『魔王に挑んだ愚かな男、サイラス
ここに眠る』

(ふーん……とすると、ここは誰かの墓ってワケか?)

北の廃墟の最深部にある、サイラスの墓。
これを眺めている男が、一人いた。


(皮肉なモンだな…死んだと思ったら奇妙な戦いに参加させられ、その先で墓場を見るなんてヨォ………)

岩と見間違えそうなくらいガッシリした体つきの男の名は、ダルケル。
ハイラル一の火山、デスマウンテンを統べるゴロン族の族長にして、ハイラル全土を守るとされる姫を、護衛する英傑の一人である。

(確か、オレはガノンの怨霊と戦って……それから………)

そこまではダルケル自身もよく覚えている。
この戦いも、死後の世界で行われたことだと思えば納得が行く。


しかし、どうにも訳が分からないのがその先のこと。

ミファー、ウルボザ、リーバル、そしてリンク
さらに、自分が守ろうとしている、ゼルダまで参加しているではないか。


(おかしい……リンクは封印され、姫さんは確かに守られてるって、聞いたハズなんだが……)

そしてこの戦いを開催したという少女と、魔物。

(ガノン以外にもあんなバケモノがハイラルにいたのか?)
ウルノーガ、と名乗った怪物からは、厄災ガノンと対峙した時のような禍々しさを感じたし、マナ、という少女からも異様な魔力を感じた。

たとえこの首輪がなくても、あの二体はかなりの強者だろう。
ハイラルにいれば、その力が耳に入らないわけがない。
たとえ力を隠していたのだとしても、なぜ今になってこんな下劣な催しを開いたのかも理解しがたい。

訳の分からないことはあれこれあるが、いつまでもジッとしてられない。


(よし!!まずはリンクと姫さんを探す!!それで全てを決める!!)
彼自身は強いだけではなく情に厚く、ゴロンからも他の種族からも信頼もあった。
考えることこそやや苦手で、その点を同じ英傑であるリーバルにたしなめられてきたのだが。

ダルケルは墓に祈りを捧げ、そこを後にした。

扉を開け、廊下を歩いてすぐの所。

ダルケルの前に、二体の戦士の姿をした幽霊が現れた。
「な、なんじゃこりゃあ!!」

驚く瞬間、早くもナイトゴーストはダルケルの目の前に現れ、斬りかかってくる。
自分達がかつて戦った存在も怨念だったが、どうにも慣れないものだ。
まあ、犬の幽霊じゃないだけ、マシともいえるが。

「ちっ!!」
巨体に似合わぬ反射神経で、幽霊の斬撃を躱す。


幽霊と言っても、有害な存在も無害な存在もいる。
だがコイツは、間違いなく有害な部類に入るだろう。

そういえば、と昔ダルケルが読んだ、デスマウンテンの歴史書の中身を思い出した。

自分の遠い先祖にして、自分の名前の基にもなっている、ダルニアの時代。
その時代には、ポウという悪霊がハイラル中に巣くっていたらしい。

倒さなきゃならないと、あわててザックから武器を取り出す。

どうやってこんなザックに入っていたのか疑問に思うくらい巨大な武器が入っていた。
それは、武器というよりも、鉄の塊、といった方が正しいのかもしれない。


しかし、刃物より、力任せに振り回す鈍器の方を好んでいたダルケルにとっては、ありがたい支給品だった。
本当は自分の愛用の武器、巨岩砕きが欲しいのだが、この際贅沢は言えない。

ダルケルは鉄塊を一振り。

ブンという轟音と共に、廃墟の壁に大きな穴が開く。
しかし、ナイトゴーストには、全くダメージを受けた様子がなかった。

「な、なぜだ?」

今度はナイトゴースト達の反撃。剣を振り上げ、襲い来る。

「ゴロォォォォ!!」
ダルケルの叫びに共鳴して、彼の体を紅い結界が守る。
ダルケルの英傑たる力は、剛力のみではない。

あらゆる攻撃を打ち返し、あらゆる弾を跳ね返す無敵の結界、ダルケルの護りだ。
結界こそ容易に破壊されるも、ダルケルの護りの真骨頂はこれから。
衝撃を相手に返すことで、一時的に相手を動けなくさせる。
どうやら幽霊もダルケルの護りの反動で、怯んでいるようだ。


今がチャンスだと再びダルケルは鉄塊を一振り。しかし、ダメージを受けたのはまたも廃墟の壁のみだった。

(コイツ……透き通るから、オレの攻撃が効かないのか?)

今度は二体目のナイトゴーストの攻撃が、ダルケルに迫る。
(しまった!!)
今度はダルケルの護りを打つ暇がない。

しかし、よく見れば剣は大した長さではなく、ダルケルの岩のように固い皮膚に到底入りそうになかった。

「ぐ!?」
突然ダルケルの体を、虚脱感が襲った。
どう考えても、刃物で斬られたダメージではない。

ナイトゴーストの怨霊で形成された剣は、肉体ではなく魂を傷つける。
そのため、どれほど生命力がある存在が相手でも、一定数のダメージを与えてくるのだ。
そんなことを知らないダルケルは、戸惑い続ける。


(こっちの攻撃は透き通るクセに、向こうの攻撃だけ当たるなんて、反則もいいところじゃねえか………)

意気揚々と進もうとするダルケルは早速出鼻をくじかれ、苦戦状態になった。


「消えろ……悪霊め!!ライデイン!!」

一人の青年の声が廃墟に響く。

室内にも関わらず、雷が現れる。

その雷蛇は、いとも簡単にゴーストナイトを焼き払った。

(す、すげえ……。)
高位の雷の術を操れる者がウルボザ以外にもいたことに、ダルケルは感銘を受けた。

消える間際にゴーストナイトは一体がダルケルに、もう一体が青年に黄色い光を放った。
それが終わると聖なる雷にその身を焼かれ、天に還って行く。

何が起こったのか一瞬焦るも、特に体に異常はなかったダルケルは、青年に話かける。


「ありがとよ兄ちゃん、助かったぜ!!」

上の階から降りてきたのは、髪がサラサラの青年。
いかにも、旅人然とした身のこなしだ。

(ん……?)
ダルケルは何かを思い出したかのように、青年を見つめる。

「どうか……しましたか?」
青年が答える。

「いや、なんでもねえ。」

ダルケルは、青年にどこか旧友の面影を感じた。
敵を瞬時に薙ぎ払ってしまう強さ、そして曇りのない光を纏った瞳。

英傑リンクさながらだ。

「ところでな、オレは探してえ人がいるのよ。兄ちゃんもいるだろうし、一緒に探さねえか?」

突然青年は黙りこくってしまった。

「兄ちゃん、向こうの方に行きたかったのか?でもあっちには、サイラスって人の墓しかなかったぞ」

ダルケルが話を続ける。

「それと兄ちゃん、お礼も兼ねてだ。何か必要な物はあるか?
オレはこの武器以外、何なのか全く分からねえ。」

ダルケルのザックからは綺麗なポットに入った淡い紫の薬と、おかしな形をした野菜が見られた。

薬は説明書曰く、飲めばMPが全回復するらしい。
しかしダルケルにとってMPとはなんのこっちゃの話だし、野菜に関しても特に知識はない。

以前カカリコ村を訪れた時に、畑に植えてあった野菜に似ているし、リンクなら上手に料理してくれそうだ。

けれど自分は、岩料理以外のレシピを知らない。


袋の中で持て余すくらいなら、誰かにあげても損はないだろう。

しかし、青年はまだ動かない。返事もない。

「おーい、兄ちゃん、どうしたんだ!!オレはもう行くぞ!!」

返事はない。ダルケルは痺れを切らして、廃墟の外へ出て行った。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○


(行ってしまった………)

ダルケルを助けた青年、イシの村の勇者イレブンとしては、別にダルケルがゴーレムに似ているからとかいう理由で、気に食わないというわけではなかった。

仮にダルケルが人間でなくとも、自分はヨッチ族やスライム、ドラゴンバケージなどの異種族とも交流を取ったことがあるし。

むしろ、ダルケルとは話したいことは山ほどあった。


たとえば、この戦いの主催者のこと。

少女の方は見たことのなかったが、ウルノーガのことはよく知っている。
かつてニズゼルファを倒した勇者の仲間であり、そのニズゼルファに魂を汚されたウラノス。
二度に渡って倒したことは事実だし、その情報の共有を是が非でもしたかった。

ダルケルの方も仲間がいる可能性が高いし、仲間、あるいは自分にとってのホメロスのような危険人物の情報共有もしておいて損はないだろう。


だが、出来ない。

たとえ話す相手が異種族でも、唐突に襲ってくる。
恥ずかしいという気持ち。

朝食べたものが、歯に挟まってないだろうかとか。
目の前のゴーレム似の男がつぶらな瞳で見つめてくる瞬間とか。
考えていた話題が思いつかなくなったらどうしようとか。

さっきの幽霊の魔物との戦いも、呪文を使うことが急に出来なくなったら、どうしようかと、気が気で仕方なかったのだ。


仲間と共に、ニズゼルファを倒した後でさえ、この呪いは消えなかった。

なんでもこの呪いは、イレブンの遠い祖先の、そのまた知り合いから引き継いだものらしい。
教会で解いてもらえるそうだが、神父に話しかけると、言葉を紡げなくなってしまう。
自分にかけられた呪いを解いてください。その言葉が声に出せないのだ。


ようやく足が動くようになり、イレブンもノロノロとダルケルの後を追う。
本当のことを言うと、さっきのダルケルが持っていた薬が欲しかったのだ。
あのポットの形は間違いなくエルフの飲み薬。

ゴーストナイトがイレブンのライデインに浄化される際に、マジックバスターをかけて、魔力を奪い去って行ったのだ。

自分は剣術にも心得はあるが、攻撃の多様性も兼ねて、やはり魔法が使いたい。
薬を飲まなきゃ、しばらくの休息が必要だ。

やはりダルケルに協力を求めよう、とイレブンは思い、走り出した。
既にどこにいるか分からなかったが。

仲間と共にこの戦いからの脱出。
そして、自分にかけられた呪いの解呪を目指して。

【B-2/北の廃墟入り口/一日目 深夜】
【ダルケル@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:HP1/2+α  ダルケルの護り消費(あと2回)
[装備]:折れた鉄塊 @ドラッグオンドラグーン
[道具]:基本支給品 ミメットの野菜@FF7 エルフの飲み薬
[思考・状況]
基本行動方針:
1. リンク、ゼルダ、ついでに他の英傑も探す。
2. とりあえずハイラル城へ向かう
3.殺し合いには消極的だが、襲われれば戦う。

※炎のカーズガノンに敗れ、死亡直後からの参戦です。

【B-2/北の廃墟B1一日目 深夜】
【イレブン@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:MP0  恥ずかしい呪いのかかった状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(1~3個、呪いを解けるものはなし)
[思考・状況] ああ、はずかしい はずかしい
基本行動方針:
1.とりあえずダルケルを追う。
2.同じ対主催と情報を共有し、ウルノーガとマナを倒す。
3.はずかしい呪いを解く。

※ニズゼルファ撃破後からの参戦です。


【鉄塊@ドラッグオンドラグーン】
ダルケルに支給された大剣(という判定でいいのか?)
文字通り鉄の塊。長さは人間の身長を超え、重さは40キロほど。
切れ味はすこぶる悪いため、力で振り回して叩きつけるのが主流の使い方。一応、武器を通して爆発魔法(アイオブサクリファイス)が打てるが、ダルケルに打てるかは不明。

【ミメットの野菜@FF7】
ダルケルに支給された野菜。
チョコボ(本作で出るかは不明)の好物とする野菜の一つ。人間が食べても僅かにHPが回復する。カボチャのような見た目。

【エルフの飲み薬@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
ダルケルに支給されたMP回復アイテム。ダルケルの世界ではMPという概念がないため、本人は何のための道具か分かっていない。(飲めばダルケルの護りの使用回数が増えるかも?)

【ゴーストナイト@クロノトリガー】
原作では北の廃墟に巣くう幽霊の魔物。本作でも登場した。まだいるかもしれない。
物理攻撃が全く効かないし、魔法で倒せば反撃にHPを減らす「おんねん」か、MPを0にする「MPバスター」を打ってくる。中の人が原作で特に嫌いなモンスター

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最終更新:2019年09月02日 17:38