――人型のモノが“枯れていく”。
あなたの目の前に居たゾンビ達は、立ったまま骨になっていった。
筋肉の支えを失った骨は、いとも簡単に崩れ落ちバラ撒かれる。
そのバラ撒かれた白骨達の中央に、片足で立つ少女が居た。
「足りないなあ、足りないなあ」
少女は少しの間光のない目で虚空を見つめていたが、
ふいに油を差し忘れたブリキの人形のようなぎこちない動きであなたの方を向く。
「――お腹、空いたなァー……」
錆びついた歯車が砕け、歯止めが効かなくなって異常な回転を見せる。
そんな光景が浮かんでくるような動きだった。
目の前の少女は文字通り“一足飛び”にあなたの方に跳び、
手に持った不釣り合いな大鎌を、まるでテニスのラケットか何かのように軽々と振りぬいた。
一撃で、首が飛ぶ。
「……はァー……っ」
ただし、あなたの首ではなく――あなたの背後に居た、大きなゾンビの首だ。
首を失い倒れ伏したゾンビもまた、先程のものと同じように枯れ果ててしまう。
そして少しの間を置いて、再び少女はあなたを見る。
「あなたは……新鮮だから。 食べちゃだめ……食べたい。 少しだけ。 ダメ?」
あなたの動揺をよそに、単語帳をめくりながら読み上げるような、
繋がっているのか繋がっていないのか曖昧な言い方で質問が飛んで来た。
もしあなたが許可するなら、少女はあなたから少しだけ生命力を奪い満足するだろう。
しないなら、残念そうにするが諦めてくれるだろう。
「――スケアクロウ。 ねえ、付いて行っていい?」
スケアクロウ。それが彼女の名前だろうか。
いずれにせよ、メイデンだからと言ってこんな場所に少女を一人置き去りにはできないだろう。
最終更新:2016年07月25日 17:22