「……思ったよりやるじゃあないか」
スプリング・デイは、数度攻撃を加えて尚健在な敵を見据えて言う。
あなたは道中薄々気付いていたが、人ならざる力を持つとはいえ彼女の本分は戦闘ではない。
明らかに戦闘重視の力を持つであろうファングには、やはり押し負けてしまうのか。
「その程度かァ? ま、お前にゃ興味ねェ…… メインディッシュを頂くぜェ!」
「……待て、やめろっ……!」
ファングはあなたの方へ向かって、障害物を足がかりに高く飛び上がる。
スプリング・デイが阻止しようとするが、手が届かない。
このままでは―― あなたは死を覚悟する。
が、しかし。 その時は訪れない。
予想していたよりも長い滞空時間の後――
「アスラ……バスターっ!!」
あなたに刃を向けるファングの代わりに、
始めて聞く少女の声と共に、“それ”が落ちてきた。
「ウギャァァァーッ!!」
悲鳴。轟音。砂煙。 それらが収まり、あなたは始めて状況を認識する。
先程まであなたに襲いかかろうとしていたファングは、天地逆になっていた。180度。
両脚は股が裂けているのではないかと言う程開いていて、“4本の腕”にがっしり掴まれている。
どうやら首も折れているようで、白目を剥き口からは血を履いていた。
恐らくもう動く事はないだろうと直感で理解できる。
そんなファングを抱え上げるようにして捕まえていたのは、
毛先が黒くなった金髪の少女。片目は毛で隠れている。
目を引くのは、腕。 2本ではない。 その3倍――つまり6本。
「アスラ……貴様、いつからそこに……」
「あー? いやまあ、最初っからー。 天井に張り付いてたんだよ」
スプリング・デイは、6本腕の少女を“アスラ”と呼ぶ。
“アスラ”と呼ばれた少女は、技の体勢を維持したまま気さくに返す。
どうやら、お互いに顔見知りのようだ。
「まあいい…… ん、どうやら活動停止したようだな」
スプリング・デイがそう言うより後か先か、
ファングの身体は色を失い、砂のように散っていく。
後には彼女が身につけていたドッグタグとナイフ、そしていくつかのビー玉のようなものだけが残された。
「おっし、んじゃあ帰りますかー! な、“ご主人”!」
どうやら、このアスラと言う少女もメイデンらしい。
そして――やはり拒否権はなさそうだ。
YOU WIN!
ファング・ザ・ハウンドドッグを倒しました!
また、「暗く冷たい洞穴」にはこれ以降入れなくなります。
追加イベント
条件:スプリング・デイの残りHPが20以下
「おい、アスラ。私を担いで行け」
戦いの中で負傷していたスプリング・デイは、頼むにしては尊大な態度で言う。
「おー! いいぜいいぜっ!」
そんな態度に対し、アスラは気前よく引き受ける。
スプリング・デイに近づき、6本の腕で持ち上げ――
「……お、おいっ!? 誰が技を掛けろ言った!?」
――先程ファングに掛けた技と同じ体勢で担ぐ。
「担いでるだけだぜ? ジャンプしなきゃ大丈夫だよー」
「そ、そういう問題じゃ……は、離せぇっ」
スプリング・デイは、普段は聞けないような弱々しい声を出す。
背中側に居るあなたに顔を見られないのが、彼女にとってせめてもの幸いかもしれない。
何にせよ、尊大な態度をとりがちな彼女にはいい薬になっただろう。
最終更新:2016年07月08日 20:24