バラモスゾンビを打ち倒した
アルスたちは転送機の部屋に残った仲間たちの元に向かった。
腕の立つ仲間が数人残ったとはいえ、相手が相手ゆえに楽観は出来ない。
戦い続けていたアルス、
ライアン、ティナ、
バーバラの4人はかなり消耗していたが、休んでいる暇はなかった。
幸いというか、あの覆面男のチョコボがいたので特に消耗が激しいティナとバーバラを乗せ、先を急ぐ。
安否を気遣いながら先に急ぐアルスたち、再会はまもなく訪れた。
「みんな、無事だったか」
「そりゃこっちの台詞だぜ。四人とも無事でよかった」
エドガーの安堵の声に、
デッシュは答える。
「とんぬら殿!それに
アイラ殿も、無事だったのでござるな」
「ライアンさんも無事で良かった。あれから色々ありましたが……子供たちとも無事再会できました」
そっと
クーパーと
アニーの方を叩くとんぬら。ライアンは我が事のように嬉しそうにうなずく。
やはり、子供は親といるのが一番良い。天空の勇者といえど、それは変わらない。
ライアンはかつて故国で起こった誘拐事件とその顛末を思い出す。今は亡きソロの姿も。
それで、思い付いた。
「アルス殿。
天空の剣を」
アルスは首を傾げながらライアンにその剣を手渡す。
クーパーにとっては、子供の頃から共に過ごしてきた分身、そのものだ。
「受け取られよ、天空の勇者」
ライアンはクーパーの前に跪き、剣を差し出す。
父がうなずいたのを確認すると、クーパーは剣を受け取り、掲げる。
その場にいる誰もが息を呑んだ。
場内に立ち込める暗雲を切り裂く不思議な波動が広がっていく。
それは紛れもなく、それは天空の剣の力。鎧、盾、兜も剣に呼応し光り輝く。
パパスはそれを呆然と見ていた。
ずっと探していた。長い時を、生まれたての子供が成長して走り回るぐらいの時を、探し続けていた。
それが自分の孫であるということは皮肉かもしれない。しかし、それは確かに己の生きた証である。
「天空の武具が勇者の元に集い、ここに伝説は復活する。
世界に闇が現れしとき、勇者もまた現れん。全ては言い伝えのままに」
「とにかく、これで
参加者全員が揃ったわけだが」
一旦仕切り直すエドガー。情報をばら撒いたり、ミッドガルに
呼びかけたりしたため、自然と彼がリーダーのような立場になった。
もっとも、集まったのは揃いも揃って一癖も二癖もある連中である。リーダーというよりは宴会の幹事に近い。
「1、2、3………20。結構集まったなぁ」
「開始時には100人以上いたのだがな」
頭数を数えてなんとなく口にした
ティーダに
アーロンは突っ込みを入れる。
ティーダは口ごもった。もう4/5以上が死んでいる。集まった面々の中には親しい人を亡くしたものもいるだろう。
それを思えば、あまりにも軽率な発言だったと思う。
「あー、その。とにかく
ゾーマを倒しに行くっスよ! あいつをブッ倒せばそれで終わるんだから!」
「でも……今の戦いで随分と消耗してしまったわ」
頭をかきながら言うティーダに、やや表情を暗くしてティナは異を唱える。
「うーん。そうだね、さすがに一休みしたいかなぁ」
バーバラもそれに賛同する。長時間の戦闘で魔法を惜しみなく使った二人はさすがに疲労の色が濃い。
「とにかく、ここで固まっていても仕方ない。とにかく移動しないか?
ゾーマがどこにいるかわからないんだし、どこかに休憩できる場所があるかもしれない」
バッツの提案はどっちつかずだったが、ここにいても仕方ないことは間違いない。
とんぬらとパパスはバッツの意見に賛成し、
デスピサロもうなずいたことで一堂は揃って移動することにした。
非戦闘員+
ゼニスと消耗しているアルスたちを中央にかばいながら城内を巡る。
途中、度々魔物と遭遇したが、戦える者が揃っているので何とか無傷で切り抜けることができている。
城内の中央部(と思われる)辺りに入った一向は、廊下の向こうに巨大な扉があるのを見つけた。
扉といっても、ぶち抜かれて破壊されているが。
「あからさまに怪しいですね。この先にゾーマが?」
「いや、気配は感じない。いるとしたら更にこの先だろう」
サマンサの疑問に事なげに答え、デスピサロは扉の向こうへ進んでいく。
そして、その向こうで見た光景に、ティーダなど一部の者が驚きの声を上げた。
「
リュック!?」
そこには、血まみれになって倒れているリュックの姿があった。
その姿に、アルス、ティナ、バーバラ、
エアリス、
エーコはかつて見た異形を思い出して立ち竦む。
しかしティーダとアーロンはそれを知りつつも彼女に駆け寄った。
どんな事態になっていようが、彼女は仲間なのだから。
「リューック! おーい、大丈夫か!?」
「あ、ティーダ……? ……とまもふ(おはよう)」
ムクリ、と身を起こす。わりと元気そうな仕草と姿のギャップにティーダは混乱する。
「何寝ぼけてんだっつーの!」
「その怪我でよく生きていられたな」
アーロンも呆れた様に言う。そんな仲間たちの態度にリュックは
ため息をついた。
「そりゃ表面の傷は塞げたけどさぁ。こんなデタラメな体になってなかったら死んでたよ」
デタラメな体、という表現にその理由を知っている者たちは表情を曇らせる。
異質なモノを生やして苦しみ呻き暴れたリュックの姿を覚えているから。
「そっか。それで……今は大丈夫なのか? いきなり暴れたりしないよな?」
「一応ね。変な筒に入れられて色々改造されたんだけど、そのおかげみたい」
「改造って、それってもしかして大事じゃないのか?」
「んー、多分ね。でもまあ生きてるんだし」
しれっと言うリュックにそれでいいのかと小一時間突っ込みたくなる。
もちろんそんな暇はないから誰もやらないが。
エアリスは
癒しの杖を持ってリュックの元に向かった。
「傷を塞いだって言ってたけど、治療しようか?」
「うん、お願い。実はさ、外は直ったんだけど中身グッチャグチャなんだよね」
深刻なことをお気楽に言うリュックにティーダも頭を抱え、エアリスは笑いきれずに表情を引きつらせる。
もうすぐ
最終決戦だし、もう少しシリアスでもいいんじゃないのか?とか、ティーダは思った。
「小娘、その傷はゾーマにやられたのか?」
そんな雰囲気に割ってはいるデスピサロ。ある意味空気が読めていない。
「うん。この先にいるんだけど、バリアみたいなので思うように攻撃が通らなくて。
ボロボロにされて何とか逃げだしたんだけど、ここで力尽きたんだ」
嘆息するリュック。しかし、その発言には重要な事実が秘められている。
デスピサロだけが、そのことに気付いた。
「なるほど。ゾーマめ、何らかの理由で弱体化しているらしいな」
「何故、そのようなことがわかるのですか?」
代表して問うサマンサに、デスピサロは鼻で笑って見せる。
「知らぬのか。大魔王からは逃げられない」
きっぱりと言い切るデスピサロに、誰も反論できない。……まあ、正確には絶句しているのだが。
「だがその小娘は逃げ出せた。それはつまり弱体化しているということだ」
「逃げられたのではなく、逃がしたということですか?」
「おそらくは、そういうことだろう」
そしてデスピサロは、リュックの体をマジマジと眺める。
そんな彼の行動に、ライアンはやっぱり特殊な性癖なのだろうか、と悩んだがそれはさておき。
「――――フン。アルス、貴様は
黄金の腕輪を持っていたな」
「え? ああ、これか」
突然話を振られて、あわてて道具袋から黄金の腕輪を取り出す。
デスピサロはそれを見た。元の世界であれほど捜し求めていた代物。それが目の前にある。
「この女にくれてやれ。それはそういうモノだ」
未練がないといえば嘘になる。しかし、今はいらない物だ。
自身で進化の秘宝を試す暇はない。ならば女が持つのが一番良い。
「あ、これ……!」
リュックはそれを見て目を輝かせた。
究極生物の未完成体だった頃、手に入れたモノ。
状況がつかめなくてパンク寸前だった状況で、『知恵』を与えてくれたアーティファクト。
進化の秘宝。アルスから受け取ったリュックは、それを腕にはめる。
途端、不思議な感覚に包まれる。渦巻きが静まって一方向に流れていくような。
全身を覆っていた高揚感が薄れ、程よく鎮まっていくのを感じる。
なるほど、確かにこれはそのためのものだと実感する。これで更に上手く力を使えるだろう。
しかし。リュックは思う、前回は必死で気付かなかったんだけどさ。
この腕輪。………デザイン良くないよねぇ。
【ゼニス 所持品:
アンブレラ 羽帽子? 行動方針:最後まで物見遊山?】
【現在位置:ゾーマの城】
※チョコボがついてきています
最終更新:2011年07月18日 06:23