忌火起草
【いまびきそう】
| ジャンル |
サウンドノベル |
ASINが有効ではありません。) |
| 対応機種 |
PlayStation 3 / Wii / iOS |
| 発売・開発元 |
チュンソフト |
| 発売日 |
【PS3】2007年10月25日 【Wii】2008年8月7日 【iOS】2012年2月28日 |
| 価格(税込) |
【PS3】7,980円 【Wii】6,090円 【iOS】1,900円 |
| レーティング |
CERO:D(17才以上対象) |
| 廉価版(税込) |
【PS3】2008年8月7日 / 3,990円 |
| 判定 |
賛否両論
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チュンソフトサウンドノベルシリーズ
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「ビジュアルサウンドノベル」へと進化したチュンソフトのホラーアドベンチャー
概要
『
弟切草』や『
かまいたちの夜』でサウンドノベルというジャンルを確立したチュンソフトが、PlayStation 3の表現力を活かして提示したホラーアドベンチャー。
「ビジュアルサウンドノベル」と銘打たれ、実写映像とボイス、サラウンド音響を融合させた演出が特徴。
謎の薬物「ビジョン」を摂取した大学生たちが、幻覚や奇妙な怪奇現象、そして花「忌火起草」を巡る禍々しい因習へと巻き込まれていく惨劇を描く。
特徴
- 実写映像とボイスを全面採用したビジュアルサウンドノベル
- 背景に実写動画や静止画を多用し、登場人物のセリフもフルボイス化。背景グラフィック上にテキストが直接流れる演出で没入感を追求している。
- フローチャートとピンクの栞
- 周回プレイによって新たな選択肢やルートが解放されるチュンソフト伝統のシステム。一度見たシナリオから別ルートへ分岐する「ピンクの栞」等の隠し要素も完備。
- Wii移植版での追加シナリオ(解明編)
- Wii版(『忌火起草 解明編』)では、PS3版で説明不足だった謎や伏線を補完する新規シナリオや解明ルートが追加導入された。
評価点
- PS3の性能を存分に活かしたグラフィックと恐怖演出
- 実写映像を加工したリアルな背景、暗闇から迫る不気味な演出、立体的なサラウンド音響が完璧に噛み合っており、純粋な「和風ホラー」としての臨場感やジメジメとした恐怖度は非常に高い。
- 伝統的な選択肢分岐とフローチャートの分かりやすさ
- サウンドノベルの老舗らしく、分岐の網羅性やフローチャート機能の利便性は高く、周回プレイで事件の異なる側面が明らかになっていく構造はしっかりと機能している。
- 和風ホラーと薬物依存・因習を掛け合わせた設定の不気味さ
- 現代的な若者の薬物(危険ドラッグ)汚染と、古い村に伝わる禍々しい「忌火起草」の因習や祟りを融合させたテーマ設定が秀逸。
- 身近な若者の遊びから一転して逃げ場のない惨劇へと変亡していくストーリー展開は、Jホラー特有の不快感とジメジメとした絶望感を巧みに作り出している。
- ルートごとに大きく変化する多角的なパラレル展開
- サウンドノベルの強みを活かし、同じ登場人物・同じ舞台でありながら、選択肢によってサイコホラー、ミステリー、コメディ、果てはオカルトまで全く異なるジャンルの物語へ変貌を遂げる。
- 1つの事件を多角的な視点やアプローチから紐解いていく構成自体は、チュンソフトが得意とするサウンドノベルの醍醐味をしっかり踏襲している。
論争点
- 実写映像とフルボイス表現がもたらす演出面の評価とノベルゲームとしての弊害
- PS3の描写性能を活かしたリアルな実写映像とボイスの導入は、映画的な臨場感やJホラー特有の生々しい恐怖感を演出するうえで大きな効果を発揮した。
- 一方で、ボイスの再生速度や映像演出の表示テンポにテキスト送りが縛られるため、自分のペースで文章を読み進めたいプレイヤーにとってはテンポの悪さや冗長さとして感じられた。
- また、「文章を読んで想像力を膨らませる」という従来のサウンドノベル本来の醍醐味が薄れ、ビジュアルやボイスの主張が強すぎることに対する古参ファンからの賛否両論を呼ぶ要因となった。
- フルボイスのアニメ調演技
- キャストには本職のプロ声優陣が起用されているため、滑舌や感情のこもった演技そのもののクオリティは極めて高い。
- 一方で、実写寄りの生々しく不気味な背景グラフィックに対して、演技のトーンや声質がいわゆるアニメ調であるため、映像のリアルな雰囲気と浮いてしまっていると感じるプレイヤーも少なくない。
- 隠しシナリオ「車内編」
- 金のしおり到達後に解禁される隠しシナリオ(通称・車内編)は、作中で解禁へのヒントが一切存在せず、自力での発見が極めて困難な仕様となっている。
- 本シナリオでは、それまで展開された「ビジョン」の呪いやサークルの仲間たちが次々と悲惨な死を遂げる惨劇のすべてが、主人公の起こした重大な交通事故とそれに起因する強い罪悪感が生み出した妄想であったという衝撃的な結末が明かされる。
- サークルの合宿の帰路、片思いの相手であるヒロインが別の大人の男性と仲良くしている姿を目撃し、ショックのあまり赤信号を見落とした主人公はトラックと激突。自身が運転する車を炎上させ、同乗していた仲間や歩道を歩いていたヒロインらを全員焼死させてしまう。唯一生き残った主人公は、耐えがたい現実から逃避するために頭の中で偽りの物語を作り上げ、精神病院の隔離病棟で今なお妄想の中に囚われ続けているという凄惨な真実が医師の口から語られる。
- 作中で頻繁に登場した「焼死」や「黒い爪」といった凄惨なホラー描写は、実際の事故による火災被害や過酷な現場の記憶が形を変えて妄想へ漏れ出たものであり、大学3年生という設定でありながら2年生以降の具体的なエピソードが存在せず曖昧にぼかされていた点も、主人公の時系列認識の歪みを正確に反映していたことが証明される。
- さらに、どの分岐を進んでも後味の悪い結末や悲劇的なバッドエンドに収束し、明確なハッピーエンドが存在しないというゲーム全体の不自然さについても、主人公の深層心理にある強い自罰意識がハッピーエンドを無意識に拒絶し、妄想の中で自分自身に事故の恐怖や罪を想起させ続けているためという解釈が成立する。
- ホラーアドベンチャーとしての超自然的な恐怖を一変させ、人間の精神的な闇と悲劇的な整合性を突きつける仕掛けとして、ノベルゲーム史においても非常に強烈な印象を残す隠しシナリオとなっている。
- フィクションにおいて「夢オチ」や「妄想オチ」は物語の前提を根底から打ち砕く禁じ手として忌避されることも多く、これまでプレイしてきた時間や恐怖体験を梯子外しされたと感じる層からは激しい批判が寄せられた。シナリオの立ち位置としては『かまいたちの夜2』における妄想篇に近いが、本作のメインストリーム全体を覆してしまう点が大きな波紋を呼んだ。
- 一方で、この「車内編」の真相が提示されることで、本編中で散見された不自然な描写や違和感のすべてに見事な伏線回収と合理的な説明がつく構成は絶賛の声も根強い。
問題点
- 共通文章が多い
- 全体的に別ルートでも同じ文章、同じ展開が多い。何度も同じ文章を読むと負担が多い。
- 選択肢の不条理さと唐突すぎるバッドエンド
- 直感や論理では回避不可能な選択肢が多く、選んだ瞬間に即死亡・理不尽なバッドエンドへ直行する箇所が散見される。
- テキスト表現・テンポの冗長さ
- 画面全体にテキストが表示される演出や、ボイスの再生スピードに依存する演出によってテキストのスクロールテンポが重く、周回プレイ時に冗長さを感じやすい。
- 既読スキップ・ボイススキップ機能の欠落
- 一度聴いたボイスであってもスキップすることができず、ボイス演出が終わるまでテキスト送りや進行が強制的に待たされる。
- さらに、一般的なノベルゲームにおける標準機能である既読テキストの高速スキップ機能が存在せず(前の画面に戻るバックログ機能のみ搭載)、フローチャートによるジャンプも章の節目や選択肢のポイントにしか移動できない。
- そのため、選択肢やバッドエンドを回収するために周回プレイを行う際、すでに知っている文章やボイスを何度も強制的に最初から聴き直さなければならず、プレイ上の著しいストレスと多大な作業感を強いる結果となっている。
- 初期PS3版における真相の投げっぱなし感と未補完(解明編以前)
- PS3版の時点では本編内で回収されない伏線や唐突な展開が多く、真相が分かりづらいまま終了するルートが存在したため、後発のWii版『解明編』が出るまで評価を落とす要因となった。
- 「かまいたちの夜」等の過去作と比較して薄いミステリー性とテキストの質
- 推理やパズル要素によって真相へ辿り着くカタルシスが乏しく、ストーリー展開が全体的に受動的・怪奇現象頼みになりがちである。
- 文章表現そのものの描写力や怪異の論理的説明が弱く、読ませるテキストとしての魅力を期待したユーザーからは「過去の名作群と比べて文章が浅い」と厳しい評価を受けた。
- 感情移入しづらい登場人物たちの軽率な行動と動機
- 冒頭で軽率に怪しい薬物に手を出す主人公グループの行動、ストーカーや窃盗する主人公をはじめ、危機的状況下における緊張感の欠如や身勝手な振る舞いが目立ち、プレイヤーが感情移入しにくい。
- 「キャラクターに自業自得感があり、恐怖や惨劇に共感しにくい」という声は発売当時から根強く存在する。
- 字幕が完全に表示されない
- 登場人物のセリフがフルボイスで再生される一方で、ボイス音声に対応するテキストが画面上に一切表示されない仕様となっている。
- 専門用語、古風な言い回し、あるいは効果音にかき消されやすい呟きなど聞き取りづらい音声があるのにもかかわらず、文字で確認できないためストーリーの把握を阻害される場面が目立つ。
- さらに、重要かつ緻密な伏線やシナリオの核心に関わる情報ほどボイスのみで処理される傾向があり、サウンドノベルでありながら「文字で追えない」「聞き逃すとやり直しがきかない」というテンポの悪さと不便さが大きな不満点として挙げられている。
総評
- 実写映像とサラウンド音響を駆使したビジュアル表現により、ホラーゲームとしての「怖がらせる演出」のクオリティは一級品。
- 一方で、理不尽な選択肢や周回時のテンポの重さ、PS3初期版でのシナリオ不全などが足を引っ張り、かつての『弟切草』や『かまいたちの夜』ほどの普遍的な名作評価を得るには至らなかった。
最終更新:2026年09月18日 01:39