ふたば系ゆっくりいじめ 877 常識を蹴り飛ばせ!!

常識を蹴り飛ばせ!! 34KB


虐待-いじめ 愛で 野良ゆ 赤子・子供 希少種 現代 独自設定 バッジ設定あり いじめ・・・?



 ・希少種愛でです。どんと来いという方はどうぞ。ピキィっとくる方はお気をつけ下さい。
 ・変な設定が入ってます。大らかな心で受け流していただけると幸いです。


では、ゆっくりしていってくださいね!!!




とある午後の昼下がり、人気の無い公園の片隅にて。
「たしゅけちぇ・・・だれきゃ、きゃわいいれーみゅを・・・」
「ど、どぼちてきょんにゃきょちょにぃ・・・」
二匹ゆっくり、赤れいむと赤まりさの姉妹が死にかけていた。

別にこれと言った特別な理由などない。
単に二匹の親がいつも通りに人間に物乞いという名の挑発をして
「ばかなにんげんはさっさと・・・ゆげっ!うばぁぁぁ!!やべでぇぇぇ!!!
 でいぶおめ゛め゛でぢゃう!!じんじゃうぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」
「ゆわぁぁ゛ぁ゛!!でいぶぅぅ゛ぅ゛!!ゆっぐりでぎな・・・
 や、やべでぐだざい!ごろざないでぐだざい!!あやばりばずがら!
 ばでぃざがわるがっだでずがら!!うぎゅっ!?いだい!!やべでぇぇぇ゛ぇ゛え゛っ……」
「ばでぃざぁぁ゛ぁ゛!!・・・でいぶだげはだずげでね!
 ぼうばでぃざがじんじゃっだんだがらでいぶはだずげでね!!
『ダメ』・・・?ぞ、ぞんなぁ゛・・・いや゛ああぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
あっさりと殺されてしまったからである。別段野良ゆっくりの行動として珍しいものではない。

そして、そのとき運良く生き延びる事ができた子供がどうなるのか。
そんなことは言うまでもない。無力なゆっくりの中でも特別無力な赤ゆっくりが世を生き延びる事など不可能である。
それこそ奇跡が起きない限りはそのまま無様に、誰一人として気づかれる事も無くひっそりと息絶えるしかないだろう。
「もっちょ・・・ゆっ・・・ゆっきゅりちた・・か・・っちゃ・・・よ・・・」
「まりちゃ・・・もっちょ・・やりちゃいこちょ・・・たくしゃん・・あっちゃ・・・にょ・・にぃ・・・」
流石の極限状態によって、とうとう危機意識の欠片もない赤ゆっくりでも死を覚悟したようだ。
これが野良ゆっくりの在り方。特別な事など何もない、よくある話。


だったのだが―――
「……っちです!こっちでこえがきこえたんです!ゆっくりしないできてください、おにいさん!!」
「おい、急にどうしたってんだよ!待てって!!って言うかはえーよ!お前本当にゆっくりか!?」
「ゆっくりしてるばあいじゃないんです! たしかこっちから・・・」
「ゅ・・・?だれにゃ・・・にょ・・・?」
「・・・おか・・・しゃ・・ん・・・?」
「あっ!!みつけました!!
 なんてことでしょう。こんなにぼろぼろになって、かわいそうに・・・」
「おい、何が・・・って、なんだこれ!?死・・・んでないのか、まだ」

なんでもない日の、とある午後の昼下がり。
人気の無いどこにでもありそうな公園の片隅で、小さな奇跡が起きた。





                        常識を蹴り飛ばせ!!





「れーみゅふっかちゅっしちゃよ!ゆっきゅりちちぇいっちぇにぇ!!!」
「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!しょれちょあまあましゃんもっちょちょーらいにぇ!!」
「うふふ。げんきになってよかったですね。やっぱりさなえのかんはまちがってなかったです!!」

ここは先ほどの公園から少し離れたところにあるマンションの一室。
先ほど虫の息であった二匹の赤ゆは、オレンジジュースによって見事に復活を遂げていた。
喜ぶ二匹を傍で嬉しそうに見ているのは緑の髪と蛙や蛇の形をした飾りをつけたゆっくり、ゆっくりさなえ。
更にそんな三匹の様子を少し困ったような顔で見ているのは、この部屋の主である青年だ。

「・・・まあ、偶然であれ見つけてしまった以上、助ける所までは良しとしよう。
 でも本当にウチで飼うまでする必要があるのか?」
「なにいってるんですか。このこたちだけじゃこのままおそとでくらしてもゆっくりできずにしんじゃいます!
 まだおちびちゃんなんですよ?さなえはなにもせずにみすてることなんてできません!
 ・・・おにいさんがたいへんになることはわかってます。でも、さなえもちゃんとてつだいますから・・・」

「どうちちゃにょ?しゃっしゃちょきゃわいいれーみゅをゆっきゅりしゃしぇちぇにぇ!!!」
「まりしゃたちにょきゃわいしゃにみちょれにゃいではやきゅあみゃあみゃしゃんちょーらいにぇ!!」
「「ゆゆ~ん♪きゃわいくちぇごめ~んにぇ!!!」」
どうやら良くしてくれた事で調子に乗ったみたいだ。
野良として街で生きる生物にあるまじき警戒心の無さだが、それがゆっくりがゆっくりたる所以であるとも言える。

「でもなぁ。野良を飼うなんて話、聞いた事ないぞ?しかもなんか図々しいし・・・」
「きにしないでください。じょうしきにとらわれてはいけませんよ!
 それにわたしがきちんとしつけをするのでだいじょうぶです。
 それでもむりだったならしかたがないのでさよならしましょう」
「最近そればっかりだな、お前。そうは言うが世の中渡っていくなら常識も大事だぞ?
 ・・・まあいいや。俺もゆっくりの事はよく分からないし、お前がそこまで言うなら任せるよ」
「ありがとうございます!まかせてください!」

仕方がないといった様子で渋々許可を出す青年。
さなえに感謝されるのはまんざらでもないが、どうも嫌な予感しかしない。
(確かあいつがゆっくりの事について詳しかったはずだ。・・・一応来て貰っとくか)
何か取り返しの付かない事が起きる前に、打てる手は打っておくべきだ。
青年は予防策として、友人に電話をかけるべく部屋を出ていった。

「しゃなえちゃちにはきょれきゃりゃきゃわいいれーみゅをかうけんりをあげりゅよ!!」
「きょれきゃらもまりしゃたちをゆっくちしゃしぇちぇね!ぐじゅはきりゃいだよ!」
「ええ。これからはさなえやおにいさんといっしょに、このおうちでゆっくりしましょうね。
 ・・・ただし!ちゃんとかいゆっくりにふさわしいきょーいくはうけてもらいます!!」
「「ゆゆっ!!?」」
「あなたたちがすきかってすることで、おにいさんがゆっくりできなくなるなんてことはあってはなりません!
 なので、あなたたちにはさなえのきょーいくをうけて、りっぱなかいゆっくりになってもらいます!!」

人間のいなくなった部屋でさなえが意気込みながら告げる。
一方、言われた方の赤ゆたちは“何言ってんだ?コイツ”といった具合でさなえを見ていた。
「にゃにいっちぇりゅにょ?れーみゅめんどくちゃいこちょはちたくにゃいよ!!」
「しょんにゃこちょちにゃくちぇもまりしゃはとっちぇもゆっくちしちぇりゅよ!
 にんげんがゆっくちできにゃくたっちぇしょんにゃこちょにゃんかちらにゃいよ!」
「しょんにゃこちょもわかりゃにゃいにょ?ばかにゃにょ?ちにゅにょ?」
「「けらけらけらけら!!!」」
明らかに下に見られている。完全に馬鹿にされていた。
とても命の恩人に対する態度とは思えない。が、それにもかかわらずさなえは相変わらずニコニコと笑っている。

「ちなみにできないならでていってもらいますからね」
「ゆっ!?にゃにいっちぇりゅにょ!!?」
そして太陽のように眩しい笑顔のまま、とんでもない事を言い放った。
これに驚いたのは赤ゆたちだ。予想外のさなえの返答に思わず目を見開く。
「どういうきょちょにゃにょ!?しょんにゃこちょちちゃりゃれーみゅちんじゃうよ!!」
「まりしゃたちは“こじ”にゃんだよ!きゃわいしょうにゃんだよ!!」
赤ゆたちは必死に自分の不幸な部分をアピールする。しかし笑顔は崩れない。

「ええ。だからちゃんすをあげます。こちらもさすがにげすといっしょにくらしたくはありません。
 さなえにとってのいちばんは、あなたたちではなくおにいさんですから。
 でもしんぱいすることはありません。がんばって、ちゃんとりっぱなかいゆっくりになればいいだけです。
 なにもせずにすきかってしながらくらせるとおもうなんて、それこそばかなの?しぬの?ですよ」

「・・・じゃあできにゃかっちゃりゃどうしゅるにょ?」
「ここからでていってもらいます」
「しょれじゃゆっくちできにゃいよ?まりしゃたちしんじゃう・・・」
「そうですね。そうなったらおとなしく、あきらめてしんでください」
「しょんにゃぁ!!れーみゅちゃちがきゃわいしょうだちょおみょわにゃいにょ!!?」
「ええ、おもってますよ。だからちゃんすをあげます。がんばってくださいね!!」

ダメだ。どれだけ言ってもまったく同情を誘えない。
笑顔を全く崩さずに答え続けるさなえを見て、ようやく赤ゆたちは彼女が本気だという事に気が付いた。
それもそのはず。彼女は本気で同情した上でこの条件を提示しているのだから。
これから生きていく上で、みんなが不幸にならない最善策を提示しただけである。
さなえにとって、これは完全に良かれと思ってやっている事なのだ。故に妥協する事もありえない。
我侭で押し切る事しか知らない赤ゆたちに、そんなさなえがどうにかできるわけがなかった。

「・・・きょれきゃらがんばりましゅ。だきゃりゃしゅちぇにゃいでくだしゃい・・・」
「まりしゃたちもうちゅりゃいにょはいやにゃんでしゅ。だきゃりゃ、よろちきゅおにぇがいちましゅ・・・」
「ようやくわかってくれたんですね!!じゃあ、これからがんばりましょうね!!」
「「はいぃ・・・・・・」」
よって、赤ゆたちはこう答えるしかない。
勉強など冗談ではなかったが、手を抜いてこのさなえがなあなあで済ませるとは到底思えない。
それでもあの過酷な野良生活よりは、と考えたのだ。あんな生活にはもう二度と戻りたくない。


「来るのは明後日か・・・まあ仕方ないな。おっ、随分大人しくなったな。何かしたのか?」
「いいえ。わたしのせいいがつうじただけですよ。
 こうなったら、さなえはこのこたちにきんばっじをとらせてみせます!みててください!!」
「いやー、良くは知らないけど野良の子じゃ無理じゃないか?お前だってそれなりに苦労したんだろうに」
「むずかしいけどやってみせます!やるまえからむりだなんて、そんなじょうしきにとらわれてはいけません!
 だめですよ、そんなにかんたんにやるまえからあきらめちゃ。もっとせっきょくてきにがんばらないと!!」
(絶対またなにか変な影響受けてるな。一体どこから・・・まあいいか。やる気はあるみたいだし)

青年は楽しそうにやる気を出しているさなえを見て、何も言わずに微笑んだ。
彼は気付かない。後ろの方でさなえを見ながら泣きそうな顔をしている二匹の赤ゆに・・・









――――――――――


夜が明けて、青年が仕事に出た後のリビング。
身なりも綺麗になって、ぷっくりと膨れた二匹の赤ゆが、さなえの前に並んでいた。

「どうやらきのうはよくねむれたようですね。げんきなようでさなえもひとあんしんです!」
「ちょっちぇもあまあましゃんおいちかっちゃよ!!」
「あっちゃきゃいとこりょでしゅーやしゅーやできちぇとっちぇもちあわちぇーっだったよ!!」
昨日までの生活が嘘のように感じる待遇の良さに思わずはしゃぐ二匹。
そんな二匹を見て、さなえも満足そうに微笑んでいる。

「じゃあ、さっそくおべんきょうをはじめましょうね!」
「「ゆっ!!?」」
「あれ~?どうしたんですか?もしかしてわすれてたんですか?」
「しょ、しょんにゃこちょないよ!れーみゅおべんきょーしゅりゅよ!!」
「まりしゃもだよ!!だきゃらしゅてにゃいでにぇ!!」
誰でもわかる、バレバレな嘘である。
が、さなえは何も言わなかった。やる気を見せてくれさえするのなら、そんなものは些細な事だから。

「じゃあ、これからかずのけいさんをしてもらいます!
 まずはかんたんに、このおかねさんをかぞえてみてください!」
さなえが傍にあった箱をひっくり返すと、そこから数十枚の一円玉が軽い音を立てて流れ落ちる。
お金が何なのか知らなかった赤ゆたちには、ただの石のようなものにしか見えない。

「えーちょ、えーちょ。いち、に、しゃん・・・たくしゃん!!」
「ゆわぁぁ!まりちゃしゅごーい!!しゃんまでかじょえりゃれりゅんだにぇ!!」
「とうじぇんだよ!まりしゃはてんしゃい「だめです!!」ゆぴぃ!!」
「ま、まりちゃ!!?」
「ゆぎゅ・・・いちゃいよ、にゃんでぇ・・・?」

自慢げにしていたまりさを襲ったのは、20センチの小さな定規。
そして、それを咥えているのは眉間に皺を寄せて怒った顔をしているさなえだった。
「まったくかぞえれてないじゃないですか!さんくらいまでならだれでもかぞえられてとうぜんです!
 きんばっじさんならさいていでも“せん”まではかぞえられないと!!」
「し、しぇん・・・?にゃんにゃにょ、しょれ?れーみゅわきゃんにゃいよ!!」
「だからおべんきょうするんです!つぎからはちゃんとおしえますけど、
 もしおぼえられないならこのじょうぎさんでぱちーん!ってやりますからね!!」
「ゆんやぁぁぁ!!ぱちーんしゃんやぢゃぁぁぁ!!ゆっきゅちできにゃいぃぃぃ!!」
先ほどまでの上機嫌が嘘のように泣き叫び出す赤れいむ。
しかし、そんなれいむをさなえはただ厳しい目で見つめていた。

「ど、どーちて・・・どーちてこんにゃこちょしなきゃいけにゃいにょ・・・?」
ようやく復活したまりさが、さなえに問いかける。
元々まったく力を入れて叩いてはいないので、むしろ立ち直るのが遅いくらいだ。
「しょーぢゃよ!!こりぇちょきんばっちしゃんにょにゃにがかんけーありゅにょ!?」
れいむも便乗して問いかける。どうやらご立腹のようだ。

「・・・きんばっじさんはおかね、つまりきゃっしゅさんをつかうことができます」
「ゆっ!?きゃっしゅしゃん?」
「そうです。にんげんさんのおみせにいけば、きゃっしゅさんといろんなものがこうかんできるんです。
 とってもゆっくりできるおもちゃやほっぺたがおちそうなあまあまさんでもです」
「ゆわぁぁ・・・きゃっしゅしゃんはゆっきゅちできりゅんだにぇ!!」
「だったらしょのきゃっしゅしゃんちょーらいにぇ!しょしたりゃ「ただし!」ゆっ!?」
また話を聞かずに騒ぎ出そうとした赤ゆたちに、釘を刺すように大きめの声を出す。

「それはきゃっしゅさんがどういうものかをちゃんとしっていればのことです!
 ふだんおにいさんからもらえるきゃっしゅさんはこのきんばっじさんにはいってます!」
そう言って、さなえは自分の頭についている金の飾りを二匹に見せる。
「これのなかに、おにいさんがきゃっしゅさんをいれてくれます。
 そしてこれをみせればおみせのひとはこのなかにはいってるきゃっしゅさんとこうかんしてくれます」

金バッジには、内蔵されたチップによる持ち主の認証、身分証明、GPS機能の他に、
おサイフケータイのような機能も付けられている。
飼い主が好きな額をチャージする事でゆっくりがそれを自由に使える仕組みだ。
現在ではほとんどの店でこれが使えるようになっており、人々の理解も十分に得ている。
もしこれを見て、恩恵を得ようとした野良ゆがバッジを奪い取っても、
認証機能によってロックがかかるので使えず、その上すぐバレるので問題はない。
むしろ使おうとしたその場でお縄を頂戴して情状酌量無しの極刑判決が下される事だろう。
まさに金バッジ自体がゆっくりにとって万能ツールである。

「これをつかうにはおかね、つまりきゃっしゅさんがなんなのかをしっていないといけません。
 そしてそれにはたくさんのかずをかぞえられなければはなしになりません!
 きんばっじさんのしけんにもかずのけいさんはでてきます!りかいできましたか?」
「「ゆ・・・ゆっきゅちりきゃい・・・・・・もういっきゃいいっちぇくだしゃい・・・」」
当然、これらの流すような説明を赤ゆが理解できるわけもない。
それくらいはさなえもわかっていたので何度でも説明するつもりであった。

「とにかく!わたしがいうことには、すべていみがあります!
 わかったらこれからは、なんでときかずにいっしょうけんめいやってください。じかんのむだですから」
「「ゆっくちりきゃいちまちた!!」」
今度は良い返事を返す二匹。
正直言ってさなえの話の内容はよく分からなかった。
が、金バッジがあればきゃっしゅさんが貰えるという事だけは分かった。
そしてきゃっしゅさんがあれば何でも好きな物がもらえる。その一点のみが、二匹のやる気を揺さぶったのだ。

まあ、そういう間違った考えを持っていたうちはさなえに叩かれまくったので、すぐに認識を改めたのだが。


「ただいまー。元気で・・・どうしたんだ?これ」
仕事から帰ってきた青年を迎えたのは
可哀相なものを見るような目をしたさなえと、全身を真っ赤にした赤ゆたちだった。
「あ、おにいさん。おかえりなさい!ゆっくりしていってくださいね!!!
 このこたちにおべんきょうをおしえてたんですが、あんまり・・・」
「いちゃいぃ・・・いちゃいよぉ・・・・・・」
「ゆんやぁぁ・・もうやぢゃ・・・じょうぎしゃんきょわいよぉ・・・・・・」

結局その日は数は三よりも沢山ある、と言う事しか解ってくれなかったそうな。
お金に関する間違った認識も改める事ができたのだが、それにしたってあまりに覚えが悪い。
自分のときの事を思い出したさなえは、かなり残念そうに溜息をついた。
「まあまあ。初日から何時間もするものじゃないぞ?もう少し労ってあげないと」
「ゆ~、そうでしょうか?でもふつうのやりかたじゃ・・・。
 もっといいほうほうをかんがえないと!」
「ゆっきゅちしゃしぇちぇよぉ・・・・・・」
「まりしゃもうかじゅしゃんかじょえたくにゃい・・・」

「とにかくご飯にしよう。まだシュークリームが残ってたはずだけど・・・」
「ゆ?ゆわーい!しゅーきゅりーみゅしゃんちゃべちゃ~い!!」
「にんげんしゃんのあみゃあみゃはおいちくちぇゆっくちできりゅよにぇ!!」
食事と聞いて、即座に元気になって催促し始める赤ゆたち。現金なものである。
どうやら昨日の食事のあまりの美味さに味を占めてしまったようだ。

「・・・では、ごはんのときのまなーのおべんきょうです!!!」
「「ゆっ、ゆぇぇぇぇぇ!!?どおちちぇぇぇぇ!!?」」
「きたないたべかたはきんばっじさんとしてゆっくりできません!
 しゅーくりーむさんをつかっておべんきょうです!!」
「「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!!」」
果たして、赤ゆっくりたちに安息の時はあるのだろうか?









――――――――――



夜が明けた。
あれからも色々な“お勉強”をさせられ、心身ともに擦り切れた赤ゆたち。
そんな彼らにとって、柔らかい床で眠れる時間は唯一と言っていいほどにゆっくりできる時間であった。

実際の所、赤ゆっくりたちは今の生活に(さなえのお勉強を除けば)この上なく満足していた。
地面はいつもふかふかで、跳ねても這いずっても汚れないし痛くない。
おそとはあんなに寒かったのに、おうちの中はいつもぽっかぽかで冷たい風も吹かなかった。
ご飯だってお勉強がゆっくりできないだけでとっても美味しいし、決まったときに出てきて食いっぱぐれる事もない。
狩りと言う名のゴミ漁りもしなくてすむし、人間や野良犬さんに殺される心配もない。
大きなすぃーから出てくるにがにがのけむりさんだって、ここにはない。
さなえのお勉強から開放されてゆっくり眠っている間、ここは間違いなくゆっくりプレイスだった。

そう。眠っている間だけは―――


「おきてください、おちびちゃん!あさですよ!!」
「ゅ?・・・にゃんにゃにょ?れーみゅまぢゃねみゅいよ・・・」
「ゆ~ん。にゃんだかまだかりゃだがおみょいよ・・・」
突然、自分たちに語りかける大きな声。勿論さなえのものだ。
声が大きく感じたのはれいむたちから近い所で話しているせいで、実際は部屋に響く事もない小さな声だった。

「ねむいのはとうぜんですが、もうおきるじかんです!
 きんばっじさんなら、かいぬしさんよりもはやくおきておこしてあげるくらいのよゆうをもちましょう!!」
「やぢゃよ・・・みゃぢゃれーみゅおにぇみゅにゃんだきゃりゃ・・・」
「きのうにょおべんきょうでちゅかれてりゅんだよ・・・
 ゆっくちふかふかしゃんでしゅーやしゅーやしゃしぇちぇね・・・」
が、二匹は一向に起きる気配がない。
赤まりさの言う通り、まだ昨日の過酷な“お勉強”の疲れが残っているのだろう。


まあそんな事、さなえには関係がないのだけど。
「・・・おそとはまださむいでしょうね~」
まだ薄暗い、窓の向こうを見ながらポツリと呟く。

「れーみゅゆっきゅりちないでおきちゃよ!!」
「ゆっ!まりちゃじぇんじぇんちゅかれちぇないかりゃにぇ!!」
その瞬間、赤ゆたちが飛び起きた。もはや条件反射に近い。
度重なる躾(調教)の結果、たった一日でさなえの脅しに反応するようになってしまったようだ。

「いまはつらいでしょうけど、そのうちだいじょうぶになります。がんばりましょうね!!」
「「ゆっきゅちわきゃりまちた・・・・・・」」
すべては、捨てられないため。ただそれだけのために今日も赤ゆたちはお勉強に励む。
外では朝から雑音を撒き散らしていた饅頭が、ちょうど良い声を上げて潰されるところであった。



「さあ。きょうはおにいさんもおやすみなので、おべんきょうをみてもらいましょう!」
「ゆっきゅちがんばりゅよ!!」
「にんげんしゃんもまりしゃがゆっくちがんばってりゅときょりょみちぇちぇにぇ!!」
「あー。午後から友達がここに来るから手早く済ませてくれな」

朝、太陽がそこそこ昇った頃。部屋にはやる気を見せるゆっくり三匹に、どうでも良さそうな人間が一人いる。
意気込むのもそこそこに、さなえは今日の予定を発表した。
「きょうはまず、のらゆっくりからにげるためにうんどうしてもらいます!!」
「ゆっ!?うんどーできりゅにょ?」
「ゆわ~い!!ぴょんぴょんしゅりゅのはゆっくちできりゅよ!!!」
初めて、とも言っていいまともな内容に、赤ゆたちは喜び飛び跳ねる。

「おそとにはれいぱーやげすゆっくりがたくさんいます
 そして・・・かなしいことですが、そのゆっくりたちはかいゆっくりとなかよくしてくれません。
 なのでにげるためにゆっくりできるからだがひつようになります!とっくんっしましょう!!」
「ゆゅぅ・・・れいぱーはゆっきゅりできにゃいよ・・・」
「げしゅにゃんかにまりしゃまけにゃいよ!!」
「だめですよ。けんかはいけません!のらゆっくりとははなすこともしちゃいけませんよ。
 ただ、ゆっくりできるからだはおそわれたときににげるためにひつようなのです。わかりましたか?」
「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!」」

(へぇ・・・なかなかまともに教えられるんだな。)
思ったよりもまともな授業風景に安堵する青年。
彼が昨日のお勉強の様子を見れば、どう思っただろうか。

そんな風に和やかな雰囲気で進む中
「ではまずさいしょに、このおおきなじょうぎさんでしこたまたたいて「おい待て!!」・・・ゆ?」
急に背後から60センチはあろう巨大な物差しを取り出したさなえに、青年は思わず待ったをかけてしまった。
さなえは心底不思議そうな顔をしている。どうやら本当に何故止められたのかがわからないようだ。
ちなみに赤ゆっくりたちはあまりの物差しの大きさと、昨日を痛さを思い出してガタガタ震えていた。

「ゆ?じゃないだろ。そんな物で叩いたら間違いなく潰れるぞ!!
 っていうかそれ、どこから持ってきた!何でそんなに軽々と咥え上げれるんだ!?」
「・・・さあ?まあいいじゃないですか。おにいさんはじょうしきにとらわれすぎです。
 ふしぎなことのひとつやふたつあっても、きっとゆっくりできますよ!!」
「百歩譲って見逃しても、それで叩くってどういうことだ?確実に痛いじゃ済まないぞ!」
「しにそうなくらいのきびしいしゅぎょうをすればとってもつよくなれるって、ごほんにかいてました!
 なのでためしてみようとおもいます!」
「オイィィィ!!それ漫画だろ!実際にそんなことすると死ぬんだよ!お前馬鹿だろ!死ぬの!!」
「ゆあぁぁぁ・・・あんにゃにょでぱちーんしゃれちゃりゃれーみゅちんじゃうよぉ・・・」
「たしゅけちぇ!ころしゃにゃいで!まりちゃいいきょでしゅきゃらぁ!ゆんやぁぁぁ!!」
物差しを得意げに振りかぶるさなえ。それを止める青年に泣き叫ぶゆっくり。
正に混沌とした状況である。収まるにはしばらく時間がかかりそうだ。

 ・
 ・
 ・

「とにかく、物差しはダメだ。俺も手伝ってあげるからもっとまともなやつを考えなさい」
「わかりました!ほかにもまだかんがえてることはありますから!」
ようやくやる気満々のさなえを宥めて、赤ゆたちが落ち着いたのは十分後の事である。
震えていた二匹は、さなえが物差しを手放す事でようやく安心したようだ。

「うーん。じゃあ・・・」
(頼むからまともなやつを・・・)
果たして青年の願いは届いたのか。

「おにいさんにおもいっきりなげてもらいましょう!
 それならどれくらいのはやさならにげられるのかがわかるはずです!!」
(あぁ・・・)
駄目だった。

「おにいさんもてつだってくれるっていってますし、これならだいじょうぶです!!」
(んなわけねーだろ!なんだよ、その自慢げな顔!!)
「おしょらをちょべりゅにょ?ちゃのちしょー!!」
「まりしゃがしゃきにやりちゃいよ!はやきゅしちぇにぇ!!」
「いけませんよ。これはとっくんっなんですから。まじめにやりましょうね」
赤ゆっくりたちは何も知らずに胸を躍らせている。
これから何をされるのかを聞けば、きっとこんなに呑気ではいられないだろうに。

「じゃあおにいさんおねがいしますね、よういはいいですか?」
「良くないに決まってるだろうが!!」
「「ゆっ!!?」」

「ど、どうじででずが!?さなえがいっじょうげんめいがんがえだのにぃ!!」
「どうしてもこうしてもねーよ! 死ぬんだよ。わかるか?
 赤ゆっくりは普通、人間に全力で投げ飛ばされたら地面に激突した衝撃で死ぬの!!
 どういう神経・・・その『わけがわかりません』って顔をやめろ!!」
「ど、どういうきょちょにゃにょ!?れーみゅきょろしゃれちゃうにょ!?」
「ゆんやぁぁぁ!!!やめちぇにぇにんげんしゃん!まりしゃにゃにもわりゅいこちょしちぇにゃいよ!!」
ようやく自分達がされそうになっていた事への危険性に気付いた二匹。
当然怯え始めるが、構うと話が進まないので青年はあえて無視した。

「第一、さっきの物差しよりも明らかに危険度が増してるだろ!
 ・・・今度は何を見て真似しようとした?」
「ぶたさんが“とべないぶたはただのぶただ”っていってたから
 ゆっくりがおそらをとべればきっとかっこいいなあって・・・」
(・・・この子は多分、型破りと非常識の意味を履き違えてるなぁ・・・・・・)

結局、これ以上の勘違いは流石にマズイと思った青年は、さなえの申し出を断固拒否した。
そしてまたもや、喚く赤ゆを落ち着かせるのに時間がかかる。
やっとの思いで全てを終わらせた頃には、もう真っ昼間だった。

「けっきょくなんにもできませんでしたね」
「危険な提案ばっかり出すからだろ・・・お前実はこいつらに死んでほしいんじゃないのか?」
「なんてひどいこというんですか!!ふだんおんこうなさなえもおこりますよ!!」
「・・・はぁ、もういいや。ちょうど飯時だし、昼御飯にしよう」
「「ゆっきゅちわきゃっちゃよ・・・」」
もはや赤ゆも怯えすぎで疲れ果てて、ご飯を喜ぶ気力すら残っていない。

さっさと済ませてしまおうと冷蔵庫を覗き込んだ青年であったが、中を見た瞬間に顔をしかめる。
「あいつらの分のご飯がないな・・・あ~、そういえば昨日買出しに行くの忘れてた。
 あいつが来たときのお茶請けはやれないし、どうしようか・・・」
青年はあーでもないこーでもないと一通り悩んだが、
その内、思い出したように冷蔵庫の中にあるパックを取り出した。

「よし、これでいいや。ご飯だぞー!!」
「「ゆわ~い!ゆっきゅちできりゅごはんしゃんだよ!!」」
ほんの少しの間に、どうやら精神的な疲れからは回復したらしい。
二匹の赤ゆはご飯と聞いて跳ね回るようにやってきた。
とりあえず二匹にはお預けを食らわせて、後から入って来たさなえに話しかける。

「実はお前らの分のご飯を買うのをうっかり忘れててな。
 ・・・悪いけどこれで我慢してくれないか?前にこれ、好きだって言ってただろ」
そう言って青年が差し出したのは、小さな皿に盛られているドロッとした白い塊。
「わぁ、よーぐるとさんですね!さなえこれだいすきです!
 いただきまーす!・・・ちょっとすっぱくて、あまくてしあわせです~!」

一口食べて、幸せそうに微笑むさなえ。どうやら上手くいったようだ。
これなら赤ゆたちにもあげて良さそうだ。
「ちあわちぇ~にゃにょ!?れーみゅにもちょーらい!れーみゅにもちょーらいにぇ!!」
「よーぐるちょしゃんっちぇいうにょ?あみゃあみゃしゃんにゃらまりしゃにちょーらいにぇ!」
「あー、はいはい。お前たちの分はこれな。『ピンポーン』お、来たか。じゃあちゃんと食べてるんだぞ」
皿を並べ終わったところで、丁度インターホンが鳴る。
二匹に食べておくように言い残すと、来客を迎えに行くために青年は出て行ってしまった。

一方の赤ゆたちは始めて見る食べ物に興味津津だ。
先程さなえが食べたのを見れば、とってもゆっくりしたあまあまさんだという事は十分わかる。
さなえが見ているので決してかぶりつく様な事はせず、しかし逸る気持ちを抑えきれずに口をつけた。
「「いっちゃっぢゃっきま~しゅ!!む~ちゃむ~ちゃ・・・ゆぴゅっ!!?」」
そして、口に入れて味わった瞬間に思いっきり噴き出した。

「お、おちびちゃんたちどうしたんですか!?おにいさーん!おにいさーーん!!」
「どうした、さなえ?・・・うわ、本当にどうしたんだ!?」
「こんにちは、さなえちゃ・・ん・・・随分と激しい出迎えだね」
さなえの声を聴いて部屋に戻ってきた青年と友人が見たのは、転がる赤ゆたちだった。
床は噴き出したヨーグルトでグチャグチャになっていて、二匹は悲鳴をあげている。

「ゆぴぃぃぃ!!にゃんでしゅっぴゃいにょぉぉぉ!!?ゆっきゅちできにゃいぃぃぃ!!」
「ゆう゛ぇぇ゛ぇ゛!!・・・にんげんしゃん!きょれどきゅはいっちぇりゅ!」
「えぇ?・・・おっかしいな。さなえと同じものあげたのに」
「お前、なにあげたんだよ?この様子は尋常じゃないぞ」
「スーパーで買ってきたヨーグルト。砂糖が入ってないやつな」
「はぁ!?何やってるんだよ、そんなものゆっくりにあげたら死ぬぞ!」
「マジで?でもさなえは大丈夫だよな?」
「はい。ちょっとすっぱかったですけどあまくておいしかったです・・・」
「だよな。どういうことだ・・・?」

首を捻る一同。一方、わきで転がっていた赤ゆたちは今や痙攣し始めていた。
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「もっちょ・・あみゃあみゃしゃん・・・ちゃべ・・・ちゃ・・・・・・」
「なあ、死にかけてるぞ。放っておいていいのか?」
「おわぁ!忘れてた!!ジュース、は切らしてるから・・・もう砂糖水でいいか!!」
「お、おちびちゃんゆっくりしてください!あ、だめです!えいえんにゆっくりしちゃだめです!いまのなし!!」

 ・
 ・
 ・

「で、最近さなえちゃんの様子がおかしいと・・・
 っていうか野良ゆっくりを拾って~って話で僕を呼んだんじゃなかったのか?」
「ああ。それはどうとでもなりそうな気がしてきたから、もういいんだ。
 それよりもさなえの方が気になるんだ。一体どうなってるのかと思ってな」
数分後。そこには、テーブルを挟んで話し込む二人の青年の姿が。

なんとか一命を取りとめた二匹は部屋の隅で寝込んでおり、さなえが付きっきりで看ている。
そして青年の友人への相談事とは、正にそのさなえの事であった。
「最近どうも様子がおかしいんだ。
 少し普通とはズレた事をしようとしたり、たまに他のゆっくりに辛辣になったり。
 今日も特訓とかわけの分からない事言い出して、あいつらを殺すところだったんだぞ」
「おまけに普通のゆっくりじゃ食べられないようなものを喜んで食べる、か・・・確かにおかしいな」
「え、ゆっくりってヨーグルト食べねーの?」
「食べねーよ。お前自分が飼ってるものの事ぐらいちゃんと知っておいたほうがいいぞ?」
「確かに他のゆっくりはあまあまってばかり言ってるから、
 少しおかしいとは思ってたんだけど・・・喜んでるし、別にいいかなって」
「やれやれだな・・・」
青年は全く悪びれる様子がない。
そんな様子を見て、更に友人は呆れたような顔で呟く。

「そういえば、ヨーグルト食べたがったのも少しおかしくなった頃からだな。なにか普通とは違う物が食べたいって。
 それに前はもっと大人しい、控えめな子だったんだが・・・しかも日に日にエスカレートしてる気がする」
「そうなのか?今見る限りじゃ普通に見えるけど・・・
 ま、わざわざ僕を呼ぶくらいなんだ。とりあえずできる限りは力にはなるさ」
「助かるよ。で、どうすればいいんだろう?」
真剣な面持ちで青年は友人に詰め寄る。

しかし友人は彼の必死さもどこ吹く風で、少し考え込んだ後にさらりと言い放った。
「別にいいんじゃないか?このままで」
「なっ・・・人が真剣に相談してるのに、どういう!」
「まあまあ、聞けって。・・・お前、今の生活に何か不満があるのか?」
「・・・いや。特にはないな。さなえは俺に対してはいつも通りだし」
「そうか。じゃあ、さなえちゃんの思いつきであの野良チビどもが死んだら、お前は嫌なのか?」
「・・・そういえば、別にどうでもいいな。元はと言えばあいつが言い出して拾った野良だし」
「だろ?今のこの状況。お前にとって何か不都合があるのか?」
「・・・・・・ない、な。 そうだ、何もない」
「さなえちゃんも別にどこか具合が悪いってわけでもないんだ。
 何か大きな問題が起こらない限りは、個性として認めてやるのが飼い主ってもんじゃないの?」
「お前・・・たまにはいいこと言うな」

友人の言葉で、青年はまるで憑き物が落ちたように晴れやかな顔になった。
先ほどまでの真剣な面持ちが嘘のようだ。
「まあさなえちゃんがそうなった原因の方は、悪いが僕には解らない。
 そもそも希少種はゆっくりの中でも特に解明されてない部分が多くてね。
 いくら僕が加工所勤務でも、不思議饅頭相手じゃ解らない事なんぞ山ほどあるんだよ」
「いや、ありがとう。とりあえずはこのままで行こうと思う。
 ・・・でも、もしこのままもっと酷くなってそこらへんに迷惑かけるようになったら!」
「そんなときこそ叱れよ。ちゃんと言い聞かせてやれば聞いてくれるさ。
 なんせ・・・さなえちゃーん!」
「はい!おともだちさん、なんのようですか?」

赤ゆたちの様子をずっと見ていたさなえは、友人に呼ばれて控えめに跳ねて来た。
「お兄さんのこと、好きかい?」
「・・・? はい!とってもだいすきです!!」
急な質問に少し首(?)を傾げるが、すぐに満面の笑顔で元気よく答えた。
「そうか。じゃあ僕は好きかい?」
「はい!おにいさんのはんぶんくらいすきです!!」
こっちは即答だ。
「ハッハッハ!そっかー。チクショー!!」
相変わらず笑顔のまま元気良く話すさなえの言葉に、少しヤケクソ気味になる友人。
が、すぐに青年に向き直って少しだけニヤリと笑った。

「な?これだけ愛されてるんだ。少しくらいは信じてやれよ」
「・・・ああ!」
「なんのおはなしですか?」
「いや、別に。お前は誰が好きなんだろうなって話をしてただけだよ」
「なにいってるんですか。さなえのいちばんはおにいさんです!!」
「お前らイチャつくなら余所でやれって。・・・あ、ここお前の家か」
明るく笑いあう二人と一匹。

「ゆ・・・よーぐりゅちょしゃん・・・きょにゃいでぇ・・・・・・」
「ゆんやぁ・・・まりしゃをもっちょ・・ゆっきゅちしゃしぇちぇ・・・」
隅っこでうなされている二匹の赤ゆっくりの事は、完全に忘れていた。









――――――――――



(まあそれはともかく一つだけ、嘘ついたんだけどな)
青年達と笑いあいながら、友人の青年は心の中で舌を出していた。
実はさなえに関して何も解らない。というのは真っ赤な嘘である。
さなえがおかしくなったのにはちゃんとした理由があった。


ミラクルフルーツ病。それが現在、さなえがかかっている病気の名だ。
そう。さなえは気付かぬ内に病にかかっていたのだ。
ミラクルフルーツ病とは最近になって加工所の研究部によって発見された、さなえ種特有の精神病である。
かかる原因はいまだに不明で、症状は以下のとおり。
 ・普通とは違った行動を取りたがる。が、常識を忘れたわけではないので(本人にとって)肝心な所では踏みとどまる。
 ・体内にミラクリンが多量に分泌され、餡子に含まれるようになる。
  これによって過度の酸味も多量の甘味と適度な酸味を感じる程度になり、それを好むようになる。
 ・一部の親しい存在以外には偶に毒を吐き、辛辣になり、厳しくなる。
 ・性格が一部変わり、なにかが吹っ切れたように大胆になる。ただし、やる事にあくまでも悪気はない。
ざっと、この程度だろう。

見てわかっただろうが、かかったところで体調に変化が出るわけでもなく、致命的なものもない。
つまり、この病気自体が大した事ないのだ。
まだ見つかって日が浅い事から一般にはあまり知られておらず、
彼も加工所内部で話が回ってきたのを偶然聞いただけなのだが、少し聞いただけでも害がないことくらいは十分解る。
少なくとも、同じくさなえ種特有の、飼い、野良、善良、でいぶ。
種類に拘らず執拗にれいむ種を襲う『ゆるさなえ』になってしまうよりは遥かにマシだ。

それに治す方法も、もう見つかっている。
しかも特効効果があり、とても簡単なものだ。
単に親しい者が
「お前それはちょっと間違ってる。正直見ててかなり痛いぞ」
と、言ってやれば、それだけでしばらく落ち込んだ後に治るらしい。
きっと現実を見つめなおす時間が必要なのだろう。

ともかく危険性はほとんど無いしそうである以上急ぐ必要もない。
それに悪化してもいざとなれば青年が目を覚まさせるだろうと思ったので、友人はあえて何も教えなかった。
別にさなえや青年が嫌いで意地悪をしていたわけではないのだ。

それに、なによりも―――
「ゅ・・・れーみゅにゃにちちぇちゃにょ・・・?」
「まりちゃゆっきゅちおきちゃよ・・・おにゃかしゅいちゃ・・・」
「おちびちゃん!おきたんですね!!それがとっくんっのつづきをしましょう!!」
「ゆっ!?れーみゅよーぐりゅちょしゃんちゃべちぇえれえれしちゃっちゃんぢゃよ!!」
「まりしゃおにゃかしゅいちゃよ!ちゃんちょあみゃあみゃしゃんたべしゃしぇちぇにぇ!!」
「だめです!よーぐるとさんもたべられないなんて、きんばっじさんにはまだまだとおいですね!!
 これからはもっときびしくおべんきょうをおしえますから、がんばってくださいね!!」
「「ゆんやぁぁぁ!!みょうきんばっちしゃんいりゃにゃいきゃりゃゆっくちしゃしぇちぇぇぇぇ!!!」」
(やべぇ・・・これすっごく面白いわ・・・)
一番の理由は、単なる面白いもの見たさであった。

別に彼は野良チビがどうなろうと、どうでもいい。
さなえちゃんの違う一面が見れてむしろ楽しいし、
青年もなにかが吹っ切れたようなので万々歳だ。
「・・・とりあえず、しばらくさなえちゃんの好きなようにさせてみた方がいいんじゃない?」
「そうだなぁ。・・・まああいつも楽しそうだし、別にいいか」
しばらくこいつの家に通って見物しよう。そんな事を考えながら、友人の男は内心ほくそ笑んだ。



はてさて、これから彼らがどうなるのか。
さなえは無事にフルーツ(笑)から脱却する事ができるのか?
青年はこのまま平凡な生活を送る事ができるのか?
友人に対するさなえの好感度は少しでも上がる事はあるのか?
そして赤ゆっくりたちはさなえが満足する結果を出し、
家を追い出されずに見事ゆっくりプレイスを手に入れることができるのか?
すべては誰にも解らない。まさに神のみぞ知る、と言ったところである。














「だれきゃ!かわいしょうにゃでいびゅちゃちをかっちぇぐだじゃい!
 ごにょままぢゃちょぢんじゃうんでじゅ!!・・・どぼぢぢぇぎょんにゃきょぢょにぃ・・・」
「まりしゃたちはばっちしゃんをとりゅためにおべんきょーちてまちた!!
 かちこいんでしゅ!!がんばりまじゅがりゃゆっぐぢしゃしぇちぇくだじゃい!!!」
「「ゆんやぁぁぁぁ!!もうやぢゃ!おしょちょはゆっきゅちできにゃいよぉぉぉ!!!」」




                                                 おしまい









 ・あとがき
 書いてて、金バッジ便利すぎじゃね?と思いました。
 でも僕の中の設定では金バッジ試験は超難関なので、これくらい優遇しても罰は当たらないかなーって感じです。


 では、最後までご覧頂き本当にありがとうございました!
 また別の機会に!


                                               小五ロリあき


 ・過去作品
ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と
ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳
ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気
ふたば系ゆっくりいじめ 484 ドスと理想と長の資格 前
ふたば系ゆっくりいじめ 494 ドスと理想と長の資格 後
ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま
ふたば系ゆっくりいじめ 548 てんことれいむとフィーバーナイト 前編
ふたば系ゆっくりいじめ 559 てんことれいむとフィーバーナイト 後編
ふたば系ゆっくりいじめ 583 ゆっくりしたけりゃ余所へ行け
ふたば系ゆっくりいじめ 599 はじめてのくじょ~少女奮闘中~
ふたば系ゆっくりいじめ 615 お兄さんは静かに暮らしたい
ふたば系ゆっくりいじめ 659 よくあるお話
ふたば系ゆっくりいじめ 674 かわいいゆっくりが欲しいなら
ふたば系ゆっくりいじめ 701 おうちは誰の物?
ふたば系ゆっくりいじめ 789 ゆめみるれいむときゃっしゅさん
ふたば系ゆっくりいじめ 790 ユクミン 前
ふたば系ゆっくりいじめ 855 ユクミン 後



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感想

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  • ↓いやこのssにはさなえの『近しい』人間しか出てないから見知らぬ人間に会ったら
    危害を加えるかもしれないだろ -- 2023-02-26 09:22:12
  • ↓6 別にさなえは、ただの野良ゆっくりを殺そうとしてるだけで人間に危害を加えようとしてないだろ -- 2022-10-21 10:08:22
  • 飼い主が知識なさすぎてイライラする -- 2018-05-14 13:55:40
  • 神のみぞ知るって最後に捨てられてるじゃん -- 2016-11-01 13:18:57
  • 結局捨てられたんか笑ゴミ饅頭にはお似合いだ -- 2016-08-28 11:41:32
  • ↓×2いや、悪意があってやったわけじゃないだろ
    ってか、結局捨てられたゴミ饅頭www -- 2013-08-22 23:19:35
  • 常識は忘れてないしすぐに治せるって書いてるだろアホどもめ -- 2013-07-31 12:34:45
  • さなえがゲスすぎる。他ゆを殺しかねないことを平気でやることが病気ですまされるなら、野良ゲスも病気だろうよ。
    所詮餡子は餡子だな。他人の飼いゆに危害を加えたらどうするつもりなのか。これは流石に赤ゆ達がかわいそうだわ。
    あとこの設定だと、金バッチゆって飼い主から離れて一人で買い物すんの?野良や基地外人間に襲われたらどうすんの? -- 2012-09-18 02:21:37
  • もし本当にゆっくりがいたらゲスをいい奴にして
    相棒にしてみたい -- 2012-06-30 00:00:32
  • さなえさん・・とても・・・かわいいです・・
    あのゴミは耐え切れず逃げて路頭に迷ったんじゃね? -- 2011-10-08 04:10:46
  • 完全室内飼いにすべき。あらゆる意味で、暴力をそれと理解せずに行使する奴が一番たちがわるい。 -- 2011-01-07 15:24:29
  • ゲスを赤ゆの段階から矯正するのって結構珍しいからもっと見たかった -- 2010-11-23 19:53:18
  • さなえさんが可愛くて面白かったぜ。

    確かに他の飼いゆっくりと交友する時に苦労しそうだなw -- 2010-11-17 19:00:23
  • 面白かったです -- 2010-10-23 13:42:42
  • 作者の言ってる優遇って
    人間社会で金バッチが買い物したりするのが認められる程社会的地位を得てるって意味だと思うんだけど・・・
    ゆっくりを殺すとか何の事を言ってるんだろう? -- 2010-09-09 06:12:03
  • そのまま外でのたれ死にしてくれ。 -- 2010-08-12 22:16:46
  • で、オチから察するに赤ゆ2匹は追い出されたのか -- 2010-07-26 06:28:16
  • まぁ、室内飼いで世間から隔絶したまま一生を終えさせるのならよかろうが、
    散歩中に他人の飼いゆと遭遇➝常識にとらわれてはいけないのです!➝相手の飼いゆ死亡or重症
    なんてことに、なったら困るよね? -- 2010-07-13 00:22:52
  • これぐらい優遇してもって・・・
    ゆっくりがゆっくりを殺すかもしれない加減でいってもいいかって、この飼い主はばかなのか?
    同じ金バッチゆっくりに同じ調子でやって殺してから後悔するのか?
    潜在ゲスと一緒じゃんか -- 2010-04-08 04:14:30
最終更新:2010年02月20日 19:58
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