「ここが新しいフィールドね」
「寒いよう…」
レナとバーバラは身を寄せ合う。
どうやら森の中のようだ。樹の上にも足元にも冷たい白い物が積もっている。
「これが雪っていうのね。はじめてみたわ」
「えっ、そうなんだ。お姉ちゃんのいた世界は雪は降らなかったの?」
「ええ。暖かい所だったから…。小さな頃、雪の絵本を読んでもらって姉さんと一緒にいつか見にいこうね、って言ってたわ…」
レナは静かに幼い日の思い出に目を伏せる。
そして、いつも自分を安心させてくれる大好きな姉の綺麗な笑顔を。
「お姉ちゃん…」
「あ、ごめんなさいね。もう大丈夫よ。そういえば
イリーナさん、どうしたかしら」
「うーん。また会えるといいんだけどね。誰か会った人がいるかもしれないから、そうしたら聞いてみようよ!」
「ええ、そうね。でも気をつけて。今は決して安心できる人ばかりではないから…」
レナは言い聞かせるようにバーバラに念を押した。
その時。
「あ、あそこに誰かいるよ!」
森の木々の間から薄緑色の髪の毛の少年の姿が見えた。
おそらくバーバラよりも少し年上だろう。
少年は必死に何かを探すかのようにさまよっている。
「ねえねえー!そこのあなたー!!」
レナが止める間もなくバーバラは少年の元へ走りよる。
少年は驚いたようにバーバラを振りかえったがそれが
まだ子供だと気付きいくらか安心した表情になった。
レナもあとから追いかけて少年に尋ねた。
「あなた、一人?名前は?」
「う、うん…僕はソロ…」
2人に殺意や闘気がないことを察し少年はおどおどと口を開いた。
「ソロっていうの?あたしはバーバラ!このレナお姉ちゃんと一緒に、お姉ちゃんのお姉ちゃんをさがしてるの」
バーバラが元気に自己紹介し、それにあわせてレナも頷く。
「ねえ、君達は信用してもいいよね?僕を裏切らないよね…?」
2人の笑顔をソロは泣き出しそうな目で見上げた。
「ところで君達の探してるお姉さんって、どんな人?」
もしかしたらそれが
ティファかもしれないと一瞬ソロの目が光った。
「僕も女の人を探してるんだ!もしかしたらその人かも…」
「え、ええ。髪の長い…」
レナがそこまで言っただけで間髪入れずソロが問い返す。
「色は!?」
「綺麗な紫色の…」
それを聞いてソロの顔が曇った。ソロの記憶するティファの髪は黒色だった。
「違う人みたいだね。残念だよ」
すかさずバーバラが言った。
「あ、そうだ。あたし達もう一人人を探してるんだけど、知ってるかな?」
「それは?」
「あのね、こう短い金髪でスーツを着たお姉ちゃんなんだけど…」
ソロの頭の中をイリーナの姿がよぎる。
そして目を覚ます殺意。狂気…
「お前達もか…」
その声は先ほどと打って変わって低かった。
レナとバーバラは背筋に寒気を走らせる。
「お前達も
デスピサロの仲間だったんだな!?また僕を裏切るんだな!!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!なんであたし達が裏切り者なの!?」
「バーバラちゃん、この子変だわ!逃げましょう」
とっさにレナがバーバラの手を握って走る体制に入る。
「変?僕が?変なのはお前達だろう?あの女の仲間なんだろう!?」
「こ、怖いよう…」
一刻も早く走り去ろうとするがバーバラの足がすくんでなかなか立ちあがれない。
「もう嫌だ…せっかく信じられると思ったのに…みんな僕を裏切るんだ…みんな、みんな…」
ソロが呟きながら鞘から
エンハンスソードを抜いた。
危険を察し逃げることを諦めたレナは
メイジマッシャーをソロめがけて投げ付けた。
しかし、手に持った長剣で跳ね返されてしまう。
「バーバラちゃん、早く逃げて!!」
武器を失ったレナは観念した。が、この少女だけでも生かそうと大声で叫ぶ。
「お姉ちゃん!!」
バーバラはなんとか立ちあがり叫ぶがもう遅い。
次の瞬間、レナの腹から背にかけて長い剣が突き刺さっていた。
雪の上のその身体がどさりと倒れる。
「に…げて…」
バーバラに声をかけるのがせいいっぱいだった。
「姉さん、
バッツ…ごめんなさい…私、もう…」
どくどくと赤い血が流れ白い雪を染めていく。
レナの薄れ行く意識の中では数々の人々の姿が浮かんでいた。
勇ましい父。
優しい母。
そしてかつての戦友、ガラフ。ゼザ、ケルガー。
ふっとその中かから白い手が差し伸べられる。
レナは暖かいその手に自分の手を重ねその人物の顔を見る。
穏やかに微笑むその人物は紛れも無く最愛の姉の姿だった。
「レナ…」
エメラルドの宝石のような4つの瞳が見つめ合う。
2人はお互いに手を伸ばし、抱き合った。
「ねえ…さ…ん…」
それがレナの最後の言葉だった。
「お姉ちゃん!!」
ソロは完全に事切れたレナの腹から剣を抜くとバーバラに向き直る。
「こ、こないでよ!!化け物!!!! 」
バーバラは足元の雪を掴んで投げつけるのがせいいっぱいだった。
ソロは血の滴る剣をバーバラに容赦なく振り下ろそうとする。
「もう嫌だよおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
その瞬間バーバラの身体からものすごい魔力が放たれた。
ともすれば大爆発をおこしそうな勢いの魔力だ。
「いやーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
ソロはその魔力に当てられ、一瞬目を瞑る。
次に目を開けたとき、そこに少女の姿はなかった。
「しまった!逃げられた!?」
ソロは走り出した。
もしもあの少女に自分のことを触れまわられたら、そしてそれがティファの耳に入ったら…
想像すると寒気がする。とにかくあの少女だけは殺さなければならない。
ふと横に倒れたレナの死体が目に入る。
一体どれだけの人物が自分のせいで死んでいったのだろう。
恐ろしいほどの罪悪感がソロを支配せんとする。
「なんだってみんな僕を…みんなあいつが、デスピサロが悪いんだ…」
「僕は悪くない…僕は悪くないぞ…」
ソロは再び森の中をさまよいはじめた。
【ソロ 所持品:エンハンスソード
スーツケース核爆弾 イリーナの社員証
第一行動方針:バーバラを殺す(最優先)
最終行動方針:デスピサロを倒す】
【現在位置:ロンダルキア南の森】
【バーバラ 所持品:
果物ナイフ ホイミンの核
第一行動方針:ソロから逃げる(森の中を逃走中)
第二行動方針:仲間の捜索】
【現在位置:ロンダルキア南の森】
※核には記憶とかいろいろ詰まってますが、そこから肉体は再生できません
【レナ 死亡】
【残り 61人】
最終更新:2011年07月17日 22:29