岩山を左手に見、何一つさえぎるものの無い砂の海の中。
その小さな身体を必死で動かし、なんとか逃れようとする
ルーキー、
追跡者の気配は、多少遠くなっているとはいえ、未だに距離を置いてこちらへと向かっている。
砂塵の中、姿こそ見えないが、ルーキーは自分の背後の気配を確実に捉えていた。
(姿を消してついてきている…どうしよう)
戦うか…だがそれは最後の手段だ、今は逃げられるだけ逃げよう。
砂漠を西に抜けると、また再び雪をかぶった山岳地帯に入る、雪をかき分け必死で進んでいくと、
前方に人影が見える、緑の髪の女性だ。
「助け…」
ルーキーは全速力でその人影の方へと走る、そしてあと10メートルほどの距離になったその時、
緑の髪の少女の横から、とんがりヘアの少年が彼女をかばうように飛び出し、
ルーキーへと体当たりを仕掛ける。
「話を聞いて!ぼくは…」
しかしその少年は、ルーキーの言葉には耳を貸すことなく呪文を紡ぎ出す。
「メラ!」
避ける間もなく、ルーキーの身体は炎に包まれる。
「ちょ、ちょっと話を聞いてよ」
無論メラ程度、今のルーキーなら充分が耐えることは出来るが、
無情にも少年の抜き放った刃が、弁解しようとしていたルーキーの身体を両断する、
まさに問答無用の一撃だった。
ルーキーの不運は、北に逃げてしまったことだった、南に向かい
テリーやソロたちに出会えれば、
まだ助かる
可能性はあっただろう。
ある程度モンスターたちとの共存が可能だったソロやテリー、
クーパーたちの時代と違い、
アルスの生きていた時代は全てのモンスターが等しく脅威であった時代、
彼にとってはモンスターは全て敵という概念でしか存在しないし、それ以外の選択の余地もないのである。
ともかくそんな事情を今のルーキーが理解できるはずもなく。
「ぼくは…ぼくは…悪いスライムなんかじゃ…ないのにぃ~~」
そんな嘆きを声に出す事すら出来ず、彼は真っ二つになり、息絶えたのであった。
当のアルスは当然のことをしたとばかりに、けろりとしている。
突然の事態に対処できず、目を白黒させている
ティナに微笑みながら説明までしている。
「魔物がティナさんを襲おうとしていたから、でも大丈夫、倒したから」
それからしばらくして座を離れていた
エドガーが戻ってくるが、
彼は手にしたレミラーマの杖を見ながら、いぶかしげな表情をしている。
「どうしたんですか?」
「いや…さっき杖に反応があったような気がしてな」
「それだったら多分、これのことじゃないかなぁ?」
アルスはエドガーの足元へ、ずたずたになったルーキーの死骸を転がす。
「ほら、首輪がある、多分
ゾーマが
参加者として送りこんできた魔物だと思う」
「確かに…
スナイパーアイまで持っているところを見ると、こいつはゲームを動かすために送りこまれた
サクラの内の1匹かもしれないな」
エドガーもしたり顔で頷く、自分の息のかかった者をゲームを動かす駒として送りこむ…常套手段の一つだ。
「それより、何とか野営できそうな場所を見つけてきたぞ、結局こんな南まで来てしまったが
とりあえずこれで落ち着く事ができるな」
エドガーとは正反対にティナは未だに暗い表情をしている、テリーのことが気にかかっているのだ。
そんなティナを気遣ってか、エドガーがそっとティナの肩に手をやる。
「今はテリーのことは忘れるんだ…大丈夫」
その言葉に安堵したかのようにティナはエドガーを見つめる、エドガーもそれに応じてわずかに微笑む、
彼もまた信じていた、テリーは決して憎しみに囚われたまま終わるような少年ではないと、
ただ忘れるには、時間が充分ではないだけだ。
「
バーバラに賭けてみよう、我々はすっかり嫌われてしまったからな」
こうして色々と心残りはあれど、3人はひとまずその場を離れた。
そんな彼らの後ろ姿をはるか後方の物陰からしっかり見ていた人物がいる、そう、
サマンサだ。
彼女はアルスの姿を確認するやいなや、とっさに後退した。
彼らの持っている対人感知の杖にひっかからなかったのもそのためだ、いかにレムオルで姿を隠していても
レミラーマをごまかすのは不可能である。
「あれは…まさかアルスさんが持っていたなんて」
一瞬だったがそれでもサマンサはアルスが紐を通して胸にぶら下げている、
黄金の腕輪を見逃してはいなかった。
今すぐ確保したいところだが…どうする?
工場内での経緯はあれどアルス1人ならば、なんとか説得はできるかもしれない、
だがアルスの回りに何人か仲間がいるのが見える。
「今、仕掛けるのは無謀の極みですね」
腕輪が目の前にあるというのに…口惜しさに歯噛みするサマンサだったが、
そこはそれ、すぐに思考を切り換える。
そう、考え様によってはこれほど預けておいて安全な相手はいないのだ。
他に腕輪を狙う勢力があったとしても、また彼自身を狙っていたとしても、
勇者である彼を倒す事は容易な事ではないだろう。
とりあえずピサロとの合流を待って、それから奪うか泳がせるかを決めればいい。
ここで接近するのは止めたほうがいいだろう。
と、気を取りなおしたサマンサは足跡を残さないよう慎重にその場から離れた。
【サマンサ 所持品:勲章 星降る腕輪 手榴弾×1
第一行動方針:神殿に向かう
第二行動方針:ピサロと合流
基本行動方針:
デスピサロを手伝う
最終行動方針:生き残る】
【現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地】
【アルス 所持品:
小さなメダル 天空の剣
対人レミラーマの杖 黄金の腕輪
第一行動方針:野営
第二行動方針:仲間を探す
基本行動方針:弱きを守り悪しきを裁く
最終行動方針:ゲームを覆し、ゾーマを倒す
【ティナ 所持品:
プラチナソード チキン
ナイフ
第一行動方針:野営
第二行動方針:仲間を探す】
【エドガー 所持品:
ボウガン 天空の鎧 スナイパーアイ
ブーメラン
第一行動方針:野営
第二行動方針:仲間を探す
第三行動方針:魔法使い、
デッシュを探す
最終行動方針:首輪の解除】
【現在位置:ロンダルキア中央砂漠西山地】
(とりあえず朝までは野営地点からは動かないでしょう)
【ルーキー 死亡】
【残り 50人】
最終更新:2011年07月18日 07:25