(シルク)スクリーン印刷
- スクリーン印刷技術を会得して、様々なものに高精細な印刷を施そう
スクリーン印刷とは
- 孔版、つまり細かい穴が開いた版により印刷
- 孔版は布(昔はシルク、今はテトロン等)上に、フォトリソで図案の膜を形成することによって作られる。
- スクリーンの上にインクをのせ、スキージで擦って印刷する。
- 膜がある部分はインクが通り抜けず、マスキングされた状態になる
- 膜のない部分は、スクリーンの隙間からインクが通過し、対象に印刷される。
特徴
- 上記原理により、どのようなインクでも使用可能
- 印刷対象に合わせたインク(金属用、プラ用、ガラス用etc)を使えるため、なんにでも印刷可能
- このため、板チョコに溶かしたホワイトチョコで印刷とかできるらしい・・・
- 版が柔軟なため曲面にも印刷できる
- 量産できる
- 版を1枚作ると、後は1枚数秒で印刷できる。逆に1枚ものは各種コストが嵩む
原理・概要
- 木枠にスクリーンを接着剤でぴんと張る
- 乳剤(白、どろどろ)とジアゾ感光剤(黄色い粉をお湯で溶いて使う)を混ぜる→感光乳剤
- スキージ等で、スクリーンに薄くのばして乾かす(暗所で)
- プリンタでOHPシートなどに印刷したポジフィルムをのせる
- 日光などの紫外線で感光(数分)→ポジフィルムの透明部分が紫外線硬化
- 水洗いする→紫外線が当たらなかった部分が流れて、ただの布になり、版完成。
- スクリーンにインクをのせ、印刷対象の上におき、スキージでインクを転写
揃えるもの
今回は造ハウ.comで揃えました。その他2店舗くらい一式そろうような店がある感じ。
- スクリーン生地
- 約1平米で1500円くらい
- 180メッシュ
- メッシュが細かい(番号が高い)と細かい図案が綺麗にできる。
- 一方スクリーン生地の値段も上がる
- Tシャツなどが80~100番くらい、ホビー用途なら150~180もありゃ大丈夫かも?
- 腕時計の細かい文字とかは200~300以上とかが使われる?

シルクスクリーン(テトロン製#180)
- 枠
- ホームセンターで買った1*4の木材120円。
- 木枠とアルミ枠がある
- 木枠は接着剤と溶剤、アルミ枠は接着剤とアイロンで張るらしい
- テトロンは熱に弱いとあったし、アイロンの接着はよく分からなかったのでここは木で。
- 捻っても大丈夫な感じなら、正直なんででもいいかと。
- 接着剤
- 価格不明
- G17を使用
- 溶剤とセットで使う。溶剤が使えるタイプならなんででもいいかも?
- 接着剤の溶剤
- 価格不明。
- G17はアセトン系が溶剤らしいので、D2オリジナルの謎のペンキ薄め液を使った
- 普通に使えた。
- ガソリンとかでもいいんじゃね?
- 乳剤
- 感光剤とセットで、50ml・600円弱
- 油性用と水性用があるが、実際は油性オンリーと水性おkみたいな区分らしい
- 水で版が崩壊するかららしい。
- でも100枚以下なら版は壊れないらしく、油性用でも大丈夫との噂
- 50mlでB5が10枚くらいは印刷できるらしい。
- ジアゾ感光剤
- 感光剤とセット。単体でも500円以下だったと思う
- 乳剤と混ぜて、紫外線硬化とする
- ジアゾ再生液
- 50ml・330円
- 感光乳剤の溶剤
- つかい終わった版に塗って、乳剤を溶かし、スクリーンの再利用できるようにする。
- スキージ
- 標準サイズ50円
- ただのプラ板
- スクリーン上でインクを伸ばし、印刷するときに使う。
- お刺身トレイ
- 無料
- 乳剤塗布に使えるかも?
手順
スクリーン枠づくり
- 適当な木をぶった切り、そこそこの強度を持った枠を作る。ひしゃげなければおk。
- 大きさは印刷対象より、数cmの余白を設ける事。印刷できないエリアだからです。
- 1*4をぶった切り、4隅を超適当に釘4本で固定しただけですが、何とかなってます。

- 適当に作った木枠
スクリーン張り
- スクリーン印刷の要です
- 均一かつ適切なテンションを、全方位に与えながらムラの無いように張ってゆきます
- 張り方は普通の接着剤とは違い、ちょっと特殊です。
接着剤の塗布
- G17を全周に塗り、普通に乾燥させます。

角の接着
- シルクを枠に対して20度位傾けて、枠の上に仮置きします。
- 垂直、水平に張ると、存在頻度の高い垂直水平の線がシルクに影響されてしまうためです。
- バイアス張りと言うらしい。シルクの歩留まり低下が発生します、当然。
- シンナーをウエスに含ませる
- 適当な角の部分を、シルクの上からそのウエスで擦ると、その部分が接着されます。
- もし関係無いところがくっついてしまったり、ミスった場合は焦らずウエスで拭けば、5秒後くらいにすんなり剥がれます。
- シンナーウエスでぬぐっても、しばらくすれば再び強固に接着されます。
- このウエステクを駆使して、どんどん張ってゆきます

点固定に接する1辺の接着
- さっき固定した角に接する2辺を、順番にテンションを与えながら接着します。
- シルクを1辺の方向に、均一なテンションとなるように引っ張り、これで大丈夫と思ったら、辺の上をウエスでごしごし擦り、しばらくそのままで耐える。
- 1点で引っ張るとしわが寄るので、上手いこと線で引っ張って下さい

点固定に接する、残りの1辺の接着
- 同様に均一に引っ張り、その上からウエスで擦って接着します

写真でウエスが乗っている辺です
残る2辺の接着
- 1辺ずつ同様に接着していきます。しわが寄らないように。

こんな感じ
- 全周囲が接着されます

ひっくり返すと、このようになります
テンションの微調整
- 張り具合を修正します。
- ウエスでちょっとなでてから、接着部を枠の外へ向かって指でこすりつけるように引っ張ると、ゆっくりと動きます。
- テンションをかけたまま、固まるまで待ちましょう
- これを繰り返すと、失敗部分が緩和されます
- 均一な張りとなるように修正して下さい
仕上げ
- カッターでぐるりと一周、枠をなぞって余分なシルクを切り取ります
- 洗剤で洗って脱脂します。脱脂しないと、乳剤の定着が悪化し、ピンホールとなるらしい。

版下作り
- 使うのは白黒なポジフィルムです。
- フィルムの黒の部分がインク透過しますので、見たまま通りの印刷結果となります。
- 何らかのソフトで作ってOHPシートへ印刷・転写

このようなOHPシートを作ります。下は今回の印刷対象(表面:ラッカースプレー)です
感光乳剤塗り
- 暗所で行う(蛍光灯だと露光30分くらいかかったので、色が判断できる程度の明るさで手早く行っても十分すぎるかも。)
- 乳剤の説明書の量に従い、感光剤をお湯で溶き、それを乳剤と混ぜる

2つで1セット

乳剤Only。真っ白です。感光剤を入れるとレモン色になります。
- これをスクリーンにスキージなどで薄く塗布する。
- 枠を60度に傾けて、乳液を引き上げるようにスキージを動かす。
- 厚みは謎。塗りたくってぼたぼたになるのは多すぎらしい。1回でもいけるのか?
- とりあえず、仮にインクを乗せる面から1回、1分後くらいに逆側の面から2回塗布した。
- 新聞の上にスクリーンの端切れを置いて乾燥させたところ、塗布が薄すぎて、乾燥時に亀裂が。仮に印刷したら亀裂の模様が印刷されてしまったため、スクリーン裏に面が接しているとだめらしい。
- 写真の枠で10mlくらいも使ってしまった。噂以上に消費してるが塗りすぎ何だろうか。が、亀裂も一度やっているので怖い。
- 乾燥させる
- ドライヤーで10分くらい?自然乾燥で夏場で1時間?
- もちろん暗所で!
- 箱に入れて3時間後にあけてみたらからっと乾いていました。あまり手間なことをする必要はなさそうです。

露光
- 印刷対象に触れるスクリーン面を上にして、上から順番に
- ガラス板などの透明な板状の錘(密着用)
- ポジフィルム
- 感光乳剤塗布済みスクリーン
- 木枠
- 黒い紙(スクリーン裏側からの光の回り込み防止、アニメイトの袋で代用)
- 版の向きをよく考えて!5秒考えれば分かります。悲しい結果とならないように

- 日光やケミカルランプ、蛍光灯?、白熱電球?に当てる
- UV出てそうなのを・・・。
- 露光時間は晴天夏場で30秒~1分、冬で1~2分、ケミカルランプで3分くらいらしい?
- 露光が足りないと硬化不足で、版が崩壊してしまう
- 露光しすぎると、抜けるべき穴が抜けなかったり、再生液で再生しづらい
- 版の色の変わりくらいで判断しましょう。黄色から徐々に酸化したリンゴみたいなオレンジに変わっていきます。

- 版下をめくって露出具合を見るわけにはいかないので、このように脇にサンプルで乳液を塗っておくと安全。このように色が変わります。

露出直後。黄色の部分は未だ乳液状態なので、次の行程で水で洗うと流れ落ちます。
現像
- シャワーなどでがんがん水をかける
- 固まってない部分が流れ、穴が開く徐々に穴が開いてくる
- ちゃんと露光できていれば指の腹でなでても何ら問題がない。
- 崩壊したら露光不足

現像後、白背景の上に置いた状態。見事に文字の部分だけ穴が。

すかしてみるとこのような感じ。固まった膜はふつうに強いです。
- ピンホールがあったら、余ってる感光乳剤を塗って、光に当てて硬化させる
- 穴を抜いた後、更に紫外線に露光すると、版が強固となる。当然再生もしづらくなる。
- 接着面より数cm内側まで、テープで枠の両面を目張りします。
- インクがそこから漏れ出ることを防ぐためです。

印刷
- 版をよく乾かします。タオルとドライヤーで一瞬です。薄いので。
- 版を印刷対象の上にのせ、位置決め
- インク、今回はアクリルガッシュを枠の片隅におく

- スキージでインクを引いて印刷

- スキージの角度を寝せると太く、90度で細く印刷されます。にじみ、かすれの調整を行ってください。
- 2度刷りはだめ。印刷結果がほぼ確実に滲みます。
- スキージの角度のせいかもしれないけど、何度もにじんで失敗した
- 5回ほど刷り直したがどんどん結果が悪化
- 版の0の中の穴とかがとれちゃったりした
- アクリルガッシュならすぐに版と印刷対象を水で洗うか、ぬれたティッシュで拭けば修正可能。部分的に消したりもできる。というか消しまくったorz
- 失敗時は、
- 版を水を張った桶に入れる(まず最初にやること。スキージを引いた直後はインクが非常に薄いので直ぐ詰まります。
- 直ぐに濡れたティッシュで失敗箇所を拭き取る
- 版をよく洗浄する。目を詰まらせないように。
- 版を乾かし、先ほど消した部分をマスキングテープで囲う
- 小さなスキージで再印刷。印刷成功部分と版を重ねて位置を合わせる。
- スクリーンは非常に薄いので、1分もすればインクが乾いて版が死んでしまうので、返し刷りを行います。
- 流れは、刷る→版をあげる→、スキージでインクを元の位置に戻して、あいた目地を埋める
- インクを再び厚く塗り直すことで、多少の乾燥耐性を持たせます。が数分が限度かも。
- 刷り終わったらすぐに版を水洗い。やらないとスクリーンが詰まって死にます。
- スキージの選び方
- スキージにはプラ製の堅いやつと、ウレタンゴム製の柔らかいものがあり、そのサイズも様々。それぞれ特性が違うので、印刷が何度やっても上手くいかないときはスキージを替えるといい。
- しなやかさ
- 堅い板を使うと、印刷対象の起伏があると、その周囲の印刷が薄くなり、かける。
- かといって2度引きすると、その部分が浮いているためインクが回り込み、滲む。
- よって、今回のようなアルミ板といった堅い印刷対象の場合、しなやかなスキージでないと上手くいかなかった。
- 今回はPP製スキージ(幅100mm?)で以上の現象により上手くいかず、刺身パックのエッジ(最初の方で乳剤を捏ねてた残り)を使ったら、一発で見事な印刷結果が得られた
- ターゲットが板の場合、しなやかな材質を、ターゲットが布などでは堅い材質がいいのかも知れない。布などでは、堅くないとインク量にムラができる恐れがありそう。
- 幅
- 大きいと、上記の理由により、印刷対象の凹凸の影響を受けやすくなり、かすれ、滲みの原因に。
- 小さいと、オーバーラッピングによる滲みの恐れが。
- しなやかなスキージなら、2度引きしても大丈夫なんだろうか。
- スチロールトレイでも上手くいったので、お気に入りの1枚を探すことをお勧めします。
- 印刷結果はこんな感じ

- 線が細いせいかアクリルガッシュの食いつきが悪く、剥がれの恐れがあったので、上からクリアを3回くらい吹いて完成!

版の再生
- ジアゾ再生液を使って、版のレジストを取り除き、シルクに戻します。
- 版を保管するときは遮光しておいた方が、再生時に困らないかも。
- ただ、半月保管したらすでにかなり再生困難でした。正直どうでもいいかも。
- 実はネットにある方法(といっても、再生液の説明書に書いてあるような、非常に一般的な方法らしいのだが)では再生液だけ消費するばかりで、全然再生されませんでした。色々試行錯誤した結果、この方法が一番確実で、液の消費も微量のため、ご紹介します。

版と再生液
ごく一般的な方法
- 版の両面に再生液を塗り広げます。

- 1分くらいしたら、再生液が乾かないうちに水洗いすると版が流れ落ちる
- とはいうものの、薄く塗り広げた再生液はどんどん乾き、冬場なのに1分がぎりぎり
- 結果は、露光が過露出だったせいも、半月放置だったせいもあってか、一部が全く抜けない。
- 何度もやった結果、液を1/3くらい消費してしまう。→この方法はNG

全く溶ける様子がない。
次にやった方法
- 強固に固着していて、溶ける時間が足りてないと判断
- シルクを枠から剥がし(簡単)、ジッパーの袋にたたんでいれ、再生液に漬け込む。
- 3時間つけ込み、余裕で水洗いするとなにも変化無し→この方法はNG。作用する時間じゃないの?!
満身創痍で試した方法
- 残る再生液も少なかったので、時間で駄目なら物理的にということで。
- はがした版をラップなどビニールの上に置く
- 再生液の瓶に歯ブラシを1回漬け、版全面をよく擦る。
- 力よりも回数というか時間をかけてみた。片面あたり2~3分くらい
- このとき見た目に変化は起きない。版が取れてくることはない

擦る!さっさと何度もなでるって感じ。もっと幅広いブラシなら効率いいかも。
- 両面ともよく擦ったら、水洗いする
- 何故か見事に真っ白な布に戻る!
- 物理的に刺激しないと厚みのある部分が上手く溶けないのだろうか。
- 水が作用するのか、擦ってる間は溶けて無くなる感じでは無かった。擦ることで浸透したって感じ。
- 液の消費量は・・・。測定不能なほど少ない!

見事に元のシルクに元通り。これからはこの方法でいこうと思う。むしろ版から外す意味がなかった。
- 結論:つけ置きよりも、歯ブラシ
以上、シルクスクリーン印刷でした~。
曲面にも挑戦してみます。
曲面にも挑戦してみます。
添付ファイル
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