ふたば系ゆっくりいじめ 572 ぎゃんぶらー

ぎゃんぶらー 23KB


虐待 理不尽 家族崩壊 ゲス 現代 虐待薄め








銀色の硬貨が空き缶に吸い込まれていく。
金属音を響かせながら缶の中を暴れている百円玉。
微細な振動音を伴い、完全停止したお金を見て満足そうに頷く黒帽子のゆっくり。
そのまりさの側に居る家族達は、キラキラと輝く瞳で缶の中にある百円を凝視していた。

「ゆんっ! たしかにおかねさんをかくにんしたよ!」

家族の先頭で、薄汚れた風貌のまりさが声を上げた。

「これからちゅうせんをゆっくりするよっ!」

まりさはそう宣言した後、体を左右に揺らし始めた。





少し時間を遡る。
ここは先程と同じ場所にあたる2車線の市道。
俺はそこに設置された歩道をゆっくりと進んでいた。

今は休日の昼下がり。家にお菓子が全く無かったので購入する為、外に足を運んでみた。
近頃天気が曇りがちだったので久しぶりの日差しが肌に心地よく照らされる。

コンビニの袋に片手を突っ込み、ガサガサと煩く音を立てながら、先程購入した肉まんを取り出した。
まだ暖かくて良い匂いを漂わせる肉まんに、俺は辛抱たまらずかぶりつく。
肉まんの齧った歯形の断片から天に向かってい白い湯気が立ち昇る。
その芳醇な香りに再度魅了された俺は、片手に掴んでいる幸せの塊を口の中に押し込み、
奥歯でじっくりとモチモチの外皮やジューシーな肉汁を噛み締めていく。

まさにこの世の極楽浄土。
特選を冠に付けているだけの事はある。

「ん?」

俺は違和感を感じて足元を見下ろした。
先程安易に立てた袋の音と、漂う香りに引き寄せられたゆっくり達が、俺の足元に群がっている。

「そのあつあつのにくまんさんをまりさに……ゆぶぇっ゛!?」
「ちょうだいね!? れいむにゆっくりちょうだい……ごぶぅおおおっ゛!?」
「んっほおおおおっ!? とかいはなにくまん……あじずのぺにぺにがあああああっ゛!?」
「げほげほっ! ぱちゅにえいようさんをください……むきゅ?むしされたの? かなしいわ……」

俺はそのゆっくり達を蹴って踏んで千切って無視をした。

折角補給した栄養をそんなクズ共に使う事は無駄である。
半殺し状態のゆっくり達は、冷たい地面の上でグネグネと苦しそうにもがいて、その内動かなくなった。

哀れな野良ゆっくり達。
寒空の下、空腹でも無く事故でも無く、慈悲も与えられず潰されるという終焉を迎えたゆっくり達。

このゆっくり達に無かったのは運だった。
以前、物乞いしたら食べ物を貰えたという経験。与えられた事による自己備讃の増長。声を掛けた人物。
様々な不幸が交じり合い、大きな絶望を生み出した。

その結果がこの世とのお別れ。
だが、厳しい季節が訪れる前に永遠にゆっくりしたのは、幸せな事なのかもしれない。



道路を挟んだ向こう側の歩道でれいむ達が歌を歌っていた。
親れいむの周囲に寄り添う多数の小さな子供も声を高らかに上げて合唱を行っている。

しかし、心響く音色とは程遠い耳障りな雑音。
歌いきった家族は、"キリッ!"とした表情でおひねりの投入を待っている。
なんてずうずうしいのだろうか。

俺は道路を横断して潰そうかと思っていたその時、れいむ達家族の後ろにある店のドアが開いた。
れいむ達は顔を綻ばせ、現れた人物にずいずいと足元の空き缶を突き出しながら、何かをおねだりしている。
その悪びれないれいむ達の態度を見ていた店のマスターが怒りを爆発させた。

親れいむが肌色のお腹に蹴りを受けてお空を飛んでいく。
その短い滑空の後、地面に体を強く打ち付けて汚い声を漏らし、小さく弾みながらコロコロと道路中央に転がっていった。

親れいむは口から拳大の餡子を吐き、マスターを睨みながら道路の上で文句を言おうとして、
大きく口を開いたその直後、荷物を満載に積んだ4tトラックにサックリと轢かれ、道路上で黒い塊を撒き散らしながら爆ぜた。

それを見ていたれいむの子供達。
親と同じく大きなお口を開けたまま、悲鳴を高らかに上げている。
それがまた癇に触れたのだろう。

マスターはその場に屈みこみ、柔らかくて小さい子ゆっくり達を乗せている新聞紙の端を摘み、泣き喚く塊を包み込んでいく。
そして、その後店の裏へと消えていった。

「赤ちゃん達、ゆっくりしていってね~。ってか?」

歩きながら全てを見ていた俺は、そんな皮肉を無意識に口ずさんでいた。

「ゆっくりしていってねっ!」
「あかちゃんはゆっくりできるよっ!」

「?」

呟いた俺の言葉に応答が返ってきた。
少し目を見開きながら声のした方向に顔を向ける。

『『 ゆっくりしていってね! 』』

そこに居たのは地面に広げたチラシの上で互いに寄り添う家族の姿。
黒帽子を被ったまりさに大きなれいむ。それと赤ゆっくりが2体。ありふれた組み合わせだ。
さっさと潰そうと思いながら、俺は右足を上に持ち上げる行動を起す。

「まりさたちとしょうぶをしていってね!」

その言葉に俺の右足が止まる。
俺はその突拍子も無い発言に興味を引かれたのだろう。
何故ならば大人しく次の言葉を待っていたのだから。

「たったひゃくえんさんで、ごうかしょうひんがあたるよ!」

まりさは笑顔で愛想を振り撒いている。
周囲の家族も満面の笑みだ。正直気持ち悪い位の作り笑い。胸焼けがしてくる。
俺はその家族から視線を背け、ポケットから出した小銭入れから硬貨を取り出し、親まりさの前にある空き缶に百円玉を指で弾いた。

宙を舞う一つの硬貨。
空き缶に吸い込まれていく百円玉を見ている家族の笑顔は、段々と黒く薄汚れた笑みに変わっていく。

(こいつらは最悪だ)

弧を描きながら空を飛ぶ硬貨の軌跡に合わせて視線を移動させているゆっくり家族を見ながら俺はそう思った。





銀色の硬貨が空き缶に吸い込まれていく。
金属音を響かせながら缶の中を暴れている百円玉。
微細な振動音を伴い、完全停止したお金を見て満足そうに頷く黒帽子のゆっくり。
そのまりさの側に居る家族達は、キラキラと輝く瞳で缶の中にある百円を凝視していた。

「ゆんっ! たしかにおかねさんをかくにんしたよ!」

家族の先頭で、薄汚れた風貌のまりさが声を上げた。

「これからゆっくりとちゅうせんをするよっ!」

まりさはそう宣言した後、体を左右に揺らし始めた。

「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっ……」

下手なドラムロールを口ずさみながら、目を閉じて激しく揺れる親まりさ。
暫く揺れた後、いきなり"ピタッ!"と止まり大きな声を上げる。

「はずれだったよ! ざんねんしょうをあげるね!!」

抽選結果を告げたまりさは、後ろに積まれていたゴミの山(そうとしか見えない)から、数本の草を咥えてきた。
そして俺の足の先に雑草が置かれる。色々と残念すぎる結果に頭が痛くなりそうだ。

「ハズレだったのかい? どんな抽選方法をしてるのかな?」
「それはごくひじこうだからおしえられないよ! でも、つぎはあたるきがするよ!」
「れいむもそうおもうよ! だからひゃくえんさんをいれてねっ!?」

キラキラとした欲望全開の瞳で追加を求めるまりさ達。
俺は財布から硬貨を取り出し空き缶に投げ入れた。

「ゆっくりさいちゅうせんするよ! ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ……!」

まりさがまたも左右に揺れながら口を小さく窄み唸り出す。
今回は追加のお金に興奮した親れいむも左右に体を揺すり出した。
ウザさ倍増。困ったもんだ。

「ゆっくりざんねんしょう! こんかいもはずれだったよ!」

またもまりさはゴミの山に顔を突っ込み、残念賞の石っころを俺に差し出した。
どう見ても道端の石にしか見えない。

「きれいないしさんだよ! よかったね!」

まりさは笑顔で俺に声を掛ける。凄く満面の笑みだ。
しかし、そのまりさの横で赤れいむが煩く騒いでいる。

「ありぇはれぇいみゅのちゃきゃりゃみょのにゃんだよっ!? ゆっきゅりかえちてにぇえっ!」

俺は地面に転がる石を摘んで目の高さに持ち上げる。
どう見ても普通の汚れた石にしか見えない。ここまで情熱的に叫ぶ魅力があるとはとても思えないのだが。

「ゆっくりがまんしてねっ! おかねさんのほうがきれいでしょっ!」
「やじゃやじゃああああああああっ! りぇいむはあにょいししゃんがいいにょおおおおおおっ!?」
「わがままばっかりいうわるいこは、ごきんじょさんのありすにれいぷされるよっ!」

親に説得されている赤れいむは全く泣き止む様子が無い。
俺はこれ見よがしに、宝物の小石をポケットへと放り込む。

「ゆえええええええええええええええええええんっ゛!」

それを見ていた赤れいむは大号泣。
親まりさ達は困った顔をした後、すぐさま怒り顔に変えて赤れいむに体罰を与えた。
俗にいうお尻ペンペンだ。

「ゆびやぁあああっ!? ぎょめんにゃちゃいぎょめんにゃちゃいいいっ!!」
「わがままいうこはおしおきするよっ!」

真っ赤に尻を腫らした赤れいむは体を横にしてすすり泣く。
大人しくなった赤れいむにご満足の親達は、やけにすっきりした笑顔を浮かべていた。
うん。やっぱりこいつら最低だわ。

「おにいさんまたちょうせんしない!?」
「つぎはぜったいあたるよ!」

息を荒くしながら詰め寄ってくる親まりさ達。
ちょろいカモを手に入れたとでも思っているのだろう。目の奥には"¥"の文字が爛々と光り輝いていた。

俺は少し大きめの硬貨を財布から取り出す。
それを見たまりさ達は目を見開きおしっこ漏らさんばかりの勢いで叫んだ。

「ごひゃくえんさんだよおおおおおっ!?」
「あれがあればおなかいっぱいたべれるねっ!? まりさっ!!」

こいつらがお金の区別が付くのは最初から予想の範疇だ。
現代社会の町野良ならば知っていても不思議ではない。
道端でしている技能を伴った物乞いの主は現金となり、中途半端な仏心を出して食べ物を与えると舌打ちされるのだ。
その後は当然『ゆっくりごときが何様だ!』と、潰される光景はこの周辺に限り日常茶飯事になりつつある。



「これで何回抽選が受けれるのかな? 5回位は出来るよね?」
「ゆゆゆっ。いっかいだよ! いちまいしかないからいっかいしかできないんだぜっ!」
「そうだよ! にんげんさんはばかなの? けいさんもできないの?」

まりさとれいむが一回しか出来ないと吼えた。
なんという業突く張りなのだろうか。地獄に落ちるのは確定だな。
単に計算が出来ない可能性もあるが。

「ゆっへっへ! それではちゅうせんをはじめるよっ!」

親まりさは、空き缶に入った五百円硬貨を舐め上げるように見つめた後、やっと抽選体制に入った。
ちなみに親れいむは、まだ缶に入った大きな硬貨を涎を垂らしながら見続けている。

「ゆゆゆゆゆゆっゆん! ゆん! ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ!」

何時もより長めの抽選が行われていた。俺は、
『別に結果は解りきってるからさっさと終われば良いのに。』と、思いながら大きくアクビして抽選報告を待つ。

「ゆじゃあーん! はずれだよっ! おしいところでとうせんをのがしたよ~。ざんねんだったね!」

親まりさはそう伝えた後、全身を使いゴミ山を俺に向けて押し出した。
ゴリゴリと地面を擦る音を鳴らしながら、ガラクタが俺の目の前に積みあがる。

「ごひゃくえんをくれたからさーびすだよ! まりさたちにかんしゃしてねっ!」
「さすがまりさはふとっぱらだね! ほれなおしちゃうよっ!」
「ゆわーい!こりぇでごうきゃなぎょはんしゃんだべりゃれるねっ!」
「ゆぐ……、ゆぐっ……。れぇいみゅのちゃかりゃもにょっがっ……」

幸せそうに体を擦りつけあっているまりさ家族。(例外1体)
赤まりさは親まりさの帽子に乗せられ、親れいむが七百円入った空き缶を咥えて商店街へと歩き出した。
思い焦がれるのは大量の食べきれないお菓子に埋もれたまりさ達。
夢一杯の家族は地面に泣き伏せる赤れいむの姿は瞳に映らない。
その場に赤れいむは置いてけぼりになり、ナチュラルに捨てられそうになっていた。

「もう一回勝負しようよ」
「ゆ?きょうはもうみせじまいだよっ! おとといきてねっ!」
「ゆっくりせずにりかいしてねっ! おにいさんはばかなの?」

かなり失礼な言葉を口走る興奮した一家。
大金を手に入れた為、頭に血(?)が昇っているようだ。

「そう言わずに勝負しようよ? ほら、これを賭けてさ」

ガサリと音を立てて左手のビニール袋を見せびらかすように持ち上げる。
『それがなんなの?』と言う顔でまりさ達は見ていたが、袋の口を広げて内容物を露にした時、家族の顔色が変わった。

中にはお菓子が入っていた。別にそれ程多くは無い。
でも、一仕事終えて空腹のまりさ達には魅力的に写ったハズだ。
お金を手に入れる欲求は先程満たした。残るは食欲のみ。
まりさ達は滝のような涎を流しながら解り易い欲望を露にしている。

「一回百円で俺とひと勝負。まりさが勝ったら全部あげるよ」
「ゆっ?ゆう……どうしよう」
「まりさ。どうするの?」

れいむは心配そうにまりさを見つめている。
まりさはうんうん唸りながら悩んでいた。

「ゆ~ん! ちょってもゆっきゅちできりゅあみゃあみゃしゃんだにぇっ! まりしゃありぇがたべちゃいよっ!!」

親まりさの頭上で赤まりさが興奮気味に叫んだ。
それがまりさの思考を狂わす。

「……いっかいだけ。いっかいだけするよっ!」
「毎度ありー」

親まりさは、側に居るれいむが咥えた空き缶の中から百円を取り出し、自分に言い聞かせるように呟く。
そして、舌で掴んでいた硬貨を俺の掌に乗せ、鼻息荒く気合を入れてその場で鎮座した。

「そうだな……勝負方法はこの百円玉がどちらの掌に入っているのか?に、しようかな」

俺は硬貨を両掌で少し泳がせた後、右手に握りこんだ。蝿が止まるような遅すぎるスピードで。
その様子をまりさ達はしっかりと見ていた。右手に硬貨が吸い込まれていくその状況を。

「さて、どちらにコインが入っているのかな?」

まりさは含み笑いが抑えきれなかった。
『この人間は本当に馬鹿でカモにしかならない奴だ!』と、心底思っていたのだから。
『百円であの大量のお菓子が手に入る! 今日はなんて最高の一日なのだろうか!』と。

「みぎてさんにはいってるよ! おまぬけなおにいさん!」
「右手にするんだね?」

俺はゆっくりを掌を開いていく。
まりさはお菓子を手に入れた後、『この間抜けな人間の目の前で見せ付けるように食べてやる!』と思っていた。
既に勝者の笑みで結果を待つまりさ。と言うか、待ちきれなくなってお菓子の入った袋へと少しずつ擦り寄っていく。

親れいむも上下に跳ねながら大喜びだ。
空き缶に入った硬貨が擦れる金属音が周囲に響く。

幸せ一杯のゆっくり家族。
その家族に賭けの結果が示された。





ぴるぴると体を震わせるゆっくり家族。

「どぼじであだらないのおおおおおおおおおおおおおおっ!!!?? 」
「まじざのばがああああああああああああああああああっ!!!?? 」

親れいむの口から叫び声が上がり、空き缶が地面へと転がっていく。
その中から硬貨の音は全くしなかった。

スッカラカン。
そう。中に入っていたお金は全て無くなっていたのだ。

お腹空いたと泣き喚く赤れいむ。
親まりさに詰め寄りながら文句を言い続ける親れいむ。口をへの字に曲げて、ゆうゆうと唸る親まりさ。
まだチラシの上でシクシク泣き続けている赤れいむ。

そこに幸せ一家の面影は無かった。

「もう終わり? 毎度ありがとうございまーす」

俺は七百円を片手で弄び、軽く宙へと舞い上げる。
その硬貨が舞う姿を見ていたまりさ達。『あれは自分達の物だったのに!』との思いが溢れ出し、
それが涙に変換されて肌色の頬を伝っていく。



まりさ達は最初の確信めいた勝負を外した。
男が開いた右掌には硬貨が無かったのだ。

驚きに目を見開くまりさ家族に男は伝えた。

『まだやりますか?』

それを耳に入れたまりさは、

『もういっかいだけするよっ!』

頭から火が飛び出さんかのような真っ赤な顔で宣言した。
親れいむは当然止めた。六百円あれば十分だと。
一番冷静だったのはこのれいむだけだった。

しかし、親まりさと赤まりさの暴走は収まらない。
追加の百円が消え、勢いのまま五百円を使おうとしたまりさ達を止めようと踊りかかったれいむを突き飛ばし、
理想の夢を求めて賭けに挑戦したまりさ達。

待っていたのはどん底に落ちていくような絶望だった。





カラになった空き缶を覗きながられいむが号泣する。

「れいむのごひゃくえんさんがなくなっちゃったよおおおおおっ゛!? どぼじでごんなひどいごどずるのおおおっ゛!!! 」

これで美味しいお菓子も購入する願いは叶わない。
お腹がこんなに空いているのに食べる物は何も無い。
自分達のなけなしの宝物(ゴミ山)は男に取られたのだから。

「れいむはかわいそうなんだよっ! ゆっくりそのあまあまをちょうだいねっ!?」

目をうるうるさせながらコンビニ袋へと近づいて来る親れいむ。
腹から絶えず鳴り続ける怪音が耳障りで不快極まりない。

「ゆっくりいただきまー、ごぶっ゛!? ゆうううううっ!!」
「お菓子に近づくな。れいむは馬鹿なの? 死ぬの?」

俺に蹴られて歩道上を転がっていく親れいむ。
それを誰も追いかけない所がもの悲しい昼下がりの午後。
れいむは、『ゆっ! ゆおっふ!?』と、おっさんみたいな声を上げながら、逆さになった体制を戻そうと懸命に足掻いている。

「わかったよ! おにいさんはいかさまをしてるんだね! まりさにはおみとうしだよっ!」

考え込んでいたまりさは"キリリ"とした顔で確信に迫る。
と言うか、今頃気付くのはいかがなものか。

「証拠はあるのかい? 負け犬野郎」
「まけいぬじゃないもん! まりさはゆうしゅうなゆっくりなんだからね! いかさまもできるんだよ。ゆっへん!!」

ペラッと暴露したまりさ。
伸び上がって偉そうに胸を張っている場合では無いのだが。
俺は溜息を吐きながら頭を傾げた。

「まあいいや。勝負は続けるかい?」
「ゆ……。でもまりさのおかねさんはなくなっちゃったよ!」

「別に賭けるのはお金じゃなくても良いだろ」
「ゆ?」

俺は親指をクイッと曲げてある物に向ける。
その場所にまりさの視線も釣られて動いた。
そこには飽きもせずスンスンと泣き伏せている赤れいむ。

まりさはお菓子の入った袋と赤ゆを交互に見ながら深く頷いた。





「やめてねっまりさっ! なにをかんがえてるのっ? あたまがおかしいのっ゛!?」
「はなすんだぜっ! れいむっ! はなせえええええええええっ!!」

まりさに体当たりされたれいむは、再度歩道をコロコロ転がっていく。
この家族の中では、地味に全身擦りキズだらけの不幸なれいむ。

「ぴゃぴゃやめちぇにねっ! れぇいむがきゃわいきゅにゃいのっ!?」
「ゆん?あー、かわいいかわいいよ? でもいまはすこしがまんしてね」
「いにゃああああああああああっ!?」

乾いた顔でまりさが愛の無い返答を赤れいむに伝える。
目が完全に何処か遠くを見ていた。

「それでは早速……」
「だめだよっ! べつのしょうぶにゆっくりかえてねっ!」

まりさはこの賭博では勝ち目は無いと見切っていた。
だから変更を訴えた。そうすればこの人間はボロを出すと信じて。

「……それじゃあ表裏当てにするか」
「おもて? うら?」

勝負内容はコインの表裏を当てると言う単純なもの。
回転を加えながら弾いた硬貨を手で受け止めどちらかを宣言する。
説明が終わりまりさが承諾した所で、俺は百円を空へと打ち出した。

(ゆっふっふ! これならかてるよ!)

嫌らしい笑みを浮かべながら勝利を確信したまりさ。
急に変えたこの勝負方法ならばイカサマは出来ないハズだとの思いがあった。
そうなれば優秀な自分が余裕の勝利を収める。そんな的外れな考えをしながら空に浮かぶ硬貨を見つめていた。

「はい。どちらでしょうか?」
「ゆ~。…おもてだよっ! まちがいんだぜっ!」

ゆっふー。と、息を吐きながら予想を声に出したまりさ。
その顔は自信に満ち溢れていた。

「残念でしたー。裏でーす」
「ゆええええええええええええええええっ!?」

一瞬にして自信が崩壊。
俺の投げた残念賞の雑草が、まりさの湿った顔にペタリと張り付いた。

「どぼじでっ!? ごんなのおがじいよおおおおおおおおっ!!」

まりさはその場でゴロゴロと転がる。
相当悔しいらしい。

「それではもう一回しようか? 次なら勝てると思うよ」
「?」

泥に塗れた顔を上げたまりさ。
そこには男の手に摘まれて宙に浮かぶ赤まりさの姿があった。

「かっ……かえしてね!? まりさによくにたかわいいあかちゃんかえしてねっ!!!?? 」

赤れいむとの違いが解るゆっくり。その名はまりさ。
凄まじい贔屓を垣間見た瞬間だった。

「大丈夫だよ。まりさなら勝てるさ。もう一回だけ……そうだろ?」
「ゆん……もういっかいだけ? そうだね……もういっかいだけ……」

俺が囁く悪魔の言葉でまりさは誘惑されていく。
まだ見ぬ未来の可能性を信じて夢を追い続ける。
進むべき道など無いという事も解らないままに、まりさは懸命に走り続ける。

まりさはもう後に引き返せない。





「ゆっ……ゆへへへへへへへ」

まりさが道端で仰向けになって空を見上げている。
大きく変わった所をいうならば、自慢の黒くて立派なお帽子が無い。
見開いた両目からは止まる事無く涙が流れ続けていた。

あれからまりさはまたも全敗。

赤まりさというコインを失い、その後ツガイのれいむをBETしたのだが、あっけなく連敗。
苦汁の決断をして自分のお帽子を賭けの対象にしたがあっさりと負けた。
この短い文章で説明が終わる位の見所が全く無い一方的な負け戦だった。

「ゆ~ん! ゆっくりおにいさんのうちにいくよ! すっごくたのしみだよ~」
「れぇいむのちゃかりゃもにょおきゃえりにゃさい! しゅーりしゅーりしゅるよっ!」
「まりしゃはおにゃかしゅいたきゃら、あみゃあみゃたべしゃせてにぇっ!」

賭けの対象で手に入れたれいむ親子が俺の手元で煩く騒いでいた。

れいむはツガイの黒帽子を被り、既に俺のパートナー気取りだ。
赤ゆ共は相変わらず煩い。というか赤れいむの執念は凄いと感心せざるを得ない。
赤まりさの態度は終始ムカツクだけだった。

「賭けをしようか?まりさ」
「ゆへへへ! するよっ! いっぱいするよっ!」

俺は赤まりさを摘んで空高く持ち上げる。

「この高さから赤まりさを落としたら、息があるのか絶えるのか。さぁドッチ?」
「ゆへへへへへっ! しんじゃうよっ! ゆっくりしちゃうよっ!」

喚く赤まりさを地面へと投下する。
その際の親れいむは、喚く事も涙も流そうともせずに、落ちる赤まりさを無表情で見つめていた。
この親の冷たい仮面を視界に焼き付けて赤まりさは地面へと落ちていく。
赤まりさは硬い硬いアスファルトの表層へと近づいていった。

「おめでとう。まりさの勝ちだ! 商品は落ちた赤まりさをプレゼントしよう」
「やったよ! ゆははははは! まりさはゆうしゅうだよっ! うめっこれうめっ! あまあましあわせええええっ゛!!! 」

ザリザリと地面を舐める帽子無しまりさ。
あまあまと勝利を手に入れて凄く幸せそうだ。

「こんなごみはゆっくりできないよ!」
「……ちゅーやちゅーや。むにゅむにゅ」

かつてのツガイを一瞥して上から目線で貶す親れいむ。
宝物を胸に抱え、泣き疲れて眠りに付いた赤れいむ。

「そうだな。ゆっくり帰るか」
「きょうのばんごはんは、はんばーぐにしてねっ! ぜったいだよ!? やくそくだからね!」

俺は右手に肌色の荷物を載せて帰宅する事にした。

「こんなものはいらないよ! ぽいぽいするよっ!」

親れいむは被っていた黒帽子を勝手に放り投げる。
帽子はふわふわと漂い地面へと落ちた。

「ゆへへへへ!……ゆ? まりさのおぼうしだああああっ! ゆうしゅうなまりさのおぼうしだああああっ゛! げはははは!」

千鳥足で帽子を追いかける壊れまりさ。
それを横目に俺達は歩道をまりさとは逆方向へと進んでいく。

「まてまてえええええっ! まりさからはにげられないんだぜえええええっ゛! ゆやっほおおおおおっ!」

車道へと風で帽子が流されて、まりさもそれを追う形で足を向ける。
そして、遥か前方を歩いていた俺の横を、大きなトラックが通り過ぎて後方へと進んでいく。

その直後、何かが爆ぜる音とくぐもった声が聞こえた。
だが、その声にれいむ達は全く反応を示さない。
まだ見ぬハンバーグに夢中の親れいむと、睡眠から覚める事が無い赤れいむ。
興味を失った物に対しての非情さは、流石ゲスと言わざるを得ない。

こうしてまりさ親子達のゆん生は静かに幕を閉じた。





鮮やかなテーブルクロスの上に皿が置かれた。
白い湯気が立ち上り美味しそうな匂いが周囲に広がっていく。

「ゆゆゆゆっ! はんばーぐさんだよおおおおおおおおっ!」
「しゅっごくいいにおいだにぇっ!」

それはれいむがリクエストしたデミグラスソースたっぷりのハンバーグ。
肉厚があるハンバーグの上に乗る乳白色のチーズがトロリと溶けてお肉を包み込んでいた。
側に添えられたニンジンとポテトからの甘く香ばしい匂いもたまらない。

立ち上る蒸気を口に含むだけで濃厚な味が口内に広がる感触がある。
食べたらもっと幸せになるに違いない。

「いただきまーす!」

大きな口を開けて歯を噛み締める。
しかし、素晴らしい幸せは訪れず、勢い良く閉じた歯の打ち鳴らす音だけが辺りに響いた。

「ゆ!? れいむのはんばーぐさんゆっくりかえしてねっ!」
「れぇいみゅは、おにゃかちゅいてちんじゃいしょうだよっ!?」

俺は食器を掴み高い戸棚の上へと置いた。
れいむ達は必死に体を伸ばして何とか食べようとするが、到底届くような距離では無い。

「おまえはばかなの!? それともあほなの!? むしろしねえええええええっ゛!」
「きゃわいいれぇいむがしぇくしーぽーじゅをひろうしゅるよっ! ちらっ! こりぇでみゃんじょくちた!?
 しゃっしゃとよこちぇ! きゅしょやりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ゛!!! 」

態度が増徴していく赤れいむに強めのデコピンを一発お見舞いした。
苦しげな声と共に、テーブルの上を面白いくらいに転がっていく。

「れいむのゆっくりしたおちびちゃんがあああああああああっ゛!?」

まりさの時には決して上げなかった悲痛の声を叫ぶ親れいむ。
涙ながらに転がっていった赤れいむを追って行く。

「さて、勝負をしようか?れいむ」
「なにをいっているの? ばかなの!? しぬ……」

れいむの言葉が途中で止まる。
鈍く光るハサミがれいむの前に突き出されたからだ。

「今から勝負をしてれいむが勝ったらハンバーグを与えよう。ただし、負けたらそのリボンを貰う」
「ゆゆゆゆ!? れいむのすてきなおりぼんは……」

「別に違うのでもいいぞ。例えば……あそこに居るアレとかな」
「ゆ?」

れいむはアレを見つめて渋い顔をしながら考えた。
自分の大切なリボン。可愛いアレの存在。美味しそうなハンバーグ。勝算の割合。
頭の中の優秀な天秤で答えを導き出したれいむ。

顔を上げたれいむの目は輝いていた。

「……そうか、それでは始めようか?」
「ふん! れいむにさからったことをこうかいしてねっ!」

賭けの対象にされた哀れなアレが泣き叫ぶ。
小さなリボンがバラバラにされる未来しか無いのに、親のれいむは自信満々で勝負を受けた。

ハンバーグが冷める頃には何らかの決着が付いてるだろう。
それまでれいむは悲痛を込めて叫び続けた。


「どぼじでぜんぜんかてないのおおおおおおおおおおっ!?」


れいむ達。ここ一番の勝負で俺に勝てる訳がないぞ?
なにせ、俺は息を吐くようにイカサマをするゲスなのだから。










 ・イカサマ(?)のお話
  ゆっくりが勝てる要素が見当たらない
  こんな子供だまし以下の技量でも簡単に引っ掛かりそう

 ・自分が考えているれいむ達のその後は
  体のパーツを賭けながらジックリと絶望を味わっていくという結末です




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感想

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  • ぱちゅりー愛 -- 2016-08-30 16:52:59
  • ぱっちぇさん… -- 2011-08-12 18:22:12
  • 適当に拾ったゴミかと思ったら子供の宝物で驚いた……
    ってかごみ拾ってくるぐらいの手間惜しむなよ饅頭w -- 2011-05-12 23:12:49
  • ぱちゅりーは横で死んでるゲス共で栄養補給しときな。 -- 2011-03-07 01:45:19
  • 赤れいむへの虐待がもっと見たかったw -- 2011-02-17 15:58:08
  • ゆっくりは欲望に忠実かつ自分の都合の良い方向に考えるんだから
    賭け事を前にしたら絶対に賭けるだろうなw -- 2010-11-10 00:51:38
  • 賭け事に何か手を出すからーwww
    ゆっくりに賭け事させたらあっと言う間に破滅しそうだな -- 2010-10-17 11:53:11
  • れぇいみゅが一番ウザかった。一人で泣き続けたまま一生放置されて野垂れ死んで欲しいな、とちょっと思った。 -- 2010-09-14 15:49:21
  • 通りすがりのぱちゅりーが何か気に入ったw
    幸せになってほしい。 -- 2010-08-26 18:07:00
  • 楽しそうな遊びだ。このSSさんはゆっくりできるな。
    >「げほげほっ! ぱちゅにえいようさんをください……むきゅ?むしされたの? かなしいわ……」
    このぱちゅりー良い子っぽいのでなんか残念。 -- 2010-08-09 17:23:38
  • イカサマは極めれば美学
    それを理解できないゲスゆっくりは死んで当然w
    ざまぁw -- 2010-08-05 03:22:24
  • 目の前にある幸せを賭けのために手に入れられないゆっくりはざまみろだね! -- 2010-08-04 23:18:38
  • こういう虐待もありか。 -- 2010-07-20 14:06:57
  • ドゲスなんだね~わかるよ~ -- 2010-06-08 22:24:53
最終更新:2009年12月14日 00:00
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