体調が最悪になる事は、最初から承知していた。
熱湯で暖められていたとはいえ、それまで湖に漬かっていて、暖められた後は半渇きの服を着る。
そんな状況で、平然としていられる道理がなかった。
「私は行くわ」
自分と助けてくれた女性、
セリスは朝日が登る前にそう言い残すと、立ち去っていった。
彼女の挙動は深夜の放送を聞いた時からおかしかった。
おそらく親しいものが亡くなったのだろう。悲しんでも泣いてもいなかったが、何となくわかった。
内から来る衝動に理解できず、かといって夜中の強行軍が無謀であるということを判断する理性はあり…
悶々として、ろくに眠れなかっただろう。
夜明けを前にして彼女は行動を再開した。
セリスが自分の異変に気付かないのは…仕方ないことだ。だから、自分は黙って彼女を見送った。
自分は一人になっていた。高熱があることは測るまでもなく、わかる。
意識が白濁するなかで、これからのことを考える。
死人でも体調を崩すのだな、そんなことを考えて口元を歪めた。
当り前だ、内部構造は同じなのだ。苦痛を感じもすれば、食事を取る事もできる。
ただ、とても脆く、すぐに消えてしまいそうな、曖昧で不完全な存在であるだけだ…
アーロンは恐ろしく重く感じる体を立たせた。
それだけで物凄い疲労が溜まる。だが、このままここで黙っているわけにもいかなかった。
何もしなければ、何も変わらない。それが、これまでの在り方で見出した、アーロンの答えだった。
…それから暫くして。
森に三人の人影が現われた。
「地上だ。地図では大体湖の北の森にいる事になるんだが」
地下通路の出入り口の側にある雪を蹴り崩しながら
バッツは言う。
「バッツ兄ちゃん、こっちから湖が見えるよ!」
「あ…ホントだ」
子供たち、
クーパーと
リディアは湖の方にかけていく。
元気なことだ。しかし、いいことなのだ。二人の後姿を追いながら、バッツは剣を抜いた。
「魔法剣、ファイア!」
剣に炎の魔力が宿る。それを確認して、バッツは出入り口すぐ側の木に大きく×印をつけた。
出入り口の場所を見失わないようにする処置である。
バッツ、クーパー、リディアは夜明けより一、二時間早めに神殿を出立した。
目的地は湖の祠。そこにクーパーの父親であるとんぬらがいる…かもしれない。
三人はこのゲームを覆すために術者を探すという目的をもっているが、
クーパーには父に会いたいという気持ちがあるし、バッツもクーパーの望みをかなえてやりたい。
三人は湖沿いを西に進んだ。向こうには、湖の中央へと伸びる一本道が見える。
バッツとクーパーは
神殿へと向かうとき、あの道を通っていった。
そのことを思い出したのか、クーパーはバッツに言う。
「なんだか、なつかしいねぇ」
「そうだな…つい、昨日見た風景なんだけどな」
そうして、三人は湖中央へ延びる道に辿り着いた。
そこで…人影を見つけた。
赤い服装で、脇に折れた鋼の剣を置いて座り込んでいる。
中年の男で、いかにも苦しげだった。
「あの、大丈夫ですか?」
一番好奇心旺盛で、恐いもの知らずのクーパーが訊ねると。
「…いや。ダメだろうな」
そう答える。唖然とするクーパーとリディアの後ろから、バッツは訪ねた。
「で、あんた何もんだ?」
こうして、アーロンはバッツたちと出会った。
先日、湖の祠でバトルが起り…結果自分は湖に放り出されたこと。
何とか生き長らえ、祠周辺の様子はどうなったのか、自分の連れはどうしているのか確かめたいと思っているが、祠に通じる橋が落ちていること。
それでイカダを作ろうと戻ってきたはいいが、そこで力尽きてしまったこと。
一通り状況説明が終わった後、バッツはアーロンの側に屈むと、額に手を当て…すぐ離した。
「こんな状況でよく意識を保っていられるな…普通、意識がとぶぞ?」
「ああ。だから…ダメだといっているだろう?」
心配そうに見上げるクーパーに、バッツはぽん、と頭に掌を乗せる。
「相当ヤバい。絶対安静だが、まだ間に合うさ。祠についたら、薬を作ってやるよ」
幸い、神殿である程度の物資を補給している。
その大半はクーパーの石化を直す薬を作ろうとした際に、勝手に接収したものだが。
「じゃあ、はやくイカダを作らないとね」
「そうだな。手伝ってくれ、クーパー。リディアはおっさんの面倒を見てやってくれ」
「う、うん。でも大丈夫かな…祠。昨日、あんな事があって…」
不安そうなリディア。あんな目にあったのだから無理はない。
「どの道、こんなところじゃ調合できないし、体を休める事もできない。
祠に行くしかないんだ。そうでなきゃ、どの道…」
死ぬ。といおうとしてバッツは留まった、がリディアはそれを察して泣きそうになる。
そんなリディアに、アーロンは気にすることはない、と心なしか優しく言った。
「こうなったのは全て自業自得だ。にも関らず助かる機会が与えられたのなら感謝こそすれ恨む筋合いなどない」
「………うん」
「それじゃ、早速イカダを作ろうよ!」
「よし、行こうクーパー。剣を貸せよ、炎の属性をつけるから」
「それで木を焼き切るんだね。でも燃えたりしないかなぁ?」
「葉っぱに、しかも広範囲につけない限りは大丈夫さ」
【セリス(
記憶喪失) 所持品:
ロトの剣
行動方針:不明】
【現在位置:祠の湖から移動して今は??】
【アーロン 所持品:折れた鋼の剣
第一行動方針:祠の湖へ、体を癒す
第二行動方針:仲間を探す】
【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法)
所持品:
ブレイブブレイド グレネード五個 レナのペンダント
第一行動方針:クーパー達と共に行動する
第二行動方針:
アリーナ(アニー)、
とんぬら、
パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、
ゾーマを倒す】
【リディア(魔法使用不可) 所持品:なし
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:
エーコと合流
第三行動方針:仲間(
セシル?)を捜す】
【クーパー 所持品:
珊瑚の剣 天空の盾 天空の兜
第一行動方針:祠の湖へ
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパスを捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:祠の湖北口】
最終更新:2011年07月17日 12:52