まとめwiki ~ 「♀29匹のボックスに♂1匹を入れてみた」

08話 - 引きこもるゲンガー

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f29m1

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 >ボックス奥:ゲンガーの部屋前

 ゲンガーの部屋のドアを、ノックするポケモンがいた。デリバードである。
「ゲンガー。デリバードよ。入ってもいいかしら?」
 デリバードは、ゲンガーに、部屋の入室許可を求めるが、中からの返事は一向にない。
 しかし、ドアには特別に鍵など付いているわけでもないので、彼女はドアを開いて部屋の中へと入っていった。



 >ボックス奥:ゲンガーの部屋

「……勝手に入って来てんじゃねえよ」
 ゲンガーは、ぶっきらぼうにいった。
 彼女が部屋に入ったとき、彼はドアを背にして踞っていたが、ドアが開く音から、彼女が部屋に入ってきたと判断したのだろう。
「ロコンから聞いたわ。一体どうしたのよ?」
「……お前には関係のないことだろ」
「いいえ、そんなことないわ」
 デリバードは、少し間をとって、静かに語り出した。
「ウチらはね、貴方がここに来る前からこのボックスに預けられて、そして出会ったの。
 最初は、お互い初対面だったから、いざこざとかあって色々大変だったんだけど、同じ天井の下で共に生活をするうちに、少しずつお互いの気持ちを理解し合っていったわ。
 今では……、そうねえ、もう家族のような存在よ。そして―――」
 ここで言葉を区切り、デリバードはゲンガーの隣へと座った。
「もちろん、ゲンガー、貴方もその内の1匹よ」
 と、ゲンガーの方を向いて優しく微笑んだ。

 ゲンガーは、暫く何か考え事をしていたが、やがて、その重たい口を開いた。
「俺がお前らの家族なわけねえだろ。わかったらさっさと出ていけよ」
「でも……」
「いいから出ていけよ!!」
 ゲンガーは怒鳴り声をあげた。
 ゲンガーの威勢に、デリバードは少々戸惑っていたが、やがて立ち上がり、足音を立てないようにして、静かに部屋を出ていった。



 >ボックス奥:リビング

「どうだった?」
 ゲンガーの部屋から出てきたデリバードに、気付いたパチリスが問うた。
 しかし、彼女が首を横に振ったことと彼女の表情から、部屋でどんなことが起こったのか。リビングで待機していた3匹――パチリス、コリンク、エネコたちは手に取るように理解できた。

「キレイハナとロコンは?」
「まだガーディの部屋だよ。……はぁ」
 デリバードは念のためと思い聞いてみたが、エネコがため息混じりに3匹を代表して彼女の質問に答えた。
 デリバードは、自分がゲンガーの部屋へ行き、彼に事情を聞く。
 キレイハナとロコンはガーディの部屋へ行き彼女を慰める。
 そして、残りの3匹はここで待機。
 と、皆に指示を出したのだが、自分はあっさりと彼の部屋から追い出されてしまったのだ。

 ゲンガーのことも気になるが、あの様子だと暫くは何をやっても無意味だろう。
 彼においては、今のところ様子を見るしかない。
 そう判断したデリバードは、ガーディを慰めることを優先すべく、ガーディの部屋へと続く扉へ向かって足を進め始めた。
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