「もしもし、アリスです!」
『おう、甚爾だ。元気にやってるか?』
「はい! トウジからのクエストをクリアして、賢者博士とロボ勇者が新しくアリスの仲間に加わりました!」
『そいつは良かったな。俺も情報を提供した甲斐があった』
法と倫理が塵芥にも劣る聖杯戦争の最中とは思えないほど、少女の声は溌剌としていた。
葬者(マスター)として冥界に放り込まれた彼女は
天童アリス。ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部に通う生徒であり、勇者を志している。
そのアリスは、伏黒甚爾との出会いで発生した依頼(クエスト)の達成報告をしていた。
「トウジは今、何をしていますか?」
『俺か? 俺の方は、また別件で調べ物をしている。ヘイローを持つ葬者だけじゃない……この冥界には、きな臭い厄ネタがいくつもあるからな』
「むむむ……凶悪なダンジョンやボスモンスターを調査しているのでしょうか?」
『お前の言葉を借りるなら、そうだ。どんな形にせよ、この聖杯戦争で生き残るならこいつらを避けて通れねえ。だが、まだ挑む時じゃない……何が足りないか、お前ならわかるな』
「頼れる仲間に、装備やアイテムですね!」
『正解だ。御破算にこそなったが、お前がランサーに話を持ちかけたように、俺も人脈を作っている。お前の動き次第では、繋がりを持たせるつもりだ』
「わぁ、それはとってもワクワクします! また冒険の仲間が増えるのですね!」
『待てよ、お前の動き次第だって言ったはずだ。もし、俺の見えない所で無計画に動くなら話は終わらせる。俺はそんなお人好しじゃないからな』
甚爾からは静かに釘を刺される。
彼は数時間前の戦闘を思い出しているのだと、アリスは察した。
マキナとベイの激突で剣呑な空気に包まれた廃ビルに、躊躇せず足を踏み入れた。
諸々の幸運が重ならなければ、アリスだけでなくマキナすらも敗退している。
『あの爺さんは相当頑固で偏屈だ。もし、また遭遇でもしてみろ。今度こそ、有無を言わさず粉微塵にされるだけだ』
端末から聞こえる男の溜息。
彼と共にいた魔人のオーラをアリスは忘れない。
その真名は相方から既に聞かされている。
ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイ。威風堂々とした姿に怖じ気づくアリスではないが、只者ではないと一目で察した。
序盤では決して出会ってはいけない凶悪なボス。
まさに、魔王。どれだけ過小評価しても、配下の四天王クラスの相手だ。仮に光の剣を引き抜こうとも、ヴィルヘルムに通じるとは限らない。
ライダー……マキナこと
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンがいなければ、そもそも対話すらできなかった。
「……ライダーからも咎められました。後先考えず、前に出てはいけないと」
甚爾とマキナの言葉をアリスは決して忘れない。
どれだけ理想を高く持とうとも、簡単に踏み潰す魔人は冥界には多くいる。
ここで繋がりを持っている甚爾すらも、簡単に心を許してはいけない相手だ。
ヴィルヘルム経由で既に知られても、真名を零さないように注意する。すぐ近くには、甚爾とはまた別種の知恵者がいた。
レオナルド・ダ・ヴィンチ及びキャスターは頼りになる仲間だ。だが、どんな関係であっても礼儀や忖度はある。そこを弁えなければ、マキナは勿論ダ・ヴィンチたちからも反感を買うだけ。
何よりも、迂闊な行動をしては甚爾からも見限られる。
今は残機制のゲームではない。聖杯戦争は、初見殺しの罠や強敵が数え切れないほど潜む高難易度の戦いだ。
『だろうな。相棒からの忠告は、素直に聞いておけよ』
「はい。アリスは反省します。でも、あの時は失敗しましたが、アリスはまだ諦めていません。何度倒れても、絶対に諦めませんから!」
その上で勇者は立つ。
転んでも、また立ち上がればいい。
甚爾とヴィルヘルムが危険な主従であることは既に承知。だが、彼らとのコミュをアリスは妥協しない。
先程、キャスターと二人で対戦ゲームをプレイした。チートによるワンサイドゲームで惨敗したが、彼が楽しそうに笑う姿を見れて満足だ。
もし、あそこに甚爾たちもいたら、もっと楽しくなれる。マキナとヴィルヘルムも、過去の因縁を放り投げてゲームができればいい……アリスはそう願っていた。
「アリスの目的は聖杯に頼らない奇跡ーートゥルーエンドです!」
『……お前のことだ。俺が何を言おうと、曲げないってハナからわかってた。だが、勇気と無謀の区別だけはつけろ。いいな』
「もちろん! アリスはみんなが大事ですが、アリスのことだって大事にします!」
勇者として命がけで誰かを救う覚悟がある。
それでアリス自身が犠牲になれと言われたら、首を横に振る。
例え、アリスが生贄に選ばれたことであまねく奇跡が起きようとも、絶対に否定した。
多くの人が幸せになる裏で、アリスに置いて行かれたゲーム開発部のみんなが悲しむだけ。
アトラ・ハシースのバリアを突き破るため、全てを擲ったアリスに言う資格があるのかわからない。
それでも、どんなに大きな使命があっても、その為に誰かが犠牲になることが正しいとは思わなかった。
だから、トゥルーエンドを達成した暁には、まずはゲーム開発部に報告すると、アリスは決めている。
「アリスはどんなクエストもクリアします! だから、トウジもトウジのことを大事にしてくださいね!」
『わかったよ。保証はねぇが、精々体には気をつけるさ。どこかの誰かさんにも聞かせてやりたいな』
「何の話ですか?」
『気にするな。今から本題に入る……クエストの報酬だろ』
「はい! アリスは、トウジから情報を教えてもらう約束を忘れていませんよ! まずは、アリスが掴んだ情報から話しますね」
アリスがシャドウ・ボーダーに赴いた理由。
伏黒甚爾からヘイローを持つ葬者の情報を提供して貰うため、まずは天童アリスが調査をする流れになっていた。
彼女が持つ光の剣は弾切れとなり、補充しようにも冥界に構えられた店舗では取り扱っていない。
如何にライダーが優れたサーヴァントで、またアリス自身の身体能力が優れようとも、それだけで全てが解決するほど話は甘くなかった。
甚爾のような葬者又は英霊は他にいないとも限らない。この一ヶ月間、アリスは積極的な人助けから縁を広げたが、同時に危険人物から目を付けられるリスクも自分で作った。
失敗とは思わない。しかし、尚更自衛手段は必須となった。
「アリスたちは、冥界の外で何が起きているのかを調べていました」
『詳しく聞かせて貰おうか』
「賢者博士は領域の外にバードを飛ばして調べていたのですが、途中で壊されました。バッテリーはまだありましたけど、怖い女の子に邪魔されて中断させられています」
『死霊やシャドウ・サーヴァントとやらとは違う、少なくとも3級程度はいく呪霊もいるのか? 知られたら困る何かがあって、邪魔をした可能性はあるな……』
ダ・ウィンチとシャドウ・ボーダーの名前は伏せたまま、情報を提供する。
聖杯戦争の進行に伴って、舞台となる冥界が徐々に狭まっていく仕組みはアリスと甚爾のみならず、全主従が認知している。
東京23区から一歩でも出た先にあるのは死に満ちた廃墟で、不用意に足を踏み入れれば運命力が蝕まれた。アリスが機械の肉体を持とうとも例外ではなく、瞬く間に朽ち果てる。
「今、話せるのはここまでです。アリスのスーパーノヴァも、今は賢者博士に調べてもらっていますが……トウジの方で何か追加のクエストはありますか?」
『いや、俺の方から要件はない。敢えて言うなら……そのまま賢者博士とやらに同行して、情報収集に努めろ。厄介事に手を出さなければ大丈夫だ。
俺がベストなタイミングだと判断したらまた連絡する。その時まで、お前もコンディションを整えておけ』
まだボス戦に突入する時ではない。
RPGゲームでも主人公たちは定期的に休み、HP及びMPを回復させる時は必ず来る。体力バーが赤くなっている中で冒険するのは自殺行為。
怠惰や臆病などではなく、勇者だって休息は必要だ。
『じゃあ、俺からの報酬だ。お前の知り合い……か、どうかはわからねえが、確認できたのは二人。
宇沢レイサと、
プラナだ』
「プラナ……?」
知らない名前にアリスは首を傾げる。
宇沢レイサ。深い関わりこそはないが、トリニティ総合学園の自警団を務める生徒だった記憶はあった。
だが、プラナという名は初耳だ。勿論、広大な学園都市のキヴォトスであれば、名前すら知らない生徒は大勢いる。
しかし、簡単に流してはいけない。プラナが何者で、キヴォトスの先生とはどんな関わりがあり、そしてこの聖杯戦争で何を目指しているのか。
『俺が把握したのは、お前を含めて三人だ。調査は続けるが、情報が欲しければ……わかっているな』
芽生えた疑問は甚爾によって遮られた。
脳天気に構えるな、と咎めているように。
アリスの事情など甚爾には無関係。繋がりこそ持っていても、競合相手だと忘れてはいけない。
何か一つでもミスをすれば、彼は躊躇なく損切りする。
「了解しました! 次のクエストまでアリスは待機します。トウジも、気をつけてくださいね」
『ああ。お前も無茶をするなよ』
そうして通話が切れて、報告は終わった。
今のアリスにできることは何もない。一先ずの調査を達成し、愛銃のスーパーノヴァはダ・ヴィンチに預けている最中だ。
トゥルーエンド達成にはやるべきことが山のようにあるが、焦りは禁物。目先の課題を一つずつ丁寧に進めるべき。
(トウジが言っていたプラナ……一体、どんな生徒なのでしょう? いつか、アリスも会ってみたいです!)
この冥界のどこかにいるプラナという葬者。
願わくば、彼女とも手を取り合って共にトゥルーエンド達成のために歩みたい。
当然、コミュを取ってお互いについて知っていき、親睦を深め合うためにゲームだってしたかった。
まだ見ぬイベントを予想して、アリスの足取りは徐々に軽くなるが。
ーーアリス!
そんな彼女の脳裏に響く男の声。
寡黙なマキナらしからぬ、焦燥感に溢れた念話だ。
ーー戻るぞ。今すぐにだ!
ーーどうしました、ライダー? 何かトラブルでも……?
「話は後だ!」
「わぁっ!?」
有無を言わさず、実体化したマキナに抱えられるアリス。
瞬く間に疾走する彼の顔は歪んでいる。それは苛立ちや憤怒の類ではなく焦り。
聖槍十三騎士団の第七位として星の数ほど勝利を手にした彼すらも平静を保てない何かが起きたと察した。
弾丸の如く勢いでシャドウ・ボーダーに飛び込むと、ダ・ヴィンチの苦い顔が目に飛び込んでくる。
「アリスちゃんにライダー君、戻ってきてくれたね!」
「ダ・ヴィンチちゃん? いったい、何が……?」
「それはこれから説明する! 今は、この場からの離脱が最優先だから……キャスター!」
「は、ははははは! お、おねーさん! 『あれ』を、やるんだね! 『あれ』で、おねーさんたちを、たすけるんだね! ははははははははは!」
ダ・ヴィンチの呼びかけに応えるのはキャスター。
機魔(ゴーレム)、
窮知の箱のメステルエクシルは哄笑と共に顕在する。
どんと構えるその姿が、アリスには頼もしく見えた。
e x i l i o m e s t e l
「【エクシルよりメステルへ。ーーーー】」
アリスにとって未知の言語が鋼鉄の巨体より唱えられた。
それは工術。物質を己が思うがままに変える詞術にして、製造や修復だけでなく建造にも用いられる。
ガシャン、ガシャン、と。シャドウ・ボーダーの外から聞こえてくる重々しい稼働音が、清流の如く声色に応える。
まるで巨大ロボットが変形または合体をする際に使われる効果音に近い。
アリスは見えないが、装甲車の両サイドからデルタ翼が生成され、リア部分には巨大なブースターが装着されていた。機体を安定させる垂直尾翼及びラダーを始めとしたパーツも例外なく存在する。
「ダ・ヴィンチちゃん! もしかして、これはーー」
「あぁ、君の想像通り! 今から飛ばすから、しっかり捕まって欲しい! シャドウ・ボーダー……発進!」
「は、は、ははははははははは! ははははははははは!」
ダ・ヴィンチ主従のかけ声を合図として、装甲車もとい飛行船は爆速で飛翔する。
神秘で構成されたコンコルドは瞬く間に超音速の壁を突き破り、機内は大きく揺れた。
「うわーーーーっ! す、凄い速度です! この装甲車に、こんなシステムがあったのですか!?」
「キャスターに頼んで、私が用意させたのさ。前々から予想していた攻撃が起きる前に」
「攻撃? いったい、それは……?」
「これを見て欲しい。ここから遙か上空を飛ばしていたドローンの映像だけど……」
ダ・ヴィンチが指差すのは複数の映像。
何の前触れもなく、遠い彼方から茜色の空を蹂躙する”純白”が現れ、次の瞬間にはノイズに変わった。
常に無邪気なアリスすらも瞠目し、メモリー内で警告が広がる。
危険。危険。危険。天からの魔の手が届くまで1分もかからない。
先のホラーなどとはまるで比較にならない驚異の正体を、アリスも知っている。
「ダ・ヴィンチちゃん……これは、あの破滅でしょうか!?」
「あぁ……現実で例えるなら、埼玉県。凡そ、30から40km離れた先から発射される破壊光線だ。直撃したら即ゲームオーバー……一片の遊び心もなく、徹底的に全主従を殲滅させるだろうね」
「……まるで、何処かの女傑のようだな」
飛来する破滅の間隙を縫って機体が空を舞う最中、ダ・ヴィンチの絶望的な演算を厳粛に受け止めるマキナ。
彼と出会ってからの一ヶ月間、アリスは勇者活動と平行しながら情報収集も欠かしていない。
真夜中の大空を舞台にした三つ巴の戦いは勿論、幾つもの異常事態を既に察知している。
都市一つを軽々しく消滅させる白き光も例外ではない。
不謹慎な例え方をすれば、RPGゲームでも使用される即死系の攻撃だ。オーバーキルどころの話ではなく、特定の個人を通り越して山一つすら跡形もなく消せる。
「どうして、こんなことができるのでしょう」
破滅の主を知ったアリスが抱いたのは、悲しみ。
理不尽に他者を踏みにじる行いは許せない。
勇者として蛮行を止めたかった。
けれど、怒りや義憤以上に、ただ嘆き悲しんでいる。
何の理由もなく一方的な破壊ができるとは到底思えない。
件の破滅が、このような非道に及ぶようになったきっかけは必ずある。
どんな動機があろうと正当な理由には繋がらないが、アリスは知りたかった。
「知ってどうする。おまえが何を言おうと、あの破滅には届かない」
「でも、アリスは諦めたくありません。勇者として、トゥルーエンドを目指すって言いましたから」
その小さな手は魔人に届かず、寧ろ振り払われた苦い体験を覚えている。
だが、一度や二度の失敗や挫折で勇者の心は折れない。
夢を見続ける勇気がアリスにはある。
次に会った時はベイとまた話をすることを決して諦めていない。
同じように、破滅の主従とも真っ直ぐに向き合いたかった。
「その考案は後だよ。今は全速力の回避が最優先だ。例の破滅は私も常々耳にしている……火力と射程範囲を考えれば、遠からずして此方にも危害を加えてくる。だから、私はこの一ヶ月間で切り札を用意した」
破滅による蹂躙はダ・ヴィンチもとうに認知している。
もはや、危険という言葉すら生温いほどの精度や破壊力を誇った。対都市宝具を制限無く操る破滅を前に、生半可な反撃や防御は無意味。
だが、脅威に屈するダ・ヴィンチではない。
人理保障機関カルデアの技術局特別名誉顧問を務め、藤丸立香たちをサポートするために数え切れないシステムを開発した偉人だ。都市を容易く吹き飛ばす厄災の対策など、いくらでも立てられる。
そんなダ・ヴィンチの元に窮知の箱のメステルエクシルが召喚されれば、まさに鬼に金棒。キャスターの工術を活かし、隠された機能を幾つか準備していた。
現時点での虚数潜航(ゼロセイル)こそは不可能だが、シャドウ・ボーダーに飛行機能を外付けさせる程度は朝飯前。
その速度はザレフェドーラが放つ弾雨すらも追いつけない。第一射を全て回避した頃には、既に墨田区から離脱していた。
「キャスターのスキルを元に飛行機能を追加させたから、私自身の魔力を燃料にする必要があるけど……そこは、勝負所。外の映像から着弾点を予測すれば、回避行動は取れる。
あの砲撃は無差別ではあるけど、発射されれば一直線に進むだけ。途中で方向転換されることはない……彼が全力で飛んでくれれば直撃も避けられる」
「は、は、はははははは! ぼくは、はやい! そらもはやく、とべる! ぼくはさいきょうで、さいそくだ!」
キャスターの高笑いと共に、天を駆けるシャドウ・ボーダーは破滅の第二射を正確無比に潜り抜ける。
一方で、ダ・ヴィンチの顔は暗いまま。どうしてそんな顔をしているのか、などとアリスは聞かない。
いや、聞けるわけがなかった。
「……その後は、どうなる。これでは、無様に逃げ惑うだけだ」
「問題はそこなんだよね。回避はできても、攻防の面では圧倒的に不利……敵陣に突っ込むなんて論外だし、逃げ続けるには魔力が足りない。
痺れを切らした破滅の方が、冥界そのものを吹き飛ばすことを選んだら、それでゲームオーバーだ」
マキナとダ・ヴィンチが言うように、これは単なる急場しのぎに過ぎない。
状況としては破滅が有利なまま。砲撃手が構える領域外に向かっては運命力が削られ、万が一辿り着いても返り討ちに遭うだけ。
また、破滅側の手札がこれだけとは限らない。より広範囲の破壊宝具……それも、対界宝具を有していたら聖杯戦争自体が成立しなくなる。
発射される光の数は既に百を上回り、その全てを掠りもせずに回避し続けても、機内には重苦しい空気が漂ったまま。
それでも、何かできることはあるはず。アリスは必死に思考を巡らせていると。
「……ま、待ってください! ダ・ヴィンチちゃん、あれは何ですか!?」
「む……?」
アリスが指差したモニター画面。
そこには、突如として地上から放出された漆黒の斬撃が、破滅が君臨するであろう彼方を両断する光景が映し出されていた。
◆
東京23区の某所。
全主従を標的にしたであろう破滅が止んだ頃、損害の少ない地区にシャドウ・ボーダーは着陸していた。
装甲車が大空を横切れば、現代社会ではニュースに取り上げられる。だが、同時刻に起きた厄災でそれどころではない。
「先ほどの一閃は、恐らくはセイバー……騎士王アルトリア・ペンドラゴンによる宝具だ。色彩から考えて、オルタというもう一つの姿だろうね」
「お知り合いでしょうか?」
「向こう次第、かな。セイバーが私に関する記憶を持って召喚されたとは限らないし、仮に知っていたとしても……同盟を組めるかは望み薄だ。
彼女は中々に傲岸不遜で、敵と見定めた相手には容赦しない。もし、マスターとなった人物が聖杯を狙っていたら、私たちのことも敵と認定する」
ダ・ヴィンチ曰く、暴虐を食い止めたのはある英霊の宝具だ。
クラス名はセイバーで、真名はアルトリア・ペンドラゴン。
彼女が誇る『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』はランクA++に相当する対城宝具。暗黒の極光を真正面から受けては、かの破滅と言えど一溜まりもない。
敵の生死自体は不明だが、最低でも重傷は避けられない威力だ。
「は、はははは! で、でもアリス、セイバーにあいたいよね!」
「はい! キャスターの言う通り、アリスはセイバーともお話をしたいです。そして、助けてもらったことのお礼だってします!」
顔も知らぬ彼女が、誰かのために聖剣を解放したとは断言できない。
けれど、アルトリアが宝具を引き抜かなければ、アリスたちの冒険譚は確実に終わっていた。
どんな動機があろうと、この命を救ってもらったことは真実だ。
「……件の英霊は危険だと、承知の上だな」
「アリスも、簡単に信用するつもりはありません。コミュを取る難易度は極めて高いって、わかっています。でも、彼女には恩ができたことだけは、忘れたくありません!」
「ならば、その決意を貫き続けろ。俺は、おまえが奇跡(トゥルーエンド)に向かう様を見届けるだけだ」
軽率にアルトリアとマスターを探すつもりはない。
独断行動は甚爾からも止められている。
何も考えずに向かっても首を刎ねられるだけ。
ただ、アルトリアに対する感謝と敬意は持ちたい。たった一度だけ、アリスだけでなくみんなにとっての勇者となったから。
彼女が聖杯を狙っている可能性とは、また違う話として考えたい。
「アリス。あの男とは連絡を取るのか?」
「……次の連絡はトウジからすることが決まっています。アリスはトウジが心配ですが、今は待つしかありません。
ルールを破るのはダメです」
もう一つの心配事が伏黒甚爾及びベイの安否。
そう簡単に殺される彼らではないが、これまでの比較にならない規模の破壊だ。
だが、アリスからコンタクトを取る決まりではない。できることは、二人の無事を祈るだけ。
「ふむ。では、その間に……私からの提案を聞いてくれてもいいかな」
新たに固めた決意を後押しするように、ダ・ヴィンチは力強い笑みを浮かべていた。
「提案?」
「君の愛銃である光の剣:スーパーノヴァを解析しているんだけど……アリス、君を含めて、まだ見ぬ可能性が溢れている」
「可能性、ですか?」
「現状だと実現は極めて困難だけど、アリスの強化プランが私の中に生まれた。キヴォトスという都市の話を聞いて、インスピレーションが湯水の如く溢れているのさ。
アビ・エシュフの再現…………言うなれば、臨戦アリスという更なる形態に、君を導くことができる」
「わぁ! ヴァージョンアップ・ファイトですね!」
キャスターがチートでゲームに圧勝した後、ダ・ヴィンチはアリス経由でキヴォトスに関する知識を得た。
その一つにアビ・エシュフが含まれる。飛鳥馬トキが装着するパワードスーツシステムは圧倒的なスペックを誇り、人型の要塞都市とも呼べた。
美甘ネルが率いるC&Cが4人がかりで挑んでも苦戦を強いられた。それほどの武装を、アリスに実装できれば大きな戦力になる。
「だが、そのリソースをどこから引き出すつもりだ。都市一つの力など、軽々しく用意できるわけがあるまい」
「ライダー君が言うように、今のままでは机上の空論だ。あの破滅の後では、場所や資材だって簡単に用意できないし、他主従の状況も確認する必要がある。これから多事多端で、このプランどころじゃなくなるかもしれない。
だから、こういうアイディアがあった、とだけ考えて欲しいな」
マキナの懸念にダ・ヴィンチは苦笑する。
今は厄災を乗り越えたばかりだ。この大事件による被害規模はアリスですらも測定が難しく、やるべきことが山積みになる。
ダ・ヴィンチによるアリスのパワーアップ計画も絵に描いた餅になりかねない。
「了解しました! ダ・ヴィンチちゃん、何か依頼があればすぐに言ってくださいね! どんなクエストも、アリスは全力でこなします!」
「それは頼もしいね。じゃあ、私から勇者に新しい依頼を出そうか。それはーー」
ただ、勇者一行は只管に前を見ていた。
破滅という大きな試練を前にしても決して心は折れない。どんな困難があろうと、真っ直ぐに向き合うだけ。
トゥルーエンド達成のため、賢者博士からの言葉を勇者は待ち望んでいた。
【東京23区のどこか/一日目・夕方】
※シャドウ・ボーダーがどこに着陸したのかは後続の書き手氏にお任せします。
【天童アリス@ブルーアーカイブ】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]光の剣:スーパーノヴァ@ブルーアーカイブ
[道具]木の棒や石(アリスのコレクション)
[所持金]少なめ
[思考・状況]
基本行動方針:トゥルーエンドへいざ行かん!
0.ダ・ヴィンチちゃんからの依頼を待ちます!
1.パンパカパーン!賢者博士のダ・ヴィンチちゃんとロボ勇者のキャスターが仲間になりました!
2.トウジとベイのことが心配ですが、今は連絡を待つしかありません。
3.いつか、セイバーにはお礼を言いたいです。
[備考]
※異修羅世界の勇者候補について(メステルエクシルの知識内で)知りました。たぶん、名前ぐらいしか聞けてません。
【ライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)@Dies irae】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:奇跡という名の終焉へ
1.アリスを守る
2.ベイの葬者(伏黒甚爾)には警戒
[備考]
※ヴィルヘルムとライダー(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)の参戦時間軸は違います。
マキナはマリィルートで死亡後、英霊の座を通じて召喚されています。
【
グラン・カヴァッロ@Fate/grand order】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]無し、強いて言えばシャドウ・ボーダー
[道具]無し
[所持金]潤っている
[思考・状況]
基本行動方針:この領域を解決する
0.次のクエストを考える。
1.アリスちゃんと協力体制。メカ仲間が急に増えたねえ
2.ヒーローの2人に接触したいけどどこにいるか分からないよ~!
3.深夜0時になったらテスカポリトカの店に行って交渉する
4.危険そうな勢力には最大限警戒
5.領域の外にいる謎の存在を警戒。危ない事にならなければいいけど
6.アリスに秘められた神秘に興味と警戒。とりあえず今はロマン砲の整備だね
7.臨戦アリスも実装したいけど……その前にやることがたくさんあるなぁ
[備考]
※
衛宮士郎陣営と非戦協定を結びました。連絡先も交換済です。
※江東区において
白面の者を捜索していた黒炎と戦闘し撃破しました。
※黒い魔獣と炎氷怪人陣営(紅蓮&
フレイザード)の見た目の情報を得ています。
※3/31に東京上空で戦闘をしていた3陣営(
冬のルクノカ、プルートゥ、
メリュジーヌ)の戦闘を目撃しています。メリュジーヌは遠方からの観測のため姿形までは認識していません。
※郊外の2つの市を消滅させた陣営を警戒しています。
※令呪狩りを行っている陣営の情報を入手しました。
※アリスが神代級の技術で造られた機械であると理解しました。
※冥界を制作したバード等で探索しています。
千葉県エリア内で着物姿の童女(しの)を観測しました。
※メステルエクシルの工術によって、シャドウ・ボーダーには飛行機能が追加されています。
※この他にも何か特殊機能があるかもしれませんが、最低でも現時点での虚数潜航(ゼロセイル)は不可能です。
【窮知の箱のメステルエクシル@異修羅】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:ぼ、ぼくが、さいきょう!
1.おねーさんに、したがう!
2.トロア!ま、また、たたかおうね!
3.アリスもゆうしゃ!ぼくとおんなじだ!
[備考]
なし
◆
豊島区のとある公園で、シャーレの先生は一息ついている。
夏油傑との会談が失敗に終わってすぐ、伏黒甚爾は天童アリスとの連絡を済ませた。アリスは件の装甲車を発見し、その主と共に調査活動を行っている最中らしい。
賢者博士とやらは非戦的な主従で、アリスとも仲良くやっていると聞いて先生は胸をなで下ろす。
あまり過保護になるつもりはないが、ここは一秒先の安全すら怪しい冥界だ。友好的な人物と出会える方が望ましい。
少なくとも、ろくでなしに大切な生徒を任せるよりはマシだった。
その甚爾は今、食料の買い出しに出ている。確かに夕飯が近い時間だ。
『先生はそこで考え事をしてくれ。頭が使えねぇ猿らしく、大人しくパシられてやるよ』
そう言い残して甚爾は去った。
怪しい。絶対に何かがある。
彼のような傍若無人な男が下手に出るなどあり得ない。
だが追及などしても、はぐらかされるだけ。この一ヶ月で、彼という男についてそれなりに知ったつもりだ。
最低限、裏切るつもりがなければそれでいい。
無力な大人を屠る機会はいくらでもあったのに、一度たりとも凶行に出なかった。だから、先生を切る選択肢は甚爾の中にまだないはず。
ーー先生!
思案を遮る生徒の叫び。
霊体化を解くのは救世主にして、冥界で出会った最初の生徒。
ザ・ヒーローが、先生の盾となるように立っていた。
その力強い背中から放たれるのはまさに英雄の如くオーラ。ひたすらに、勝者として君臨して人々の羨望を集めた証があった。
その彼は今、焦りの表情で空を見上げている。視線を追ってみれば、隕石の如く迫る極光が目に飛び込んできた。
そう。圧倒的な武力で町を破壊し、人々に恐怖を与える悪意の破滅を先生も知っている。
「あれは、まさかーー!?」
「僕に任せて、先生はじっとしてください」
圧倒的な脅威を前にして、生徒は英雄になる。
宝具発動。悪魔召喚プログラム……普通の少年だったはずの彼が得た、悪魔こと仲魔の力を借りる宝具を発動した。
少年の意志に応えて呼び出されるのは、知恵を象徴する女神。天女の羽衣を身につけ、古代インドに伝わる弦楽器ヴィーナを奏でる黒髪の美女。
ーーサラスヴァティのマカラカーンを使う時です。
生徒の念話と共に目を光らせる仲魔。
LAW(秩序)のALIGN(属性)を持つ女神サラスヴァティの召喚と同時に、先生の周囲を覆うのは魔法攻撃に対する障壁……マカラカーン。
一定時間、あらゆる魔法を反射する効果を持つマカラカーンは、ザレフェドーラの砲撃すら一発残らず跳ね返す。
映像の逆再生の如く後戻りをした破滅は、続けて発射された第二射と激突した。休む間もなく飛来する第三射すら、マカラカーンの加護を前にしては跳ね返されるだけ。
だが、この程度で終わらない。自然災害すら生温く見える衝撃と爆音に戦慄し、次の砲撃を予感して身構える。
その時だった。客観的な方角は南、新宿区から放射される暗黒色の光線を、先生と生徒が目にしたのは。
「あれは……サーヴァントの宝具?」
ーーでしょうね。令呪によるブーストがあるのでしょうが、それを加味しても途方もない魔力でした。元々のステータスも、相当優れているはずです。
既に女神は姿を消し、英雄も生徒に戻る。
周囲に人の気配はないが、英霊の痕跡すら残さないのが聖杯戦争を生き残るコツだ。彼の力を借りる時は必要最低限に留めており、無意味に武力を誇示する真似はしない。
破滅による喧騒が広がろうと、リスク管理は怠らない。落ち着いてすぐ、ザ・ヒーローも霊体化している。
「……甚爾は。甚爾は、どうなったの?」
そこで、ようやく先生は思い出す。
伏黒甚爾は、食料調達に出かけたきりだったことを。
マカラカーンの加護を受けたのは先生ただ一人だけ。そこに甚爾はいない。
「た、大変だ……! もしかしたら、甚爾はーー」
「呼んだか、先生?」
狼狽する先生に、気安く声をかけられる。
振り向くと、あの伏黒甚爾が何食わぬ顔でそこに立っていた。
「おーおー……派手にドンパチやったもんだ。花火大会が始まるなら、酒やつまみでも用意しておけばよかったぜ」
「と、甚爾? どうして……?」
「俺は甲斐性なしの猿だ。猿は猿らしく、ずっと買い物をしてたぜ」
その手に握られているのはLサイズのレジ袋。
この一大事に、一切ぶれることなく買い物をしていたのだと察した。消耗どころか、屈強な肉体には一切の傷や掠りすら見られない。
そう。
クリア・ノートによって幕開けされた恐怖劇(グランギニョル)を、伏黒甚爾は何もせずに乗り越えた。
天与呪縛、或いはフィジカルギフテッド……人間の領域を遙かに超えた身体能力と引き換えに、一切の呪力を持たずに生まれた男が伏黒甚爾。
その縛りによって呪力は勿論、聖杯戦争において必須な魔力すら甚爾は備えず、己のサーヴァントとの念話すら不可能。
呪力及び魔力の欠如によって、正確無比な気配察知スキルを誇るクリアの目からも逃れている。いや、最初から気付かれてもいない。
反撃、防御、逃走、隠伏。生き残った葬者及び英霊が何らかの対応を強いられる中、伏黒甚爾だけは何もしなかった。する必要などない。何故なら、クリアにすら存在を感知できないのだから。
恐怖劇(グランギニョル)など、天与の暴君にとって派手な見世物でしかなかった。
「……まさか、私たちの巻き添えを食らわないために逃げた?」
男の特異体質を知らない先生は、怪訝な視線を向ける。
「さあな。奴がいつ攻撃を仕掛けるかなんて、俺が知るわけないだろ」
甚爾は知らん顔のまま。
破滅による砲撃が来ることなど、如何に彼と言えど予測不可能。本当に、何の意図もない。
ただの気まぐれ。特別な理由なんてなく、一人で買い物に行きたかった。強いて言うなら、先生からメニューに五月蠅く口出しされることを避けた程度だ。
真面目や立派を絵に描いたような先生だ。お金を大事に使え、少しは節約しろ、と文句をつけかねない。
だから一人で出かけた矢先だった。唐突に、例の破滅による攻撃が始まったのは。
だが甚爾はそれほど焦らず、脳天気に先生が待つ公園に歩を進めていた。まぁ、無事でいろよ? という軽い祈りと共に。
「ただの猿に予知能力があると思うのか」
「本当に?」
「しつけえな。夕飯をサービスしてやるから、少しは機嫌を直せよ」
そうして、どこかから買ってきたであろう夕飯を袋から取り出す甚爾。
この様子では、彼は本当に何も関係ない。偶然の結果だと気付いて、先生も追求をやめる。
気持ちを切り替えて食事に入るしかなかった。
鶏の唐揚げ弁当に、マグロのたたき巻。おかずはチキン南蛮と炭火焼き鳥、そして茄子の天ぷら及び春巻きのパック。申し訳程度にサラダも含まれている。
当然、ハイボールの缶も忘れない。冥界で再び命を得てから、この男と酒を交わす機会も、既に日常の一部となった。
「破滅のマスターは今頃キレ散らかしてるだろうな……貴重な魔力を使ったパフォーマンスだろうに、どんなツラか見てみたいぜ」
「サーヴァントのことは心配しないの? ランサー、だっけ……どこかでダメージを受けてるかもしれないのに」
「ハッ。あの爺さんは簡単に死ぬタマじゃねえ……こんなんで終わるなら、ハナから俺の手で仕留められるさ。まぁ、もし本当にお亡くなりになったら、俺もそれまでだ。先生との契約も打ち切りだ」
「それは困るな。君のために私がいくらお金を使ったか、わかる?」
「猿に金勘定を期待するなよ」
二人分の軽口と、箸を進める手は止まらない。
甚爾はランサーのサーヴァントと契約しているが、そこに最低限の絆すらない。強さのただ一点で繋がっているだけで、あずかり知らぬ所で片方が死んでも、我関せずにいる。
それでも、お互いに実力だけは微塵も疑っていない。たかが破滅の光など、勝手に乗り越えるだろうと思っている。
「お前はどうなんだ。大事な生徒と、厄に憑かれたあのガキも標的になっている。確実にな」
煽りや冗談、そして不確かな推測ではない。甚爾の言葉は事実だ。
先の光に多くの主従が狙われている。生徒たちと、
スグリも例外ではない。
「……みんなのことは、心配だよ」
「なら、すぐに合流するか」
「いいや、今は一緒にいるサーヴァントを信じる。この危機を乗り越えるサポートをしてくれるって。聖杯は信用できないけど、確かな強さを持った英霊を呼んでくれることは知ってるから」
無責任な希望的観測と言われるだろう。
本音を言えば、今すぐにでも駆けつけに行くべきだ。特にスグリの場合、厄介極まりない呪いに取り憑かれている。
だが、サーヴァントの強さは折り紙付きだ。
破滅が相手でも、何らかの抵抗手段を持っているはず。祟りや呪詛に関して深い知見を持ち、また殺しの技術に長けた甚爾すらも迂闊に手を出せない相手だ。
例の鬼がどのような意志を持ち、また穢れた聖杯に如何なる願いを賭けているのか、現時点では不明。しかしこの異常事態では、流石にスグリの護衛を最優先させるはず。
「私がやるべきことは、変わらない。生き残った全員で、話し合う場を作る」
「先生が、桁外れのお人好しだってことは、とっくにわかってる。だがな、限度がある……もう、無理に決まってるだろ」
「甚爾ならそう言うと思った。でもね、私は諦めない」
たった今、派手な喧嘩をふっかけてきた相手すらも、交渉の席に並ばせようとする。
我ながら正気の沙汰とは思えない。妥協や譲歩の二文字がある手合いなら、最初から街を消滅させるはずがなかった。
この冥界の脅威は他にもいる。神出鬼没のドラゴンや二体の怪物、今いる豊島区の某所に構えられた〈双亡亭〉の主。そして宝具を解放したまだ見ぬ謎の主従。
彼らにも対話を持ちかけるのは、骨が折れる所の話ではない。
だが、大人として貫くべき意地がある。今も先生を見守る生徒と、目の前の甚爾からは、真摯に向き合って信用を得たのだから。
「さっき、甚爾と話をしたアリスだって、同じことを言うと思うから」
「だろうな。殺る気を剥き出しにしたうちのランサーとも、手を取り合う気が満々だったぜ」
「なら、私もそうしないといけない。先生として、生徒を裏切れないからね。ご飯を食べ終わったら、次の予定を話すから」
「そうかい」
狂気と紙一重な不撓不屈の精神を、甚爾とてとっくに理解している。
ああ、確かにもう無理だ。この大人と、その教えを受けた生徒たちの意志を折ったり、または途中で諦めさせることは、天与の暴君すら不可能。
それこそ、力尽くで命を奪う以外にないが、サーヴァントに妨害される。仮に殺せても、その先にプラスは何一つとしてない。
今はただ、光り輝く理想を抱えながら歩く者たちの姿を見届けるだけ。
「あっ、一人で春巻きを全部食べた? 私はまだ箸すらつけてないんだけど」
「早い者勝ちだ。俺はあのクソガキのツラを拝んでストレスが溜まってる……ヤケ食いくらいさせろ」
「夕飯をサービスさせてくれるって聞いたけど」
「ははっ、なら代わりにサラダをやる。生徒のために、健康には気を遣えよ?」
これは、新たなる動乱の前に挟まれる、大人たちによるほんの僅かな一時。
【豊島区/一日目・夕方】
【先生@ブルーアーカイブ】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]大人のカード、黒焦げの大人のカード
[道具]
[所持金]潤沢だったが、甚爾にたかられているので金欠気味。
[思考・状況]
基本行動方針:『先生』。奇跡は誰にも渡さない。
1.聖杯戦争参加者の願いに対して、妥協点を作る。その為に参加者同士、仲介をする。
2.あの子(スグリ)どうしようかなあ。それに生徒達と合流は……悩ましい。
3.食事を済ませたら、次の予定を話す。
[備考]
※3月中、伏黒甚爾と競艇に行ってます。詳細はお任せします。
※夏油から『狐の面を被った鬼(白面の者)』についての情報を聞きました。先生はスグリのサーヴァントだと当たりをつけています。
【■イ■ァー(ザ・ヒーロー)@真・女神転生】
[状態]健康
[装備]
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:『先生』の『生徒』。
1.可能性が溢れたこの世界でさえも。きっと滅ぶのだろう。あの東京のように。
[備考]
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
[運命力]通常
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]拳銃
[道具]複数保有(詳細不明)
[所持金]先生にたかっているので、潤沢
[思考・状況]
基本行動方針:当分は臨機応変にやっていく
1.先生と飯を食ったら、次の行動を取る。
2.とりあえず、仲介役である先生と楽にやっていく。クソガキ(スグリ)は知らん。
3.ランサーは置いてきた、これからの話し合いに使えねえからな。勝手に殺し合っててくれや。
4.機会があれば、またアリスに連絡する。
[備考]
※宇沢レイサ、プラナ、天童アリスの主従を捕捉しています。
※3月中、先生と競艇に行ってます。詳細はお任せします。
最終更新:2026年04月19日 07:55