『トウヤ、こっちだよ!』
『ベルがね、旅を始めるなら最初の一歩はみんな一緒がいいって』
『ねえトウヤ、一緒に1番道路に踏み出そうよ!』

彼女の提案に、幼馴染の少年はコクリと頷く。

『じゃ、いくよ!』
『せーの!!』

そして彼女、ベルはポケモントレーナーとしての第一歩を…


「……え?」

…踏み出せなかった。

―今からあなた達には殺し合いをしてもらうわ。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

「ふええ…」

新米トレーナー、ベルは殺し合いの会場に飛ばされて早々、地面にぺたりと座り込んでいた。
金髪の少女からの突然殺し合いをしろと言われ。
男の人の首が吹き飛んで。
人間とは思えないような異形の化け物が現れて。

「わけが分かんないよお…」

あまりのショックな出来事な数々を思い出して、その場に崩れ落ちてしまったのだ。

「あたしも…死んじゃうの?」

呟いた言葉を否定するように、ブンブンと身体を左右に振る。
嫌だ、死にたくない。
だけど…

「怖い…怖いよお!」

生き残るためには、まず立ち上がらなければならない。
それなのに、足がすくんで動けない。
一歩が、踏み出せない。
立ち上がろうとするたび、マナという少女の殺し合いの宣言と、首を吹き飛ばされた男の死体が脳裏にフラッシュバックして、またその場にうずくまる。
その繰り返しだった。

(いっそのこと…このままここにいる?)

地図も見てないのでここがどこかも分からないが、動かなければ誰にも出会わず殺されることもないかもしれない。
そんな弱気な考えが頭をもたげたその時、

「……………」
「…へ?」

顔を上げると、目の前にランタンが浮いていた。
いや、正確に言えばランタンを模した生物だった。
よくみれば、自分のそばに置いてあったデイバックが空いている。
どうやら、ここから出てきたらしい。

「え、なにこれ…ポケモン?」
「……………」

目の前のポケモン(?)は何も答えない。
ただ黙ってベルの方を見ていた。

「…あれ?よく見たら背中に何か紙が貼ってある」

手を伸ばしてその紙を手に取ると、そこにはこう書いてあった。

種族名:ランタンこぞう
使用技・術:メラ

「ランタンこぞう…メラ?」

初めて聞く名前と技に、ベルが思わずつぶやくと、

「……………!」

ランタンこぞうはメラを唱えた!

「へ!?うわわわわ!」

突然迫りくる炎に、ベルは立ち上がり炎を回避する。

「び、びっくりしたあ…」

自分が立ち上がれていることに気づかず、ベルは炎を回避したことに安堵する。
そして…悲しそうな表情でランタンこぞうを見つめると、ポツリとつぶやいた。

「ポカポカ…」

ポカポカ。
それは彼女のパートナー、ポカブのニックネームだった。
まだ『ひのこ』も使えないひよっこポケモンだが、炎を放ったランタンこぞうを見て、炎ポケモンである相棒が脳裏によぎったのだ。

「…!もしかして!」

ベルは、慌ててデイバックの中を探る。
このランタンのポケモンみたいに、ポカポカもこの中にいるかもしれない。
そう思ってデイバックを漁るが…

「いない…」

ポカポカ本人も、彼が入ったモンスターボールもなかった。
この殺し合いに呼ばれる前まで、確かに一緒にいたのに。

「ポカポカ…どこにいるの?あなたもこの殺し合いに呼ばれてるの?」

相棒の不在に、ますますベルの中で不安が大きくなる。
再び、その場にうずくまってしまった。
思い出すのは、彼と相棒になってすぐに行ったポケモンバトル。

『ポカポカ、たいあたり!』
『ポカァ!』

トウヤの部屋の中でバトルして、そのせいで部屋はめちゃくちゃ。
だけど、バトル中はそんなこと全く気にならないほど楽しくて、興奮して。
これから旅の中で、こんなドキドキワクワクをいくつも体験するんだって、信じてた。

「ううん違う…今だって信じてる」

相棒の、ポカポカの姿を思い出す。
あの子と、旅をしたい。
旅をして、楽しい思い出をいっぱい作りたい。
まだ旅の一歩目だって踏み出してないのに、それなのに…!

「こんなところで、止まってなんかいられない!」

そう叫ぶとともに、再び立ち上がる。
しかし、その足はまだ震えていた。

「ねえ、あなた…」
「……………」
「隣に、来てくれない?一緒に、やりたいことがあるの」
「……………」

ランタンこぞうは何も言わない。
しかし、ベルの要望を聞き届けるかのように、彼女の隣へと移動した。

「ありがとう」

ベルは礼を言うと、ランタンこぞうの頭の取っ手のような部分をつかむ。
そして、一度大きく深呼吸をすると、

「これが、あたしの旅の始まり!その第一歩だよ!」
「……………!?」

立ち幅跳びでもするかのように、前方へと思いっきりジャンプした。

「これでよし!ありがとうね、『ランラン』!」
「……………?」

笑顔で礼を言うベルを、急に名前をつけられたランランことランタンこぞうは不思議そうに見つめる。
『最初の一歩』を踏み出した彼女の足は、もう震えていなかった。

【A-3/一日目 深夜】

【ベル@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランラン(ランタンこぞう)@DQ11 不明支給品0~2個
[思考・状況]
基本行動方針:
1.ポカポカ(ポカブ)を探す。
※1番道路に踏み出す直前からの参戦です。
※ランタンこぞうをポケモンだと思っています。


【ランタンこぞう@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
ベルの支給品、もとい支給モンスター。
うち捨てられたランタンに住み着いた種火の悪魔。
ランタンに化けて夜道を歩く旅人をおどろかせる。

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006:腕力と知力 時系列順 008:夢の果て
投下順
NEW GAME ベル 021:歩幅を合わせて、それぞれの二歩目を

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最終更新:2019年07月05日 21:38