「美希!ニュースだよ、ニュース!」
「ん……どーしたの、春香?ミキ、眠いんだけど……」
「えー!?美希って今日のレッスンが終わったあと、ずっと寝てなかった?」
「そんなこと言われても……仕方ないの……」
「あんまり寝てると、夜に眠れなくなっちゃうよ……って、あー!もう寝てる!?」
「zzz……」
「もう、起きてよ美希!超特大ニュースなんだよ!」
「ん……元気だね、春香」
「そりゃもう!ビックリしないでよ?」
「あふぅ……なんなの?」
「なんと、おにぎり専門店とのタイアップの仕事が来たんだよ!
今流行りのお店で、アイドルとコラボした商品を作りたいって!」
「おにぎりの仕事……?」
「美希はおにぎりが好きでしょ?だから、プロデューサーさんも美希を推してるみたい」
「それじゃあ、おにぎり食べ放題ってこと?」
「え?えっと……そう、だと思うよ!たぶん」
「それならやりたいの!」
「わっ、いきなり元気だね……。
それでとにかく、何か具にしたい食材があるか聞いてきて、ってプロデューサーさんに言われたんだ」
「おにぎりの具……あっ!いちごババロアとか、どうかな?」
「い、いちごババロア?……ババロアって、あのお菓子だよね?」
「そうだよ。いちごババロアもおにぎりも、ミキの大好物なの!
おいしいものとおいしいものを合わせたら、もっとおいしくなるって思うな!」
「そ、そうかなぁ……」
「そうに決まってるの!」
「うーん、あまりにも短絡的な気がするけど……」
「ねぇ、春香ってお菓子作り好きだよね?」
「うん、好きだよ?」
「じゃあ、ババロアも作れるよね!」
「え、うーん……まあ、レシピを見れば作れるんじゃないかな」
「そしたら、いちごババロアおにぎり、今度作ってきて欲しいな!」
「えーっ!?」
「楽しみなのー!じゃ、おやすみ~」
「ちょ、ちょっと美希~!もう、仕方ないなぁ……」
「zzz……」
○
「ただいまなのー!」
「レッスンお疲れ様、美希」
「あ、千早さん!ありがとうなの!」
「美希、最近とても活き活きしているわね」
「そう?確かに最近、調子いいの!」
「そういえば、先週の歌番組も評判が良かったみたいね」
「えへへ……千早さんも見てくれた?」
「もちろん。生放送とは思えないクオリティだったと思うわ」
「ホント!?」
「ただ、歌い出しの音が、少しだけ低かったような気がしたけど」
「うっ……さすが千早さん、バレてるの……」
「たまたま美希の歌を聴いていたから、気づいただけよ」
「たまたま聴いただけで分かるのも、かなりスゴイって思うな」
「ありがとう……でも、これはある意味、職業病みたいなものかもしれない」
「しょくぎょうびょう?」
「どんな歌を聴くときにも、つい音程や表現を分析してしまうの……悪いクセね」
「そんなことないの!」
「えっ?」
「いつも歌を分析してるなんて、きっとすごく大変なの。
千早さんの歌へのキモチは、765プロでもいちばんだって思うな」
「そうかしら?」
「絶対にそうなの!」
「そう……なのかもしれないわね……」
「ね、ミキの他の歌も分析してるの?」
「えぇ。美希と私では楽曲の傾向も異なるけど、それなりには……」
「それ、教えて欲しいの!」
「え?教えるって、私が美希に?」
「うん。ミキ、千早さんに教わりたいの!」
「そうね……教えることで新しい発見があるかもしれないし……分かったわ」
「やったー!嬉しいの!」
「それじゃあ、今からレッスン室に行きましょうか」
「はいなの!……って、今から?」
「ええ。美希も予定はないみたいだし、時間はあるわよね?」
「ち、千早さん、目がマジなの……」
「やるからには本気でやらせてもらうわ」
「うう……嬉しいけど複雑なの……」
○
「みんな、ミキのライブに来てくれて、ありがとうございましたなのー!」
『本公演はこれで終了となります。ご来場の皆様は――』
「美希、お疲れ様!」
「あ、プロデューサー!ねえ、ミキ、キラキラしてた?」
「ああ!すごく輝いてたぞ!」
「そっか……あのね、ミキすっごくドキドキしたの!」
「初の単独ライブだもんな。緊張もしただろ」
「ううん。緊張もしたけど、それよりも胸がワクワクでいっぱいになっちゃったの。
ファンのみんなの前に出て、たくさんのサイリウムを見た瞬間から、ドキドキが止まらなくって……!」
「……そうか。それは良かったな!」
「うん!でね、ミキはもっとドキドキしたいの!」
「ドキドキ?」
「もっと上のアイドルランクに行けば、もっとキラキラが見られて、もっとドキドキできるよね?」
「ああ、そうだな」
「だからミキ、もっともーっとドキドキするために、トップアイドルになるの!」
「……うん、美希ならできるさ!俺も、全力でサポートするからな!」
「あはっ、ありがとなの、プロデューサー!」
○
美術館にある大きなソファで、キャミソールの少女が寝ている。
遠くからでも目立つ金髪に、横たわる状態でも分かるスタイルの良さ。
少女の名前は星井美希。765プロダクションの新人アイドルの一人だ。
「zzz……」
そして、美希の傍らには、ピンクの体表に花のもようがある生物が浮いている。
その生物の名前はムンナ。人やポケモンが見ている夢を食べるとされているポケモンだ。
美希に支給されたデイパックから、モンスターボールが落ちたはずみで出て来ていた。
「ん……いちごババロアの大群なの……」
美希が何か寝言を言うと、ムンナは少女の頭に顔を近づける。
そして少ししてから、ピンク色をした煙――ゆめのけむり――を吐き出す。
十数分前から、この繰り返しだ。
「むううん……」
ムンナは美希のことを見つめている。
美希はそんなムンナに全く気づかずに、夢を見続けている。
トップアイドルを夢見る少女が覚醒するまでに、そう長くはかからないだろう。
それでも今はまだ、夢の中へ。
【B-4/美術館のソファ/一日目 深夜】
【星井美希@THE IDOLM@STER】
[状態]:睡眠中
[装備]:モンスターボール(ムンナ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:
1.zzz……
【モンスターボール(ムンナ)@ポケットモンスター ブラック・ホワイト】
星井美希に支給されたムンナが入ったモンスターボール。元の持ち主はベル。LV18。
特性はよちむ。覚えている技はあくび、ふういん、サイケこうせん、つきのひかり。
今後レベルが上がることで、新しい技を覚えてこれらの技を忘れる可能性もある。
つきのいしでムシャーナに進化する。
【ムンナ ♀】
[状態]:健康、ピンク色の煙を出している
[特性]:よちむ
[持ち物]:なし
[わざ]:あくび、サイケこうせん、ふういん、つきのひかり
[思考・状況]
基本行動方針:
1.美希の夢を食べる。
最終更新:2019年08月16日 05:16