「……おい、まだ向かわないのか?」
あなたが件の洞穴の入口を開けてから、それなりの時間が経った。
それでも尚一向に入ろうとしないあなたを、スプリング・デイが咎める。
彼女には、あなたを洞穴に急がせる理由があった。
が――時既に遅し。
「ヒャハハハッ!
こんな所に居やがったかァ!!」
拠点に大きな声が響く。
振り向くとそこには、全身に犬のような毛が生えた少女がナイフを構え立っている。
「ふむ、やはり出たか……駄犬め」
スプリング・デイは、落ち着いた――と言うより、既に予見していたかのような――様子で応じた。
その様子が気に入らなかったのか、現れた少女は更に語気を強める。
「あァ!? このファング様に大層な態度取ッてくれるじゃねェか!!」
「フン、弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ」
スプリング・デイの尊大な態度を受け、ファングと名乗った少女は早くも沸点に達した。
「Grrrrr!! 許せねェーッ! くそッ!
このファング様を! ファング・ザ・ハウンドドッグ様を愚弄しやがってーッ!!」
ファング・ザ・ハウンドドッグ。それが彼女の名らしい。
「騒がしい奴は苦手なんだ。 ……おい、先に簡単にヤツの説明をしておく」
この状況でも、スプリング・デイは落ち着いた様子であなたに語りかける。
「奴は【レイダー】 ……私達【メイデン】と似て非なるものだ。
奴らは複数の人の魂から成る擬似生命体で、その性質ゆえ身体の維持のために人間の魂を欲する。
つまり――ヤツに対して遠慮は無用と言う事だ。 例え姿がどのようなものであったとしてもな」
スプリング・デイはそこまで言うと、するどい爪を出し構えを取る。
「何にせよ、ここは何とか――凌ぐぞ!」
「アォォーンッ!!!」
研ぎ澄まされた牙と凶刃が、あなた達に襲いかかった!
最終更新:2016年07月13日 09:39