ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ

台風さんでゆっくりしたいよ 23KB


  • そろそろ定着したかと思われますが、『町れいむ一家の四季』
 秋編に突入です。まさかこんなに長く続くとは・・・。
  • エロ書け、おまけ書けと色々あるとは思いますが、
 そろそろ本筋を書いてしまわないと、完結するのか不安です。あくまでおまけはおまけなんで。
  • 「台風ゆえに人は悲しまねばならぬ。台風ゆえに人は苦しまねばならぬ。ならば、台風などいらぬ!!!」
 いえ、必要です。ということで台風編。
 このテーマもリクエスト対応なんですが、台風の中でゆっくりが動き回るとか無理でしょ。一体どうしろと。




『台風さんでゆっくりしたいよ』

D.O





季節は秋。
といっても、まだまだ夏の暑さは尾を引いているので、秋らしさは見られない。
ムシムシとした湿気と、曇った空は、ゆっくりならずとも不快な天気であろう。

町のゆっくり達はおちつきなく、とてもゆっくりしていない。
ある者は路地裏にゴミ袋を運び込み、ある者は小石や板きれを植栽の中に押し込んでいる。

広場の公衆便所裏に住むれいむ一家も、今日はせっせとおうちの補強に精を出していた。
元々おうちと使っている木箱は、随分前からここに放置されている空箱の一つだが、
いかに状態がいいとはいえ、雨が降ったら中までびしょ濡れ。
今日は、劣化した買い物袋を屋根からはずし、公園で拾ってきたブルーシートをかぶせる作業にいそしんでいた。

「ゆーし。あおいぬのさんはきれいにかぶせたよ!つぎはいしさんをのせるよ!」
「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」

元気な返事は長女れいむ。

「とっちぇもときゃいはなおうちになっちゃわ!」

キレイに整備されたおうちに感動の声をあげるのは次女ありす。

「でみょ、どうしていししゃんをいつもよりたくしゃんのせちゃの?
おうちしゃんつぶれにゃい?」

疑問を母れいむにぶつけるのは、一番賢い末っ子れいむ。

「ゆぅ。それはね。もうすぐとってもこわいかぜさんがくるからなんだよ。」
「ゆゆっ!?かぜしゃん?ゆっくちしちぇないにょ?」
「そうだよ。ゆっくりしてないあめさんとかぜさんがくるんだよ。
いしさんがないと、おうちもとんでいっちゃうんだよ。」
「ゆーん。かぜしゃんはいなかものなのにぇ。」

「でも、どうしてもうすぐくるっちぇわかるにょ?」
「ゆゆーん。きょうは、おちびちゃんたちは、すーりすーりがゆっくりできないよね?」
「ゆぅ。おはだしゃんべたべたしちぇ、しゅーりしゅーりできにゃいよぉ。」
「すーりすーりがゆっくりしてないと、ゆっくりしてないあめさんとかぜさんがくるんだよ。」
「ゆゆーん!しゅぎょーい。おきゃーしゃんはなんでもしっちぇちぇ、とってもときゃいはにぇ!」

ちなみにゆっくりのお肌がベタベタになるのは、主に水浴びをしすぎた後か湿気が強い時である。
ゆっくりの肌が限界以上に水分を吸収している証拠で、
この状態で水滴などを浴びると、簡単にお肌がとけて穴があく。
水に脆い上、乾いている時の撥水性もなくなるわけだ。
水浴び後ならば日光浴でしっかり乾かすのでゆっくりできるのだが、
大雨の前の湿気は、太陽さんが出ていないのでいかんともしがたく、要は大変危険な状態だったりする。

「ゆゆーん。とってもとかいはなおうちになったわね!」
「とっちぇもゆっくちできるのじぇ!おうちしゃん、ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
「ゆーん、げんきなごあいさつだわ!さすがありすのおちびちゃんねぇ!ぺーろぺーろ」

「わかるよー!あめさんがきてもへいきなんだねー。」

最近れいむ一家にはお隣さんが2家族できた。
まあ、元々いくつも木箱が捨ててあったので、これまで町のゆっくりが集まらなかった方が不思議だが。

右隣は溺愛ありすと赤まりさ。
最近『みぼうじん』になったため、一粒種への溺愛っぷりは拍車がかかっている。

左隣は下膨れについた獣の爪痕が生々しい、戦士ちぇん。
本人いわく、かつて4匹の巨大な猫を相手に死闘を繰り広げたとのこと。
眉つば物であるが、知識も体力も結構あるので、割とゆっくりの間では信じてもらえている。

3つの木箱が便所裏の壁に並び、上にブルーシートがかけられていると、
ゆっくりとしては割といい感じのマンションといった風情であろう。
これだけのおうちならば、この晩にやってくる台風であろうと耐え抜くに違いない。
中のゆっくり達はともかく。



夕焼けは不気味に赤く染まり、町は不吉な空気に包まれ始めた・・・



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ゴロゴロゴロ・・・・パァァァアアアアアンン!!!

「ゆぴぃぃいいいいい!!きゃみなりしゃんきょわいのじぇぇぇえええ!!」
「だっ、だだだ、だいじょうぶよ、おちびちゃ『パァアアン』ゆひぃぃいい!」

「ゆーん。おきゃあしゃん、かぜじゃんゆっくちしちぇにゃいよぉ。おうちはこわれにゃい?」
「ゆん!だいじょうぶだよ、おちびち『ビュオオオオオ!バタバタバタッ』ゆぁぁあああ!あおいぬのさんもゆっくりしてね!」
「ゆぅぅぅ。いなかもにょなかぜしゃんにぇ・・・。」
「だいじょうぶだよー。いざとなったらちぇんがたすけるんだよー。」
「ちぇんおにぇーしゃんは、ゆっくちかっきょいーにぇ!」

パラッ・・・パラパラパラ、ザァァァァァァァァァァ・・・

「ゆあーん。あめしゃんふっちぇきちゃよー。」
「だいじょうぶだよ。おちびちゃん。おうちはちゃんとつくったから、あめさんはいってこないよ。」
「ゆーん!やっちゃあ!おきゃーしゃんすぎょーい!」

とはいえ、やはり成体の3匹も不安なのであろう。
3つ並ぶ木箱の真ん中、れいむ一家のおうちのスペースに、3家族全員集まって身を寄せ合っている。
今夜は一睡もできなそうだ。

と、そのとき突然扉代わりに入口に垂れたブルーシートが勢いよく跳ねあげられ、一匹のまりさが駆け込んできた。



「ゆっひぃぃいいいいい!きゅうにあめさんがふって、しんじゃうかとおもったんだぜ!」
「ゆっ、ゆう?だいじょうぶ?
きょうはあめさんもかぜさんもゆっくりしてないのに、おそとにいるなんて、どうしたの?」
「ゆーん。まりさはきょうもりさんからきたのぜ。まだおうちがないのぜ!とめてほしいのぜ!」
「「「ゆぅ・・・。」」」

まさか追い出すわけにもいかないが、れいむ達、成体3匹は露骨に嫌な顔をする。
町のゆっくりたちは、森に住むゆっくりには憧れているが、森から来たゆっくりにはいい印象がないのだ。

「な、なんなのぜ!まりさはげすのむれからおいだされて、おうちもないかわいそうなゆっくりなのぜ!
あめさんがやむまでくらいいてもいいのぜ!」
「「「ゆぅ・・・。」」」

「ゆふーん。なかなかいいおうちなのぜ。ゆっ!こんなところにごはんさんがおちてるのぜ!むーしゃむーしゃ!」
「ゆあーん。まりしゃのゆっくちしちゃごはんしゃんがー。」
「なにするのぉぉおおお!ありすのかわいいおちびちゃんのごはんさんよ!このいなかものぉおお!」
「ゆへん!まりさはもりからきたばっかりなんだぜ!おなかがすいててかわいそうなんだぜ!ゆーん。こっちにもあるのぜ!」
「やめるんだよー。それはちぇんとれいむたちのあつめたごはんさんだよー。」
「またあつめればいいのぜ!けちけちすんなだぜ!むーしゃむーしゃ、しあわせー。」

れいむ達がつらい夜を乗り切るために集めた生ゴ・・・ゆっくりしたご飯さんがあっという間に無くなった。

「やめるんだよー。これいじょうはゆるさないよー。」
「ゆっへん!まりさはおなかいっぱいになったからすっきりーしたくなったんだぜ!れいむとすっきりーしてあげるのぜ!」
「ゆぇっ!?いいかげんにしてね!まりさみたいなゆっくりしてないゆっくりはいやだよ!」
「ゆえーん。まりしゃゆっくちしちぇにゃいにょー?」
「おちびちゃんのことじゃないのよぉぉおお!あっちのいなかもののまりさよ!」
「はやくまむまむをむけるんだぜ!すっきりーしたられいむたちはでていくのぜ!
このおうちもかわいそうなまりさがつかってあげるのぜ!」

ひょっとすると、このまりさはゲスなのかもしれない。
さすがのれいむ達もここまで来ると我慢の限界であった。

「もうがまんしないよー。」
「いなかものはでていってね。」
「げすまりさはゆるさないよ!」

「かわいそうなまりさのことをげすなんてひどいのぜ!れいむたちこそげすなのぜ!まりさがせいさいしてやるのぜ!」
「3にんあいてにひとりでかてるとおもうのー?ばかなのー?」
「ゆふん!まりさはもりいちばんのゆっくりしたゆっくりなのぜ!まけるわけないのぜ!」
「ちぇんー。あのまりさ、そんなにつよいのかしら。」
「だいじょうぶだよー。けんかなら、ちぇんにおまかせだよー。」



「おうちのなかじゃせまいのぜ!おもてにでるのぜ!」
「「「・・・ゆぅ?」」」

ブルーシートの玄関から、お外に出ようとするまりさ。

「ゆふーん!おじけづいたのぜ?さっさとついて『ビュォオオオオオオオオ!!!』ゆあーん、まりさのおぼうしがー。」

当然お外の暴風と豪雨はまりさのお帽子に襲いかかり、一瞬で広場の彼方へと吹き飛ばしていった。

「おぼうしさんまってー。」

まりさは、豪雨の中を舞うお帽子を追いかけて行き、そして二度と戻っては来なかった。



「・・・わからないよー。」
「・・・あんないなかもの、はじめてよ。おちびちゃんはあんなのになっちゃだめよ。」
「ゆっくちわかっちゃのじぇ!まりしゃはときゃいはになるのじぇ!」
「むほぉぉおおおおお!おちびちゃんいいこねぇぇぇえええ!すっき「やめるんだよー。」ふぅ・・・。」

「ゆぅ。そんなことより、ごはんさんなくなっちゃったね。」
「「「「ゆあーん。ゆっくちしちゃごはんしゃんがー。」」」」

まあ相手は台風なので、今晩我慢すればご飯さん探しはまたできる。

「でも、ごはんさんだけですんでよかったよ。」
「だれもけがしなくてよかったよー。おちびちゃんたちもちょっとがまんしてねー。」
「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」」



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同時刻の町・コンビニ前。
台風の中でも普段と変わらず明るい店の明かりは、人間ならずとも安心させられる。



コンビニ前に設置された自販機の取り出し口からは、そんな明かりに引き寄せられた、ゆっくりれいむ親子の声が聞こえる。

「ゆーん。このはこさんは、あめさんがはいってこないからゆっくりできるよ!」
「「ゆっくちー。」」
「まえのおうちはこわれちゃったから、ここはれいむたちのあたらしいおうちだよ!ゆっくりしていってね!」
「「ここはれいみゅたちのおうちだよ!ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」

「ふあー。何とか雨が降る前に帰りたかったのにー。びしょびしょだわ。寒ぅ・・・。」
「ゆゆっ?」
「あ。もう自販機に、ぱちゅりー印のコーンスープ、入ってんのね。ちょっとはあったまるかしら。」 

ちゃりん。ぴっ!

ゴトンッ!ぐしゃっ!

「ゆぴぃぃいいいいぃぃぃぃ!ゆびぇ・・・。」
「おちびちゃぁぁぁぁああああん!」
「もっじょゆっぐじ・・・・。」
「おにぇえじゃぁぁあああん!ゆっぐぢしちぇぇぇぇえええ!」

「スープスー・・・うわっ!なんで餡子付いてんの!?」
「ゆああああああ!よくもおちびちゃんをぉぉおおお!ゆゆっ!どうしてでられないのぉぉおお!?」
「ゆっくりが入ってんの?内開きなんだから、入ったら出られるわけないじゃん。まったく、きちゃないなー。」
「おちびちゃんはきちゃなくないでしょぉぉおおおお!!」

「あ、店員さーん。これ交換してよ。まったく、今時ゆっくり防止もついてない自販機置いとかないでよねぇ。」
「どうも申し訳ございません。至急業者に清掃させますので。」
「そんな問題じゃないでしょ。口つけるのよ、こっちは・・・。」

「あー!濡れちまったよぉ!コーヒーコーヒー!『ピッ、ゴトンッ、ぐしゃり』うわっ!餡子付いてんじゃねーか!おい、店員!」
「おちびちゃんがぁぁぁあああああ!」
「申し訳ございませーん!」
「だから言ってんじゃん。あの自販機やばいって。」



ちなみに自販機の最近の主流は、腰の高さに取り出し口を設けるタイプか、取っ手を手元に引いて開けるタイプである。
ゆっくりは、基本的に押して開けることしかできないため、効果は高い。



一方隣の自販機の下。
別のれいむ一家が先ほどの光景を眺めていた。

「ゆーん。はこさんのなかにはいったりするから、ああなっちゃうんだよ。」
「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」
「ゆふーん。おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよー。」

ちなみに、普段はあり得ない豪雨の中、水たまりは自販機の下まで届いてきており、もうそろそろこのれいむ一家を囲い込む。
明日には店員が、自販機周辺の掃除に頭を抱えそうだ。
どちらにしても、このコンビニ周辺のゆっくり達の未来は暗そうである。



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場面は再び公衆便所裏に戻る。
森まりさから解放されて、おうちの中は静寂を取り戻したかに見えたが・・・

びゅぉぉおおおお!

ガガッ!ガァァァァッン!

「ゆぁぁ!?」
「ゆゆっ!?おきゃーしゃん!あめしゃんがおうちにはいっちぇきちぇるよ!」
「わかるよー!なにかがとんできて、おうちにあたったんだよー!」
「あおいぬのさんがはずれちゃったのね!このままだとおうちがとかいてきじゃなくなっちゃうわ!」
「なおすしかないんだねー。わかるよー。」

運悪く、風で飛んできたゴミが、おうちを直撃してしまったらしい。
無論その程度で木箱は破損しないが、おうち3棟に屋根としてかぶせてあったブルーシートが派手にずれ落ちてしまった。
雨もりはゆっくりできない。

「れいむとちぇんがぬのさんをはこんでもちあげるから、ありすはおうちのうえにのせてね!」
「おきゃーしゃん、がんばりゅんだじぇ!!」
「むほぉぉ(以下略)」

豪雨の中を飛び出す3匹。その体を雨は容赦なく蝕んでいく。
だが、なんとかれいむとちぇんはブルーシートを引きずって運び、おうちの上のありすに渡すことができた。

「ゆっくりしないでいそいでね!」
「まかせなさい!ありすがとかいはなやねさんをこーでぃねーとするわ!」

だが、ありすがシートを持ち上げようとしたその時・・・

ビュォォォオオオオオオオオオオ!!!

ひと際強烈な風がシートと、その上にたっぷり溜まっていた雨水を持ち上げ、端っこを噛んでいたありすを包み込んだ。

びちゃり・・・

「ゆひぃぃぃいいいいい!!!ぬのさんどいてぇぇぇぇえええ!」
「ありすー!わからないよぉぉおおお!」
「ありす、ゆっくりしてぇぇえええ!」

風がわずかにおさまり、シートがずるりとおうちにかぶさると同時に、ありすは力無くべちゃりと下に転がり落ちた。


「ゆあーん。おきゃあしゃんのおかおがぁぁ。」
「ありすのおかおがとけちゃったよー。わからないよー。」
「ありすのおかお、どうしちゃったの。いだいっ、いだいぃぃぃ・・・」

身じろぎすると、ありすの左目がぼろりと落ちる。

「ありすっ、おちついてね!」
「うあぁぁあ・・・。まりさがゆっくりしてるねっていってくれたおめめがぁ・・・ほっぺがぁ・・・。
ありすもうゆっくりできないよぉ。みないでぇ、みないでよぉ・・・。」

「しょんにゃことにゃいのじぇ!」
「おちびちゃん。」
「おきゃーしゃんはやさしくちぇとっちぇもゆっくちしちぇるのじぇ!
きっとおかおもぺーろぺーろしゅればにゃおるのじぇ!」
「おちびちゃん・・・ゆぅ・・・すっきり・・・。」

「おちびちゃんのいうとおりだよー!ありすはゆっくりできるよー!
おうちにはいってぺーろぺーろしようねー!」



      • そのとき、再び強い風が吹いた。舞い上がる小さな黒いお帽子。

「ゆあーん、まりしゃのおぼうしがー。」
「ゆゆっ!おちびちゃんまって・・・」
「おぼうししゃん、まっちぇー。『びゅぉぉおおおお』ゆーん、おしょらとんでるみちゃいー。」 

ころころころ、ぽちゃん。



まりさの姿は広場を囲むように作られた雨水溝に消え、二度と浮かんでくることはなかった。



「お・・おちびちゃ・・・」

雨水溝に向かって這っていくありす。その体はグズグズと崩れていき、飾りも落ちる。
しかし、それすら気にも留めず、ありすは赤まりさへと向かっていった。

「おち・・・ゆびぇ。」



ありすが修理してくれた屋根のおかげで、おうちは多少雨が振り込みつつも、ゆっくり出来るようになった。



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同時刻の駅前商店街。



無論、深夜の現在、営業中の店など無く、アーケードに人影は見当たらない。人影以外は見当たるが。

アーケードには屋根があるため、通路全体が雨風から守られている。
そのため、おうちが雨で壊れたり、風で吹き飛ばされたりした近所のゆっくり達が、
避難所代わりに歩道に集まって身を寄せ合っている。
商店街の歩道いっぱいにゆっくりが敷き詰められた様は、まるで黒に赤や金で刺繍されたじゅうたんのようで、
夜に何も知らない通行者が見たら、地面がもぞもぞとうねっているかのようですらあり、はっきり言って怖い。



「おきゃーしゃん、あまあまたべちゃいよぉ。」
「がまんしてね。おちびちゃん。」                 「すっきりー。」

「みゃみゃー。うんうんしゅるよ。」            「すっきりー。」    「すっきりー。」
「しょうがないからここでしてね。」
「しゅっきりー。」              「すっきりー。」


台風ではなくとも雨は恐怖の対象である。
とはいえ、たくさん集まればやはり心強い。
それに、ここにたどり着くまでにびしょ濡れにはなってしまっていても、
互いにぺーろぺーろして、みんなで身を寄せ合ってあたためあえば、ゆっくりできる。
実際、ここに集まってすーやすーやと寝息を立てているゆっくりたちは、とても安心してゆっくりしていた。



だが、台風のたびに行われるゆっくりの一斉避難は、当然人間さんもよく知るところである。
加えて言えば、通路にみっちり詰まって、ろくに身動きの取れないゆっくりたちが、
商店街の通路中にうんうんやしーしーをまき散らしていくことも、人間さんのよく知るところであった。



よって、台風の日には臨時でゆっくり清掃班が組織される。

「よーし、寝静まったな。儚井、ちゃっちゃと済ませるぞ。」
「はい。」

ニコニコゆっくりマークと『ゆっくり清掃』の文字が書かれた、青いタンクローリー。
春以外は基本的に使用されていないそれは、稀に別の季節にも活躍の場を与えられることがある。
たとえば台風の日の夜など・・・

青い作業服を着た市の職員が、タンクからのびる吸引ホースを持ち、最初の一匹に吸引口を向けながら独りごちる。

「目を覚まさないでくれよ。それがお互い一番幸せなんだから。」






みゃみゃ・・・ゆっくちあったきゃいにぇ。
でも、おなきゃしゅいたから、あしたはいっぱいむーちゃむーち

しゅぽん。

「班長、清掃完了しました。」
「よーし。かえってコーヒー飲もうや。」



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れいむたちは、目の前で友ゆっくりを失い、さすがに落ち込んでいた。
普段は陽気なちぇんも少々大人しくなっている。

「さびしくなったよー。」
「ありしゅおにぇーしゃん・・・。」
「ゆぅ。みんなしっかりしてね。れいむたちはありすたちのぶんまでゆっくりしないとだめだよ。」
「しょーね。いつまでもおちこんでりゅのはときゃいはじゃないわ。」

ごそっ・・・

そのとき、玄関から物音がした。

「ゆゆっ!?ありす?」

玄関から入ってきたのは、無論ありすではなく、一匹の、ずぶ濡れの老猫であった。

「ゆ、ゆ、ゆ、ねこさんだぁぁぁああああ!!!」
「おきゃあしゃんきょわいぃぃいいいい!!!」

のっそりのっそりと、めんどくさそうに入ってくる老猫。
れいむ達の反応も無理はない。
猫達はゆっくりを好きこのんで食べるわけではないが、
気分しだいでじゃれついたり、おもちゃにすることは多い。
しかも被害にあうのは、虫に近いサイズの子ゆっくり以下。
ゆっくり側の心証は最悪である。

ぶるぶるぶるっ・・・ぶるぶるぶるぶるっ!

おうちの中で遠慮なく毛についた水滴をはらう老猫。

「ゆぴぃぃぃいいいい!・・・・ゆっぐぢしじゃい・・・」

老猫が体を振って水気を飛ばすと、おちびちゃん達はびしょぬれになり虫の息となった。

「おちびちゃぁぁああああん!ぺーろぺーろするからゆっくりしてぇぇ!」
「ゆ・・・ゆっぐぢ・・・」
「そ、そうだよ。ちぇん!たすけてね!」

なにせちぇんは、猫4匹相手に戦って撃退したことがあるのだ。一匹くらいどうにか・・・



「わ゛・・・わぎゃ・・・」   ちょろちょろちょろ・・・ぶりぶりっ・・・

ちぇんは、れいむ達に輪をかけてひどい怯え様であった。
顔面蒼白、口から泡を吐き、白目をむきながらうんうんとしーしーを垂れ流す姿は、常のちぇんではあり得ない。

まあ、ちぇんの下膨れに残る傷跡が、猫との死闘によるものなどではなく、
赤ゆの頃に8匹いた姉妹が次々と子猫にじゃれ殺されたあげく、
飽きられて放置され、生き延びた際の古傷だということを知っている者であれば納得の姿ではあったが。



そんなちぇんを、毛づくろいしながらチラリと見る老猫。
ちぇんはこの老猫が、またあの時のように散々ちぇん達をじゃれ遊び、いたぶり殺すつもりなのではないかと想像した。

老猫の方は、これまたゆっくりと似たり寄ったりで、
ダンボールのおうちが飛ばされてしまい、緊急避難として目についた木箱に入ってきただけである。
目の前のゆっくり達は先客程度にしか思っていない。

「クフゥ・・・・クファ・・・・ム。」

おうちの隅っこに体を寄せてガタガタと震えるちぇんをしばらく眺めていた老猫は、
のそのそとちぇんに近づき、クンクンと匂いを嗅ぎ、興味なさげに大きく欠伸をした。

「わ、わぎゃらないよぉぉぉおおおおおおお!!!」
「ちぇん!まっでぇぇええええ!!!」

その瞬間、恐慌に陥ったちぇんは、ますます強まる暴風雨の中を飛び出していき、そして二度と戻ってこなかった。

「ちぇん・・・、ごわいよぉぉ。」
「「「おきゃあしゃぁん。きょわいよぉ・・・。」」」
「だれが、だずげでぇ・・・。」

老猫は、おうちの真ん中でのっそりと丸まって寝息を立て始めたが、
れいむ達はおうちの隅っこから動くこともできず、涙を流し、ガタガタと震えながら一夜を過ごしたのであった。



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翌朝。

玄関から差し込む朝日によって目を覚まさせられたれいむは、
おうちの中に老猫も、3匹のおちびちゃんも誰もいないことに気がついた。

「ゆ、ゆゆっ!おちびちゃん!どこなのおちびちゃん・・・!」



大慌てでお外に飛び出すと、そこには3匹のおちびちゃんが、
ゆっくりとした表情で朝日を浴びている姿があった。

「おきゃーしゃん!おきちゃにょ!?」
「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
「あめしゃんもやんで、とっちぇもときゃいはなあさよ!」

「ゆ・・・ゆぅ、ゆっくぢぢでいっでねぇ。」
「どうちちゃにょ?おきゃーしゃん。」
「ゆぅん。ねこさんもおちびちゃんもおうちにいなかったから・・・」
「ゆーん。れいみゅがおきたときにはもういにゃかったよ。よかっちゃにぇ!」
「ゆぁーん!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねぇ!」
「「「しゅーり、しゅーり、ちあわちぇー!」」」

「それじゃ、ゆっくりしたら、あさごはんさんをさがしにいこうね!」
「あのまりしゃがいなきゃものだったから、もうおなきゃぺーこぺーこだわ!」

「ゆーん!れいみゅもうしゅこし、たいようさんでぽーかぽーかしゅるよ!」
「ゆーん、すこしだけだよ。」

お腹がすいたと駄々をこねる次女ありすと末っ子れいむ。
日向ぼっこを楽しむ長女れいむ。
れいむは、様々な不幸を味わいながらも、なんとか台風を一家無傷で乗り切れたことでしあわせーだった。












ちなみに、台風の過ぎ去った早朝に目を覚ました老猫もまた、日向ぼっこを済ませて朝食を探しに出かけようとしていた。

日当たりの良い、れいむ一家のおうちの上から。



めちゃっ。



めんどくさそうにれいむ一家のおうちの屋根から下りた老猫は、気持ち悪いものを踏んだといわんばかりに前足を振りながら、
のそのそと歩いて行った。

後には、つぶれた長女れいむと、その姿を見て、笑顔のまま固まったれいむ親子が残された・・・。










このシリーズ、全体的に内容が(特にゆっくり殺害描写が)あっさり風味で、
サクサクと死んでいく感じなのは、意識してのものです。
町なんて加工所と大して変わんないんだよ、って感じが出したくて。
物足りなかったら申し訳ないです。
            • そもそも文章力自体が無いのは実力なので、そっちはご容赦ください。

それから、多くの絵師さんにD.Oをどろわで描いていただきまして、感謝感激です。
元はと言えば誰かの悪ノリで出されたムチャ設定から、
よくもまああんなエロい女性キャラを描いていただけたもんです。
これで、夜中にSSを書いている時の孤独感で涙を流さずに済みそうです。
ほんとうにありがとうございます。











おまけ 同日の深夜



ここは、虹浦町の隣、餡娘町の学校に校長として勤務する、倉塚邸。

「ふーむ。相当荒れとるな。」

校長宅は代々受け継がれた古風な和風邸宅だ。庭も広く、多くの木が植えられている。
暴風と豪雨にさらされる庭を眺めていた校長は、そのうち一本に視線を向ける。

「そろそろ、かな。」

塀づたいに雨風を避けつつその木までたどり着くと、
そこには一人のゆっくりが一糸まとわぬ姿で、犬用の首輪で木に固定され、立たされていた。

「・・・はぁ・・・んぅぅ・・・さむくて・・・こわいよぉ・・・」
「でも、気持ちいいんだろう?てんこ。」
「・・・だくさんぬれちゃった・・・とけちゃう・・・」
「ふむ。すこし肌が溶けてヌルヌルしとるな。」
「・・・あめさんじゃいや・・・せんせぇ・・・」
「んむ?」
「・・・せんせぇが・・・てんこをとかして・・・」

てんこは木の陰でわずかに雨にさらされながら、
その絹のように滑らかな臀部を突き上げるようにして、校長を誘う。
その肌は上気しはじめ、ぬらぬらと輝く肌とわずかに漂う白い湯気は、たとえようもなく艶めかしい。

「・・・せんせぇ・・・」
「何だ。」
「・・・てんこのこと・・・いやじゃない・・・?」
「どうして?」
「・・・えっちで・・・へんなことばかりするてんこ・・・わるいこだもん・・・」
「・・・私はそんなてんこが好きだから、妻に迎えたんだよ・・・。」
「ぁぁ・・・うれしぃ・・・」



校長とてんこはこの日、風雨の吹き荒れる中で一晩中互いを暖めあった・・・












過去作品



『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど)

春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ
春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね
春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ)
春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ)
春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ)
夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね
夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ)
夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ)
夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ)
夏-2.  ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね
秋-1.  本作品

挿絵 by嘆きあき



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感想

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  • ↓下に追加で、だったら"ふたば系ゆっくりいじめ"なんて見るな。 -- 2016-02-16 20:36:13
  • ↓×5 本当に同感
    ゴミ袋を破いて街の景観を汚すだけの糞袋を可哀想なんて言うな! -- 2016-02-16 20:34:01
  • ※3
    台風よりも地震があるからな -- 2013-12-10 01:10:05
  • ゲスまりさザマァァァァアアアアアアアアwwwww -- 2011-12-27 03:44:05
  • 全滅するのは困るなぁ~~俺の楽しみがなくなってしまうじゃないか -- 2011-11-17 00:57:48
  • しかたないよ
    アンチなんだから -- 2011-08-30 13:37:47
  • ↓×3 俺ゆっくりのことを「かわいそう」なんて思うやつの気が知れないわ。どこが「かわいそう」なんだよ。ゆっくりなんて台風で全滅してしまえばいい。
    -- 2011-01-21 00:03:38
  • なんで校長の感想のが多いんだよw -- 2011-01-20 03:44:39
  • 台風に耐える町ゆの話のはずが、最後に校長が全部持っていっちゃったじゃねーかw -- 2010-09-19 04:04:51
  • 野良ゆかわいそう -- 2010-07-15 07:26:42
  • このサクサクっぷりは読んでいて気持ちが良かったです。
    -- 2010-06-07 14:45:37
  • 校長先生が特殊な趣味の持ち主だと言うことがよくわかりました -- 2009-10-30 01:57:43
最終更新:2009年10月19日 19:48
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