まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

07話 - みんなの前で

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f29m1

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ムクホーク
「親しき仲にも礼儀あり、という言葉があってな。例え仲の良い相手でも最低限の礼儀は持って接する。
 つまり仲間内でも何でもやっていいという訳じゃない。ましてマリルリは昨日ここに来たばかりだ。わかったなチェリ?」
チェリンボ
「はーい」
ムクホーク
「とは言っても、いちいちこんな事で驚くお前もお前だと、私は思うがな」
マリルリ
「どうもすいません……」

 確かに驚きすぎだったかもしれない。ちょっと自分が恥ずかしくなってマリルリは身を縮めている。

トリトドン
「そんなに落ち込まないでください~。昔からよく言いますよ~。『ヘタレな子ほどかわいい』と。
 ぽにょはマリルリがヘタレでも嫌いじゃないですよ~気にしませんから~」
ムクホーク
「それは『馬鹿な子ほどかわいい』ではないのか? 馬鹿な子供は手がかかる。手がかかる程、接する機会が多く愛おしくなる。そういう親心をうたった格言だったかと思うが……」
トリトドン
「ああ~そうとも言いますね~♪」
ムクホーク
「そうとしか言わない。……最もこの言葉は人間の作った言葉、人間の場合しか当てはまらないのだろうな。
 野生の世界では能力の低い者、生きる力の無い者は……」
マリルリ
「え?」
ムクホーク
「いや、なんでもない。関係無い話になってすまなかったな。それに気持ちはわからないでもない」
トリトドン
「む~? なんですか~その目は~。ぽにょはかしこいですよ~」
ムクホーク
「いやいや、そういう意味ではないぞ? ぽにょはかしこいもんな」

 しかめっ面で頬を膨らませるトリトドンと微笑みながら受け流すムクホークの姿がとても微笑ましく見えた。
 彼女が慕われているというのは、単純な強さだけでなくこういった面もあるからなのかとマリルリは思った。

マリルリ
「あ、ところでムウマージさんは?」
ムクホーク
「ああ、あいつか。恐らくその辺の天井かあるいは壁か……、ぽにょ、その辺りを叩いてみろ」
トリトドン
「はあ~い。えい!」

 トリトドンが壁に向かって二、三度体当たりすると壁の中からムウマージが出てきた。上半身だけを壁から出し眠たそうな目をこすり不機嫌そうな顔をしてこちらを見ている。

ムウマージ
「……なに……?」
ムクホーク
「起きろ。今日は早いと言っておいただろう?」
ムウマージ
「……やだ……。ねる……」
ムクホーク
「ダメだ。こういうのは全員そろってやるもの……っこら! 目を開けたまま寝るな!!」
ムウマージ
「……どーせ……挨拶……でしょ? ……もう会ったから……いい」
マリルリ
(何の話だろう?)
ムクホーク
「終わってから寝ればいいだろう。すぐに済む」
ムウマージ
「……じゃ……、酢ネコブ……ちょうだい」
ムクホーク
「酢昆布ならあるぞ」
ムウマージ
「……それ……、きらい……。ネコブじゃなきゃ……やだ……」
ムクホーク
「甘えるな! それくらい自分で作れ。おい壁に戻るな!! いいから出てこい」

 壁の中に潜りこむムウマージを引きずり出そうとするが、すんでの所で逃げられてしまった。
 ムクホークは唸りながら軽く壁を突いたり蹴ったりしている。

マリルリ
「た、大変ですね……」
ムクホーク
「何、よくあることだ」
ブースター
「ねえリーダー。出てこないみたいだったら火炎放射使おうか? ちょっとかわいそうだけど……」
ムクホーク
「いや、やめておけ。それにな、インファイトで壁をぶち抜くのが一番手っ取り早いが……。そこまで無茶もできないし、普段から皆に『物は大切に』と言ってあるからな。これらは最終手段だ。
 本当のことを言うと、私としても無理強いはさせたくはないんだ。本来ゴーストポケモンの多くは夜行性で日中の行動は苦手としているし『ムウマージ』という種の性質もあるしな」
ブースター
「じゃあそっとしておいてあげようか」
ムクホーク
「騙されるな。今は多くの場合の例であり、あいつ自身は普通に昼間活動できるんだ。
 すまんなマリルリ、少し待っていてくれ」



 ――数十分後

ムクホーク
「待たせたな。では行くぞ。着いてこい」
マリルリ
「は、はい。ところで何処へ……?」
ムクホーク
「行けばわかる」

 話がよくわからないがマリルリはムクホーク達について行く。
 案内された場所はポケモンセンターで言うところのユニオンルームの前だった。

マリルリ
「ユニオンルーム? ここで何をするんですか?」
ムクホーク
「それは入ってからの楽しみだ。お前はランプが緑色に光ったら入れ」
マリルリ
「は、はあ……」
ブースター
「最初はちょっと驚くかもしれないけど、がんばって!」
ムウマージ
「……(半分寝ているようだ)」

 そう言うと彼女達は次々と部屋に入っていく。一体ここで何をするのか、これから一体何が始まるのか。気になりつつもマリルリはドアの前で待った。そしてランプが点灯した。

マリルリ
「じゃあ入るか」

 ピロンピロンピロン……♪

マリルリ
「ふう。……え?」

 部屋に入った途端、わあ! と歓声が上がる。
 マリルリは我が目を疑った。
 転送されたのは何故ここにあるのかわからないステージの上。その横にはムクホークが立っており部屋の中には沢山のポケモン――総勢29匹の♀ポケモン達が待ち構えていたのだった。

ムクホーク
「こいつが今説明したマリルリだ。皆、仲良くやるように」
(パチパチパチ!!)
マリルリ
「はいいいいいいいいい!?」
ムクホーク
「どうしたそんな驚いた顔をして」
マリルリ
「ちょ、なな何ですかこれ!?」
ムクホーク
「見ての通り、このボックスのメンバーだが? ではマリルリ自己紹介をしろ」
マリルリ
「ま、待ってくださいよ! 聞いてないですよ!?」
ムクホーク
「何を言っている。人間で言うところの転校生が初日にクラスの前で挨拶するのと同じようなものだ」
マリルリ
「た、確かにそうですけど、こんな大勢の前でなんて聞いてないですよぉ~~!! 大体、沢山の女の子の中に男一匹って……。
 完全にアウェイじゃないですか! だいすきクラブに空手王と山男が入るようなもんですよ!?」
ムクホーク
「そこまで酷くは無いだろ。トレーナーズスクールにポケモンコレクターが入学する程度だ。そんなに違和感は無い」
マリルリ
「なんか余計酷くなってません!?」

 周囲のポケモン達はマリルリに注目している。
 ざわめきの中から「これならアリね……」「強いのかしら」「あらかわいい♪」等の声が聞こえる

ムクホーク
「こらこら、おまえ達! 見世物じゃないんだぞ」
マリルリ
「言ってる事とやってる事が違いませんか!?」
チャーレム
「まーまー、気にしない気にしない! こーゆーのは晒し者になった者勝ちだよ?」

 明るく声を掛けてきたのは昨日会ったチャーレムだ。最前列でこちらにガッツポーズを向けている。

ムクホーク
「晒し者とは失礼な。一度に全員が新入りの顔を覚えられ、実に合理的だ。ああマリルリ、お前は別に一度に全員を覚えようとしなくても構わんぞ。数が多いからな」
チャーレム
「大丈夫、大丈夫! 姐さん相手にこれだけツッコめたら十分やっていけるって!」
マリルリ
「何その基準……」
ムクホーク
「緊張してるのか? こんなの全員イシツブテだと思え。何、ここは私も含めてまともな女の方が少ないから安心しろ!」

 途端、部屋中に笑い声が広がる。

『うわwww ひどwwwww』
『そりゃないよ姐さ~んwww』

マリルリ
「は、はははは……」
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