富士山麓のとあるウズベキスタンにて。
ジャアーーーージャッジャッジャッジャッジャ!!!
巨大なフュメキロ後肢類の四剛結部に的確にルベトイを割しこんでいく少女の手腕を見続けている男がいた。
『料理両足モナムー』と呼ばれている日本一の魔人料理ホテル魏志倭飯店の料理長『だった』男。
【ペネ!!いいぞヒミコ!!実にボーノだ!!】
眼を瞑れば思い出す、外道の記憶。
【そうだ!!これこそが至高のヤミー!!究極のマシッソヨ!!】
老いて舌も腕も陰りを見せ。政治劇に負け、料理長の座を追放され。妻も逃げ出した負け犬の記憶。
【セ・ボンを求めず泥濘に穿たれた邪知も美味いの悪露か人どもよ飼ぬがよい!!】
娘しか残らなかったから。娘を恩讐の道具にするために『何でもやった』虐待の記憶。
【ヒミコよ!お前は!!お前は!!!お前は!!!!お前は!!!!!私の理想になるのだ!】
なんでも、やったのだ。
【おとうさん、おとうさん!】
完璧な蒸し上がりのフォワグラのトルションを添えたイチジクのコンポートとスパイスブレッドのアミューズブーシュが出される。
【え、えへへへ――――美味しくなかった?】
塩だけで旨味が出るほどのレベルの精密さで碗のものを作り出される。
【おとうさん!おとうさん!】
スーパーで買ってきた半額の卵だけで涮羊肉ができる。
【おとうさん!!!!!】
私が■■■した■■■■で■■を作り出す。
【私の理想となって、奴らを、おいつらを――――!!!】
終には全長48mに及ぶフュメキロ後肢類を目の前でオルフェトガガゴリィのレトムグススシェホリュニュェ酢和えに変えていく様を見ている。
【ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました】
『料理両足モナムー』は。
【しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました】
その娘は。
【すみません、これは本当にウミガメのスープですか?】
「――――おとうさん?」
◆◆◆
「最強の魔人を観たいかァ―――――――!!!」
ワァァァァァァアァアアア!!!!
インド洋中央、サンクトペテルブルグの森にそびえたつGKW連立不飽和積工場。
かつては市場の98%を牛耳るほどの莫大なヘトルケルルモンを精製していた工場も現代化の波で今や過去の遺物。
今はこうして魔人同士の殺し合いという興行に使われる『場』と成り果てている。
立会人『ホーミング空中浮遊』は安全地帯で戦場を見下ろしながら観客たちを煽る。
飢えた観客どもが馳走を前にはしゃいでいる。
よだれが、あふれる。
馳走を前にはしゃぐ気配を強烈に感じ取る。
稼いだ金をナイフに。築いた地位をフォークに変えて飢えを満たすために群がっている。
そのナイフとフォークで切り開き、解体して、己の口に運ぶために群がっている。
死を、肉を、戦を。
残酷を凄惨を激闘を凌辱を辛酸を快楽を愉悦を求め、浅ましくみっともなくその獣性を顕にする。
それを愚かと嘲ることはすまい。
『ホーミング空中浮遊』も所詮は、それを求めて立会人にまでなった酔狂人なのだから。
立会人『ホーミング空中浮遊』は安全地帯で戦場を見下ろしながら人影を見送る。
廃工場に二つの人影が降り立っていく。
よだれが、あふれる。
馳走を前にはしゃぐ気配を強烈に感じ取る。
培った血肉をナイフに。練り上げた骨肉をフォークに変えて飢えを満たすために降り立っている。
そのナイフとフォークで切り開き、解体して、己の口に運ぶために降り立っている。
死を、肉を、戦を。
残酷を凄惨を激闘を凌辱を辛酸を快楽を愉悦を求め、浅ましくみっともなくその獣性を顕にする。
それを愚かと嘲ることはすまい。
『ホーミング空中浮遊』も所詮は――――
「――――はじめぇッ!!!!」
Dangerous SS Colosseum
Battlefield: Abandoned Factory
Subtitle: My Beloved Junk
Sand Machine (XX_ouga) VS Happy Chef Possessed by a shrine maiden (Higashiyama Kikin⭐︎)
――――start
◆◆◆
「――――前菜、ライチとペンネのアイオリソース仕立て!!」
廃工場に転がっているモートフェッケルを排出するための塩化ロニブテネコン製のパイプをまるで段ボールか何かのように蹴り上げ、宙に舞う間に包丁の形に形成する。
裸でタクラマカン砂漠に放り出された時を想えばここは天国である。
何もかもが揃っている。転がっている。打ち捨てられている。
料理人はその幸福を嚙みしめていた。
目の前の『お客様』は食料を必要としていないようだがそんなことは些事である。
砂や岩すら包丁の入れ方次第で極上の甘鯛の松笠焼きを作ることができるのだ。
『喰えない物を喰えるようにする』技術があるのだから。
『喰えない物を喰えるようにする』技術はあるに決まっている。
ないならつくれ。私はそう叩き込まれたのだから。
物を喰えない眼前の『沙機』に。
物を喰わせる事等朝飯前なのだ。
かえしとしてスープには関節蹴りを叩き込んでおいてある。
少々重い前菜もこの関節蹴りがあればアイオリソースのマスタードの苦味で食欲をそそるものに変化する。
先手は取った。次は相手だ。
――――今の関節蹴りに手ごたえがなかった。
今は畳みこむのではなく、相手のメニューを受け止めるため備えるべき。
『ドッ』
意識外から後頭部に強烈な衝撃。
姿かたちは視えずとも感じる衝撃と風味で状況を推測する。
形状は球形。重さは429g。旨味は遅く鈍い。固形ではあるが固すぎる物ではない。
――――おそらくは『拳』を切り離している。
それを設置し、こちらの後頭部に向けて飛ばしてきた。
オードブルから意表を突く。さりとて奇をてらったわけでもなく、手も抜かず。
油断するなら初手でもう持っていくぞと断言する、己の矜持に不遜さすら込めた一流の腕前だ。
もちろんおいしくいただく。相手の冷製カニとごぼうの淡雪仕立ての椀物が迫っている。出汁を見極めなければ。
くらむしかいを立て直す。洋風のクラムチャウダーを思わせるがしっかりと和風。
さあ次は何をふるまおう。選択肢は無限にある。
その幸福に。
私は頭を抱えた。
◆◆◆
シャクシャクと暴力を齧り取る。
おとうさんの理想のために叩き込まれた暴力の味。
料理をするために叩き込まれた父の味。
【すみません、これは本当に人間ですか?】
お父さんの理想となった、私の。
【これが、こんなものが私の理想なのですか?】
私の――――
【これ、ばけものじゃないですか】
幸福な暴力の味。
【許してください】
あれはおいしかった。
【助けてください】
またあれをたべたい。
【こんなつもりじゃなかったんです】
絞られる暴力だけじゃ足りなくて。
【私は、理想のために頑張ってただけなんです】
うっかり全部、食べちゃったから。
【こんなのを、作るつもりじゃなかったんで――――】
あれはおいしかった。
またあれをたべたい。
よだれが、あふれる。
◆◆◆
サンクトペテルブルクの森が消滅する。
ヒミコのリンゴとセロリと8種のナッツにイチジクとデーツを添えたウォルドーフサラダの材料として解体され分解され消費されつくす。
巨大な奔流と化した料理が『沙機』の口に迫る。
隠し味に気が付かない限りこのドレッシングの奥深さには気が付けない。
たった今物を喰べれる様になった物である『沙機』の未だ未熟な味覚では気が付くことは不可能だろう。
関節をパージする異能は割れた。関節蹴りの時のような失敗は最早ない。
次の掌打は骨まで美味しく食べられる。このまま追撃を――――
『しゃくっ』
――――?
『がくんっ』
突然、つんのめる。
意識外からの奇襲。
前菜と同じ手口・・・ではない。
姿かたちが感じられぬ。
左脚に冷えを感じる麻痺。
攻撃の質が根本的に違う。
過去のお父さんとの暴力から類推する。
おそらくは鋭利なものによる刺傷。
体の一部を分離転用する『沙機』の攻撃とは属性があまりにもかけ離れてる。
異常。
仕込みが分からない。
肉料理に入る前にこの仕掛けを把握していないことは致命に直結しかねないと判断。
目視でも確認を――――
ざわあああっ!!!
する必要は。
なくなった。
今までものを食べたことがなかったであろう。
自分の体を分離、結合させる魔人能力を持った人外。
『なるほど』。
フランスの美食家ジャン・アンデルム・サヴァラン曰く。
「あなたは、あなたが食べたそのものである」と。
メギ、メギメギメギ。ぎ。
今『食べる』ということを知った彼女は。
ぎしいいいいいいいいいいいいいい!!!
今『食べたものを血肉にする』ことを覚えたらしい。
サラダを血肉にしたことでその全身を龍のような大蛇のような異形の植物の集合体に変ずる『沙機』を見て。
己の左脚下腿部に突き刺さったであろう木の枝による刺傷を自覚して。
『幸せ料理人ヒミコ』の顔に割裂のような笑みが浮かぶ。
私の料理を食べたことでこんなに斬新なリアクションをしてくれるなんて。
実に。
実に。
料理人冥利に尽きるというものだ。
◆◆◆
最早過去の遺物となった廃工場で。
最早未来などないこの場所で。
最早なにもないふたりのおんなのこが。
なにかを求めてさ迷っている。
これはそんなあわれなばけものたちの、ぶざまなおはなし。
◆◆◆
木の枝による刺傷で動きを鈍らせる事となったヒミコに魚料理が迫る。
歴戦の魔人格闘家の現身として練り上げられた『沙機』の経験からくる戦術の構築を立てる構築力の妙。
インド洋に囲まれたこの廃工場は。
サンクトペテルブルグの森に囲まれた廃工場であるという以上に『魚料理』に適した舞台となっている。
地の利を活かした、新鮮なワザマエ。
ぶどぉっ!!
先ほどのサラダに倍する速度と質量で『沙機』のPaprykarzszczecińskiが迫る。
本来とれたての魚介で行う類ではないそれは新鮮さを極限まで活かすために余計な調味を施されておらず。
純粋な旨味の濁流としての真っ向勝負を挑んできた。
臭みなど欠片もない旨味が『ヒミコ』の口内で.577/450マルティニ・ヘンリー弾のように炸裂する。
その美味しい料理を、受け止めて、咀嚼し、呑み込んだ。
眼前。『沙機』がすでに迫っている。
受け止めた隙を突いてのアームハンマー。
オードブルで痛めてる頭を狙う冷製で的確な東坡肉。
それを。
異形の巨体となった『沙機』の重量からくる衝撃を。
矮躯と言える少女が。
こともなげに受け止める。
そう。
どれほどの苛烈であろうとも。
どれほどの悪虐であろうとも。
暴力ならば、食べられる。
料理だから、耐えられる。
ぞんっ!!
受け止めたまま『沙機』の肥大した巨躯を刻み、Chateaubriand steakにして跳ね返す。
元々植物であった巨躯は自家製の甘味の強い梅酒ソースに良くなじむ。
廃工場周辺ということもあり排気を吸いアクと苦味の強くなった味わいが濃厚な甘さを引き立ててくれる。
「あはっ♡」
『幸せ料理人ヒミコ』。
彼女もまた。
「オォーーーイシィイイイイ―――・・・」
人外。
勝負は佳境に。
勝利の美酒は。
どちらにかたむけられるのか。
◆◆◆
楽しい。愉しい。娯しい。
まるであの頃が戻ってきたかのようだ。
お父さんが暴力をふるまってくれた頃を思い出す。
真綿が水を吸うかのごとく『沙機』はこちらを学習し、習熟し、強くなっていく。
お父さんもこんな気持ちで私を虐待してくれていたのだろうか?
ああ、ああ。
これならば。
ここならば。
何かを作れるかもしれない。
何かになれるかもしれない。
如何にかなるかもしれない。
理想が、叶うかもしれない。
少女を装っていた外装が剥がれ落ち、元の料理人の姿が顕わになる。
娘である以前にヒミコは。
喰い、喰わせる事に至上の愛を感じ取る存在だったのだから。
食中酒を差し込みつつ歓喜のままにメインに移る。
あの日あの時あの場所で完成した私の『ワタシ』。
フュメキロ後肢類を生きたままグデルホすることでその毒性を完全に取り除くことで新鮮なままに食べることができる。
【こんなつもりじゃなかったんです】
『オルフェトガガゴリィのレトムグススシェホリュニュェ酢和え』、ワタシの、メインディッシュ。
【許してください】
お父さんに食べさせようと、お父さんに食べてもらおうと。
【助けてください】
頑張って、頑張って。
【すみません、これは本当に私の理想なのですか?】
理解してもらえなくなったあの時の味。
【これ、化手物じゃないですか】
食べてもらえること。
それこそが。
きゅどんっ!!!!!!!
料理人にとって。
何よりの幸せである。
◆◆◆
「ヒ、ヒヒヒ。ヒ」
愛甲ジムと書かれた、薄汚れた廃墟の奥で。
一人の男が燻ぶっていた。
その肉体は搾り上げられ、練り上げられ、鍛え上げられていた。
老いさばらえ、技も肉も骨も知も全盛期とは程遠いパフォーマンスしか発揮できはしない。
だが、男は燻ぶっていた。
「そうだ、そうだ」
余分なものを煙と変えて削ぎ落し。
純粋な『焔』を産む為の炭と成る為に。
「お前は、私の理想となるのだ――――!」
最期に『焔』と成る為に、ひたすらに燻ぶり続けていた。
男は。『スティール愛甲』は。どこまでも燻ぶり続けていた。
全く当然のことを確認すんなよ。俺の人生はお前の為に最後の一秒まで使い尽くす。
【おとうさん、おとうさん!】
あの飛行機事故でお前が死にかけたときに、俺はそう誓ったんだ。
【え、えへへへ――――まだ私、沙機じゃなかった?】
これは俺だけの未練の消化じゃない。
【おとうさん!おとうさん!】
お前が目指した『最強』の完結編を、二人で見届けたいんだ。
【おとうさん!!!!!】
愛甲の傍らに佇む『沙機』は、愛甲が憧れた理想の姿のまま。
だがあの日に止まった刻は、ここから動かさねばならない。
――――だから『沙機』、俺の最後の挑戦に、少しだけ付き合ってくれよな。
【おと――――】
『スティール愛甲』に最強を、挑ませてくれ。
【――――そうね、スティール愛甲】
愛甲の傍らに佇む『沙機』は、愛甲が憧れた理想の姿のまま。
己の魔人能力から産まれ己の恩讐の道具として育て上げて練り上げた理想の姿だ。
【私がもしも成った時は。その時は――――】
【挑ませて、あげるわ】
貴方の飢えを、満腹にしてあげる。
【だけど私に挑むのならば、勝つつもりで来てね】
「――――ヒヒッ」
「ああ、ああ、いい。アーイイ。最高だ・・・」
「なんて。なんていい女なんだ、お前は――――!!」
【ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました】
愛甲の傍らに佇む『沙機』は、愛甲が憧れた理想の姿のまま。
【しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました】
己の魔人能力から産まれ己の恩讐の道具として育て上げて練り上げた理想の姿だ。
【すみません、これは本当に人間ですか?】
理想の姿だ。
――――本当に?
◆◆◆
『ホーミング空中浮遊』は睥睨する。
血まみれとなった観客席の傍で巨大なクレーターの出来た廃工場跡を睥睨する。
闘技場の『攻撃』は一切領域外には漏れずに干渉は不可能。
ゆえにこれは、こちらの問題であった。
がしゃん!!がしゃんがしゃん!!!
「く、食うくうくう喰う!!!」
「ぐうううううるるるるるるるる!!!」
コロッセオでも稀に見る美女二人による稀に見る凄絶な激闘。
極上の美味と思われる料理と暴力が飛び交う戦闘に『あてられた』観客たちが騒いでいる。
金と権力を身に纏って大人を装っていたとしても。
所詮彼らも骨肉を求める畜生の群れに他ならない。
大人を装っていた外装が剥がれ落ち、元の畜生の姿が顕わになる。
干渉不能な領域に隔たれながらも引っ掻いて入り込もうとし、無理だとわかれば近くの『馳走』にむしゃぶりついてその無聊を慰める蟲毒の宴。
闘技場内の『攻撃』は通らない。
だが。
闘技場を見て『興奮』してしまうことは性質上どうしても避けられない仕様なのだ。
なかなかない事ではあるが、このように観客がはしゃぐ事自体は無いわけでもない。
――――彼女らの簡単なプロフィールは業務上軽く目を通している。
特異な生い立ちも。ここに来るに至った精神性も予測はついている。
その上でこのコロッセオに招かれたのだ。
安心するといい『少女』どもよ。
そのくらいの特異性で。そのくらいの人外具合で弾かれるほどこの場所は浅くない。
だから。
もっと、深く。より深く。さらにさらに深奥へ。
「κοριτσάκια、どうですかこの場所は?」
願わくば。
「この場所は、狂っていて面白いでしょう?」
我らすらたどり着けない奥の奥。底の底まで。
魅せてくれるように成長する事を、こい、願う。
廃して潰れる、その日まで。
◆◆◆
ヒミコのメインディッシュにより大皿のごときクレーターができた廃工場にて。
彼女は驚愕に目を開かせていた。
『ばふぉっ』
渾身のメインを喰らってなお目の前の少女は倒れない。
効いてはいる。効いてはいるがズタボロになりながらも倒れない。
衣装は剥がれ、意匠は剥がれ、化粧は剥がれ。
大人を装っていた外装が剥がれ落ち、元の少女の姿が顕わになる。
『沙機』の中身が、『スティール愛甲』の魔人能力によって産まれた『ナニカ』が現出する。
まだ幼い。
『沙機』の真似をしていた。
『ナニカ』が。
「――――――ッ!!!」
ばんっ!!!
開かれた腕が五指が掌がヒミコを掴む掴んでその拳はいや次は料理のターンだ暴力には繋がらないだがなんでならばなぜコイツはこいつは此奴はこの瞳は・・・!!
こんなにも殺意にあふれているのか。
『がぼぉっ!!!』
『磁界のデスマシーン』がその本性をつまびらかにする。
彼女の本質は人形であり。
己を殺し、解体し、理想へと更に組み立てる者であれば。
ヒミコの咥内に別たれた五指が侵入する。
血と肉と骨と愛で出来た人形が侵入する。
血が分解される肉が分解される骨が分解される愛が分解される分解されて組み立てられる別のモノに組み換えされて別物に変じていく。
今は暴力ではなく。料理のターン。
沙機がヒミコに食らわせるメインは――――!!
ジジジ、じじ。
「幸せ料理人ヒミコ・・・あなたの感情、理解できます」
「ワタシはそれを肯定します。それは、とても」
人間らしい感情です。
今『食べる』ということを知った彼女は。
今『食べたものを血肉にする』ことを覚えたらしい。
そして、今。
ぎじじじじじじじじ・・・!!!
『ヒミコ』の暴力を受けた『少女』が。
血肉として得た物とは――――!!
【――――やあ、目覚めたかい■■■?】
『ワタシ』の前菜
【君はこれから■■になってもらうんだ】
『ワタシ』のスープ
【ヒィーーーーーヒッヒッヒッヒ!!!】
『ワタシ』の魚に肉料理
【――――そうね、スティール愛甲】
『ワタシ』の魂は置いていく
【私がもしも成った時は。その時は――――】
『ワタシ』のサラダも置いていく
【挑ませて、あげるわ】
『ワタシ』のデザートは最早なく
【だけど私に挑むのならば、勝つつもりで来てね】
これから、『ワタシ』の――――
感謝しますヒミコよ。
『あなた』に『ワタシ』を与えます。
『ワタシ』に存在する、『沙機』以外の全てを与えます。
I wanna fold feel call
そして。
『あなた』の命の苦渋を。
『ワタシ』が『沙機』になるために。
お父さんの願いをかなえるために。お父さんを喜ばせるために。
『ワタシ』に『沙機』に足りない『欲望』を。
『お前』の『沙機』を『ワタシ』にヨコセ――――!!!!
「あああああああああ!!!来るな!来るな!!」
これは、違う。
「踏み入るな!!『それ』は!!アタシの!!アタシのだ!!!」
これは暴力じゃない。
「アタシのお父さんをアタシの心を!!アタシの中に!!お前!!オマエが!!」
料理として認めるわけにはいかない。
「挿入ってくるなあああああああああああああああああああああああああああああ――――!!!?」
ああ、だがこれは知らない味だ。
私がずっと探していた。
あの時食べた。これは。
幸福な、愛の味。
何か柔らかなものに包まれていた。
やわらかな、ぬるい、にく。
ぬるい肉からぬるい汁を飲まされている。
臭くて、のどにつっかえる。食えたものじゃない。
デザートの味。
私は――――
『ぱきゃん』
『ワタシ』のフルコースはここに置いていく。
それらすべてが揃うことなど永遠にないのだから。
『ワタシ』の求める私のフルコースのドリンクは。
『ワタシ』を私として見てくれる。
お父さんとの、食卓なのだから。
だったのだから。
【ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました】
愛甲の傍らに佇む『沙機』は、愛甲が憧れた理想の姿のまま。
【しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました】
己の魔人能力から産まれ己の恩讐の道具として育て上げて練り上げた理想の姿だ。
【すみません、これは本当に人間ですか?】
理想の姿だ。
――――本当に?
『磁界のデスマシーン』沙機。
彼女の少女は、未だ剥げない。
中身はまだ、未知のままだ。
◆◆◆
ダンゲロスSSコロッセオ
戦場:廃工場
『磁界のデスマシーン』沙機VS『幸せ料理人(バトルジャンキー)』ヒミコ
エピソードタイトル:いちばんおいしい愛だけたべさせて
勝者:沙機
決り手:愛は心のフルコース/I wanna fold feel call
たたかいはつづく。
最終更新:2026年05月25日 00:57