まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

02話 - 悩めるマタドガス

最終更新:

f29m1

- view
管理者のみ編集可
 ……あの子には、悪いことしちまったな。
 ミミロルだったか? よく見てなかったからわからんな。
 だってそうだろう? いずれあの子も雲の上の世界へ行って、ステージやらタワーやらでスポットライトを浴びるんだ。おれの知らないところで。
 そんな相手をまじまじ観察できるか?
 おれはもう、こりごりだ。こんなこと。
 今まで何匹ものポケモンを見てきた。かわいくて強い、♀のポケモンばかり。どうやら主人は♀ポケモンに固執しているらしい。ジーランス、サメハダー、テッカニン。何匹もの♀ポケたちが、おれのだいばくはつの爆風を通り過ぎていった。
 同時に、あいつが『キンケイト』を倒しただの、こいつが『ギンクロツグ』を三タテしただの、そういった噂も耳にしていた。
 仲間のマタドガスから聞いたときには平静を装ってたが、正直、いてもたってもいられなくなっていた。
 笑わないでくれ。でもおれは心底、うらやましかったんだ。
 ステージやタワー、キャッスル、ルーレット。行ったこともないが、おれは自分がそこで活躍しているのを夢想した。
 ……主人は、格闘系の相手におれを後出しするんだ。HPと防御を鍛えたおれには格闘技なんて通じない。さらにおにびで削って、くろいヘドロで徐々に回復。
 相手が竜の舞いだの剣の舞いだのを企てたら、くろいきりだ。それでも押し切られるようなら、ただじゃ死なねえ、みちづれにしてやるさ。
 観客はおれの名前をコールし、戦いのあとには主人がすっぱいポフィンを食わしてくれるんだ……。
 そんなことを考えながら、おれは毎日、誰かのためにだいばくはつをし続けていた。
 その誰かってのはすぐ隣にいて、近い将来、おれが夢にまで見ているフロンティアに行ってスポットライトを浴びるんだ。
 もう限界だ。おれは休みたかった。
 だから、わざとギャラドスの攻撃を急所に受けたんだ。その結果、いらいらした主人はギャラボムをやめて、おれはパソコンへ送られた。
 これですこしのあいだは、輝かしい♀ポケと一緒にいなくても済む。みじめな思いをしなくてもいいんだ。
 しかし、他のマタドガスたちの姿が見えないのが気になる。他のボックスに行ったのだろうか。
 ん? ケーブル短くなったか? もうボックスが見えてきた。
 おいおい、あれはいつものボックスじゃないぞ。主人のやつ、いらいらして手元が狂ったか。
 どこのボックスだ。もうほとんど満員じゃないか。ボックス名は、『おれのよめ』?
 ……色違いゴローンに会ったがマスターボールがなかったトレーナーの心境ってのはこんな感じか? と考えつつ、予感が外れるように祈る。
 だが無駄だった。
 ボックスに降り立ったおれの目に飛び込んできたのは、見覚えのある♀ポケモンたち。フロンティアに舞う輝かしいスターたちだった。
「かんべんしてくれ」と切実に思ったが、「憧れのスターたちが今、目の前に!」と思う気持ちがあるのも、事実だった。
ウィキ募集バナー