「ねえシルビア。アナタ、元の世界のナカマを探すって言ってたわよね。」
ハテノ村の工務店の長、サクラダは傍らの男に問いかける。
「ええ、そうよ。」
対するシルビアは最初の会場で見た仲間、カミュの姿を想起していた。
ウルノーガの目的を想像する限りでは、呼ばれているのがカミュと自分だけであるはずがない。
シルビアのすぐ近くにはイシの村があったため、おそらく仲間の誰もが目指すであろうその場所を目的地として設定することはシルビアにとって自然なことであった。
「どうして北に迷わず向かっているのか、理由があれば教えてくれるかしら?」
しかし当然、サクラダにとってはそうではない。
サクラダに行きたい場所があるわけではないので、異論があるわけでもないのだが、ここは行く方向ひとつで命の危険に晒されるかどうかが変わりかねない舞台でもある。
理由があれば聞いておきたい程度の理由だ。
「北にはイシの村ってとこがあるでしょ?そこ、アタシの知ってる村なのよ。」
「アラ、それは幸運ね。」
シルビアの答えは、ある意味ではサクラダの期待以上だった。
ここでのサクラダの期待とは、殺し合いの場で隠れられる場所や敵の潜みそうな場所を把握出来るということは圧倒的なアドバンテージとなる……などということではない。
「建物は悪趣味なのかしら?」
サクラダにとって重要なのは、そこで大工としての腕を振るえるかどうかだけである。
これから建物を見に行くのに、あらかじめ改装の余地があるのかどうかをシルビアに聞けること、それを指して幸運と言ったのだった。
「そうねぇ……その村、前に悪いヤツらに滅ぼされちゃったのを復興したばかりなのよね。もしかしたら間に合わせの補修しかしてないかもしれないわね。」
シルビアの言葉を聞き、サクラダは腕を鳴らす。
自らの手で村ひとつを復興させるとなれば、サクラダ工務店創業以来の大仕事だ。
イチカラ村の復興に向かったエノキダも、正直羨ましいとさえ思っていたほどだ。ハテノ村での仕事が溜まっていなかったとしたら、サクラダは喜んでイチカラ村に飛んで行っただろう。
期待に胸を膨らませ、早く行きましょとシルビアの背中を押す。
「ちょっと、押さないでよお。」
「いいからいいから♪」
シルビアから見てもサクラダは大工という仕事を心から楽しんでいることが分かる。いわゆる『天職』というものだろう。
(天職……ね……)
自分で思い浮かべた言葉ながら、シルビアは微妙な表情を浮かべる。
シルビアとしては、旅芸人という道は自分の天職であったと思っている。
だがそこには間違いなく、騎士としての道を勧める父への反論としての意味合いが少なからず含まれているのだ。
彼と和解した今となってもなお、それは変わらない。かつて大喧嘩した父への反抗心は心の底にずっと燻り続けている。
(と、らしくないわね。旅芸人は皆を笑顔にするのが生業なのに、アタシがこんなカオしてちゃあダメよね。)
「シルビア、どうしたのかしら?」
浮かない様子のシルビアを見て、サクラダが語りかける。
「ううん、なんでもないわ。」
そう言うとそのまま、2人はイシの村へと進み始める。
この世界でも皆を笑顔にする、それがシルビアの志す旅芸人としての方針だ。
そのためにも、サクラダのような者は必要なのだとシルビアは思う。建物を綺麗にして環境を整えることでこの殺し合いの雰囲気を打破する。魔物の脅威に晒され、暗い雰囲気に包まれる中で敢えて明るいパレードを開くことで笑顔を取り戻そうとした自分の行いとも重なる行いだ。
是非ともイシの村の再建に着手し、殺し合いの雰囲気さえ壊せるような環境を作ってほしい。
一方サクラダも、彼なりの決意がある。
サクラダのバックパックの中にある1本のハンマー。自らもよく知る、エノキダのハンマーだ。
こんな殺し合いに巻き込まれたことで彼と二度と会えないかもしれなくなったことは不本意だが、せめて彼のタマシイを胸に持とう。
少なくともこの時はまだ、そう思っていた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
魔王は、オトモの同行に対してどうするか考えを巡らせていた。
まずは認めよう。自分はオトモが猫であるという理由だけで殺すのを躊躇している。
自分がどこへ行こうとも寄ってくるその姿から、昔から可愛がっていた愛猫アラファトを想起させられるからだ。
だが目的がゲームの優勝である以上、どこかでオトモを殺す必要はある。それもまた事実として認めなくてはならない。
次に、これもまた認めよう。
これは危険な兆候であると。
相手が猫であるという理由だけで、自分は他者に情けをかけた『実績』が出来てしまった。
一度心に生じた迷いを次は覆せるという保証は無い。
次に出会う人物が、オトモと同じように戦意が無かった場合は尚更だ。
そして、これも認めなくてはならない。
自分は既に、グレン(カエル)との一騎打ちの地点で奴らに情けをかけた『実績』があるのだと。
『──今ここでやるか……?』
あの時自分は、死者であるクロノ、さらには彼の友人であるサイラスをも貶してグレンの怒りを煽った。
その効果は絶大だったらしく、質問の形をした簡単な挑発にもグレンは乗ってきた。
しかしあの質問に対してグレンが首を横に振っていた場合、自分はどう振る舞っていただろうか。
やもすれば、彼らの仲間として共にラヴォスと────
(──どの口が言うのだろうな、まったく)
有り得ない未来を振り払うように、魔王は首を横に振る。
つまり、だ。
圧倒的な魔力を持つ魔王として中世を恐怖で支配していたあの頃の自分は次第に薄れていっているのだ。
事実、あの決闘の場でグレンを殺すという発想は湧かなかった上に、ここでも問題の先送りと分かっていながらもオトモを殺せずにいる。
だとしたら、自分を変えたのは過去を改変し続けてきた彼らにほかならない。
自分が古代の時代で討たれたことも相まって、面白い皮肉だとすら思う。
話を戻そう。
とりあえずオトモを殺せないのはまだ良い。
積極的に戦闘をしないオトモは生かしておいても毒にはならなさそうだ。
だがオトモの旦那様とやらを探すとなると話は別だ。
その者がオトモと同じく対主催のスタンスを取るのなら、オトモを殺す時も"旦那様"を殺す時も面倒なことになる。それどころか、オトモと"旦那様"を中心に対主催集団が形成されてもおかしくはない。そうなると最終的に優勝を狙う際に面倒なことになる。
また、仮に"旦那様"がステルスマーダーのスタンスであれば、オトモと仲間のフリをすることは容易なのだから、簡単に自分たちに紛れ込めるということだ。
つまり結論はひとつ。
遅くとも"旦那様"と出会う前にはオトモを殺し────
(──ん?)
ここでひとつ、魔王の脳裏に引っかかったことがある。
「オトモ、お前は言ったな。旦那様がこの殺し合いに巻き込まれているかもしれないと。」
「うん……最初の会場にそれらしい後ろ姿を見たのニャ。」
「最初の会場……」
魔王は最初の会場では、自分が生きていることに戸惑っており、周りの様子を深く観察してはいなかったため、知り合いの姿を見つけることは無かった。
(つまりこの殺し合いの参加者は、無作為に選ばれたのではなくある程度の関係者が呼ばれていることもあるということか……?)
そんなことを考えている時だった。オトモがいつの間にか装備している"それ"を目にしたのは。
「ちょっと待て、オトモ……。その胸に付けているそれは………」
「おっ気付いたかニャ?さっき魔王の旦那から隠れている時に不覚にも落としてしまったバッジニャ。今度は落とさないようにしっかり────」
「貸せッ!」
「ああっ!何するニャ!」
オトモが喋り終わる前にその「バッジ」を奪い取る。
(間違いない、これは────)
そこにあったのは、魔王もよく知るアイテムであった。
『勇者バッジ』
勇者に送られる、聖剣グランドリオンの性能を上げるバッジだ。
かつては自分が殺した男、サイラスが身につけていたものであるが、色々とあってサイラスの死後は聖剣と共にグレンが引き継いでいるはず。
何故これがこんなところに……?
その理由は想像出来る。
勇者バッジはグランドリオンとセットで初めて効果を発揮する。勇者バッジがあるのであればグランドリオンもどこかにあるのだろう。
そしてグランドリオンと勇者バッジを扱えるのは、少なくとも魔王が知る限り1人しかいない。
「アイツも………否、もしかしたらアイツらも………この世界に居るというのか………?」
魔王の脳内に過ぎった最悪の仮説。
自分だけではなく、グレンやその仲間たちも招かれているのではないか。
もしもこの仮説が正しいのだとしたら、優勝狙いという魔王のスタンスは危険だ。
彼らからクロノが欠けているからこそ自分は優勝してクロノを蘇らせようとしていた。
だがその優勝の条件にクロノの仲間たち全員を殺すのであれば本末転倒だ。
クロノには彼らをまとめあげられるだけのリーダーシップがある。決して、彼の強さは彼のみで成り立つものでは無いのだから。
また、グレンの装備が支給されているということは自分の装備品も誰かに支給されていてもおかしくはない。命よりも大切な、姉のくれた御守り。あれも他の誰かに支給されているかもしれないのだ。
誰が身につけているかも知らないサラのお守りを魔法で攻撃して破壊してしまったとしたら………
魔王はため息をつく。
この殺し合い、どうやらただ殺せばいいというものでもないらしい。
そして目の前のオトモに目を配った。
悔しいが、オトモの存在はためになったと言わざるを得ない。
自分以外の全員が敵であるはずの世界で、他者との情報交換によって得られるものがあるとは思っていなかった。
(何にせよ、情報が足りなさ過ぎる。まだ動くには危険、か……。)
マナは定時放送があると説明していた。
死者の名前を発表するとのことだったが、それはこの催しの参加者を知る手がかりとなる。
(せめて放送のときを待つか……。グレン、よもや貴様がすぐに死ぬとは思わんが、知る者の名が呼ばれる可能性はある……。)
「魔王の旦那ぁー、返してニャー!」
気が付くと足元で、勇者バッジを取り返そうとオトモがぴょんぴょん飛び跳ねている。
そんなオトモに対し、魔王は勇者バッジをオトモに届かないようにひょいと持ち上げる。
「ああっひどい、ひどいニャ魔王の旦那ァ!」
涙目になりながら魔王に対して文句を言うオトモ。
そんな彼を見下ろしながら、魔王は言う。
「まあ聞け、これは単体では役に立たん。用途を知っている私が持つ方が良いだろう。」
「えーと、それなら、確かに……?」
オトモはどこか不安な様子を隠せない。
魔王の理屈には納得していても、殺し合いの世界で貴重な支給品を失うことは不安なようだ。
「……これを使え。」
ため息と共に、魔王はバックパックの中から自分に支給された武器をオトモに渡す。
『七宝のナイフ』と言うらしいその武器は名前の通り短剣の形をしており、オトモの体のサイズでも充分扱える武器である。
「ま、魔王の旦那ァ……!」
「まあ、そのリーチの武器は私は苦手だからな。それに──」
「……それに、何にゃ?」
「いや、何でもない。」
それに、オトモには有力な情報を貰った。そう口にするのは癪だったため、その先は言わなかった。
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奇妙な光景──魔王が次に見た光景を言い表すのなら、その一言に尽きるものであった。
真っ先に魔王は思う。立ち去りたい、と。
魔王の眼前では、大人の男2人があたかも子供の『電車ごっこ』を想起させるような振る舞いで早歩きしていたのだった。
(た、立ち去りたい……!)
心から、本当に心からそう思う。
だが当然そうもいかない。
オトモとの情報交換が思わず役に立ったのと同様に、有力な情報を誰が握っているのか分かったものではない。
また、サラのお守りをこの2人のどちらかが所持している可能性も捨てきれない。
深い溜め息と共に、魔王は2人の男の眼前に立ち塞がる。
「「あら。」」
魔王は未だ迷っていた。
オトモの持っていた勇者バッジからグレンがこの殺し合いに参加している可能性を見出した。それが真実か偽りかによって、この殺し合いに乗るべきかどうかに関わってくる。
まだ魔王のスタンスは完全には確定していないのである。
「……私の名前はジャキ。かつて魔王と呼ばれた男だ。」
仮にこの世界に魔王のことを知る者が呼ばれているのであれば、その者が生きていようが死んでいようが、安易に皆殺しのスタンスを貫くわけにはいかなくなる。
つまり対主催の立場に転じる場合は、自分の過去の行いを知る者がこの世界にいるということだ。
よって、魔王の2つ名も晒すことに決めた。
魔王の悪名は他人と協力関係を築く時に大きな障害となることは承知の上だが、グレン達と共にこの世界の脱出を目指す場合に悪名を隠していたことが発覚するのは困る。
自分の悪行を知る者が誰も呼ばれていないと分かった時というのは、つまり皆殺しを始める時なのだから悪名を知られていようがいまいが関係ない。せいぜい不意打ちがしにくくなる程度だ。
「魔王とはまた大層な名前が出てきたじゃない。アタシはシルビア。こっちはサクラダちゃんよ。それで、私たちとの接触の目的は何かしら?」
それを聞いた2人の内の1人、シルビアが気にするのは当然、魔王の名。かのウルノーガも名乗っていた称号であり第一印象は決して良くはない。
「情報が欲しいのだ。この殺し合いの舞台に知り合いが巻き込まれていることを危惧している。」
「ボクの旦那様を探してくれてるのニャ!」
オトモは魔王の真意も知らず、旦那様ことハンターを探してもらっていると勘違いしている。
だが猫(に見えなくもない生物)と行動を共にしており、知り合い探しに協力的になっているところを見るに、根っからの悪ではないのだろうとシルビアもサクラダも推察する。
「とりあえず、ここに来る前の話も含めて全員で情報交換しない?きっと有意義になると思うのだけど。」
そう提案したのはサクラダだ。
彼はシルビアや魔王、さらにはオトモアイルーやニャンターとして大型モンスターの狩猟を行っているオトモとも違って戦いとは完全に無縁な日々を送っていた。
殺し合いの世界に送り込まれたことによる精神的な疲弊は他の2人と1匹よりも大きい。
そして彼は大工の頭領として一般成人男性以上の体力は兼ね備えているものの、つい先程家一軒を建て直すという肉体労働を終えたばかり。
普段であれば、仕事が終わればすぐ火の傍に座り込んで休息をとるが、この世界ではロクに休息も取っていない。
早い話が、サクラダは少し休む時間が欲しかったのである。冒険を経験していないサクラダは元の世界について語る量も少ないため、基本的に聞き手に回り続けることもできる。
「さ、さ、みんな座って座って。話は腰を下ろしてからよ。」
「……良いだろう。」
「それなら最初にジャキちゃん、喋ってもらえるかしら?」
唐突に、シルビアが提案する。
どの道全員が喋ることになるのなら順番など大した問題ではないはず。話の流れを作るため自分の最初を申し出ることは時にあるが、他人に──ましてや初対面の相手に押し付ける狙いは何なのか。サクラダもオトモも疑問符を浮かべているが、特に反対はしない。
(嘘を考える暇を与えない、か……。この男、食えん奴だ。)
一方、魔王だけはその目的を察する。シルビアは自分を相応に警戒しており、それを隠すつもりも無いようだ。
魔王の頭の回転の速さであれば特に考える時間は無くとも整合性の取れた嘘八百を考え付くことは出来るし、シルビアもその点について魔王を過小評価はしていない。
要するにシルビアの発言は、魔王のみに自分の警戒心を伝えるためのサインに過ぎないのである。
「いいだろう、話してやろう。偽り無く、な。」
シルビアの発言の意図を汲み取ったことを暗示しながらも、魔王は喋り始めた。
古代におけるラヴォスとの因縁。
流れ着いた中世での魔王としての悪行。
再び流れ着いた古代でグレンと決闘し、敗れて死んだこと。
ここまでの流れに嘘偽りはひとつも無い。
ただしクロノの死だけは黙っておいた。クロノの蘇生のために殺し合いに乗ろうとしていることを想像できる余地を残したくなかったためだ。
「私は既に死んだ身だ。ラヴォスの討伐や姉の救出は奴らに託した。今更生き返ろうとは思わないし、こんな催しに乗る気は無い。」
これも、ほとんどが真実である。
自身でラヴォスを討伐することに執着は無く、姉の救出も含めて彼らに任せられると思っている。ただしそれはクロノが生きていればの話だ。
つまりクロノの死という情報を提示しない限り、動機面から魔王の嘘を暴くことはできないのである。
「なるほど、面白い情報を聞いたわ。じゃあ次はアタシが話すわね。」
魔王に最初に喋らせたこともあって、シルビアが2番目に喋り始める。
シルビアの話の中で全員を驚かせたのは、この殺し合いの主催者と元の世界からの関わりがあったということだった。
しかし魔王にとって重要な情報はそれだけではなかった。
「ところで最初の会場でマナに最初に反抗した子、いたでしょ?あの子、アタシの知り合いなの。」
「なっ……!」
オトモの旦那様とやらがいる可能性は既に示唆されていたが、それはまだ確定情報では無かった。
だがシルビアによって、この世界には元の世界の関係者も招かれ得るという事実がハッキリしたのだ。
(これは……本格的にグレン達と脱出のために動くことも考えなくてはならんな……。)
その後、サクラダが自分の世界について話した。
主にひとつの村しか行動範囲に無かったようなので情報の幅自体が狭かったのだが、この世界の地図にある『ハイラル城』がサクラダの世界にあったはずの場所であるという情報は心に留めておいた。
オトモの話も、旦那様の武勇伝を語られただけで特に新しい発見は見当たらない。
全員が話し終えたことで、ようやく魔王が動く。
「さて、ここでお前たちの支給品を見せてはもらえないだろうか?」
「いいケド……一応理由は聞くわ。」
「私の持っているこのバッジ。先ほど話したグレンという男の所有物だ。私は彼もこの殺し合いに参加しているのではないかと思っている。」
「えっ……ってことは……」
魔王の発言にサクラダが口を挟む。彼のバックパックには彼の弟子、エノキダのハンマーが入っていたからだ。
「エノキダもここに連れてこられているっていうの!?」
「……そういえば、その可能性は高いわね。」
その反応を見て、知り合いの持ち物が支給されていたのだろうと魔王は察する。
「それならハイラル城を目指すのはどうかしら。知っている場所がそこしか無いなら、もしかしたらエノキダちゃんもそこを目指すかもしれないわ。」
「それは嬉しいけど……イシの村は目指さなくていいの?」
「アタシの仲間は全員強いから急いで合流しなくても大丈夫よ。……ところで、支給品を見せるって話だったわね。」
シルビアは支給品は全て装備していたため、それらを魔王に見せる。サクラダはバックパックの中から支給品を取り出して見せた。
ただしその中に、魔王の知るものはひとつもなかった。
「感謝する。それでは。」
「待ちなさい、アナタも来るのよ。」
立ち去ろうとする魔王を引き止め、シルビアが言う。
「……何故私がお前たちの仲間探しに付き合わねばならん?」
「アナタが何か隠しているかもしれないから……かしら?」
殺し合いに乗ろうとしていることがバレているのか、と魔王は案ずる。だがクロノの死を伝えていない以上、核心に迫ることは無いはずだ。
「馬鹿馬鹿しい。何なら力づくで我が道を決めてもいいのだぞ?」
「ええ、その場合も受けて立つわ。」
魔力を溜めて武力行使をチラつかせてもシルビアは引かない。
ピリピリとした雰囲気に、サクラダとオトモは後ずさりを始める。
「アタシ達はね、アンタ以上の"魔王"に一度騙されているの。その代償に失ったものは決して小さくなかったわ。」
シルビアは聖地ラムダで"再会"したベロニカのことを思い出す。
パーティー全員の心に深い傷を残し、みんなの笑顔に深い闇を落としたあの出来事を、二度と繰り返してはいけないとその時シルビアは思った。
魔王の話の中から決定的な嘘は見つからなかったが、魔王の話し方や様子から伺えるラヴォスと姉のサラに対する執着は決して小さくはなかった。
魔王を見逃した場合、誰かが犠牲になるかもしれない。
そして現在イシの村の近くにいることから、魔王はイシの村を目指しているであろう仲間と接触する可能性が高い。
「だからアナタはアタシが監視する。アナタは相当強そうだけども……アタシだって刺し違えるくらいの力はあるわ。黙ってついてくるのとここで戦うの、どっちが有益か考えてご覧なさい?」
暫しの間、空気が凍りついた。
確かに魔王としても、グレン達の居場所にアテがあるわけではない。強いて言うなら地図に書いてある『北の廃墟』が自分の世界の由来の地である可能性はあるが、固有名詞ではないため断定は出来ないし、ハイラル城を目指すのなら方角は同じである。
ここで戦うのとどちらが得か……そんなもの、考えるまでもなかった。
「……仕方ない、か。」
ため息と共に魔力を引っ込める。
過去の悪行を話した時からある程度の警戒を受ける覚悟は出来ていたが、ここまで自分の行動を遮るとは思っていなかった。
「魔王の旦那ー!何事も無く収まって良かったニャー!」
オトモが泣きながら魔王の足にしがみつく。どうやら、魔王の憂鬱はもう少し続きそうである。
「シルビアちゃん……押しが強いのね、アタシ、関心しちゃった。」
「……イイコト教えてあげるわ。旅芸人ってのはね、脇役なの。主役は笑顔になる人々なのよ。彼らの笑顔を守るためなら、アタシは何でもするわ。」
ウルノーガとの戦いでも、シルビアは脇役に徹していた。
16年前にユグノア王国を巡るウルノーガとの戦いが始まっていたイレブン、マルティナ、ロウ。
家族や友人が大なり小なり危害を受けたカミュ、セーニャ、グレイグ。
彼らと比べ、自分とウルノーガに直接的な宿命は無い。
ただ人々を笑顔にするという自分の心情と衝突するからウルノーガと対立しているに過ぎない。
だからこそ、シルビアはムードメーカーになれたのだ。
自分の宿命が軽いからこそ、感情的になることなくパーティーを支えられる。
そしてそれはここでも同じだ。
主役の座など彼らに譲ろう。
自分はただ、主役への危険因子を人知れず遠ざけるだけの脇役で構わない。
それが、旅芸人シルビアの生き方なのだから。
【B-1/一日目 黎明】
【シルビア@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:健康
[装備]:青龍刀@龍が如く極 星のペンダント@FF7
[道具]:基本支給品、
基本行動方針:ハイラル城を目指す
1.サクラダを守る
2.ウルノーガを撃破する。
3.魔王を監視する
※魔王ウルノーガ撃破後、聖地ラムダで仲間と集まる前の参戦です。
【サクラダ@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド】
[状態]:健康
[装備]:鉄のハンマー@ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品 チェーンソー@FF7 余った薪の束×3
[思考・状況]
基本行動方針: ハイラル城を目指し、殺し合いに参加しているかもしれないエノキダを探す。
1.悪趣味な建物があれば、改築していく。シルビアと行動する。
※依頼 羽ばたけ、サクラダ工務店 クリア後。
【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み、クロノ達が魔王の前で使っていた道具は無い。) 勇者バッジ@クロノ・トリガー
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、クロノを生き返らせる……つもりなのだが……
1.グレン(カエル)も参加しているのか……?
2.シルビア……食えない男だ。
※分岐ルートで「はい」を選び、本編死亡した直後からの参戦です。
※クロノ・トリガーの他キャラの参戦を把握していません。クロノは元の世界で死んだままであるかもしれないと思っています。
【オトモ(オトモアイルー)@MONSTER HUNTER X】
[状態]:健康
[装備]: 七宝のナイフ@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2個(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:魔王に着いていく。
1.旦那様(男ハンター@MONSTER HUNTER X)もここにいるのかニャ?
2.他の人に着いていくよりは魔王さんに着いて行った方が安心な気がするニャ。
※人の話を聞かないタイプ
【
支給品紹介】
【勇者バッジ@クロノ・トリガー】
グランドリオンのクリティカル率を上げるアクセサリー。元の世界でのカエルと魔王の一騎打ちの時も、カエルが装備していた。
【七宝のナイフ@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
英傑ウルボザの使っていたナイフ。生前のウルボザはこのナイフと七宝の盾を用いて、まるで踊るように戦っていたと言われている。
最終更新:2025年04月29日 21:21