――グチャッ、ブチィッ、ゴリッ、ベチョッ……。
それは、不幸な事故だった。
”奴”が拠点としている警察署に迂闊に入ってしまったから。
無防備に背中を晒す餌を前にして、”奴”は喜んで涎を垂らしていた。
――ブチッ、ゴリリッ、グチャッ、ボリッ……。
天井に張り付いていた”奴”は躊躇いも慈悲もなく槍のように鋭い舌を餌へと向ける。
高速で迫りくるそれは呆気なく餌を――これ以上は語る必要もあるまい。
――ゴクンッ。
丁度食事を終えたそれは、肉塊となった餌を見下ろす。
脳を剥き出しに、四肢をもぎ取られ、体の至る部位を食い千切られた憐れな餌の名は――
「ふふ、ごちそうさまァ」
残骸、リッカーであったものを俯瞰しながらアリオーシュは緋色の唇を舐める。
美しい顔は返り血に彩られ、革製の衣服には内蔵らしきものが飾られているその姿は、リッカーを遥かに越える狂気を演出させていた。
事の発端は上記の通り、アリオーシュがラクーン市警に訪れたことが原因だった。
飢えたリッカーは生者の気配を感じ取り、盲目でありながら的確にアリオーシュの首を狙って天井から舌を伸ばした。
並の人間ならばその時点で首が掻っ切れていただろう。しかし”契約者”であるアリオーシュは並の人間という枠には収まらない。
振り向きざまに振るわれた大剣の一撃で舌を切り落とされたリッカーはたまらず地上に落下し絶叫。
近寄るアリオーシュへ抵抗しようと巨大な爪を振るうが、その時には既に四肢が切断されていた。
よもやリッカーも自分が捕食される側になるとは思っていなかっただろう。
生きたまま――といっても死んでいるが――アリオーシュの餌となったリッカーは最初こそ身体をバタつかせていたものの、四口目ほどで動かなくなった。
アリオーシュはリッカーの味を思い返し、僅かに眉を顰める。
やはり子供と比べて味も悪いし、硬いし、臭い。けれど食べられるだけマシだ。
自分のお腹の中に入れれば、この醜い世界から守ることが出来るのだから。アリオーシュの行動理念はただその一筋の狂気に引っ張られていた。
「うふ、うふふふふ……まってて、私のかわいいこどもたちィ……」
大剣を引きずり、ラクーン市警を後にする。
ここにはもうなにもない。さっきの肉も、もう食べ飽きてしまった。
ああ、柔らかくて美味しいこどもたちをまもりたい。まもりたい。マモりタい。タベタイ。タベタイタベタイタベタイタベ――
笑顔を張り付けるアリオーシュは気づかなかった。
リッカーを捕食したことで自分がT-ウイルスに感染していることに。
もっとも彼女の世界にはT-ウイルスなど存在しないし、仮にあったとしても対処法などない。加えて元々食人衝動のあるアリオーシュは自分の異変にも気が付かないだろう。
よって、彼女はこの時点でクリーチャーとなることが確定した。
T-ウイルスに耐性がなかった場合は、だが。
【F-3/ラクーン市警/一日目 深夜】
【アリオーシュ@ドラッグ・オン・ドラグーン】
[状態]:T-ウイルス感染(軽度)
[装備]:バタフライエッジ@FINAL FANTASY Ⅶ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品
[思考・状況]
基本行動方針:こどもたちをまもる。
1.人、できればこどもを探してまもる。
2.あの肉、あんまり美味しくなかったわ。
※リッカーを食べたことによりT-ウイルスに感染しました。
耐性があるかどうかは後の書き手さんにおまかせします。
また、クリーチャー化した場合脳を破壊され完全に活動を停止した段階で「死亡」と判断します。
【バタフライエッジ@FINAL FANTASY Ⅶ】
アリオーシュに支給された大型の剣。FF7本編ではクラウド専用の武器。
見た目は大きめのサバイバルナイフといった感じ。
最終更新:2019年09月18日 17:50