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第一回戦【サバンナ】SSその2 - (2013/04/23 (火) 02:37:25) のソース

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*第一回戦【サバンナ】SSその2
「い、いやっ……。いやああぁぁぁ。もうだめぇ。もうだめだよぉぉ~~。死ぬぅ!死ぬじゃぅぅ~~~^!」
「そうよっ!イキなさい!イクといいのよぉ!あなたも、ワタシもイクのぉぉぉぉ!」 

金の髪と銀の髪が激しく揺れている。
金の髪の女は、銀の髪の少女を激しく責め立てていた。
女の方は既に全裸だ。女は少女へと覆いかぶさり、その唇を、やや小ぶりな胸を、細身な足を、ひたすらに貪っていた。
少女は女によって、服をはだけさせられ、下着を取り払われ、
ひたすらに喘がさせられている。
女性同士が絡み合う濃密な空間……だが、ここは高級ホテルの一室でも、百合の花園でもない。
灼熱の太陽が照らす果てしなく広がる荒野……サバンナの中心である。
爛々と照り続ける日差しと、女達の肉と肉のぶつかり合いによって、異様な熱気が辺りに充満していた。

「あああああぁぁー!!死ぬぅ~~~。死ぬよぉ~~~~!」
「アアアアアァァァ!こんなの、こんなの感じたことないわぁっ!さあ、死になさい、駄目になりなさいぃ~~」

二人の心は完全にここにあらず、とにかく快楽を貪る獣と化していた。
ひたすらに現実から逃避するかのように、恍惚の表情を浮かべ、ただ喘いでいた。

そんな二人を傍から見つめる一人の男がいた。
いや、見つめるという表現は正しくないかもしれない。
確かに二人を見てはいるが、あまり強い興味がある、といった感じではない。漫然と眺めている、というのが正しいか。
そして、男は加えていた煙草を口から離し、ふぅっと息を吐き出すと、空を見上げて、こう呟いた。

「俺の……勝ちだ」



話は一時間ほど前に遡る。

「まさか試合前にサバイバルをやらされるとはな……」

ドォッという音と共に、ライオンが崩れ落ちる。
ライオンの体からは煙が上がり、ドクドクと血が流れていた。

「悪く思うなよ。恨むんなら妙な計らいをする主催者を恨んでくれ」

そうして偽原光彦は手にした銃を肩に担いで、一人ごちる。
銃は全長約90cmの軍用大型アサルトライフルである。
ナイフ使いが得意な偽原であったが、元魔人公安として、当然銃の扱いも習得していた。このライフルは当時のつてで
入手したものであり、2013年頃の最新モデルである。この時代ではやや古い銃であるが、ライオン一匹を仕留めるには
十分な威力であった。

(もっとも、これが群れをなしたライオンであれば、こんな銃では心許ないが……そこまで悪辣ではないか)

偽原が今いる場所、試合場として指定されたサバンナは非常に広大であったが、決して超えてはいけないラインとして、
1km四方はバリアーで覆われていた。
偽原は大会主催者によって試合開始と同時にバリアーの中に転送され、
いきなり一匹のライオンと出くわしたのである。

(それにしてもふざけた大会だ……本当に魔人の力量を見る気があるのか?)

偽原がこの大会の参加を決めた時にまず驚いたのはその大会規定である。
大会で反則とされる行為は、遅刻や試合場からの離脱、観客への暴行行為など、若干のモラル規定に関するものであり、
参加者がいかな方法をもって戦いに臨むかは一切自由。

つまり参加者はどんな武器を使おうと構わない、というのである。

魔人と言っても肉体能力は常人よりやや強化されただけであり、人間が使う通常の兵器は通用する場合が
ほとんどである。
このルールで銃火器の携帯を考えない人間は、余程己の能力に自信があるか、
馬鹿の極みであるかのどちらかであろう。
(もっとも、著しい悪徳行為は禁止とあるので、余程酷い武装(核兵器等)は制限されるかもしれないが)
加えて偽原が戦いの場として指定された試合場は野生動物が大量に闊歩するというサバンナ……、
これを見ては偽原も自分が手に入れうる範囲で一番強力な武装で臨むしかなかった。

(もっとも野生動物はこの様子だとエキシビジョン程度の意味はないようだな)

四方がバリアーで覆われているということは、大会主催者の意図としても野生動物との格闘がメインではない、
ということだろう。
彼らがあまり望まない生き物は中には入ってきていないようだ。

(とはいえ、あまり長居はしたくない場所だ。とっとと目標を探すか)

いきなりの遭遇戦に息をつく暇もなく彼は足を進めた。そう、彼がこの場で戦うべき相手はライオンではない。
二人の魔人の女性。そしてその片方はライフルをもってしても立ち向かえるか怪しい生き物ときている。

偽原は頭の中で今回の対戦相手のプロフィールを思い返した。

まず一人、エルフの元女騎士ゾルテリア……。一見ふざけた異名だが、エルフというのは通称ではなく、
実際にファンタジー世界の住人であるらしい。もっとも、ふざけているのはその異名だけではなく、その経歴全てであったが。

(全てのダメージを性的攻撃に変換する……か。俺の長い経験の中でもこれ程酷いのはそうそう無いな)

元魔人公安として、数多くの悪行魔人と戦ってきた偽原にとっては、
エルフという異界の住人もそれほど驚くに値するものではなかった。
だが、一切のダメージ無効……のみならずそれが性的な攻撃に変換となると流石に経験の無い相手である。

(もう一人は偽名探偵こまね。17歳女子高生か……、生きていれば、娘がちょうど同じ年齢だが)

偽原はふと、感慨深い表情を浮かべたが、すぐにそれを打ち消した。17歳の小娘と言っても、相手は魔人である。
経歴だけを見たところ、エルフ程の恐ろしさは感じないが、決して油断などできる相手ではない。
しかし彼女も能力の一端は事前に明かされていた。

(どうやら、既に補足しているようだな)

偽原は自分の周囲にふわふわと小さなシャボン玉が浮いていることに気づいた。
こんな荒野にシャボン玉が浮かぶ理由は一つしかない。
詳細は分からないが、シャボン玉を操るという、探偵こまねの能力であろう。

(しかし、中々見つからんな……? 試合場の範囲からして10分ほども歩けば見つかると思ったが)

偽原が歩き始めてから、大分立ったが、未だ偽原の対戦相手は見つかっていなかった。 
偽原はすぐに出くわすだろうと思い、試合場の中心に向けて歩いていたのだが、既に通り過ぎ、
反対側のバリアーがそろそろ視界に移ろうとしていた。
その時、

「あふぅっ……!いい、いいわぁっ!ハイエナちゃ~~ん!そこおっ!もっとぉ~!」 

突如、嬌声が遠くから耳に届いた。
ちょうどバリアーが貼られた隅の方からである。
偽原は「いたか……」と呟き、心の中でその場所で繰り広げられているであろう光景に嫌な予感がしながら、
その場所へと駆け寄った。

「いい、いいわあっ。その食いつき方~~。上手いわよぉ~~」

予想通り、そこでは金髪のエルフが一匹のハイエナ相手に格闘戦を演じていた。
だが、普通の格闘戦ではない。
ハイエナはなんとエルフの股間に噛みつき、エルフは倒れて悶絶しているのだ。
一見、目を覆いたくなるような残酷な光景に見えたが、エルフの股間からは血の一滴も流れてはいない。
エルフは「あ~ん、あ~ん」と身悶えながら、股間のハイエナと共に荒野の大地でゴロゴロと
身を転がせているだけであり、非常に滑稽な光景となっていた。

(成程な……まごうことなき変態だ)

偽原は瞬時にエルフというキャラクターとその能力を把握した。
つまりあの女に直接的攻撃は一切通じない。
あの噛みつきも、食らいついた場所が腹部や喉笛であれば、エルフはさして痛いとも痒いとも思わなかったであろう。
しかし運悪く(あるいはエルフ自身が誘導したのか)喰らいついた場所が股間であったために、
エルフに快感を与える結果となったのだ。

(このままイッてくれれば楽なんだが)

エルフの能力は一度絶頂に達することでその効果を失うという。
偽原はとりあえず警戒しつつも事の推移を見守ることにした。

「あら、ごめんなさいね。ハイエナちゃん。新しい男が来ちゃったわ」

エルフはどうやらこちらに気づいたらしく、突然正気に戻るやいなや、手にしたレイピアで「ふっ!」と
股間に食いついていたハイエナの喉を素早く一突きした。

「キャウッ!」

ハイエナは血を吐き出して倒れる。
エルフは股間からハイエナを剥がし、立ち上がって偽原の方を向いた。

「あらん、ごめんなさいね。折角殿方が来てくれたのに、股間がもうベチョベチョだわ」 

エルフの股間はライトアーマーに覆われたままだったが、先ほどのハイエナの牙で穴が開いた状態であり、
そこから涎やら血やらがポタポタと垂れていた。

「……聞きしに勝る変態性だな。エルフ族とは皆そんな感じなのか?」
「失礼ね。望んでこんな能力なわけじゃないわ。優男のおっさん。でも私は男は選ばないわよ~」

偽原は7年間の引きこもり生活によって、頬は痩せこけ、目は充血した不健康極まりない姿となっている。
ある執念によって今の顔に生気は戻っている、とはいえ、優男のおっさんとは、的確な表現であった。

「ほう、そいつは流石の心がけだ。で、次は俺と楽しんでくれるのか?」
「ええ、いいわよお。さあ、いらっしゃいな」

そういって、エルフは手からレイピアを放し、そして両腕を広げて、偽原を迎え入れるそぶりを見せた。
それに対し、偽原もまたライフルを手放し、ゆっくりとエルフへ歩み寄る。

ガキッ!

突如、金属音が響いた。
エルフが接近してきた偽原に対して、矢のような勢いで一瞬で右手に拾い上げたレイピアを向けたのである。
しかし、対する偽原も瞬時に左手からナイフを取り出し、それを受け止めていた。

「あら、素早い反応。流石に警戒してたってわけ」
「俺こそ驚きだ。あんたは誰でも歓迎のタイプだと思ったが」
「悪いけど。無条件で性行為を許すほど、淫乱じゃないのよ。これでも元女騎士だしね」 
「私を犯りたければ……、まずは実力で押し通りなさい!」

エルフは更に素早くレイピアを突き出し、対する偽原も再びナイフでそれに応じた。

攻防は、20分程続いた。
エルフのレイピア技術は達人級と言えるほどではなかったが、そこそこ洗練されたものであった。
対する偽原は実に巧みなナイフ捌きで、エルフの攻撃を体にかすらせることもなく全て華麗に受け流していた。
だが……。

「ふっふっふ……テクは凄くても体力が続かないようね。見た目よりは随分持ってるけど」

偽原の額からは大量の汗が流れていた。
エルフの恐るべきところは、種族の違いゆえのものか、その常人離れした体力であり、 
偽原に対して、20分の間、休む間もなく攻撃を繰り出し続けていた。
対する偽原も魔人であり、無論身体能力は一般人を凌駕している。公安時代に鍛え上げた技術によって、
エルフのレイピアも最小限の動きでかわしていたが、それでも20分も動き続ければ体力は減る。
そしてこのサバンナの熱気である。灼熱の太陽の輝きもまた、偽原の体力をじわじわと奪っていた、
しかし偽原はもっとそれより大きなものを感じていた。

(やはり失った7年間は大きいか)

ただひたすら酒と煙草と麻薬、そしてある映画に憑りつかれた日々……、その7年間と、 
そして何より老いによる衰えによって、偽原は自分の体が昔ほど思い通り動かないことを感じていた。

(だが、俺も目的の為に引くわけにはいかない!)

偽原は一瞬、動きに力を戻す。その様子を見たエルフは、しかし余裕の笑いを浮かべながら、
更に激しくレイピアの動きを加速させた。
エルフが体力を温存していたわけでもない。単に楽しんでいるだけである。
そもそもこの剣戟での戦い、偽原の体力以前の要因で勝敗は既に決まっている。
例え、偽原がナイフをエルフに届かせたとしても、エルフには決して通じず、性的な攻撃に変換されてしまうのだ。
つまり偽原が多少気合を振り絞って何とか一撃を与えても、それはエルフにとっては、色んな意味でむしろ喜びにしか
ならない。

その事実を偽原が認識してないわけもない。
一瞬取り戻した偽原の快活な動きは、しかし徐々に鈍り、エルフのレイピアが偽原の体にあわや当たるかという
場面を生み出すようになっていった。
この試合は、多くの観客たちによって現在モニターで観戦されていたが、
そのほとんどの目にも決着は近いと思わせる状況へと変わっていた。

「残念ね。あなたのモノを一度は受けたかったけど」
「素直に……受けてくれると……ありがたいがな」

まだまだ余裕で斬撃と共に言葉を投げかけるエルフ。
偽原は既に息を切らせていたが、何とか答えを返す。

「ざぁーーんねん。夫以外の弱い男に興味は無いの!」

遂にエルフの激しい突きを前に、偽原は飛んで後ずさる以外の選択肢がなくなる。
そして思わず、姿勢を崩してしまう。

「もらったっ……!」

一気に偽原へ向かこうとするエルフ。
だが、次の瞬間、

ドーーーン!

と大きな音が鳴った
そしてエルフの胸が貫かれる。
それはアサルトライフルの弾丸であった。
偽原が飛んだ先の足元にはそれが落ちており、偽原は姿勢を崩したふりをしてそれを拾い、
エルフに向かって撃ち出していたのだ。
通常ならこの一撃が決まった時点でケリがつくが……、この戦いは異なる。

「今更そんなこけおどしに……?」

エルフは平然とした様子である。
今の弾丸による攻撃も、しかしエルフの能力の前には、ちょっと体を揺らした程度の衝撃だけに変化している。
正確には、胸を揉む程度の性的攻撃の快感だが……、ともかくアサルトライフルの弾丸もエルフにはさして効果は無い。
エルフは一瞬驚いたものの、すぐに偽原の方を向き直した。
しかし、エルフはその瞬間、異様な光景を見る。

「なっ……シャボン玉……?」

偽原の周囲に巨大なシャボン玉がいくつも浮かんでいる。
偽原は天に向けてライフルを何発も撃ち続けていた。
そしてそのたびにシャボン玉が銃口から浮き上がり、大小様々な、無数のシャボン玉となって、
偽原の周囲を漂っていた。

(これは……もう一人の娘の能力!)

対戦相手のプロフィールはエルフも当然目を通している。
第三者の突然の介入に警戒を強めるエルフ。
だが、その背後にもう一つの大きなシャボン玉が密かに近づいていることには気付かなかった。

パンッ!

エルフの背後で突然、シャボン玉が割れる。
いきなりの事に驚くエルフ。
更にその耳に大きな「声」が響いた


「お、大きいー!大きいよぉー!チン○、おっきぃよぉーーー!」


突如、響いたのは少女の卑猥な大声であった。(やや棒読みであったが)
それは男性のある部位の巨大さを示すものであった。

(大きいちん○……?)

エルフの女騎士の習性か。その声に思わず心が反応する。
そして正面を向くと……、そこにはなんと偽原がコートの前を広げ、下半身を露わにしていだのである!
そして、その偽原の姿は周囲の無数のシャボン玉によって照らし出され、虹色を帯びて、エルフの眼前に
映し出されていた!

(お、大きい……、あの男のチン○。それがシャボン玉に映って……)
(綺麗……)

その光景に、心を奪われ、無数のシャボン玉を、その中に映る偽原のチン○を、注視してしまうエルフ。
それは偽原にとってみれば致命的な隙と言えた。

(余裕で3秒だな……)






フ ァ ン ト ム ル ー ジ ュ






偽原は心の中でその思念を飛ばした。
その瞬間、エルフの目に映る無数のシャボン玉に写し出された無数のチン○は1瞬にしてあの映画……、
「ファントムルージュ」の映像へと置き変わった。
そしてエルフの脳内で繰り広げられるは、この世にあるまじき映像、恐るべきファントムルージュの世界である!

「くっ、何よこれ……こんなものに……えっ……?」
「な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!しゅ、しゅごいぃぃぃぃぃぃぃぃ……!!私、こんなの知らないィィィィ!!」
「こんな、こんな大きいのはじめててぇぇぇぇぇぇぇぇ!!い、いや、いやああああああああああぁぁぁーーー!!」

突如全身を震わせ、身を悶えさせるエルフ。
顔は紅潮し、目からは涙が、口からは涎がとめどなく溢れる。
両手は股間に伸び、そこを押さえながらビクンッビクンッと全身を振るわせてその場に崩れ落ちた。

(やはりこうなったか……、確信はあったが、な)

偽原の能力、ファンオムルージュ・オンデマンド。
対象が3秒間映像を視聴している時に思念を飛ばすことで。その映像を世界最凶の映画、 
ファントムルージュへ差し替え、一瞬の内に相手にファントムルージュの全シーンを体感させる、
というものである。
ファントムルージュの見たものは精神を完全に破壊され、生きる気力の全てを失い、全身の力が抜けていく。

だが、この能力、全てのダメージを性的な攻撃に変換するエルフにも通用するのかどうか?
問題は2点、まず全てのダメージに精神的なダメージも含まれるのか? ということである
そしてもう1点は、もし含まれないとしたら、ファントムルージュとは性的な攻撃とはどれ程遠いのか、
ということである。
まず、前者の疑問点については偽原が考えたところで答えは出なかった。答えが出ない問題は考えても仕方がない。

たが、もし、精神的ダメージが含まれようが、含まれまいが、大して問題は無い、と偽原は結論づけた。
それは後者の疑問点に対しては明確に答えが出ていたからである。

「ビ、ビックバンインパクトォォォォ!!は、放ってるぅぅぅーーーー!大きいのをぉぉぉーー!い、いっちゃゥゥゥー!」
「いやぁぁぁぁぁあぁぁ!!出さないでぇぇぇーーーー!!」

そして、大きな絶叫と共にエルフの全身が激しく痙攣する。するとたちまち、エルフの体型が膨れ上がり、
肉の厚い……メタボ体型へと変化してしまった。

(そこで達したか……。俺もその辺りのシーンが限界だった)

エルフの能力は今や完全に解除されていた。しかし、にも関わらずエルフは未だに性的攻撃を受けているかの如く。
「だめぇ!」「いくぅ!」「もうやめてぇ!」と喘ぎ声を上げて、ジタバタ転がっていた。

そう、ファントムルージュとは、すなわち人間の精神への凌辱行為である。
例えば、あなたはとてつもなくつまらない駄作を見た時、あまりの辛さに何か自分の大切な者が汚された気分を味わったことは無いだろうか。
更に、そのつまらない駄作が、元は自分のとても好きな小説、漫画、アニメといった、自分にとって大切な原作のあるものを
とてつもなく酷く歪められたものだったとしたら?
それは自分の魂へのレイプ行為というだけでなく、自分が愛するもの、恋人、親兄弟、姉妹、友人……それらが目の前で、
あらゆる手段で無残に暴行され、汚され、凌辱される……そんなシーンまでをも想起させてしまうものである。
ファントムルージュの惨さはあなたが今想像したつまらない駄作を見た時の虚しさの、数千倍、数万倍であるといってもいい。
そんな映像を味わせられたとき……、ハイエナに股間を咥えられたことでも感じてしまっているような淫乱エルフが、
ファントムルージュに性的な攻撃を想起しないなどど、どうして言えよう?

(まあ、ここまでの結果は想像してなかったが)

エルフは既にファントムルージュの全場面を体感し終えていた。しかしファントムルージュによって与えられた絶望
(エルフの場合は快楽か)の余韻は一度見終えた程度では消えず、なんとその場で鎧を脱ぎだし、全裸で自慰行為に走りだしたのである。

(これで体型が元に戻ったのでなければ、観客には良いサービスシーンになるんだろうがな)

今やエルフの体型は百数十キロは超えているであろう、太ましい……控えめな言い方をしなければ、いや、
これ以上は読者諸兄の精神的影響を考慮して詳細な描写を控えることとする。
とにかくエルフはもはや心ここにあらずといった感じで、ただただ自分で自分に快楽を与え続け、
ファントムルージュの衝撃からの忘却に耽っていた。

「さて、もう出てきていいぞ。お嬢ちゃん!」

偽原は少し離れた草原地帯に向けて、大きく声をかけた。
やや間が開いた後、一人の銀髪の少女が草原から姿を表す。

「あ、あううぅぅぅ~~。そのエルフさん、大丈夫~~」
「まあ、しばらくは再起不能だろうな。今やただの激太りしたおばさん……という年齢でもないらしいが」
「けどぉ~~、本当にエルフの女騎士を仕留める方法があったんだね~~」

さて、もう説明の必要はないと思うが、この二人は既に試合開始前から通じていた。
反則的な能力を持つエルフの女騎士ゾルテリアのプロフィールを見た時、
偽原は単体で立ち向かうのは骨が折れる相手だと思った。
そんな時、もう一人の対戦相手、偽名探偵こまねのプロフィールを目に通した時、
おそらく自分と同じことを感じているだろうと思った彼は、同盟の打診を考えたのである。

ちなみに連絡手段は普通に彼女の探偵事務所の電話番号とメールアドレスをインターネットで調べて
共同作戦提案の連絡を入れただけである。
本人がトーナメントに出ている今、電話は留守電状態だったが、メールは通じており、「話を聞くよ~~」と可愛らしい
女文字で書かれた返信がすぐに来た。そこから今回の作戦をやり取りしたのである。

「と、とりあえず~、その股間はしまって欲しいかな~、なんて」
「ああ、悪いね。エルフを倒すにはこれ以外の作戦が思いつかなかったんだ」

実のところ、もう少し別の手も考えられなくはなかったが、事前調査したエルフの性格を踏まえて、
これが成功確率の一番高い方法だと結論づけた。
偽原は決して、女子高生に股間を見せることで興奮する様な変態ではない。そっとズボンを上げて、股間をしまった。

「うう~~、でもあの台詞は恥ずかしかったんですけど~~」

チン○という卑語を使ってエルフの注意を引くよう、こまねに促したのも偽原の指示である。
勿論、これもエルフの性格から導き出した、ファントムルージュ・オンデマンドを相手に味あわせるために
必要だった行為である。

「けど、あの人一体何がどうなったんです~~?その、一瞬で……あんな、えっとぉ~~、あ~~ん……」

顔を赤らめ、ぶんぶんと首を振り回すこまねであった。

「ああ、それについては知らない方が幸せだよ、お嬢さん」
「ええ~~、でもちょっと気になりますかな~なんて。名探偵としても」
「そんなに気になるなら……教えてやれなくもないが、しかし折角協力してくれたお嬢さんにそうするのは忍びない、しなあ」

ざっ……と。場の気配が変わる。
偽原はナイフを構え、こまねの方へ向ける。こまねの方も口元を引き締め一瞬後ずさる。 

「やっぱり~~、戦わなくちゃいけません~~?」
「お嬢さんが降参してくれるなら、その必要はないが」
「それはできないんだな~~。依頼の完遂は名探偵の仕事ですし~~」
「いい心がけだ。ならばもう言葉はいるまい」
「ですね~~」

その瞬間。
大量のシャボン玉が、こまねの後ろから、偽原に向かって、勢いよく飛んで行った。

(既に戦いの準備はしていたか……!)

だが、先ほどまでの戦いから、偽原は既にこまねの能力の大方を把握していた、
おそらく音をシャボン玉に変換し、そのシャボン玉を自在に操る能力だろう。
しかしシャボン玉自体にはさして殺傷能力は無い。
成程、これだけ大量のシャボン玉が一斉に破裂し、大きな音がなればこけ脅し程度にはなるかもしれない。
しかし偽原は魔人公安で特殊訓練を受けた男。大きな音程度で怯んだり、隙を作ったりはしない。
加えてこまねは今のところ武器をもっている様子もない。接近して、一気にナイフで仕留めれば偽原の勝ちである。
(ただし、偽原にはナイフで仕留める、という気はないのだが)

偽原は一気にこまねへ向けて駆け出す。周囲にシャボン玉が向かってくるが、意に介す様子はない。
そして、偽原の周囲にある大量のシャボン玉が……一斉に弾けた!


「お父さん……助けて……!」
「お父さん……苦しいよ……!」
「お父さん……もう嫌だよぉ……!」


割れたシャボン玉から、口々にある少女の声が響いた。
瞬間。


ダァーーン

銃声が響いた。

次の瞬間。


こまねは、偽原によって組み伏せられ、腕を押さえられていた。
こまねのその手には一丁の大口径マグナムが握られている。

「中々の早撃ちじゃないか。それも得意のモノマネで得た技術か」
「そ、そんな……どうして」
「ん、まあお嬢さんが銃ぐらいは隠しているだろうと思ってたからね。警戒はしていたよ」

ちなみに転送された3人は主催者の計らいにより、全員開始地点には野生生物が一匹あてがわれていた。
エルフがハイエナと、自分がライオンと戦っていたことから、
何らかの方法でこまねもまた野生生物と戦い、勝利していたことを偽原は推察していた。 

「け、けど……あの「声」は……」
「ああ、よく似ていたよ。聞き違えるはずもない。娘の声だった」

割れたシャボン玉から発せられたのは死んだ偽原の娘、すみれの声に間違いなかった。 
こまねはその声によって偽原に隙を作り、隠していたマグナムの一発で仕留めようと画策していたのだ。
だが、偽原は娘の声に何の反応もしなかった。こまねの銃を引き抜く瞬間を見切り、素早く弾道から身をそらした後、
すかさず駆け寄ってこまねに蹴りを見まい、倒れさせた後、その体を抑えたのだ。

「死んだ人間の声まで調べるとは大したもんだ。名探偵の名は伊達ではないな」
「私は、色んな人の「音」を集めることができるから……。娘さんの声も何とか手に入れて。それで、その声を真似て……」

偽名探偵こまねの探偵としての名声はつまるところ、その能力によるものが大きかった。 
あらゆる「音」をシャボン玉として収集できることから、
例えば、サスペンス等で犯人達が顔を隠して部屋の中で秘密の会話をしているシーンがあっても
こまねは普通にその音を収集し放題である。勝手に聞かれていないと思ってベラベラ解答を喋っていた犯人たちを
こまねは何人も捕え、名探偵と呼ばれるようになった
(もっとも、そんな馬鹿犯人たちの存在を抜きにしても、この能力は情報収集に非常に優れた能力であったが)
そして「音」のコレクションはこまねの趣味の一つにもなっていた。
7年前に死んだ偽原の娘の声は流石にコレクションには無かったが、
幸いにして、当時、偽原の娘が通っていた関西の小学校の運動会の映像を持っている人を突き止め、
親子仲良く運動会に参加している偽原一家の当時の映像と声を入手することができたのだった。

「そいつは素晴らしい。大抵の人間には通じるだろうが……、俺には無理だ」
「どうして……あなたの事は調べました!娘さんと奥さんが死んで悲しかったんじゃないんですか!辛かったんじゃないんですか!」
「……お嬢さんは俺が何故家族を失ったか、それからどうしていたのか、そこまでは調べなかったのか」
「それは……7年前に悲惨なテロ事件があって、それから自暴自棄になったって」
「そのテロ事件の正体は?」
「そこまでは……あの事件に関しては、魔人に対しても徹底して情報封鎖されてたから、詳細までは」
「……それが正解だ。そして最大の間違いだ」
「……え?」
「良いだろう、この映像を見てくれ。俺の妻と娘が生きていたころの写真だ」

言って偽原は右手でこまねを押さえつつ、左手からスマートフォンを取り出した。
そして、その画面をこまねの眼前に突き付ける。

「まあ、見てくれ。娘は、君にそっくりでね」
「え……?」

言ってこまねは画面を注視する。

「別に似てな……」






フ ァ ン ト ム ル ー ジ ュ







「うぐっ……うぐっ……。あうう~。酷いよぉ……、あんまりだよぉ~~。こんな、こんなの信じられない~。人間のやることじゃない~」
「もういやだ、いやだよお~~。見たくないよお~~。助けてよぉ~~。」

偽名探偵こまねは天を見上げながら、わんわんと泣いている。
彼女もまたファントムルージュ・オンデマンドの犠牲となったのだ。
それは魔人とはいえ、17歳の少女が受けるには非常に耐えがたい苦痛と絶望であった。 
当然、変態的嗜好の無い彼女はエルフのように快感に喘ぎ狂ったりはしないが、ファントムルージュによって受ける精神的凌辱の度合いは
万人共通である。未だかつて味わったことのないおぞましい感覚に、彼女はただただ泣き叫んでいた。

「それが答えだ、お嬢さん。それを味わった人間にとって家族の声など、もう届きはしない」
「ただただ、世の中を嘆きながら生きていく……。俺がこうして何とか動いているのも、たった一つの執念があるからに過ぎない」

今となっては懐かしい家族の声であったが、もはやそんなもので、ましてや戦いの最中で、
歩みを止めるほど今の偽原の精神はまともな状態ではなった。
彼の精神こそが、既にこの中でもっとも破壊されていたのだ。ファントムルージュによって。

「ファントムルージュ……その痛みを、世界全てが知る……その時までは」

目の前で自分の娘とかつて同じ年頃であった少女が嘆き苦しんでも、今の偽原の心に届くものは何もない。
ただ、戦いを終えた、という気持ちが残るのみである。

だが……、

「あっ、ふっ、うぅーん。あなたも、アレを味わったのね~~」

はっ、と偽原は振り返る。そこには先ほどまで、蹲って喘いでいたはずの女騎士が、這いずりながら、こちらに寄ってきていたのだ。

(まさか……もう立ち直ったのか! あれから!)

警戒を強める偽原。しかしエルフは偽原のことを、眼中にあらずといった感じで素通りし、泣き叫ぶこまねへと向かっていった。

「いいのよ……、全て全て忘れさせてあげるわ~。その方法を知っているの」
「忘れる……忘れる……」
「そう、それはね」

そういってエルフはこまねの唇に自分の唇をつけた。

「イッちゃうのよぉぉぉ!!誰も見たことない世界へぇぇぇーーーー!!」

そうして女二人の絡み合いは始まった。
経験豊富なエルフは欲望のままに、こまねの体を弄び、ファントムルージュによって精神を砕かれていたこまねもまた、
錯乱状態でその快楽を受け入れることに没頭しだした。
互いに「死ぬ」「イク」「駄目」といった単語を連発し、もはや周りなど一切見えておらず、自らの快感に没頭していた。

「さあっ、あなたも……、あなたも来てぇぇ~~。私達を貫いて~~~!!」
「あう~~、分からない~~、もう何も~~~。もう好きにして~~。いやあああぁぁ~~」 

しばらく行為を眺めていた偽原だったが、その頃ようやく自分も参加を促されてるらしい、ということに気付いた。
が、その気は全くない。
煙草を一本吸い、気持ちを落ちつけてから、空に向かって……、この試合をモニターで見ているだろう、主催者に向かって
語りかける。

「もういいだろう、おい。俺の勝ちだ。見ればわかるだろう」

天へ向けて、そう再び繰り返す偽原。
そして、ようやく試合場であるサバンナからから、本会場へと転送される。

「お、お疲れ様です」

転送された先では、実況役の少女、佐倉 光素が待っていた。

「俺の勝ち……でいいんだよな? 止めは刺さなかったが」
「はい。まあ、どう見ても二人とも戦闘を続ける気はなさそうですし。けど、どうやったんですあれは? 一体」
「答える必要はないな」
「けど、相手を色情狂にする能力なんて。恐ろしいですね。それにエルフとの相性もすごく良かったです。
あのエルフはあれでも優勝候補の一人かと思われていたのですが」

(ん?ああ、そんな風に俺の能力は思われたのか……)

未だ試合場で性行為を続ける、あの二人の惨状を見れば確かにそんな解釈も無理もない、と偽原は思う。
こまねの方は最初から快楽に溺れたわけでは無かったが、割とすぐにエルフによってあんな事になったため、
外から見ていた人間には、二人がいきなり色情狂に化したようにしか映らなかっただろう。

「けど、そんな能力で……その、ご自分は楽しまなくてよかったんですか?大会的にも、まあ、
そういう行為を止めるつもりはありませんし」
「一部の苛烈な観客からは、「その豚は殺せーー!」とか、「娘の方を犯せ――!」なんて歓声が飛んでましたよ」
「……そんな希望を通して欲しければ、観客の声が聞こえるような場所を試合場にするんだな」
「それはまあ、大会主催者の趣向ですし」
「それに……、俺にそんな悪趣味は無い」

悪趣味というのには二つの意味がある。
一つはファントムルージュによって既に心は魔道に堕ちたと言っても、つい先ほど、やはり
ファントムルージュによって心砕かれたばかりの哀れな少女を犯す気にまではなれなかったこと。
もう一つは、そもそも巨大な肥満体型となってしまったエルフが傍らにいては、
その気になど一切なれない事である。
観客たちも同様の気分の者が多いらしく、一部の特殊な性癖の者を除いては微妙な空気でモニターを見ていた。

「うーん、まあいいです。私達にとっては勝敗が重要ですし」
「では、偽原選手の勝利を宣言します」

こうして、偽原光義は1回戦に勝利した。
そしてもう一度、モニターに映る二人の女に目をやる。
どこまで体力が高いのか、エルフの方はまだまだ行為を終える様子が無く、
むしろ激しさを増す様子を見せ、こまねの方はよりいっそう大きな嬌声を上げた。
観客もそろそろ慣れたのか「おお~~」「こまねちゃ~~ん」と黄色い声が上がった。 

(ファントムルージュ……それが生み出す業は、やはりとてつもなく重いな)

覚悟を決めたこととはいえ、こうして自ら生み出してしまった惨状に改めて偽原は自らが背負おうとしている罪の重さを再認識する。

(だが、これを乗り越え、俺は勝つ。そして世界に知らしめねばならんのだ。真の滅びを)

決意を新たに、偽原はモニターに背を向け、本会場を後にしたのだった。
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