その他幕間その17

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dangerousss3

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◆ダンゲロスSS3番外

DANGEROSRONPA『CHAPTER1:名探偵、負け犬達のサーカス』



【01】
絶叫の後、沈黙。
事実さんとあたし、こまねは互いに見つめ合うことも出来なく、
ただ、ただソレを見つめていた。

wanawanawana wananwanwana wananwanwana wananwanwan

zawazawazawazawa wanawanwa

突如、あたし達の前に現れたソレは、ヌイグルミと呼ぶには余りに歪で
へんてこりんな存在だった。白を基調とした身体に黒の歪なラインが無数に
走り全身を縫いとっているかのような怪存在。
そしてソイツはまるでそこが自分の定位置だといわんばかりにステージに
設置された椅子にちょこんと座った。

両脇にはスピーカーが設置され、登場時以降、不快なBGMを垂れ流している。
同じく左右に展開しているボンボリ達が狂ったように赤黒の点滅を繰り返し、
狂ったようなシュチエーションをモノノ見事に演出していた。

ナマモノは右手(らしきもの)をあげると
「というわけでグッドモーニングスター☆負け犬の皆さま。
ボクはこの大会マスコットにして運営者の”戮エモン”です。ドーモ、コンバンワ」
と妙に甘ったるい声で挨拶をかまして来た。

あたしは眼を細める。大会マスコット?
リクエ・モン?
そんなモンスターなど誰もリクエストなどしていないんだよ~
普段なら余裕かましてそう一笑に伏すのだが、一概にそうできない
それは今対している相手が纏っている凶気とでもいうべき、禍々しさに合った。何者だ。

あたしたちは沈黙を続けていた。
次の瞬間、紅い瞳があたし達を覗きこむ。その不吉な紅に思わず悲鳴をあげかける。

「おやおや最初の豚のような悲鳴からダンマリデスか?ひょっとして死んだふり?」

覗きこまれるまで、全く接近の気配が読みとれなかった。今、どんな早業で近づいた。
あたしは内心の動揺を悟られないよう出来るだけゆっくりとソイツから視線を外す。
にやつく自称”リクエモン”

「くくくく。安心していいよ、ボク、クマさん設定じゃないから、死んだふりし
なくても取って食ったりしないから。
それにさ最近ゆるキャラとかクマなんとかとかがはやってるってはなしじゃない?
そこらへんも、ちゃんと考慮して、ボクのキャラ設定はクマではなくて未来から
やってきたネコ型のロb…」
「それ以上続けてはいけない!!」

??

奴は不思議そうに首をかしげた。
くっ。臍をかむ。
しまった、もっと情報を引きだすまで待つつもりが、思わずツッコンでしまった。
何か今放置していくとトンデモナイことになりそうな気がスゴクしたのだ。
この強制力…実は何かの魔人能力かもしれない。しかたなく、謎の相手に返事を返す。

「ハイ。で、その自称大会マスコットの”リクエモン”さんがあたし達に何の用でしょうか?
私達はその大会の為に試合会場に向かわないといけないのだけど。」

何気なく水を向けた、次の瞬間。

ざわ。
ざわ。
ざわ。

部屋の空気がざわめいた。ざわざわと”リクエモン”の後ろで文字が躍る。
本当にざわという文字がぼんぼりから浮きで踊っている。
どういう原理だ。
しかも人が能力が発動できずに困っているというのに、なんかスゴイむかつく。

「あー君達がソレを言う。遅刻者の君がネ。」
リクエモンが呆れたように言う。
――――は、遅刻したって。
「そーだよ。あれだけ時間厳守遅刻厳禁ですって言っておいたのに。
君達はいつまでたってもオちてこない。
しかも全く同じブロック全員が”遅刻”するとは思わなかった。こっちにも都合があるってのに。」

憤り・激しい・憤り。

彼の背後で激しく点滅するぼんぼりたちの文字。なるほど、そういう風にも使えるんだ。
感心している場合でなかった。リクエモンが気勢をあげる

「そこで!!我々としては!遅刻対象者を粛清!―じゃなかった、反省を促すため
罰ゲームを実施することになりました。
各部屋、確定一名様にて!
極めて趣向を凝らした!
『お仕置き』を受けて頂くことにしました!!スイーツ(笑)」

頑張るボクへの御褒美と言うやつです。口に手を当ててシシシと笑う、リクエモン。
何が御褒美なのか言葉の意味はよくわからんがとにかく凄い説得力だ。

「遅刻…そんな訳が…」
「じゃ1回戦の記憶ある?
今日の自分の行動を振り返って『思い出せる』?無理だよね。君には記憶がないはずだ。」

りくえもんに断言され、そのまま口ごもる自分。
確かに会場に向かうところまでしか、記憶がない。例えば前日までの電話口でのやり取りや
対戦相手の過去を調べた詳細とかは覚えているのだが、そこからの記憶が…
ズキッ
頭に鈍い痛みが走る。いや本当にそうだったろうか?

「ま、というわけで『オシオキ』対象を選ぶクイズをぉぉぉとそんなことしたら
倒れちゃうよ。危ないよぉ」
「そんなの誰がみとめるかぁ、帰して帰して帰してよ」

あたしは思いっきり地を蹴り、縛られながらも地団駄を踏み暴れる。
だが哀しいかな女子の軽い体重(強調)では椅子をふらつかせるのがせいいっぱい。
イスは後ろ向きに少し動いただけでそのまま…倒れなかった。
その代わりゴスという背後に何か当たる音がした。
「事実くんナイスキーパー」
どうも真野さんが自分と同じように椅子を後方に飛ばして倒れかかったあたしを
支えてくれたようだ。
「そしてこまねゃん、嘘泣きしてもダメです。帰しません。バレバレです」

はぁはぁはぁ息を整えつつあたしはぺろっと舌を出す
「ありゃ、ばれてましたか、むむむ」

そういいつつも意識は背に集中する。
縛られた背後の手の人差し指を立ててみると何か柔らかいものに当たる感触が、
そして向うからも返し…アリ。こちらの手のひらに指が当たる感触がする。
初めから数十センチの距離だ、少し詰めれば手が触れ合える。
そしてここで取られるやり取りはこいつからは死角になって見えないはずだ。

コンタクトできる状況はなんとかできた。
こちらの企みにはまるで気づかない様子でリクエモンは続ける。

「そして、今回の『オシオキ』は画期的にも選択制を採用しております。
なんと前もって対象が『オシオキ』を選ぶことができるのです!
ではレディファーストでこだまちゃんまずはリスト、ドウゾ」

すると目の前に映像が浮かぶ。そこには



「なんか、お仕置きと言うより古今東西の選りすぐりの処刑方法が書いてある
気がするね。言葉のニュアンスが間違ってる気がするなんだね。」
「でーょぶだ、ワン・ターレンがある。」

なんか凄い悪い顔でなんか凄いこといわれた。
本当に大会本部絡んでたらそうだろうけど…、好んで処刑される謂われはない。
そして、ここで今までダンマリを決めていた事実さんが初めて口を開く。

「補足確認だ。片方がオシオキを受けた場合、その間、残された人間はどうなる?」
おお
今までの口数が少なかった分、ばーんと決めてほしいところである。
「うーん、基本オシオキ中はそれを観賞いただくかな。妨害なんかはさせないけどさ」
とリクエモン。
そして次の台詞で一同に電流が走った。

「では、この『色欲触手地獄(ういーんういーん)』を詳しく見せてほしい。」

ガーン。
いきなり膨らんだ期待を裏切られた。膨らんだのは読者の期待やナニのほうだった。
「変態!変態!変態!裏切り者!」
思わず泪目になって叫ぶ、こまね。今度は半ば本気だ。

ギラリ。これはリクエモンの反応。
こまねの反応を見、これは今いち薄い真野事実に対するキャラ付けのチャンスでは
ないかと考えたのだ。
つまり、勝てばJKが触手に貫かれる様を観賞でき、負ければ挿しぬかれるところを
JKに視姦される。ドッチに転んでも変態的なキャラ立てが御膳立てできる。
今でさえ拘束された状態で泪目になった女子高生に変態と罵倒されるという好位置。
真野事実、恐るべしとメタ視点の者に印象付けるべきではないかと。
だが彼はこの誘惑を退けたっていうか、それをすると進行の妨げになるし、
ぶっちゃけそれ以上に愚痴りたいことが彼にはあったのだ。

「あーあーこまねちゃん、お静かに。
んというか其処にはちょっと先客がいるんだけど?てーいうか最初の補足って確認したい
って意味だよね。それなら「実物」見て頂いたほうが早いかな。ハイご注目~ポチっとな」

―場面転換―

薄暗がりの中、肉色の壁で覆われた部屋
そこで全裸の大柄な女性が、肉紐で全身を絡め取られていた。

「イヤァァァァァ」

最初は悲鳴かと思われた。だが、多分に媚を含んだ甲高い甘い声にそれはすぐに過ちだと
気づかされる。聞くだけで濃厚な鼻をつくような匂いがここまで漂ってくるような声だった。

―まさか!?そんな!

こまねの意識がそちらに向くと同時に映像がズームインされる。そこには!

それには触手に全身の穴という穴を挿し貫かれ悶絶する
安定のエルフの元女騎士ゾルテリアさんのあられもない姿があった!
触手になんか私は絶対負けない…でも!

「「ですよねー」」*2

思わずハモる二人の反応。これにはリクエモンさんも困惑顔だ
「いやほら彼女の能力って一種の無敵防御じゃん。ほかのひとみたく綺麗に眠らせるわけ
行かなくてね。で。先に相手して説明していたら
『ほほほ、私がそんな脅しに屈すると思って☆その問答即受けてやるわ』とかいいだしてね』」

…何故だろうその光景が眼に映るようだ。

「でね速攻でこっちの出すクイズ間違えてね。予め触手地獄、選んでいてね。もう、なんだかね。」

…何故だろうその光景が眼に映るようだった。

しかし、これで大会参加者が3人目。しかも同ブロックからだ。
流石にこの無法を目高機関が見逃すとも思えない。何某の狂言を疑っていたがこれは思った
よりもヤバイかもしれない。いやマテマテ、こまねは我に返る。

「ネコさん!もうゾルテリアさんが確定1名の罰ゲーム受けてる状態だったら、私達が
オシオキ受ける必要全くn…」
「シャラープ!!!!!!」
そのナイスな提言を遮るように鋭い叫びが入った。紅の眼が怪しく光る。

憤り・激しい・憤り。

激しく机を叩くリクエモン。

「シャラープ!!!!!!!!!貴様らは何も分かっていない。
いいかい、オ・シ・オ・キというのはだね。一種の【極地】なのだよ!
焦燥・後悔・絶望、そして暗転。今まで積み上げてみたものが一瞬にして崩壊する
様々なものが入り混じった崩壊のコントラスト!!
それをあんなあんな、くっ。我々はあんな肉袋になんぞ用はないのだよ。」

再び、激しくドン。

「ということで部屋も違うしノーカンです。中のひと的に言っても、多分あれはNGだね。」
中の人いうな。
がっくし。どうやらこのナマモノのリビドー赴くまま、ケッタイなクイズアワーに
付き合うしかないようだ。危機的状況は続く。
そしてこの時あたしはなんだかんだで、向うのペースにまんまと乗ってしまっていたのだ。

そのことに気づいたのは全てが手遅れとなってからなのであったのたが…。


【MISSION】

『選択は2つです。
こちらの出すクイズに対し一発勝負で正解する、もしくは
4つ正解を答えた人が部屋から無事に出れマス。

そうでないと永久に出れません。
間違えたりギブアップしたりすると罰ゲーム『お仕置き』が待っています。

お楽しみに。


以上、細かい点はGKコールに従ってください。』


あたしたちはルール確認と紆余曲折の末、後者、4つの正解を答えることとなった。


◆◆◆question open(一発勝負の問題)

QUIZ

『ここには真実を運んでくれる正直者のお手伝いさんが6人居る。

そのひと達をボクに紹介して下さい。』

【2】◆◆◆question1:私は誰?

QUIZ

『ここには真実を運んでくれる正直者のお手伝いさんが6人居る。

そのひと達をボクに”紹介”して下さい。』


それが一発勝負のクイズ内容だった。

(確か昔読んだおぼえがある。イギリスの童話作家の詩の一節だ。
これは、その変形バージョンってことかな。)

確認の為、背後に回した手でやり取りすると事実さんも同じように捉えているようだ。
いきなり答えが判ってしまった形だが…『紹介』と言われている以上、
その予想回答にプラスの詳細が求められるのだろう…結局”監禁されている”自分たち
では答えようがない。

「ちなみにゾルティアさんはこちらの一発勝負を選んで間違えました。」

彼女は『探偵』と答えたらしい。そして順番に名前を挙げて行った。なるほど、三つ子も
含めると丁度探偵が6人になる勘定か。ただ残念ながら回答は探偵ではなかったようだ。

そして彼女の「今」はすぐ、そこにあった。
先ほど映し出された映像は音量こそ落ちているが引き続き、映されており、肉と肉が
交わり合う淫猥な音が鳴り響いている。

イケナイナンデイケナイノイキタイノニー

現在は絶賛スンドメ地獄らしい、うわーキツソウ。
なんか、聞いてると、こうモゾモゾしてくるので、そろそろ消してほしいんだけど、うん。

「それでは引き続き手前の映像をご覧ください。」

そんなこちらの心境を知ってか知らずか、リクエモンの手により空中に映し出される新たな映像。

問題
『単連結な2次元閉多様体においては、どのような輪であっても引き絞れば
回収できるようであれば、その表面(表皮部分)は2次元球面に同相であることを証明しろ。』

以上である。

それから暫く待ったが「答えろ」とか「ハイヨーイドン」とか言われなかった。
あたしは一つ咳払いをすると出来るだけ猫なで声で出題者に声をかけることにした。

「ニャーニャーニャ?」
「あ、ボク、ネコ語とか判らないんで日本語でおK」
さいですか。
「もう始まってるの?」
「勿論、始まってますよ。」
やれやれと肩を竦めるとあたしは後ろに向かって声をかけた。

「事実さん、映っている内容、教えて貰っていいですか、こちらの内容はポアンカレ予想でした」
映されている映像が同一とは限らない、確認が必要だった。
返事はまた即だった。
「こちらも同じだ。ミレニアム問題『ポアンカレ予想の証明』」

その返答に軽く頷く。
ミレニアム問題。いきなりの無理難題である。
小説や推理ゲームでよく話題に出てくる数学上の超難問を取り扱った例のアレで有る。
米国のクレイ数学研究所によって100万ドルの懸賞金がかけられている7つの数学上の未解決問題のこと。
そして、このポアンカレ予想はミレニアム7問中、唯一解決されてる問題でもある。

逆に言うと未解決は”6つ”ある。
つまり4問正解先取だろうと時間無制限だろうと残りの未解決問題を出されたらおしまいである。
これを拘束状態で解けというのは如何な名探偵だろうと無理。
そもそもミレミアム問題の解が正解かどうか確認する手段って世界中の学者が2年くらいかけて
正しいかどうかを検証し、矛盾がないか必死こいて間違い探ししてようやく正解認定という代物なのだ。
    、、、、、、、、、、
それに問題を解けとは言われなかった。
つまりこの出題はフェイク、裏の意図を読み解いて何某の『正解』を探しださなければいけないわけだ。


…まあ現時点で、さっぱり思いつかないんだけどね。

その上でプラス解決すべき事案が2点。
我々を監禁しているこの犯人の目的と正体。
本当に大会に関係あるのか、それとも何か別の意図があって、こんな馬鹿げたゲームをさせているのか。
そして、あたしと事実さん二人とも無事に助かる方法を見つけ出すこと。この2点。
さてどこから手をつけるべきか。
あたしの決意を知ってか知らずか、リクエモンがこちらに声をかける。

「ねえねぇ、ちょっと聞いていいかな?今さっき気がついたことあるんだけど」
ハイ、なにかなネコ語も判らない落第ネコさん。
「こまねちゃんてさ、推理するとき、なんか目付き凄く悪くなるよね。」
!?
がっ、しまった。対策を取らねば。対策~対策~

「ハイ、今から…こまねちゃんは超推理睡眠のお時間だよ…zzzz…質問にはノーコメントだよ」
「うわ、タヌキ寝入り始めたよ。」

見られてしまった。昔から推理中、目付きが悪くなる癖があって対策にちょっと眠たげというキャラ
付けをすることでその欠点を見事、克服した経緯があるのだ。
くっあたしの小学生時代のトラウマ呼び起こしやがって。余計な発言があの時の同級生を彷彿とさせる。
元気かな…数々の犯罪と寒いギャグの数々を犯しシベリア行きとなった少年A吉(仮名)くん。
だいたいこの出題者、回答者にちょっかいかけすぎなのである。
まあ大会参加者全員を閉じ込めてるわけでも個別管理しているわけでもないので、時間に余裕があるのは…

あれ?片目を薄らと開け、ゾルティアさんの映像を見やる。個別管理?
どういうことだ。
次に事実さんのほうをみようとして、無理。これは首が回らなかった。

そして目の前のミレニアム問題。
懸賞問題…ひょっとして、これ”検証”問題ってこと?

……第一問は間違い探しということなのか?…なら…

あたしはうっすらと開けていた目を再び閉じる。
落ち着いて基本に立ち返って検証してみよう。まずはアレからだ。
数を数える。
あたしは羊を数える要領で頭数を数える。

「1、3、5、7、11、13、17、23、…で…28…28か。」

大会選手はエントリー数で29。ソレは確かだ。素数だったので記憶に残っている。
だが今数えた結果は人数は28どまり。とするとこの中で一番怪しいのは…
あたしは背後の事実さんに向かい問いを発した。

「事実さん、一つ答えてもらっていいですか?『真野事実の魔人能力』を教えてください」
「…。」
答えは沈黙。いつもは間髪いれず来るはずの答えは今回返ってこなかった。

「うぷぷ。確か変身能力ぽいなにかじゃなかったかなぁ」
代わりに答えたのはリクエモンだった。
あたしはそれを無視して質問を続ける。

「じゃ、娘さんのお名前教えて頂いていいですか?いらっしゃいますよね」
「…。」
またまた沈黙。
ふむ、では切り口を変えてみよう。

「私のポケットにはメモ帳には貴方のこと、なんて書かれてましたか?」
「『往年の名探偵。長らく消息不明だったが本大会にエントリー。”本物なら”
顔見せするのは20年以上ぶりとなる。弁舌に長け、NO武力で事件をスマートに
解決するのが特徴。魔人能力もそれに絡んだものか? 
年齢不詳だが、おそらく本大会最年長と思われる。個人的にはロマンスグレー希望』」

「個人的にはロマンスグレー希望。乙女か!」
リクエモンがツッコミを入れるが、ここまで来るとあたしも同じく笑うしかない。
なるほど”彼”はあたしの知っている限りの『事実』を答えてくれるわけだ…。

「では最後にあたしの1回戦の対戦相手の名前を教えてください。」
「対戦相手の名前はゾルティアと―――」

なるほど、聞き覚えがない名だ。
一問目の『正解』が”ソレ”だという前提にたつのなら考えられるのは
精神ショックを記憶が吹っ飛んだ後、その記憶障害を補うため、関連する記憶の封印
や改ざん処理を施したというあたりだろう。

「回答は順不同でいいんだよねー」
「モチノロン」

あたしは最初の正解を口にする。

「最初の回答。『Who(誰)』はあたし・偽名探偵こまねなんだね。
要するに最初から、この部屋にはあたし一人しかいなかった。」

リクエモンは軽く頷くとあっさり答えた。
「正解です。」

†††

「一応、答え合わせしておこうか。その様子だと最初のクイズは解けてるね。」

リクエモンは椅子に座ったまま片腕を上げる。
すると右の壁の上段がひっくり返り「最初の問題」が表示されたボードが現れる。
こういうとこは無駄に凝ってる…。タイプでいえば劇場型犯罪者というか。

「えーと、その問題は英国の児童文学者キップリングの詩からの引用だよね。

『私にはうそをつかない正直者のお手伝いさんが6人居るんだよ。
その者達のなまえは
「なに?(What)」さん、
「なぜ?(Why)」さん、
「いつ?(When)」さん、
「どこ?(Where)」さん、
「どんなふうに?(How)」さん、それから「だれ?(Who)」さんと言うんだよ。』

行動原則の5W1H。そこから解釈すると『なぜ?いつ?どこに?だれに?
どんなふうに?閉じ込められているのか理由を説明して下さい。』という風に読み解ける。」

まあ、それが最初から答えれたら世話はない。
「あたしはさっきまで事実さんと一緒に助かる方法を見つけようって意気こんでいたわけなんだけど。
なにか変だなという違和感があったのも事実なんだよねー。本来リーダーシップを発揮するべき
はずの事実さんがなんというか、とことん消極的だった。」

どころか発言も少なめ、同音異口かこちらの振った話の鸚鵡返ししかしてこない。

「確かに”本物の”真野事実ならもっと上手くやっただろうね。」
ぷぷぷと笑うリクエモン、なんか引っかかるものいいだな。

「例外なのは触手地獄話への誘導くらいだけど、思い返すとアレは、ネコさんの操作だよね。
『質問』でなく『補足』っていってたし」
「ハイそうです。あそこ、あんまりこまねちゃんのリアクションが面白かったので
彼そのまま変態キャラ路線でいかせようかとちょっと迷いました。」

オイお前は人様のキャラなんだと思ってるんだ。

「ただ、それが一番のヒントでもあったんだねー。
ゾルティアさんと別室で面通しなしなのに事実さんとは一緒の部屋だなんて明らかに不自然だよ。
そうなると色々と可能性が見えてくる。これが大会運営者ではなく対戦相手(じじつさん)の
魔人能力によって作りだされた幻覚じゃないかとかね。
で、基本に立ち返って自分が調べた大会選手のデータ―を検証していたら、私の記憶に色々
齟齬があることが判ってきた。特に偽原さんとは電話で事前会話しているし娘さんのことも
あったし、流石に対戦相手を真野さんとするには食い違いが大きくなってきた。
で”本人”に直接聞いてみたというわけ。」

まさか山彦現象が起こっているとは思わなかったけど。たぶん彼はあたしの正しい記憶なのだ。
一体どうなっているのかはちょっと興味がある。

「なるほど、でもなんで答えで偽原くんって指定しなかったの?確信あったみたいだけど」
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「そりゃ、あたしが気づかないくらい瓜二つの声。そんな上手く声真似できるのってあたしぐらいしか考えられない」


「「Who」に関しては自分ではなく犯人という可能性もあったけど、そう指定してしまうと私は
『二人のまま』の上、嘘つきということになって『部屋から出られない』可能性がある。
嘘つきが正直者になるには正解の中に混ぜて貰うしかとりあえず手はなさそうだよね。」

「おおむねOKです。
今回の主体は飽く迄、キミです。他の誰かじゃありません。それだけは忘れないでね。

じゃまとめ行きますね。

相手の言うことそのまま鵜呑みにするのが普通の人。
自分の見たことしか信用しないのが捜査官
自分で見たことすら疑ってかかる猜疑心の塊、そのくせ自身の才覚に絶対の自信を持って揺るがない、そういうダメダメな存在が名探偵。

君は自らが偽証している事実すら受け入れ、それを証明した。実に探偵としての資質を示したと言えるね。おめでとさん」

探偵を嘲るような自嘲するようなその声にあたしは―
自分の足で椅子から立ちあがると奴に人差し指を突き付ける。

「偽証――正確には私の欠けた記憶、そこが次の問題かな。
でも余裕かましてていいのかなネコさん、もう結構目星をつけられちゃったりして、このまま一気に行ちゃうかもよ?」

あたしの挑発に動じることなくリクエモンは悠然とうけて立った。

「そこは楽しいアトラクション多数用意してますのでご安心を。
それに色々”欠けた”のは君だけじゃない。今は激動の時期なのだよ。ぷぷぷ油断すると足元掬われるよ」

そうだよ

――
―――
ボクは君が立ちあがってくれるのを待っていたンダ。それでこそスクイガイがアルってモノだヨ。