まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」
03話 - 憧れのスターたち
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f29m1
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「ども、こないだの試合はマジ助かったッス。マキさんのバトン、マジ嬉しかったッス」
「いや、拙者は頭の指示に従っただけに過ぎぬ。それにサスーン、そなたがたんじゅんであったからこその勝利であろう」
「そーッスかね? あ、モモジリ姉さんのジェットもかっこよかったッスよ! 姉さんってマジでタスキと相性いいッスよね」
「アタシが紙耐久だって言いたいのかい?」
「いやいや、あ、ちょ、やめ」
胸が躍るような会話だった。聞いているだけで、試合の様子が頭に浮かぶほどに。
おれも会話に入りたかった。訊いてみたいことが山ほどあった。
どこでどんな技を出したのか、相手はどんなやつだったのか。ひとりでステージに立つのは緊張するのか、キャッスルの中はどれほど美しいのか。
オボンの実ってのはうまいのかまずいのか。
だが、無理な話だ。立場が違う。住む世界が違う。
あのリボンが見えるか? がんばリボンにあしあとリボン、それとあれは……アビリティリボンじゃないか。
そこにいる三匹だけじゃない。向こうで瞑想しているチャーレムも、一緒にスパーリングしているバシャーモとゴウカザルも、
気持ちよさそうに上の方を泳いでいるマンタインも、全員が何かしらのリボンをつけている。
マンタインは特に多いな、と思ったらひっついているテッポウオにたくさんのリボンがついているのだった。
テッポウオだぞ。
マツオのテッポウオは気さくなやつで、ウィットに富んだ冗談もうまい。
あいつとはたまに飲みに行くほどの仲なんだが、こっちのテッポウオには話しかけることすら躊躇われる。
リボンもすごいが、もちものもすごい。なんとそいつはヤタピの実を抱えてた。
よく見りゃ全員、立派なものを持っている。隅っこのブラッキーはたべのこしを大事そうに抱えてるし、ナマズンのあれはなんだ、ハチマキか?
ウソッキーにひっついて困らせてるヘラクロスが首に巻いてるのは……スカーフ?
よくわからんが、まるで貴重品の博覧会のように見える。
一方、おれが持っているのは……おまもりこばん。
浮いているにもほどがある。ふゆうだけにな。マタタタタ。
冗談ではなく、ここにいてはいけないような気さえしてくる。わかるだろう。アキバ系の男が、ナウいクラブに迷い込んだ。そんな気持ちだ。
だからこうして、身体を分散させて気配を消してるんだ。
ただでさえ、♀のポケモンだらけのボックスなんだ。そんなとこに♂の、しかもギャラボム用のポケモンが入り込んだと気づかれれば、どうなるか……。
想像したくもないし、試合で疲れているであろう彼女らに、余計な混乱を与えるのも悪い。
このまま空気に溶けて、やりすごそう。
そのとき、おれは妙なものを見た。
なにももちものを持っていないポケモンがいたのだ。
「いや、拙者は頭の指示に従っただけに過ぎぬ。それにサスーン、そなたがたんじゅんであったからこその勝利であろう」
「そーッスかね? あ、モモジリ姉さんのジェットもかっこよかったッスよ! 姉さんってマジでタスキと相性いいッスよね」
「アタシが紙耐久だって言いたいのかい?」
「いやいや、あ、ちょ、やめ」
胸が躍るような会話だった。聞いているだけで、試合の様子が頭に浮かぶほどに。
おれも会話に入りたかった。訊いてみたいことが山ほどあった。
どこでどんな技を出したのか、相手はどんなやつだったのか。ひとりでステージに立つのは緊張するのか、キャッスルの中はどれほど美しいのか。
オボンの実ってのはうまいのかまずいのか。
だが、無理な話だ。立場が違う。住む世界が違う。
あのリボンが見えるか? がんばリボンにあしあとリボン、それとあれは……アビリティリボンじゃないか。
そこにいる三匹だけじゃない。向こうで瞑想しているチャーレムも、一緒にスパーリングしているバシャーモとゴウカザルも、
気持ちよさそうに上の方を泳いでいるマンタインも、全員が何かしらのリボンをつけている。
マンタインは特に多いな、と思ったらひっついているテッポウオにたくさんのリボンがついているのだった。
テッポウオだぞ。
マツオのテッポウオは気さくなやつで、ウィットに富んだ冗談もうまい。
あいつとはたまに飲みに行くほどの仲なんだが、こっちのテッポウオには話しかけることすら躊躇われる。
リボンもすごいが、もちものもすごい。なんとそいつはヤタピの実を抱えてた。
よく見りゃ全員、立派なものを持っている。隅っこのブラッキーはたべのこしを大事そうに抱えてるし、ナマズンのあれはなんだ、ハチマキか?
ウソッキーにひっついて困らせてるヘラクロスが首に巻いてるのは……スカーフ?
よくわからんが、まるで貴重品の博覧会のように見える。
一方、おれが持っているのは……おまもりこばん。
浮いているにもほどがある。ふゆうだけにな。マタタタタ。
冗談ではなく、ここにいてはいけないような気さえしてくる。わかるだろう。アキバ系の男が、ナウいクラブに迷い込んだ。そんな気持ちだ。
だからこうして、身体を分散させて気配を消してるんだ。
ただでさえ、♀のポケモンだらけのボックスなんだ。そんなとこに♂の、しかもギャラボム用のポケモンが入り込んだと気づかれれば、どうなるか……。
想像したくもないし、試合で疲れているであろう彼女らに、余計な混乱を与えるのも悪い。
このまま空気に溶けて、やりすごそう。
そのとき、おれは妙なものを見た。
なにももちものを持っていないポケモンがいたのだ。