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「黒崎、ちょっと聞きたいことが」 「うん、どうした?」 これは現実世界での会話。 俺、夜薙当麻と、越前藩国摂政・黒崎紘は、比較的ご近所さんであり、極まれに深夜のファーストフード店で雑談をしている。 「新しいアイドレスの『剣』と『王』だけどさ。アレってウチで言うところの『東国人+サイボーグ+剣+王』ってやって3人くらい集めてさ、互いが互いの剣であり王であるって出来るのかなぁ…?」 「え…」 少し返答に困る黒崎。 それもそうだろう。普通、『剣』と『王』はその一対で効果を発揮するのだ。 このような発想は普通は出てこない。 これはただ単に、俺がスーパー戦隊マニアだから出てきた発想なのだ。 「う~ん…、理論的には可能だよなぁ…」 「まあ、理論的にはね」 困惑気味に返してきた黒崎に、笑って答える。 「でもさあ、出来たら面白いと思わない?『○○戦隊なんとかジャー』とか言って」 「……暁さんあたりがやりそうで怖いわっ!」 その日の雑談はこんなオチがついて、解散となった。 ◎ ◎ ◎ 「待てぇぃっ、秘密結社シバーの怪人、ヤーナオーマっ!!貴様の悪行もここまでだっ!!」 そんな声をかけられて、俺は目を覚ました。 (…ここは、どこだ…?) 辺りを見回すとそこは、あきらかに住んでいる街とは違う風景。 具体的に言うと…、石切り場…? 「悪人の末路はふたつにひとつ!」 「A:お縄になって埋められるか!」 「B:埋められてお縄になるかです!」 「さあ、選びたまえっ!!!」 そんな、どこかで聞いたようなセリフをかけられた方を向く。 そこには、アイドレス世界、越前藩国の藩王・セントラル越前、同じく摂政の黒崎、さらに元外交官で現在は参謀に出向しているWishの姿があった。 「え?藩王に摂政に…Wish?いったい何が…」 「えぇ~い、白々しい!貴様はわが国民、夜薙当麻のニセモノであることは自明の理!さっさと縛に就けぃっ!!」 …ナニガナンダアカワカリマセン。 「藩王。こうなっては仕方ありません。奥の手を使いましょう」 「そうです!疾風怒濤、一網打尽!一気にカタをつけるべきです!」 「あい解った。では皆の者、転身だぁっ!!」 って、五○戦隊っ!?いや、3人しかいませんがっ!? 「「「たぎれ、理力よ!メタモル・オン!!」」」 見事にハモった掛け声と共に、3人が姿を変えていく。 「イワヤトの、力宿りし国の長(おさ)! 赤き噴煙、ハンオーレッド!」 「天高く、雲を突き抜け宇宙(そら)を飛ぶ! 黒き旋風、セッショーブラック!」 「水神(みなかみ)の、加護を賜る戦姫(いくさひめ)! 黄色の大河、サンボーイエロー!」 「夜明けにみっつ、輝く星!東国戦隊!!」 「「「エチゼンジャー!!!」」」 あああああああもう、なにがなんだか!! …呆気に取られながらも、しっかりと戦っていたらしい。 いつの間にか、オレの身体はボロボロだ。 「よし、トドメだ!越前名産、鬼切りの威力を思い知れ!」 「三つの鬼切りひとつに合わせ!」 「くらえ、必殺の!」 「「「エチゼンジャーボール!!!」」」 うわ、最期はバル○ンボールかよ。 レッドのサーブからイエローのレシーブ、ブラックのトスと続き、狙いはしっかりと俺に定まっていた。 「フィニッシュッボール!」 レッドの放つスパイクが、正確に俺の身体を捉える。 俺は、断末魔の悲鳴と共に大爆発した。 ◎ ◎ ◎ 「うわぁっ!!!」 『がばぁっ!?』っと起き上がる俺。 こんな勢い良く起き上がる経験は、めったに無い。 目覚まし代わりの携帯電話で時間を確認する。 「むー、まだ午前4時じゃないか…」 寝ぼけ眼で後頭部を掻く。 「しかし、変な夢見たなー…って、どんな夢だっけ…?」 ノリは良いが、とにかく変な気分だった。 「ま、いっか…寝よ」 この後、俺がこの日見た夢を思い出すことは、ついに無かった。
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