聖槍院 九鈴幕間その11

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dangerousss3

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【予告編テイストなエピローグ】

ガラガラガラ。ガラガラガラ。石畳の上でキャリーバッグが車輪を鳴らし引きずられてゆく。◆座礁した原油タンカーから染み出したドス黒い油が海面へ広がってゆく。エビが……カニが……南海の豊かな生態系が危ない……。

ガラガラガラ。ガラガラガラ。石畳の上でキャリーバッグが車輪を鳴らし引きずられてゆく。◆入り組んだ路地裏に遺棄された狂科学者のラボ。ズルリ。乱雑に積まれたバイオ廃棄物の中から奇怪な触手が這い出した。望まれず生まれた異形の復讐が始まる……。

ガラガラガラ。ガラガラガラ。石畳の上でキャリーバッグが車輪を鳴らし引きずられてゆく。◆大規模不法投棄組織のプラントから戦闘ヘリが飛び立つ。機銃を構えたガンナーが赤外線スコープで地上の標的を視認。その人物は……!?

車輪の音が消える。足を止めたキャリーバッグの持ち主の女性は、鋭い視線を上空に向ける。その両手には……二本のトング!緋色の光を纏った漆黒のトングが獲物を求めて牙を開く!

右トングに挟まれた巨大なオイルフェンス塊が頭上高く差し上げられる!左トングに挟まれた台船が揺れる!梃子の原理による大質量ハンドリング!そして……投擲!海面を走るように一瞬でフェンスが敷設される!

右から!左から!襲い来る無数の触手を次々にトングで挟み壁面に床面にタフグリップ固定しながら走る!目指すは触手の湧き出す中心地!コアを破壊しない限り無尽蔵に触手は増え続けるのだ!

容赦ない機銃掃射!降り注ぐ対地ミサイル!だが標的の姿は既に無い!上だ!トングのバネで自らを射出して武装ヘリよりも更に高く!高速回転するローターをトングが捉えタフグリップ固定!揚力を失い落下してゆく……!

地面に激突した武装ヘリの爆発光が、女性の表情を照らし出す。その鋭い瞳は、遥か先を見据えている。

人生は一瞬。掃除は永遠。◆「だからわたしは……。挟み続ける!」◆聖槍院九鈴の掃除は、まだ終わらない!

「頼む!目を覚ましてくれ!」妹の身体を揺すり、雨弓は懸命に呼び掛けた。だがその言葉は届かない。「もう……ておくれね……」沈痛な面持ちで九鈴が呟く。雨竜院畢は目を閉じて静かに微笑んでいる。しかし、その四肢は既に力を失っていた。

「畜生!このままじゃ畢は……」雨弓は床を拳で殴りつけ、空になった酒瓶を恨めしそうに睨みつけた。「おねしょしちゃうね……」九鈴は溜め息をついた。新年会で慣れないお酒を飲み過ぎて泥酔した畢は、安らかな寝息を立てている。

雨弓は畢の小さな体を軽々と持ち上げ寝室へ運ぼうとした。すると、下の妹の金雨が裾をちょいと引っ張った。「おトイレに運んで。私がなんとかしてみる」最年少ながら兄妹で最もしっかり者の金雨は、酔い潰れた姉の世話をする気まんてんだった。

実際、金雨は上手くやり遂げた。絶望的に見えた畢になんとかトイレを済まさせることに成功したのだ。そして、パジャマに着替えた畢と金雨は、兄たちと両親に就寝の挨拶をして仲良く寝室に向かっていった。

……新年会の後片付けを終え、雨弓の部屋にやってきた九鈴は意味ありげに微笑みを浮かべて言った。「わたしもすこし……」九鈴は雨弓の大きな体にしなだれかかる「よっちゃったかな?」「大丈夫か?」雨弓は優しく抱きとめるが……背に隠して構えたトングに気付いていない!

「えーいっ!」素早く繰り出された4本のトングが雨弓の両手両足を床面にタフグリップ固定!身動きのできない雨弓の上へ馬乗りになった九鈴は、胸の前でガチガチとトングを鳴らす!「せめたいきぶん!」酒癖が悪い!

「ちょっと待て九鈴!」おとなしくマグロになっていればいいものを、身の危険を感じた雨弓は反射的に『睫毛の虹』で幻覚攻撃を仕掛けてしまう!風邪予防の加湿器によって湿度は十分!極彩色のベイズリー渦が九鈴の視界を覆い尽くす!

「おえええええっ!」酔っ払いの視界を幻術ジャックすれば当然こうなる!九鈴の口から嗚咽と共に吐き出される新年会の御馳走の成れの果て!タフグリップ固定された雨弓は回避不能!顔面直撃!雨弓はたまらず……もらいゲロ!

あれ……おかしいな……九鈴のイメージが……おかしいな……。まあ、幸せそうだからイイんじゃないかな!

世界改変後の九鈴ですが、清掃局に勤務する傍らトング道場で師範代として後進の指導に当たってます。大会の宣伝効果で門下生も増えたようです。そして時折、七葉からの依頼で危険な清掃ミッションに挑んでます。

2021年春に結婚、秋に第一子を授かります。雨弓と九鈴の間にどんな子が生まれたかって?その話は、またの機会にいたしましょう。

【聖槍院九鈴エピローグ、おわり】