと一回転。
それはさながらフィギュアスケートの回転ジャンプ。
珊瑚の身体が綺麗な軌跡を描いた後、護衛の頭部に蹴りを叩き込む。護衛の身体がそのまま地面に沈んだ。
「御高覧ありがとうございました」
珊瑚は、ステージを終えたアイドルのように黒澤にまた恭しく礼をした。
優れたステージを見た観客がそうするように、手を叩きながら笑う黒澤。
「思い出したぞ。なるほど『猟犬』か。ある日突然、組織からの追手を全てなぎ倒した上、そのまま行方不明になったときいたが、それがアイドルをやっておるとはな」
黒澤が得心がいったとばかりに頷く。
その通り名は裏社会で有名だった。
ある組織に属し、最強の名を恣にしていたくノ一。
あらゆる任務を成功させ、彼女の進む先には大量の血の雨が降り注いだという。
「よかろう。契約してやろうお前達を支援してやってもいい。妨害に関しては今すぐ辞めさせよう」
「ありがとうございます」
「そして闘技会でお前が勝利した暁には私が開催するフェスに参加させてやってもいい。」
「本当ですか」
想定以上の好条件に目を輝かせる珊瑚。
「『猟犬』ならそれぐらいの条件でも問題ないだろう。フェスでの成功までは保証せんがな」
「十分です」
後日正式に契約する約束をしてそのまま別れた。
—-
「うまく行ってよかったですね」
アパートの部屋に足を踏み入れた瞬間、珊瑚が息をつく。
そして真っ暗だった部屋に灯りが灯る。
壁一面に貼られたポスター。本棚には隙間無く並んだCDやアクリルスタンド。手作りのぬいぐるみ。
公式のものからハンドメイドのものまで、数えきれないほどのグッズが乱雑に並べられている。
全ては大星冬にまつわるものだ。
「貴女はいつも私に力をくれますね」
珊瑚が小さな声で呟いた。
一目惚れだった。
かつて『猟犬』と呼ばれていた頃、珊瑚は偶然彼女のライブを見た。
その頃冬はまだ、別のアイドルグループに所属していた。
パフォーマンスが秀でていたというわけではない。
きっと彼女より優れたアイドルは世間を探せばいくらでもいるだろう。
それでも、珊瑚は彼女から目を離せなかった。
ふとした瞬間の何気ない笑顔。ぎこちなさの中にある、はっとさせるようなパフォーマンス。
気がつけば、珊瑚は彼女に夢中になっていた。
コートを脱ぎ捨てると、ベッドに寝転がる。
微笑む冬のポスターが目の前に見えた。
大星冬にトップアイドルになってほしかった。
けれど、彼女がかつて所属していたグループはそれが叶わぬまま、メンバーが起こしたトラブルによって解散することになった。
「それでも諦めないのが貴方のよいところです」
だから、珊瑚はアイドルになった。
今度は冬を周囲でサポートしたかったから。
そのために彼女が加わるという新しいアイドルグループのオーディションに自分も潜り込もうとした。
そのために、ダンスも歌も必死で練習した。
『猟犬』に未練は無かった。孤児として生まれ、そう生きるしかなかっただけだったから。
そんなつまらない人生に冬と出会った瞬間光が差した。
その姿は天球に煌めくシリウスのように、全ての星の中で最も光を放っている。
珊瑚は起き上がり、ポスターに手を伸ばす。そしてポスターの冬の頬を優しく丁寧に撫でた。
「貴女が好きです、冬」
レッスンをしているときの楽しそうな笑顔も。人一倍努力家で自分が納得いくまでレッスンを続けるところも。私達のことをよく見ていて、みんなにアドバイスを送ってくれるところも。ファンサービスに熱心なところも。
冬の全てが好き。心から。
―――だから邪魔する人間は絶対に許さない。
冬は何も知らない。他のメンバー達にしてもそうだ。
珊瑚のことを自分たちと同じようにトップアイドルを目指すためにリシアンサスに加わったと思っている。
それでいい。
珊瑚の胸に秘めた想いを伝える必要なんてないのだから。
「待っていて下さい。全部私が解決して見せますから」
貴女を輝かせるためなら、自分の手などいくら汚れても構わない。
そして、リシアンサスをーーー冬をトップアイドルにしてみせる。
珊瑚が冷たく微笑みを浮かべる。その表情はファンに愛されるアイドルではなく、かつての血に塗れた『猟犬』だった頃に戻っていた。
最終更新:2026年05月01日 18:58