最終話/彼方に対するは最後の敵

【前回までのあらすじ】
世界樹が破壊樹と呼ばれ人々を襲う世界。高橋ルカは地面から生えてきた破壊樹に自宅を押し上げられ、チェーンソー片手に破壊樹の中に突入した。破壊樹の主であるエルフのカグヤと出会ったルカは真の敵がパンダであると知り、破壊樹を乗っとったパンダから自宅を取り戻そうとするが既に自宅は破壊樹ごとパンダに完食され、ルカは一方的に殴り倒された。その後日本語を覚えたパンダはDJパンダに進化しルカと和解。大家の西野カナタが男を女装させるのが好きな自衛隊員だと告白したり、ルカが自分の親父がヒトラーとスターリンが合体して生まれた高橋ヒトリンでデスゲームで生計を立てている事を暴露して仲良くしているとその噂の親父が破壊樹型ロケットに乗って登場。人類に敵対するダークエルフと共産主義パンダを乗せたロケットが月に向かって飛び立つその瞬間、エルフにして忍者のカグヤが身代わりの術で親父と入れ替わりラスボスだか囚われのヒロインだかよく分からない存在となった。親父は地上に置いてかれた。

「はいはい、嘘乙」と思った皆さん、今回作者はまだボケていません。常軌を逸した上記のあらすじは全て真実なのです。これは酷い。特に第4話が酷い。バトンを受け取る方の身になれ。

「こんにちは!僕あまにです!では死ね!」

 私は前走者と思われる人物の家に行き、正々堂々自己紹介をしてからバズーカを撃ち込んだ。犯人宅は激しく燃え上がり、中からアフロヘアーになった彼が出てきた。

「熱いぃぃぃい!何をするのだゆとりの!」
「お前『第4話/アドルフ・ヒトラー』書いたやろ」
「違います。あれは私の文体を真似したあっちんさんです」
「嘘つけー!確かに破壊樹ルートが二つあってどっちもギャグだったからちょっと迷ったけど、こっちがお前の作品じゃー!」

 こういう時の私の勘は芸能人格付けチェックの時の鬼龍院翔ぐらい当たる。実際、私が断定すると彼は観念して罪を認めた。

「はいはいすみませんでした。でも、殴り込みに来るぐらいなら他のルートの続き書けばいいじゃん」
「いいや、私はお前の作品に惚れ込んたんだ。私が書く最終回はこれしかない!バズーカ撃ったのは教育的指導が必要と思ったからであり、個人的にはこういうのだいしゅき♡」
「ゆ、ゆとりの!」

 感極まって私に抱きついてきた彼は、そのまま私の手からバズーカを奪い顔面を狙い撃った。

「熱いぃいぃ!何をするかこの忍者マニア!」
「だってお前も次走者の事ガン無視した第1話書いたじゃねーか。お前もバズーカ撃たれるべきだ」
「うん、そうだね。ゴメン」

 アフロブラザーズここに誕生。彼と和解した私は帰宅し本編を書き始めた。

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最終話/彼方に対するは最後の敵

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 おれ達はカグヤを乗せたバンブーロケットが飛び去っていくのを眺めている事しか出来なかった。
 だってロケットの離陸時のジェット噴射の熱量凄いもん。

「みんな!ここにいたらロケット噴射で焼けてしまうよ!走って!」

 カナタさんがそう言ってくれなきゃ、今頃全員くたばっていただろう。カナタさんマジ天使。

「あー、皆無事か?カナタさん?」
「はーい」
「パンダ」
「YES!」
「....親父」
「…うん」

 全員の無事を確認した後、おれは元凶たる親父にテキサス・コンドルキック。

「グワー!な、何をするか馬鹿息子!」
「本当なら後100発殴りたいとこだが今は我慢してやる。おい糞親父、あのロケット止める方法教えろ」
「わからん。私が知っているのは私がラスボスであった場合のデスゲームの攻略法だ。今となってはそれが役に立つか…」
「あのー、親子でお話中申し訳ないんだけど、なんかあのロケット飛ぶの遅くない?」

 カナタさんに言われ、おれ達は空を見る。上空には上昇を続けるバンブーロケット。だが、確かに遅い。まだ地上から二百メートルも離れてないんしゃないか?

「なあ親父、あれ本当に月まで行けるのか?」
「本来なら私の世界線移動を動力に加算していたからなあ。今再計算する」

 数秒後、親父はとびきりの笑顔で答えを出した。

「ありゃあ月まで行けんぞ。パンダを積みすぎたせいで地球の重力を突破できん。後一時間で燃料が切れて落下。その時の衝撃で日本は滅びるな。ハッハッハ」

 テキサス・コンドルキック。

「息子の家庭内暴力本日二度目ー!」
「ふざけんな、マジふざけんな。得意の世界線移動で今すぐ何とかしろ」
「無理。あれ座標指定に時間かかり過ぎる。一時間じゃ無理」
「なら他には無いねかよ!さっき言いかけてたゲームクリアの方法とか」

 今の状況が親父の作り出したものなら、ロケットに追いつく方法は絶対に存在する。親父は糞野郎だが作るデスゲームはいつもフェアプレー精神に溢れていた。

「追いかける方法は確かに用意しておいた。そこのパンダにウンコをしてもらい、ウンコからバンブーロケットを製造し乗り込むというのが正規のシナリだ。だが、この方法も一時間では不可能だ」

 万策尽きたといった顔の親父。親父だけじゃない。おれも、ウンコさせられる予定だったパンダも迫る日本滅亡を思いため息をついていた。

「でも、他に方法は用意してないよね?じゃあやろう。アタシにいい考えがあります!」

 こんな時でもカナタさんだけは元気だった。何なのこの女神。惚れる。

「よしパンダ、そこでキバれ」
「だがBOY、さっきそれは無駄だと言われたろう」
「うるせえ。カナタさんに考えがあるんだよ。ですよね?」
「うんっ!時間ないんで指示を出しながら説明するね。パンダさんはとりあえずウンコ!」

 カナタさんに頼まれたパンダは頭をボリボリ掻いた後、四つん這いになりウンコを始めた。身体のどこに入ってたんだと言いたくなるぐらい大量のウンコがパックの尻から出てくる。その間にカナタさんは家に帰りゲームカセットを持って戻って来た。

「ロケット噴射で家はだいぶ燃えてしまったけど、これは無事!やったね!」
「それ続編が出なかったゲームですか?カナタさん、それをどうするんです?」
「ふっふーん。今からこの二本のゲームに入っているキャラクターを呼び出して助けてもらいます!」

 カナタさんはまだ酔っているんだろう。あるいは現実逃避をしているんだろう。いくら何でもゲームのキャラが現実に出てきて助けてくれるはずがない。念の為に親父に確認すると、出来る訳ねーべとばかりに首を振っていた。だが、どうせ死ぬならカナタさんの無邪気な顔を見ながら死ぬのも悪く無いかな。

「いんにゃらうんにゃらはゎ〜!」

ボボンボン!

「成功したよ!バニクエの主人公とサフDの主人公を呼び出したよ!」
「マジで!?」

 おれの目の前にはクリフトめいた格好のゲーマー少年と真面目そうな理系男子がいた。間違いなくあのゲームの主人公達。しかも装備を見るにレベルカンストしている。

「イテテ、また異世界かよ…あっ勇者おばさん!いや、勇者おばさんにしては若い!」
「ここは地上ですか?あ、マリーさん!いや違う。でも似ているなあ」

 どうやらカナタさんはムッチャモテる様だ。ゲーム主人公ですら「どこかで会った事ない?」と使い古されたナンパをするぐらいには。うん、さすがは俺のカナタさん。だが、カナタさんがこいつらを召喚したのは逆ハーレムを作る為ではない。

「呼び出して早速だけど、二人に二つほどお願いがあります。まずはあのウンコからロケットを作ってね!」
「はい、めちゃシコお姉さんの頼みならば!」
「ええ、貴方の頼みは聞いておいた方が良さそうだ」

 ゲーマーがウンコに手をかざすと瞬く間にウンコは破壊樹へと戻っていった。破壊樹のてっぺんにはおれの家まで再現されている。そして理系が無数の作業用ドローンを使って破壊樹に手を加えていく。

 なんという事でしょう、数分後には破壊樹はバンブーロケット2号機へと生まれ変わっていた。正に劇的ビフォーアフター。

「二人ともご苦労さま!さあ、あのエレベーターからルカくんの家に上がってロケットを発進させられるよ!」
「おれの家が操縦室ですか!かっけえ!」

 カナタさんに言われるがまま、おれはバンブーロケット2号機のエレベーターボタンを押し、扉が開くのを待つ。

 チーン

「すみません、降ります。どいてください」
「あ、はい、サーセン」

 エレベーターの中からポンコツっぽい婦警がマスコットと共に出てきた。うん、さかしまシリーズの主人公コンビだコレ。さかしまコンビはおれの横を通り過ぎるとカナタさんにペコリと頭を下げた。やっぱりお前らもカナタさんの召喚獣かよ。

「それじゃあルカくん行ってらっしゃい!」
「ハイ!行ってきます!ってカナタさんはロケット乗らないんですか?」
「一緒に行きたいんだけども、ホラ、あいつらを食い止めないと」

 カナタさんが指差した先では二人のエルフが大暴れしていた。

「罪を犯した事が無いヒューマンだけが俺に石を投げろやー!」
「ゲーへへへ、地獄で焼かれるがいい!」

 さっきニュースで見たキリストとヤハウェだ。もうこんな所まで来ていたのか。

「あたしは主人公軍団と一緒にあいつらを何とかするから、ロケットはルカくん達で!」

「分かりました!男、高橋ルカ必ず親父の野望を止めてみせます!帰ってきたら自宅デートの続きしましょう!」
「自宅は燃えちゃったからそれ無理。だから、ラブボ行こうね!」
「期待を超える返答!」

 ヨッシャー!やる気がムンムン湧いてきたじゃねえかっ!自宅の事やパンダの事が解決して正直おれのモチベーションは下がっていた。あんなロケットは政府がなんとかしてくれねーかなとか思っていた。

 だがっ!今のおれは人生最強!人というものは動機があればどこまでもいける!

「いくぞパンダ!道案内しろ親父!あんなロケット簡単に攻略して、帰ったらカナタさんにプロポーズする!ついでにカグヤも助ける」

 おれはパンダと親父を率いてエレベーターに乗り込む。すると、床が青く光りティリーンと音がした。

「あ、この床セーブポイントだ」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ここまでをセーブしますか?

→はい
 いいえ

セーブしました。
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 おれはエレベーターを降り自宅に辿り着く。
 コタツの上に置かれた『発進&1号機自動追跡ボタン』を押すと、テレビのスイッチが入り最短ルートと最適ルートが表示された。

「当然、最短ルートだオラァ!」

 おれ達を乗せた2号機は急発進し、あっという間に1号機に追いつき窓に突き刺さった。ダークエルフや共産主義パンダとの戦いをすっとばして、いきなりラスボスの部屋だ。

「ダイナミックお邪魔します!」
「きゃー!バカヒューマン!なんて事しやがりますか!こんな無茶苦茶な侵入したらロケットが落ちてしまうじゃないですか!」
「いや、おれ達の突入関係なく後三十分で地上に落ちるぞ」
「えっ、そうなんですか!?」

 やっぱり分かってなかったかコイツ。まあ、ロケットの中からじゃ異変に気づけないからな。

「うわーん!美人薄命とはこの事です!何か手はないんですか!」
「ロケットが落ちるのはお前が親父と入れ替わったせいだ」
「わかりました!ニンニン!」

 状況を理解したカグヤが印を結ぶと、カグヤと親父の位置と衣装が再度入れ替わった。つまり元に戻った。

「こ、これでもう大丈夫ですよね?」
「これに懲りたらもうノリでラスボスになったりするなよ。で、親父いけそうか?」
「ああ、2号機が刺さった事で崩れたバランスを修復し、パンダを東京湾に落として軽量化すれば墜落は免れる。よし、出来た。…さて、仕切り直そうか」

 玉座に偉そうにふんぞり返った親父は感情のこもらない目でおれを見る。あれは他人を見下してるとかじゃない、単に過労死寸前なだけだ。

「よくここまで来たな我が息子よ。ロケットの制御で私の体力は限界だが、それでもお前を倒す力は残っていr」
「パンダさん前足パンチ!」
「ぐわあああ!!!」

 パンダさん前足パンチで親父は瞬殺された。元々強かったパンダがヒップホップ習得した上にダイエットしたんだから、満身創痍の親父ではこうなって当然か。

「すまないなBOY、つい親子喧嘩に水を差しちまったyO!」
「いや、むしろよくやってくれた。今のおれはこいつとの決着とかに執着はない。とっとと帰ってカナタさんと結婚したいんだ」
「えー!私がヒロインじゃないんですか!?」

 その後、ドッキングした二つのロケットを着陸させたおれ達は無事カナタさんと合流。キリストとヤハウェは数の暴力で無事撃破された。元凶である親父が捕まった事で破壊樹騒動も徐々にだが収束している。破壊樹に関係していたエルフとパンダは全員逮捕されたらしい。カグヤとおれの家食ったパンダも捕まったが、事件解決に協力した事もありすぐに釈放された。

 そしておれは今、カナタさんとの初夜を迎えようとしている!

「市役所へ色々申請してたから後回しになったけど、約束通りのラブボデートだよルカくん!嬉しい?ねえ嬉しい?」
「はい!カグヤ達も無事だし、事件がきっかけでおれも芸術家として有名になれたし、心置きなく今日はヤりまくりましょう!」

 この世界は親父の作ったゲームだったのかもしれない。だが、おれは親父に勝利し幸せを掴み取る事ができた。ぶっちゃけ主人公らしい事はほとんどしてなくて、親父の自爆とカナタさんのおかげだと思う。だが、それでも俺は勝ったんだ。今はこの幸せを噛み締めよう。

「それじゃあまずはこのピンポン玉をルカくんのお尻に入れてみよう!」
「ンアーっっっっッ!!!」

 おれの絶叫が夜空に響き渡った。






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おめでとうございます!
これでこのゲームはクリアです!
最後までプレイ感謝いたします!
お疲れ様でした!
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このルートはこれで終了です。
残された謎?
それは他のルートで明らかに
なるでしょう。
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この世界はこれで終わった方が
幸せなんです。
貴方にとってもね。
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この先DANGEROS!
命の保証無し!
ここで読み終わる事を推奨!
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それでは最終セーブから
再スタートします。
地獄へようこそ。
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 操縦室となった自宅に到着したおれはコタツに設置された発進ボタンを押す。するとテレビに最短ルートと最適ルートが表示された。

「当然最短…いやまて」

 おれは最短ルートを選ぼうとして寸前で考え直す。こういう時、親父の作ったゲームでは最短ルートは罠だ。トゥルーエンドのフラグを逃してしまい一見幸せに見えるバッドエンド一直線となるパターンだ。

「最適ルートだ!」
「BOY、時間は大丈夫か!?」
「焦るなよパンダ。親父の顔を見ろ」

 残り時間が三十分を切っているのに、親父に焦りは無い。いや、寧ろおれが遠回りを選んだ事でホッとしている様にも見える。

「これは親父のゲームをやり込んだおれの勘だ。最短ルートを選んだら何か大事なものを見落としてしまう」
「オッケイ、信じるぜBOY。道中の敵はパンダさんに任せな!」

 最適ルートを選択するとバンブーロケット2号機は発進し瞬く間に1号機に追いついた。そして2号機のてっぺん、すなわち俺の家の屋根からワイヤーが射出されて1号機の壁に引っかかる。

「よし!このワイヤーを伝って1号機に移れ!」
「だがどうやって中に入るんだYO!」
「お前が外壁食えばいい」
「HAHAHA!そりゃそうだ!」

 パンダが食い散らかした穴から侵入したら当然ながら敵に見つかった。元ラスボスの親父と進化したパンダがいてもこのロケット内の全ての敵を倒すのは無理だろう。

 だか、戦いは起こらなかった。おれ達側のパンダが壁を食べてるのを見て、共産主義パンダ達がアイツだけずるいと言わんばかりに壁や床を食い始めたのだ。ダークエルフ達は共産主義パンダを止めるのに必死だったが、最終的には彼らも無言で壁と床を食い始めた。

「よし、ここはパンダに任せておれ達は先を急ごう」
「分かってると思うが、最上階が私の部屋だ。そこに行きあのエルフ娘から権限を取り戻せはロケットは墜落しない」

 ガクンとロケット全体が揺れた。まだ親父の計算したタイムリミットまで時間があるのに一体何が起こった!

「ポリポリポリポリポリポリポリポリ」
「ポリポリポリポリポリポリポリポリ」
「ポリポリポリポリポリポリポリポリ」

 そうか、お前らが原因か。おれは冷静に2号機へ戻り1号機との接続を切り離した。そして1号機に体当たり。ほとんど残骸と化していた1号機は2号機の体当たりを耐えられるはずもなく、バラバラになり半分は東京湾に落ち、半分は地上に降り注いだ。

「こうなるなら最短ルートにしとけば良かったかなあ」

 後悔がおれを襲う。1号機の残骸は日本を滅ぼすには程遠い規模の衝撃し与えなかった。質量が低下したのに加え、燃料やエンジン等の爆発物までパンダ達が食ってしまったからだろう。カグヤについでも心配ない。バラバラになる1号機からパラシュートで脱出するのが確認できた。たくましい奴だ。しかし、落下点にいた人物には1号機の破片は致命的だ。具体的に言うとカナタさんやキリストがやばい。キリストはどうでもいいが、カナタさんが心配になったおれは2号機を着陸させ大急ぎで現場に向かう。

「カナタさーん!カナタさーん!」

 辺りに人の気配は無い。住民のほとんどはキリスト警報のニュースで避難済みなんだろう。つまり、カナタさんに何かあったら助けられるのはおれしかいないって事だ。

「おーい、アタシはここだよー」
「カナタすゎん!」

 カナタさんはいた。迷彩服はボロボロだけど本人に怪我はなさそうだ。

「やー、まいったまいった。キリストとヤハウェを倒したらいきなり瓦礫が降ってくるんだもん!主人公軍団が盾になってくれなきゃ、やばたにえんだったよ!」
「すみません、おれのミスでカナタさんを危険に」
「気にしないで!お互い無事ならそれでよし!」

 ガッシリとおれに抱きつくカナタさん。相変わらず酒臭い。さてはおれと別れた後にまた飲んだな。こんな一大事に酒を飲むなんてまるで…、




 そう、まるで親父みたいた。

「うわああああ!」

 カナタさんと親父がダブり反射的にカナタさんを突き飛ばしてしまった。倒れた拍子に迷彩服のズボンが落ちて下着が丸見えになった。本来なら嬉しいんだか、今はそれどころではない。

「んもぉ、突然何するのよ」
「す、すみません。何かカナタさんの酒の臭いが親父の飲んでる酒と似ていて」
「何よ、アタシがルカくんのお父さんだっていうの?」
「いや、そんなはずないですよね。だって親父はさっきまで俺と一緒に、あ、あれ?」

 おれは気づいてしまった。さっきまで一緒にいた親父からは酒の臭いが一切しなかった。親父は大事な仕事の時は大五郎を手放せなかったはずだ。

「ルカくんどうしたの?」
「ちょっと待って下さい。頭の中整理します」

 おれの親父は超一流のデスゲームクリエイターで、大五郎愛好家で、おれを女装させようとする奴た。

おれの親父だと言っていたあいつは簡単にカグヤに足元をすくわれ、仕事中に酒は飲まず、おれが女物を着ている事にノーリアクションだった。

 カナタさんはこの状況を見事乗り切り、口から大五郎の臭いを漂わせ、おれを女装させた。

 まさか、いや、そんなはずがない。
 もし、おれの考えが当たっていたら、そんなの最悪じゃないか!だが親父はバニーガールクエストの製作者だ、最悪のオチは十分あり得る!

「か、カナタさんは大五郎好きなんですか?」
「そうだよ。ルカくんお酒詳しいんだね」

 恐る恐る探りを入れながら、カナタさんの全身をチェックする。よく見るとカナタさんは女性にしては顔や手足が大きい。おれを掴んだ時の腕力も相当だった。しかし、それだけで断定する事はできない。カナタさんは女だ。そうだと思いたい。

『いいかルカ、デスゲームの黒幕というのはヒロインみたいな顔して味方側に混じっているんだ。それを見破ってこそ一流のプレイヤーだ』

 こんな時に親父の言葉を思い出してしまう。
 ちくしょう、やってやる!ここで確認しなきゃ後悔するだけだ!

「南無三!」

 おれはヌメヌメタイツを半分脱ぎ、カナタさんに尻を向けて喘ぎ声を出す。

「ハァハア、女装最高!おれ目覚めちゃいました!」
「ど、どうしたのルカくん!ジュルリ」

 おれの痴態を心配するカナタさん。だが口からヨダレを垂らし、右手で己の股間をいじりだしていた。
 よし、もう一押しだ!

「女装がこんなに気持ちいいなんて知らなかった!いやーん!誰かおれのアナルにチンチンぶち込んでーん!」
「チンチンなら、チンチンならここにあるわ!もう我慢できないオカマっ!」

 カナタさんがパンツをおろした!
 露わになった股間は一見女性のそれだったが、徐々に膨らみながら割れ目が歪んでいき、遂にはぶっといチンチンが飛び出した!間違いない、カナタさんは男だ!つーかおれの親父だ!

「ようやく正体を現したな糞親父、ここでぶっ殺してやオロロロロロロロロロロロ」

 駄目だ!気持ち悪すぎて戦うどころじやない!
 これまでのカナタさんとのあれこれが全部親父に塗り替えられてあまりのショックに盛大ににリバース。
 そんな俺を見て親父はチンチンをおれの無防備なアナルにねじ込む!

「ンアーっっっ!」

 瓦礫だらけの荒れ地におれの叫び声が響き渡った。
 親父がものすごいスピードで腰を振り続ける。
 くそ、くそ、くそ、おれはどうあがいても親父から逃げる事はできないのか!

「んほぁー、本当は正体を隠したままラブホでセックスしたかったけど、こういうのもいいわね!ああ、アタシに騙された怒りと悲しみがチンチンを通して伝わってくるわぁ!」

 パンパンパンパンパンパンパンパン

 こいつ殺したい、でも身体に力が入らない。
 って何言い訳してるんだおれ!

 パンパンパンパンパンパンパンパン

 右手を上げて裏拳を叩き込むんだよ!パンパン
 そんなん効くわけねえよ、パンパン転校生だぞ。
 …それでパンパンもやる!やられっぱパンパンなしでいられるか!

 パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン

「いい加減にしやがれえー!!!」

 何百回と尻を突かれた時、おれの裏拳が親父の胴体に触れる。こんな事しかできないが、それでもおれはやってやった。

 肉を切った感触がした。続いて重いものが地面に落ちる音がした。そして、親父の腰振りが止まっていた。

 何が起こったのか、尻の痛みに耐えて振り返り確認する。
 親父の上半身が地面に転がっていた。親父の下半身は変わらずおれのアナルと繋がっている。
 おれの裏拳で真っ二つになったっていうのか?恐る恐る自分の右手を確認するとチェーンソーがあった。おれの愛用しているチェーンソーではない。あれは近くの地面に転がっている。おれの右手がチェーンソーそのものになっていて、親父の血やウンコがべっとりと付いていた。

「まさかこうなるなんてね、まあいいわ。この世界のアタシはここまで。楽しかったわルカくん、また別のルートで会えたらいいわね」

 そう言って親父の上半身は光に包まれ消滅した。続いて下半身も光に包まれ消えていく。親父のチンチンの感触がなくなり、おれのアナルから熱が引いていく。

「いや、意味わかんねえよ…」

 おれは女装した上に育ての親にアナルを貫かれまくりアナルがぽっかり空いたという世間的に見て最悪の状態で気を失った。

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真・最終話/カナタに態するは最後の敵

ジ・エンド

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【各キャラクターのその後】

  • DJパンダさん
加害者ではあるが日本を救ったMVPでもある彼は逮捕されるも、東京中の人々が彼を救いたいと署名した事もあり、一年後に出所。語学力を活かし共産主義パンダとの交渉役になる。言葉を教えてくれた恩人や当時の関係者とは今でも交流が続いている。

  • カー・グヤァ
パンダさんが日本を救ったMVPなら、彼女は世界を救ったMVP。やった事は決して褒められた事ではないが、あの身代わりの術が無ければ月面ナチスとの長期決戦は避けられなかっただろう。パラシュートで脱出後、ゲロに沈んでアナル全開にしたルカを見つけ病院に担ぎこんだ。パンダさんとルカの弁護のおかげで彼女は助かったが、他の捕まったエルフが軒並み終身刑になったのを見て自分の罪を自覚し、残りの人生を破壊樹対策に捧げる事にした。
実はヒトリンによって用意されたキャラクターであり、ランダム性の高い行動で物語をひっかき回す役割(ヨシコや乱入者のポジ)を与えられていたが本人にその自覚はない。

  • 西野カナタ
事件が一段落した後、市役所のトイレで発見される。本人曰く、古いゲームはしないし大五郎も飲まないし自衛隊員じゃないしルカの事は正直ウザいと思っているとの事。要するにパンダさんに負けたルカが気絶してから登場したカナタは全部偽物なのだ。嘘だと思うならパンダさん戦前後のカナタを比較してみよう。色々違いに気づくはずた。その後、ルカと再会した際にオカマと罵られながら股間を弄られ遂に我慢の限界を迎えルカをボコボコにする。なんだよ、本物も強いじゃないか。真ルートを通らなかった場合はヒトリンに完全に立場を奪われ、誰にも気づかれる事なく殺害される。

  • 偽親父
本名はハロルド。ヒトリンの配下であり、彼が女装してヒロインの演技をしている時にボスキャラを演じるのが仕事。事件後逮捕されるも、世界線移動であっさり脱獄。ヒトリンと合流し今日もどこかで表ボス。
バニクエではエロモンド本田の店員、サフランDでは地上に至る道を阻む者として、さかしまシリーズではいくつかのルートで宿敵を演じている。お疲れ様です。

  • 高橋ヒトリン
女装と大五郎とデスゲームをこよなく愛し他人に強制する困った人。元々はより上位の世界を目指し試行錯誤していた転校生だったが、いくら世界をいじくり回してもルートが根の様に分かれるだけなので最近は趣味に生きている。色んな世界でデスゲームを開き、自分はヒロインのフリして参加。正体を見破られなければ自分の勝ちという俺ルールに従い行動している。ハロルドは泣いていい。
ただ、本人にも罪悪感は残っており、世界線によっては他の自分と対立し正義の為に戦うヒトリンや自分の罪に耐えられず死にたがっているヒトリンも確認されている。

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エピローグ

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「ふん!はあ!どりゃさですわ!」
「なんですかそのへっぴり腰は!そんなんでシェルターバンブーが再び現れた時に戦えると思ってるんですか!」

 私がお父様に掘られてから一年、病院で目覚めた私はお見舞に来てくれたカナタさん(本物)をお父様の女装と勘違いしておパンティに手を突っ込んでしまい怒らせてしまい恋が完全に終わってしまいました。
 男として生きる自信を完全に失った私は女芸術家として生きていく事にしたのですわ。

「おりゃさ!どっせい!どんどこしょですわ!」
「だからっ、何でひと振りごとにパンツ見せるんですか!やる気あるんですかカマヒューマン!パンダさんも何か言ってやって下さいよ!」
「だか、一年前のBOYより確実に強くなっているな。来年にはパンダさんも勝てなくなるかもしれないYO!」

 カグヤさんとパンダさんは事件の後、破壊樹事件の共犯として逮捕されましたが、私の弁護や彼らの活躍が日本を救った事を知った人々の署名により釈放されました。今のお二人はお父様の軍の残党への対策をしながら時々こうやって私の訓練の相手をしてくれますの。
 カグヤさんは正直口ばかりで戦闘訓練の役には立ちませんが彼女から聞けるエルフの知識はお父様の追跡にきっと必要になりますわ。

 そう、私はお父様を完全にぶち殺す為に訓練を重ねてますの。あのお父様があれで本当に死んだとは思えませんし、仮に死んでいたとしても他の世界線のお父様が攻めて来るかもしれませんわ。その時に備え強くならないといけませんわ。

「ところでBOY、その右手はあれ以来変形しないのかい?」
「残念ながらあれ以来一度もですわ」

 私の右手は病院で目覚めた時には元に戻っていましたわ。発動に厳しい条件がある魔人能力だと思うのですけど、自在に出せる様になるまでは以前同様に本物のチェーンソーで戦うしかありませんわ。

「パンダさん、そろそろお昼にしましょう!私、カナタさんにお弁当作って貰ってきたんです!」

 カグヤさんが竹製の弁当箱を二つ取り出し、パンダさんと二人仲良く箱ごと食べ始めましたわ。

「あのー、私の分はないのですわ?」
「ある訳ないでしょカマヒューマン。あんたどんだけカナタさんに嫌われてると思ってるんですか」
「くすん、悲しいですわ。いいもん、支援者のオジサマ達とご飯食べにいきますわ」

 私はチェーンソーを使う女性芸術家として人気を得て、今では多数の支援者を得る事ができましたわ。まあ、大半の支援者は私の作品ではなく身体目当てですけど。でもそれでも構いませんわ。お父様に掘られた時程ではありませんが、彼らとのセックスはとても興奮する。お父様譲りの女装術陥没チンチンで女の股間を作り、妊娠したら作品制作ができなくなるからと言ってアナルでチンチンを受け入れる。いつ男だとバレるかのスリルを味わいながらのセックスは最高なのですわ。この点においてはお父様に感謝ですわね。まあ、再会したら殺しますけど。

「もしもし、私ですわ、ルカですわ。これからお食事一緒にどうですわ?その後ホテルで、ええ」

 無事支援者のオジサマとの約束を得た私は、カグヤさんとパンダさんに一礼してからその場をさりますわ。

「といつ訳で私は高級感あふれるフレンチを食べに行くのでご機嫌よう。オーホホホ、また訓練ヨロシクですわ〜」

 腰を振りスカートを舞いあげおパンティを見せつけながら私はその場を去るのでした。



  • 高橋ルカ
愛する女性に化けた親父に掘られた事と、その愛する女性から拒絶された事で女装者として覚醒。ヒトリンに対する感情もヤンデレ的なものに変化した。
現在は女性芸術家として金と権力を集め、パンダさんやカグヤとの交流で戦闘技術を磨きながらヒトリンの情報を集めている。今の所は世間からは性別はバレてないが、支援者とのセックスでアナルしか使わせない事や発売している写真集のパンチラ写真の中に股間が膨らんでいるものが混じっていたりして、本当に女なのか疑いを持たれ始めている。
ヒトリン戦で目覚めた魔人能力は転校生限定即死能力。転校生にしか使えないので普段は使用できず、ルカ本人も能力を把握しきれていない。
他のルートの主人公同様、女の頼みは断れないヒーロー体質な奴だったはずなのに、こうなったのは全部アドルフ・ヒトラーで女装の伏線作った前走者のせいなんだ。



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最終更新:2020年08月23日 01:12