「……クライアント様? お話、ちゃんと聞いて頂けておりますか?」
その声でふと我に返る。
今目の前に居るのは、メイデン――マウンテン・ノーブルという名のメイデンだ。
通称マーブル。 他のメイデンと違い、厳密にはあなたのメイデンではない。
かつてゾンビ達に対抗する為、人工的なメイデンを製造していた会社である
LD(ロスト・ドリーム)社と並び、今日において「二大企業」と称される企業である
「黒猫商会」から派遣されたメイデンなのだ。
「規約についてご説明しましたが、ご理解頂けてます……?」
規約。
そう、黒猫商会のシステムやマーブルを利用するにあたって、
あれやこれやと規約を説明されたのだった。
「……簡単に言うと、悪評を受けて当社の不利益になるような事はしないでください、と言う事です」
マーブルが穏やかな顔で言う。
表情は柔らかいが、恐らく理解できていないの判断されたということだろう。
そこは流石に社長秘書としてやってきただけあってシビアである。
「それでは、クライアント様。今後共どうぞよしなに。」
何にせよ、力強い味方になってくれるだろう。
――“規約”を守っているうちは。
最終更新:2016年07月25日 23:17