ここはとある遊園施設の路地裏。

参加者全員がこの世界に飛ばされてはや10分。
早くも戦いが始まっていた。


蒼い目の金髪の青年、クラウドが長剣を構え、斬りかかる。
それを長身の青年、レオナールが槍で受け流す。

バランスを崩すクラウド。
印象的に逆立った頭部めがけて、槍を振り下ろす。

だが、クラウドも伊達に死線を潜り抜けたわけではない。
不安定な姿勢ながらも剣の位置を変え、当たる範囲が狭い槍を確実に受け止める。


そのままレオナールの脇腹に蹴りを入れる。
しかしレオナールは、その程度のダメージをものともせずに槍を振り回す。

クラウドは姿勢を低くして、そのまま懐に飛び込む。
槍のようなリーチの長い武器なら、狭い距離で戦った方が有利だ。

だが、レオナールはあわてず騒がす後ろに下がり、再び槍の力が100%発揮できる間合いを取る。

クラウドは姿勢を低くしたままジャンプし、剣を振り下ろすも、悪戯に地面を耕しただけだった。

そこから槍が肩を掠め、鮮血がクラウドの服を汚す。
しかし、攻撃が命中したということは、少なくともその瞬間は防御が手薄になる。

ダメージにもひるまずクラウドは攻撃を続ける。


「なぜ……なぜ、こんなことを……。」
クラウドの攻撃をいなしながら、レオナールが問いかける。

彼は魔力を得るためのフェアリーとの契約の故、盲目ではあったが、匂いで相手の善悪を判別できた。
目の前の金髪の青年は、帝国軍の兵士と同じ、殺意が滾る者の匂いがした。

「なぜだと?」
クラウドの青い光を含んだ眼光が、一層鋭さを増す。

「俺はただ、やり直したいだけだ。」
クラウドの言葉に呼応して、持っている剣の色が、一層どす黒くなる。

かつてはその剣は、聖剣と呼ばれていた時代があった。のかもしれない。
だがその剣は、かつてそれを装備したものが抱いていた復讐心、そして今持つ者の殺意を吸い、邪剣と呼ばれるに相応しい姿をしていた。
精神に呼応して強くなる剣は、使い手によって、邪な方にも曲がる。


最初はレオナールが押していたかのように見えた戦いだったが、一転、クラウドの方が優勢になる。

「くっ……。」
「そこだっ!!」

クラウドが一際強力な一撃を見舞う。
それはレオナールの顔を裂き、両目を血に染めた。



レオナールの後ろ側、袋小路に当たる場所から、一人の少年が声をかける。
「レオナールさん!!」
「キミは下がってなさい!!」

その少年に声をかける。

クラウドの大きく振りかぶった一撃を、レオナールの槍が打ち払う。

「何!?」
突然強くなった相手の力に、クラウドは驚く。

レオナールの決意が強まる。
後ろにいる、少年を守らないといけないという決意が。

大人のふりをしつつも、まだ身も心もか弱い少年のためにも死んではならない。
まだ筋肉が付いていない少年の躰を、抱きしめ、鎧になり続けなければならない。
この大人になろうとしている少年が、大人になるまで守らなければならないという決意が、レオナールを動かした。

彼は、あらゆる少年を愛した。
少年の愛くるしい瞳を、高い声を、艶やかな唇を、柔らかい肉を愛した。
その決意こそどこかずれているにしろ、レオナールの決意は確かなものだった。

加えてレオナールは契約により、元から盲目であるため、両目の損失はクラウドの思うほどでもなかった。

元々、攻撃範囲が狭い槍は、ガードすることも難しい。
急に勢いの増した槍は、クラウドの脇腹を捕らえた。

相手も星の危機と戦った手練れ。
そう簡単に急所は奪わせない。

「くそ……だが食らえ……!!凶斬り!!」

受けたダメージを、エネルギーに代え、リミット技を打つ。
相手の手の内が完全に読めない以上、強い技を使うのは危険だ。

一閃、二閃。それらが「メ」の字を作る。
だが、最初はレオナールに躱され、二発目は槍で受け止められる。

三閃、「L」の形をした剣筋を、レオナールは後ろへ飛びのき凌ぐ。


だが、最後「凶」の文字を作る、上空からの一撃はレオナールの肩に食い込んだ。

「ぐ……だが、私はまだ死ぬわけにはいかない!!」

それでも負けじと槍を振るおうとするレオナール。
だが、さっきに比べて思うように槍が動かせない。

肩のケガではない。クラウドの凶斬りは、麻痺の効果も含んでいたのだ。

これでは武器の打ち合いを続けていても、負けるのは時間の問題だろう。

「頼む、力を貸してくれ!!」
この場にはいない契約相手、おおよそ人格者とは言えないが、確かに力を授けたフェアリーに力を求める。

槍の先から光が放出され、散って辺りの瓦礫やごみを吹き飛ばす。

「何だ?これは!?」

妖精の羽
レオナールが契約者の魔力を、戒めの塔に纏わせることで使えた技だ。
だが今回は契約者が近くにいないこと、そして槍に魔力が含まれていないことで、その威力は比べ物にならない程弱かった。

しかし、クラウドの目をくらませることだけは成功した。

今がチャンスだ。ここを逃せば後がないと、レオナールは痺れる体に鞭打ち、クラウドに突撃する。

血が迸る。

おかしい、とレオナールは感じた。
自分は、目の前の青年を殺すつもりはなく、止めるだけのつもりだった。
こんなに血が出るのはおかしい。


レオナールの腹から彼のものとは違う槍が出ていた。
後ろには、冷たい目をした少年と、もう一匹、正体不明のトカゲの魔物がいた。

「よくやったよ。リザル。」
「な………ぜ………。」

レオナールの失敗は三つ。
後ろの少年が、自分の護るべき無力な対象だと思い込んでいたこと。
もう一つは、チェレンの闇を醸し出す匂いが、クラウドの殺気にかき消されていたこと。

最後に、モンスターボールの存在を全く知らなかったこと。

間髪入れずにクラウドの剣が、レオナールの胴を裂いた。


「アンタ、この男を裏切ったのか。」
クラウドは眼鏡の少年、チェレンと、同じように冷たい目をしたトカゲの戦士を見つめていた。

「「裏切った」って言葉が間違ってる。
この人が勝手に仲間だと思い込んでただけだ。おまけに僕のことを嫌らしい目で見てきた。
メンドーな奴を倒してくれて、感謝してるよ。」

クラウドは話もろくに聞かず、グランドリオンを構える。
リザル、と呼ばれた魔物は、主人への敵意と受け取り、槍を向ける。

「よしなよ、リザル。」
手を前に出し、威嚇行動を止めさせる。



「お兄さん、さっき「やり直したい」って言ってたよね。実は僕もそうなんだ。協力出来ない?
さっきの戦いみたいに、僕とリザルが後ろから援護して、お兄さんがトドメを刺すんだ。」

「アンタが裏切らないという保証は、どこにあるんだ?」
「僕は自分の得の為にそんなメンドーなことはしない。僕一人じゃ、倒せない人もいるし、お兄さんとしてもそうじゃない?」


確かに、クラウドとしても、レオナールはかなりの強敵だった。
あの男がこの戦いで一番強いという可能性も低いし、自分とは異なる戦術を持った仲間とは心強いこともクラウドは理解している。


考えた末、クラウドはチェレンと協力するのがベターだと思った。

「分かった。だけど、一つだけ聞かせてくれ。
どうしてアンタは戦いに乗るんだ?」

「僕はね、友達がいたんだ。でもそいつは、強くなっていって、いつからか僕を友達として扱わなくなったんだ。
どれだけ努力をしても、あいつに勝てなかった……!!」

会ってから常に冷静な口調で話していたチェレンの語尾が熱くなる。
「力のため……か。」




チェレンは一時期、ポケモンバトルは勝利こそすべてと思うようになっていた。
だが、プラズマ団と戦う仲間のトウヤ、それにチャンピオンのアデクに影響され、考えを改めていった。

しかし、自分と共に旅に出たライバルであり、チャンピオンを破ったトウヤとの戦いで、彼の人生は暗転する。
(もうやめろ、チェレン。お前は俺には勝てない。)

最初は同じ道を歩いていたはずのトウヤに完膚なきまでに敗れた。
その目は、もう仲間、と見なしていなかった。その他大勢の弱者を見ている目だった。



それからのチェレンは、実力が伸びなくなっていった。
こんな状態じゃ、トウヤと戦うなど、もってのほかだ。

既にトレーナーとして積み上げた実績があるため、この時点で一つの町のジムリーダーくらいになれる実力はあっただろう。

だが、チェレンはそれを由としなかった。
トウヤに勝てなければ、意味がない。
こんなはずじゃなかった。
どこで自分は間違えたのだろうか。

そう思い始めた瞬間、この世界に呼ばれていた。



「力もあるけど、何より僕は間違っていた。勝利が全てだったんだ。だからこの戦いで優勝して、間違えた人生をやり直させてもらいたい。」

「そうか。」

クラウドはチェレンの言葉を聞いて、そう答えた。

「俺もやり直したいんだ。死んだ、大切な人の為に。」

クラウドも、同様に後悔の念を抱えていた。
死んだ、大切な仲間、エアリス。

自分達はセフィロスを討ち、仇を取ることは出来た。
しかし、結局セフィロスが放った破壊魔法、メテオはどうにもならなかった。
切り札のホーリーも間に合わず、万事休すと思われていた直後。

ライフストリームの光が集まり、破壊の根源を包み込んだ。
人は死んだとき、そこに集まるという。

クラウドはそこで確かに見た。
八番街で初めて出会った時と同じ、朗らかな表情をしていた彼女を。


その笑顔が、よりクラウドの心に刺さった。
自分達は結局何から何まで、エアリスに頼りきりだった。
何一つエアリスの命に報いることは出来なかった。

その後も、ミッドガルの再建活動で奔走しながらも、クラウドの心が晴れることはなかった。

エアリスだけ犠牲にして、自分達だけのうのうと生きていていいのか。
常にその思いがクラウドの心に付きまとった。

そんなある日、この戦いに呼ばれていた。
そして、始まりの場所で、見てしまったのだ。

エアリスが、いた。

クラウドは、殺し合いの恐怖より、ティファがいた驚きより、もう一度「やり直せる」というチャンスを得た喜びの方が強かった。

エアリス以外の全員を皆殺しにして、彼女を生き返らせてもらおう。
勿論、ティファや他の仲間もいる可能性は高いが、構わない。

自分の全てを犠牲にしてでも、彼女を生き返らせる。

「なるほどね。気持ちは分かったよ。でも、邪魔になればさっきのオジサンと同じ目に遭わす。それでいい?」

「もちろんだ。俺も邪魔になればアンタを殺す。」

青年と少年は、血で汚れた手を握り締めた。


【レオナール@ドラッグオンドラグーン 死亡確認】
【残り67名】

【E-6/遊園施設 路地裏/一日目 深夜】
【クラウド・ストライフ@FINAL FANTASY Ⅶ】
[状態]:HP2/3  脇腹、肩に裂傷
[装備]:グランドリオン@クロノトリガー 
[道具]:基本支給品、その他不明支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:エアリス以外の参加者全員を殺し、彼女を生き返らせる。
1.今はチェレンと共闘し、参加者を狩る
2.ティファ………

※参戦時期はエンディング後
※最初の会場でエアリスの姿を確認しました。



【チェレン@ポケットモンスターBW】
[状態]:健康
[装備]: なし
[道具]:モンスターボール@ポケットモンスターBW 青銅の槍@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
基本支給品、ランダム支給品0~1レオナールの不明支給品0~2 
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、人生をやり直す。
1.クラウドと共に参加者を狩る。
2.力が欲しい。そのためにはどんなことだってする。


※参戦時期はED後、トウヤとの戦いで敗れた後

【グランドリオン@クロノトリガー】
クラウドに支給された剣。
聖剣の名を持つ通り、強い力を持つが、持ち手の想いに呼応し、さらに力が強くなる。逆にマイナスの感情を持って使った場合は、邪剣へと変わる可能性も?
魔王と英雄サイラスの戦いで折れてしまったが、赤き石ドリストーンと賢者ボッシュの力で復活した。
また魔王のバリアを中和する能力も併せ持つ。

※グランとリオンの意思は途絶えています。

【青銅の槍@ ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
チェレンに支給された槍。あまり強くないが、パートナーのリザルに渡している。


「ギャア、ギャア。」

ふと鳴き声に耳を傾けると、リザルが何かを欲し気にしている。

「リザル、よしよし、お腹が空いたのかい?」
デイパックからチェレンはパンを取り出し、千切ったパンをリザルに食べさせる。

リザル舌をひょい、と出して、器用に食べた。
両手では、自分が持っていた槍と、レオナールの槍を見比べて、楽しそうにしている。

「俺の世界にはいないモンスターだな。アンタ、モンスター使いなのか?」
「僕はポケモントレーナー。僕が支給されたボールに入っていたんだ。
もっとも、こいつは元の世界では見たことないけど。」

「ぽけもん?とれーなー?」
「お兄さんの世界にはない職業なのかな。」
「お兄さん、じゃない。クラウドだ。」


二人には知らないことだが、彼もまた「やり直したい」者だった。
ある日、ゾーラ川のほとりで、魚取りをして、帰ったら自分達の集落が青い服の青年一人に壊滅させられていた。

爆発で弾け飛んだ仲間。切り刻まれた仲間。
持っていた宝石は愚か、仲間の尻尾も、角も、臓器まで奪われた。


集落の中で一番弱いため、魚取りを任せられていたリザルのみが、偶々生き残った。
だから、彼も仲間達と平和な生活をやり直すために、生き残ることを望んでいる。

食事が済むと、リザルはボールの中に戻された。
集落程ではないが、ここはなかなか居心地がよいので、気に入っている。


【リザルフォス緑@ブレスオブザワイルド】
チェレンに支給されたモンスターボールに入っていたモンスター。
素早い動きと水中や崖の上でも動ける機動性や、舌や水鉄砲、時には武器を投げるなど、トリッキーな戦法で戦う。

※今後の条件次第で、青リザルフォス、シビレリザルフォスなどに進化する可能性があります。

 【草原の竜騎槍@NieR:Automata】
レオナールに支給された槍。持ち主の防御力が上がり、また、空中攻撃の威力が上がる。
かつて竜と生涯を共にした騎士が持っていたのだとか。
現在はリザルが装備している。

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最終更新:2019年08月04日 17:07