この世界に救いはないと気がついたのはいつ頃だっただろう。
司令部に裏切られ、機械生命体に仲間を全滅されてからもう大分時が立つが未来というものを考えたことはなかった。
ただひたすらに機械生命体を狩り続ける毎日を過ごしていく中、それは突然訪れた。
『みんなを……未来を……お願いするね……A2』
論理ウイルスに汚染され、自身の最期を悟ったヨルハ型のアンドロイドが私にそう言った。
彼女の記憶データが入った武器を手に取りながら私は初めて『未来』というものについて考えた。
頭の中に流れ込む彼女の――2Bの記憶データは無意識の内に私を変えていたのかもしれない。
いいさ、守ってやろう。
星の未来なんて、司令部が守る人類なんてもうどうでもいいと思っていた。
だが気が変わった。2Bが命を賭けてまで守ろうとした『みんな』とやらを、『未来』とやらをこの目で拝んでやろう。
2Bの意志を受け継いだ私は、彼女が彼女でなくなる前に刀を突き刺そうとして――
『今からあなた達には殺し合いをしてもらうわ』
――出来なかった。
■
ここが自分達のいた世界とは全く異なる場所だということにはすぐ気がついた。
空を覆う闇。洞窟の中を思わせるそれは受け継いだばかりの2Bの記憶データによれば夜というらしい。
太陽はずっと空にあると思っていたから衝撃だった。日差しに慣れていたせいか少し肌寒く感じる。
それに辺りを覆う建造物があまりにも綺麗だった。まるで今現在も誰かが住んでいるかのように。
見覚えのない景色はつくづく私の予想が当たっているのだと裏付けてくれる。
空を見上げれば幾つもの光が小さく輝いていた。
星――長らくバンカーに返っていないからかとても久しぶりに見る。
宇宙からではなく地上からでも星が見れるなんて初めて知った。未知に対して眠っていた好奇心が顔を出しかけているのが分かる。
だがそれを抑え込むのは苛立ちと焦燥。勝手に連れてきた挙げ句に殺し合えなどあまりにも馬鹿げている。
一体私を連れてきたのは何者なのだろう。
私以外にも多くの者が連れてこられていた。それがアンドロイドなのか機械生命体なのか分からないが、あれだけの数を一度に集める技術など私は知らない。
単に私が知らないだけかもしれないがそんな技術力があれば脱走兵である私を捕らえるなどいつでも出来たはずだ。
だからこそ、少なくともこの一件に司令部は関わっていないだろうと判断した。
だとしたら奴らはエイリアンだとでもいうのか。
考えられなくはない。ウルノーガと呼ばれた存在の容姿はアンドロイドでも機械生命体でも見られないような不気味なものだった。
未知を未知で説明する結果になるが、今はそう判断するしかない。
それに、真実を知ったところで私の考えは変わらないのだから。
「……未来、か」
私は約束したんだ。
あの世界のみんなを、未来を守ると。
裏切り者という刻印を押され誰からも信頼されない世界で得た一筋の道しるべ。
どんなに腐った世界でも、私はあの場所で生まれた以上あの世界を守る義務がある。
そのためにはこの殺し合いに勝たなくてはならない。相手がアンドロイドであろうと機械生命体であろうと関係ない、見つけ次第殺すまでだ。
「それがお前の願いなんだろう。2B」
願いを叶える? ふざけるな。
私の、そして私の中に残る彼女の記憶の望みはお前達の手なんか借りず自分で叶えてやる。
十六号が、二十一号が、四号が死に、私だけ生き残ったのには理由があるはずだ。私は今までその理由を見つけ出せずにいた。
だが今なら分かる――私たちの世界の未来を築くことが、生き残った私のやるべき事なんだ。
「それに気付かせてくれた礼をたっぷりとしてやらなきゃな。主催者どもには」
普段よりも幾分かトーンを落とした声で呟きながら支給品の剣を右手に握る。
誰かの手によって使い古されているだろうその剣は不思議なほどに私の手に馴染み、まるで手の一部のように感じられた。
支給品はあと二つあった。
一つは黄金のリング。説明書を読むに、様々な状態異常を防ぐ効果があるらしい。半信半疑だったが一応着けておく。
もう一つはよくわからない棒が幾つも入っているよくわからない箱だ。説明書には『ソリッド・スネークの嗜好品』とだけ書かれている。
剣、リングとそれなりにいい装備が続いたからか期待を裏切られた気持ちが強い。だがこれだけあれば十分に戦えるはずだ。
剣を一振りし夜の街を駆ける。
高速で移り変わる視界の端で街の灯りが溶けてゆく。
もういい、もう十分見た。私たちの世界ではないこの場所に興味なんてない。
私はただ、未来のために狩るだけだ。
【F-4/一日目 深夜】
【ヨルハA型二号@NieR:Automata】
[状態]:健康
[装備]:カイムの剣@ドラッグ・オン・ドラグーン、スーパーリング@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品、煙草@METAL GEAR SOLID 2
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、自分の世界の未来を守る。
1.他の参加者を探しぶち殺す。
2.自分以外の参加者はアンドロイド? 機械生命体?
※2Bの記憶データを受け継いだ直後からの参戦です。
※ブレイジングウィングが使えるかどうかは後の書き手さんにおまかせします。
【カイムの剣@ドラッグ・オン・ドラグーン】
A2に支給されたロングソード。
カイムの初期装備であり、亡き父の形見。
DODシリーズでは皆勤賞となる剣であり、クセがなく扱いやすい。
魔法は『ブレイジングウィング』。火炎弾が放物線を描き飛んでいく。
【スーパーリング@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
A2に支給されたアクセサリー。
眠り、混乱、毒、猛毒、幻惑、マヒ、休みを五十パーセントの確率で無効化してくれる最強の異常耐性アクセ。
【煙草@METAL GEAR SOLID 2】
A2に支給された煙草。
ソリッド・スネークが吸っている嗜好品で、銘柄は不明。MGS1では『モスレム』だったので恐らく同じ。
装備中はLIFE(体力)が減少したり、減りが激しかったりといいところがない。
一応、赤外線センサーの近くで装備すると煙で赤外線レーザーを浮かび上がらせることができる。
最終更新:2019年08月04日 17:17