猪狩誠幕間その2

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dangerousss3

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ここまでの展開がよく分かる幕間

1回戦終了の翌日、猪狩誠は彼を大会に推薦したヤクザ、ヒイラギ組のマサの元を訪れていた。

「よくやったな、誠。
お前が儒楽第を倒し、もう一つの目標だった夜魔口も一回戦で脱落。組の目的は達成された。
だが、上はお前が更に勝ち進むことを望んでいる。そのためのバックアップも惜しむなと言われている。」
「へへ、そりゃ良かった。俺の目的はまだこれからですからね。」
「ああ、約束通りこっちは賞金と副賞には関与しない。しっかりやれ。だがお前、随分と大親分に気に入られたみたいだからな。もうこっちの世界と手を切れなくなったかもしれんぞ。」
「何言ってんですか。望むところですよ。確か、盃を交わしたら家族になれるんですよね?」
「あ、ああ。まぁ、いずれはな…」
誠の無邪気な喜びように、マサは胃に重石をつめ込まれたような気分になった。


1時間後
「ただいまぁ。いい子にしてたか、お前ら。」
「おかえりなさーい」「おかえりー兄ちゃん」
孤児院「どんぐりの家」に帰ってきた誠に、子供たちが一斉に答える。
「今日はいいもんがあるぞ。商店街のケーキ屋さんが一回戦の勝利祝いだって。ほら。」
手に持っていた包みを開けると、中には大きなホールケーキ。
「すっげー!」「きゃー!」子供たちは歓喜のあまり半ば叫びのような声を上げた。
「ばか、みつる。汚い手のまま触るんじゃねえ。手ぇ洗ってこないと食わしてやんねえぞ!」
我れ先に手洗い場に駆けて行く子供たちを見送る誠の顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「あーあー、全く散らかしっぱなしで。しょうがねえな。」
テーブルの上を片付けていると、園長室から園長が顔を出した。
「帰っておったか、誠。話がある。ちょっと来なさい。」
「あ、うん。俺からも話があったんだ。おいお前らちゃんといただきます言ってから食うんだぞ。」
「「わかってるー」」
「俺の分もちゃんと残しとけよー」
「「わかってるー」」
「病院に行っておったのか?」
湯のみに緑茶を注ぎながら園長が尋ねる。
「ああ。縁の手術日が決まったよ。来月の1日になるって。」
「ふむ」
カレンダーに目を向ける。それはちょうどトーナメントの決勝が行われる日でも有った。
「それまで体は持ちそうなのか?」
「医者の話では安定してるってさ。無菌室に移されてて窓越しに顔を見ることしか出来なかったけど。」
「そうか。」
園長は何やら考えこんだ様子でお茶を啜るが、その表情からは何の感情も読み取れない。
「まさるは、どうだった?」

猪狩誠の能力『All for one』は、家族や仲間が傷つけられると自らの力となる能力。
その特性を最大限に発揮するため、猪狩は1回戦開始前、自らの手でまさるを瀕死に追い込んだ。
そのまさるは試合の後、救急車で病院に運ばれ、現在も入院している。

「意識はまだ戻らないけど、命に別状はないってさ。」
「“力”の方は?」
「もうほんの僅かだな。試合までには無くなると思う。」
「そうか。いずれにせよまさるは当分リソースとしては使えんだろうな。」
「…まさるは、よく頑張ってくれたよ。」
「わかっておる。だが、あの時わしの言うとおりにしておれば、“まゆ”と“めい”まで失うこともなかったかもしれん。」
園長からは時限式のトラップを使って徐々に窒息させて殺すように伝えられていた。
言いつけに背いて不覚を取った誠のため、園長は更に二人の子供を手に掛けることとなった。

「…いや、言い過ぎた。すまん。
実はな、さきほど大会運営から連絡があって、次の2回戦、少々まずいことになっておるのだ。
相手は“ケルベロス”ミツコと冷泉院拾翠。三つ巴の戦いになるそうだ」
「!?」
猪狩は一息ついて飲みかけた緑茶が気管に入り、盛大に咳き込んだ。

「おそらく次が最大の難所となるじゃろう。5本指のうち、2本は覚悟しておかねばなるまい。」
準決勝と決勝が再び1:1に戻ると考えれば、倒すべき魔人は後4人。猪狩を最も慕う子供達『5本指』の残りを4本とすれば数は一致する。

「そのような顔をするな、誠。わしだって辛い。だが、だからと言ってここで立ち止まるわけにはいかんのだ。我らの悲願、世界の救済を成すためにはな。」