時を超えて、自分の人生を狂わせた存在であるラヴォスへの復讐のために戦ってきた魔族の青年ジャキ。またの名を『魔王』と言う彼は、つい先ほど長き宿命に終止符を打ったばかりのはずであった。
ただしその宿命とは、真の宿敵ラヴォスとの宿命ではない。
『まさかお前とこの時代で決着をつける事になるとはな……。来い……!』
『ああ……行くぞ、魔王!』
終えたのは中世の時代で出来上がった、勇者の力を受け継ぐ者グレンとの宿命。ここでは『カエル』と呼ばれているグレンに魔王は敗北し、聖剣グランドリオンの一閃により悪として散ったのであった。
醜くない死を。
それはラヴォスに2度目の敗北を喫し、古代の時代に再び流れ着いた魔王にとって最後の望みであった。
『 ヤツは死んだ!弱き者は虫ケラのように死ぬ。ただそれだけだ……。』
『 魔王ッ!!』
だからこそ、友の仇として自分を討ってくれるカエルに対してわざと、挑発の言葉をぶつけた。
カエル達はちょうど、クロノの死に直面したばかりであったため、その言葉はカエルの戦意を即座に引き出した。
悪行の限りを尽くし、その報復に自らがカエルに変えた男、グレンに討伐される──何とも自業自得で、そして美しい死。
魔王は自らの死に、何の後悔も無かった。
それなのに自分はここに呼ばれ、更には生き残りを賭けて戦おうとしている。
これはつまり──
「──ラヴォスを倒せ……そういうことなのか?黒き風よ……」
人道など既に外れている。
数多の人命を奪い、刃向かってきた勇敢な男サイラスまでもを手にかけた。今さら殺しに躊躇するはずがない。
問題は生き残った優勝者に与えられるという願い。そして──そもそもこれに勝ち抜けば、元の世界に生きて帰れるのかということだ。
もし勝ち抜くことと生きて帰れることが別なのであれば、また元の世界でラヴォスと戦うためには優勝者の権利とやらで自らの蘇生を願わなくてはならない。
「……否。我が願いなど既に決まっておるではないか。」
だが、魔王の目的は生き残ることではない。自分や家族の人生を滅茶苦茶にしたあの憎きラヴォスへの復讐である。
そしてラヴォスを倒すのに必要なのが自分ではないことなど、魔王は理解している。
『クロノを生き返らせたければ……時の……時の賢者に……、会え……。』
それがあの世界での魔王の最期の言葉だった。
そう、ラヴォスの覚醒の時に死んだクロノこそが、あのラヴォスを倒すために必要な存在だったのだ。
もしグレン達があの後に時の賢者と出会えていないのならば、その願いとやらでクロノを生き返らせてやろう。
元の世界で生きることに未練など無い。生き返ったクロノ達がどこに囚われているかも分からない姉のサラを助け出してくれるのを祈るのみだ。
これで方針は決まった。
後は実行に移すのみである。
さて、魔王は先程から前方の地面に違和感を覚えていた。
月の光を反射してキラリと光る地面。何かしらのアイテムがそこに落ちているようだ。
罠か?いや、違う。
そしてその周りの地面をよく見てみると、他の部分とは色合いが異なっている。どうやら一度掘り返されているようだ。
恐らく、地中から奇襲をかけるタイプの魔物が潜んでおり、潜る際に何かを落としていったのだろう。
「そこに隠れている者よ、今すぐに出て来い。大地ごと焼き尽くされるか、それとも地の底で永久に凍り付くか、選ぶこととなるぞ?」
地中に潜む者に向けて警告する。地中から奇襲する魔物といえば、中世で地底砂漠に配置させておいたメルフィックのような魔物だろうか。
「ニャー!!!」
そんな魔王の想像を裏切り、地中から飛び出したのは……猫のように見えるが、魔王の知る猫とも言い難い生き物であった。
「や、やめるのニャ!ボクはこんなゲームに乗る気はないのニャ!!」
その姿を確認するや否や、魔王は放出しかけた魔力を引っ込める。
「……ふん。それならばどうする。殺されるのを黙って受け入れるのか?」
魔王は少し興味を覚えた。正直なところ、先ほどまでの思考では優勝した時の願いを考えるばかりで、このゲームに乗るか乗らないかといった発想は魔王の中には無かった。
「それは……分からないのニャ。でも誰かを殺すのはよくないから……」
そんな魔王の期待を裏切る、猫の次の一言には失望させられた。
何のプランもなく、ただ罪悪感に襲われるのが嫌なだけ。このような心も体も弱き者に一瞬でも期待した私が愚かだったようだ。
「……もういい、行け。」
「……え?」
「行けと言っているのだ。」
所詮は小さき魔物。自ら手を下さずとも勝手に野垂れ死にするであろう。魔力の無駄、そう思い猫に情けをかけてやることにした。
魔王はくるりと振り返り、その場を去ろうとする。
これからはまた、戦いが始まる。強きものが生き残り、弱きものが死ぬ殺し合いの世界だ。
魔王と呼ばれ恐れられるこの力、存分に振るってくれようではないか。
「……決めたニャ。」
そんな魔王の背中に向け、猫が 口を開いた。
「ボク、アンタに着いてくニャ。」
「……は?」
何を言っているのだ、と魔王は口をあんぐり開ける。
「アンタはボクを殺さなかった……つまり、いい奴にゃ。」
「待て、これ以上近付くと本当に殺すぞ…」
「どうせこんな訳の分からない世界ニャ。普段以上に厳しい弱肉強食の狩りの世界が待ってるんだニャ。」
魔王の静止に耳も貸さず、その猫は喋りたいことだけを喋り続ける。
「だからどうか、ボクを守ってくださいニャ。」
好き放題に喋り続けるその猫に対し、魔王は再び魔力を練って焼き付くさんと迫る。
「……………勝手にしろ。」
しかし、結局魔王はその猫を殺さなかった。
かつてラヴォスの力に魅せられ、人の心を失っていった母のおかげで、魔王は他人に対して心を閉ざしていたことがあった。
その時でも信頼していた者が、彼の姉のサラ。そして──愛猫のアルファド。ラヴォスに敗北して古代に流れ着いた時、アルファドも無事であると知った時は魔王は柄にもなく安堵したものだ。
要するに、だ。
中世で魔王と呼ばれ恐れられていた彼は…………猫に対しては少し甘かったのであった。
「ありがとうだニャ!ボクの名前はオトモ。よろしくだニャ。」
「………ちっ。」
「あ、そうだ!もしかしたらボクの旦那様も巻き込まれてるかもしれないニャ。探してくれないかニャ?」
ああもう、コイツ本当に焼き尽くしてしまおうか………
魔王の憂鬱は続く。
【B-1/山小屋付近/一日目 深夜】
【魔王@クロノ・トリガー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3個(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、クロノを生き返らせる……つもりなのだが……
1.オトモ……本当に殺してやろうか……?
※分岐ルートで「はい」を選び、本編死亡した直後からの参戦です。
※クロノ・トリガーの他キャラの参戦を把握していません。クロノは元の世界で死んだままであるかもしれないと思っています。
【オトモ(オトモアイルー)@MONSTER HUNTER X】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3個(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:魔王に着いていく。
1.旦那様(男ハンター@MONSTER HUNTER X)もここにいるのかニャ?
2.他の人に着いていくよりは魔王さんに着いて行った方が安心な気がするニャ。
※人の話を聞かないタイプ
【備考】
オトモの支給品の中のひとつは、オトモの足元に落ちています。(上の状態表には、それを所持している扱いとしています。)
最終更新:2025年04月29日 21:19