「何がバトルロワイヤルよ!!」
ここはとある山の中
一人の男が怒っていた。
「最ッ低!!最ッ悪!!センスゼロ!!こんな催し開くなんて、どうかしてるわよ!!」
口調こそ女性のものだ。
しかし、鬱蒼とした髭、青々とした禿げ頭、桃色のねじり鉢巻き、上着から覗かせる、筋肉質な胸板。
どれも男性であることを誇示している。
男の名前は、サクラダ。
ハテノ村を拠点とするサクラダ工務店の社長、兼棟梁、兼店長である。
その大工としての技術は、ハイラル中の大工を集めても敵わないという。
「あーあ。最悪よ。サクラダ工務店が順調に進歩していたのに。」
サクラダはぶつくさ言いながら、しゃなりしゃなりと山道を進む。
彼女……いや、彼自身にとって、最も不満なことは殺し合いに参加させられたことではない。
後生大事に抱えていた大工道具が、いつの間にやら消えていたことだ。
(しかも道具も取られてるわ……大方あの悪趣味な二人組が、奪ったんでしょうね……)
あれがないと、サクラダとしての実力を発揮できない。
本当ならすぐにでも主催を倒して、大工道具を取り戻したいところだが、具体的な解決策もない。
「あーもうイライラする!!大工道具返しなさいよ!!」
サクラダは怒りをそのまま、山道に転がっていた石にぶつける。
「ちょっと、何するのよ!!危ないじゃない!!」
似たような口調の声が聞こえる。
「ヤダ!!アンタこそだれよ!!隠れてないで出てくれば!?」
声の主は、サクラダの予想の斜め上の、そのまた斜め上から出てきた。
ガサッ、と茂みが音がする。
サクラダはその場所を怪しむ。
声の主はそのまま木の上に飛び乗り、幹を蹴飛ばし、サクラダの後ろに飛び立った。
そのままナイフをサクラダの首元に突き付ける。
「キャーーーー……!!」
サクラダはその人間離れした動きに、悲鳴を上げるが、すぐに口をふさがれる。
「大声出さないでちょうだい。誰が辺りにいるか分からないわ。
一つだけ教えて、あなた、ゲームに乗るつもり?」
サクラダは全力で首を振る。
自分はただの大工だ。殺し合いに参加する気なんて、さらさらないことを主張する。
「でも信用できないわね。さっきアタシの顔に石をぶつけてきたし。」
「誤解よ!!イライラしたところに小石があったら蹴るでしょ!!
誰だってそーするわ!!アタシもそーする!!」
口の拘束が説かれるや否や、後ろの人物に弁解する。
「向こうの方に小屋があるのを見たわ。じゃあそこでゆっくり話し合いましょ。」
後ろの相手に言われるまま、サクラダは前へ進む。
目的地へたどり着くまでの間、後ろの男の解説でもしよう。
サクラダと一緒にいる男の名前は、シルビア。
元はソルティコの町の領主ジエーゴの一人息子である。
彼の父親から騎士の心得を基に育てられてきたが、ある日旅芸人になることを決意し、街を飛び出したのだ。
その後、ひょんなことから勇者イレブンと共闘したことがきっかけとなり、その勇者一行の仲間になる。
紆余曲折を経て、魔王ウルノーガを倒し、その後も魔王の被害を受けた人々を笑顔にするために、日々活動していた。
何の因果か、似たような口調を持った異なる世界の二人は、山小屋にたどり着く。
「ここよ。」
サクラダはシルビアに言われるがまま、山小屋に入る。
「何よこのボロ屋!!」
入るや否や、サクラダは怒鳴り声を上げる。
驚いて、シルビアもサクラダの手を放してしまった。
「最ッ低!!最ッ悪!!センスゼロ!!外も中もボロいわ!!
この戦い始めたヤツら、悪趣味が度を過ぎてるわよ!!」
「元々こんな戦い自体が、悪趣味よ!!」
シルビアが切れ味抜群のツッコミを入れる。
「あらまいけない。でも、こういう時こそ、大工の本領よ!!」
ツッコミをシルビアに入れられて、冷静さを取り戻すが、ここでテンションを再び上げる。
いつの間にやら、シルビアのサクラダに対する警戒心は無くなっていた。
この人の家に対する情熱は、自分の旅芸人に対する情熱以上ではないかと。
そして、これほど一つのことに情熱をかけられる者に、悪人はいないのではないかと。
「そこのアナタ、そのナイフ以外に、何か持ってる?」
いつの間にか会話の主導権を握られたシルビアは、ザックの中身を見せる。
「アタシが持ってたのは、このハンマーとナイフ、そしてペンダントよ。」
ハンマーが目に入った時に、サクラダの目が輝く。
「あ!!これは、間違いないわ。アタシの弟子の物よ!!」
柄の部分を見てみると『エノキダ』と書いていた
「何でエノキダの物をアンタが持ってるのか知らないけど、これは使える。貸してもらうわよ。」
「ええ……いいけど……。」
シルビアが好きな武器は、ナイフや片手剣、鞭のような見栄えの良く、柔軟な使い方が出来る物だったので、鉄のハンマーは好きではなかった。
早速なじみの道具を手に入れて、嬉しそうにしているサクラダに、シルビアが声をかける。
「ところでアナタは、何か支給されてたの?」
「いっけな~い。アタシとしたことが、忘れてたあ!!」
サクラダのザックからは、ゴロンと大きなチェーンソーが出てきた。
妙に丁寧に作られた持ち手があるし、持つとズシリと重いため、ただのノコギリではないことは、チェーンソーを見たことがない二人にも理解できた。
「何……これ、ノコギリ?」
「スイッチが付いているから、何かの機械じゃない?」
そういえば、とサクラダは思い出した。
ハテノ村の最奥に構えている研究室に、それっぽいものがあったような気がする。
外へ出て、早速スイッチを押してみる。
ギュイイイイイイイイイイイイイイン!!
二人が聞きなれない音と共に、刃が勢いよく回りだした。
「これは……もしかして……。」
サクラダはその動きに注目して、一つのことに閃く。
早速山の木の近くにチェーンソーを持って行って、スイッチを押す。
回転する刃が、いとも簡単に木を切り倒した。
「スゴイ、スゴイわこれ!!」
「回る刃!!飛び散る火花、アツイわ!!この道具!!」
どちらも、未知のチェーンソーの威力に盛り上がるばかりだ。
サクラダは初めて見た機械を器用に使いこなし、木を切り倒していく。
「う~ん、いいわ~。木こりの斧より、全然効率的~。
環境破壊は気持ちいいわね~。」
山の木を5本切り倒すと、今度は木の余計な部分を削っていく。
支給品の飲料水を惜しげもなくかけて、精製していく。
木々ははいとも簡単に薪の束に変わり、瞬く間に木材へと変化した。
「スゴイ!!スゴいわ!!今度ユグノア城の再建にも協力して頂戴!!」
その技術に、シルビアは興奮を覚えるばかりだった。
「何言ってるのよ!!大工の技術は、これから!!」
サクラダは木材、それとナイフとハンマーを持って、山小屋の中に入って行った。
「これから修理?アタシも手伝うわ。」
「アナタ、聞いてなかったけど、名前は何?」
突然名前を聞かれ、シルビアは戸惑うも、名前を伝える。
「それじゃあダメ!!アタシのサクラダ工務店は、名前が『ダ』で終わる人じゃないと、仕事が出来ないの!!」
意外なことで手伝うのを断られ、さらに困惑するシルビアに、サクラダは続ける。
「別に無理に大工の仕事を手伝う必要はないんじゃない?アナタ、大工って格好じゃないし、出来ることをすればいいのよ。」
そう言いながら、山小屋の木材がボロボロになっている部分を、ハンマーで壊していく。
「分かった。アタシ、邪魔する人がいないか、見張っておくわ。」
シルビアは旅芸人ではあるが、一時期騎士道を歩んだこともあるため、人ひとりを守ることだって不可能ではない。
外へ出ていくシルビアをよそに、サクラダは仕事の腕を速めていく。
釘がないのはいささか面倒だが、問題はない。
鉄鋼資源が不足しがちなリトの村は、木材同士を上手くはめることで、釘も接着剤も使わず、家屋を修復している。
シルビアからもらったナイフで、木材の凹凸の切り口を入れ、準備を整えていく。
「サクラダ工務店、社訓!かなづち トンカン!陽気なリズムで!!」
ふんっ!!はっ!!そりゃっ!!せいっ!!しょっ!!はぁーーーーーーーーーっ!!」
一時はボロボロで、見る影もなかった山小屋は、匠の手により、バトルロワイヤル中でもくつろげる家に早変わりした。
「フーーーーーーッ。いい仕事したわ。あ、シルビア、お仕事ご苦労様。戻ってきていいわよ。」
言われるがまま戻ってきたシルビアは、明かりで家の中を照らす。
「すごい!!すごいわ!!すごく素敵なお家ね!!
ここにイレブンちゃんや他の仲間達も呼んだら、楽しいお茶会が出来そう!!」
さっきまでとは劇的な家の変化に、この世界に来てから未知の出会いばかりだったシルビアも、驚きを隠せない。
「シルビア、アナタ、さっき誰か別の人の名前を言ったわね。その人って、もしかして仲間?」
「ええ、そうよ。少なくともその内の一人は、この戦いに参加しているわ。」
言ってすぐに、シルビアは最初の会場で見たカミュのことを思い出す。
自分とカミュが参加しているということは、他の仲間も参加していると考えることが妥当だ。
それに、自分達がかつて倒したウルノーガがいたということは、この催しの目的は自分達への報復かもしれない。
「良い家を見せてくれてアリガト。アタシはこれから仲間を探しに行くわ。あと大工さん、疑ってゴメンね。」
「いいえ、アタシも行かせてもらうわ。この先悪趣味な建物を、サクラダ工務店の名にかけて、改築させてもらうわ。
あと大工さんじゃなくて、サクラダよ。」
「じゃあ、行きましょう。サクラダさん。」
二人はナカマになり、山小屋を後にし、道を進む。
その目的を果たすため。
【B-1/山小屋 /一日目 深夜】
【サクラダ@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:健康 山小屋の改築が出来てご満悦
[装備]:鉄のハンマー@ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品 チェーンソー@FF7 余った薪の束×3
[思考・状況]
基本行動方針:
1.悪趣味な建物があれば、改築していく。シルビアと行動する。
※依頼 羽ばたけ、サクラダ工務店 クリア後。
【シルビア@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:健康
[装備]:青龍刀@龍が如く極 星のペンダント@FF7
[道具]:基本支給品、
基本行動方針:カミュ達と合流する、
1.サクラダを守る
2.ウルノーガを撃破する。
※魔王ウルノーガ撃破後、聖地ラムダで仲間と集まる前の参戦です。
【
支給品紹介】
【鉄のハンマー@ブレスオブザワイルド 】
シルビアに支給されたハンマー。何故かその弟子のエノキダのものらしい。
攻撃の威力こそは低いが、頑丈さがウリで、中々壊れない。また、岩系の魔物には大ダメージを与えることが出来る。
【チェーンソー@FF7 】
サクラダに支給された武器。現実世界でも、伐採や除草で使われている。原作では義手に設置して、使うことになるが、この戦いではあまり関係ないらしい。
【青龍刀@龍が如く 極】
シルビアに支給された短剣。ナイフにしてはやや長く、攻撃力もそれなりにある。
【星のペンダント@FF7 】
シルビアに支給されたペンダント。毒状態を無効化できる。
【薪の束@ブレスオブザワイルド】
シルビアが伐った木の、山小屋改築を行う際に余ったもの。
家の建設、改築以外に、料理すれば、『硬すぎ料理』が出来る。味は保証できないが。
最終更新:2019年08月27日 13:35