アットウィキロゴ

開幕/きらりん☆レボリューション◆PatdvIjTFg



「にゃっほーい! きらきーだよ☆ルーラーのお仕事は大変だけど参加者のみんなのためにがんばるにぃ!みんな応援よろしくおにゃーしゃー☆」



「……ッ!」
気が付くと、諸星きらりは目覚めていた。
未だ太陽は沈んでおり、テレビをザッピングしても映るものは砂嵐に似たノイズか通販番組だけだ。
この高校におけるトラウマとサーヴァントに対する無力感から来る多大なストレスは、諸星きらりの睡眠時間を蝕んでいる。
額を拭う、酷い汗だ。
発熱したかのように全身が濡れている、パジャマにまでじつとりと滲んでいる。
「■■■■■」
バーサーカーが諸星きらりの額に手を当てる、熱を測っているのだろうか。
肉体的な病でないことはわかっている、だがその優しさが諸星きらりにとってはありがたいことだった。
「だいじょーぶ」

ベッドを抜けだして脱衣所まで歩く、当然のことであるがバーサーカーは外で待機している。
パジャマを脱いで洗濯物カゴに入れる。
フリルのついた桃色の下着、そのバストは豊満であった。
浴室に入り、シャワーを浴びる。
汗とそれ以外のものまで洗い流せるように。
浴室の曇った鏡を掌でこすり、諸星きらりは自分の姿を見る。
出るところは出て、引き締まるべきところは引き締まった長身の体躯、それに対し幼さすら感じさせる愛くるしい顔。
体躯と顔のギャップが、かえってアンバランスな美しさを生み出している。
ただ、昨日よりも更に痩せたかもしれない。

両の人差し指で口角を上げて、笑顔を作る。
わざわざこんなことをしなくても、少し前までは自然に笑えていた。
だが、作ることを意識しなければ笑うのが難しい。
笑うのなんて、簡単なはずなのに。

「きらりん☆」
諸星きらりが、きらりになって鏡を覗きこむ。
他人のための偶像【アイドル】は未だ笑えている。
「今日も一日がんばるぞい!」

着替えを済ませた諸星きらりは、己の携帯電話にメールが来ていることに気づく。
この街に来てから携帯電話を使う機会は減った。
街に来て最初の数日は家族や友人に引っ越しが無事に終わったことを連絡して、自分が大丈夫であることを伝えて、
そして、いじめが始まって、それ以来使わなかった。
誰にも何も言えなかった。

そして今、この携帯電話の先にいる相手が偽物であることがわかり、やはり何も言えない。
元の世界のように、きっと、優しくて甘いものをくれるだろうに、それでも言えない。
電話を掛けて全てウソですよと言われたら、と思うと恐ろしい、夢が夢で終わらせられるのは恐ろしい。

だから、二度と携帯電話を使うことはないと思っていた。
それが、今誰からかメールが届いている。
見たくない、正直なことを言えば恐ろしい。

メールを見れば、また何かを失うかもしれない。

息を吸う、吐く。
大きく息を吸う、ありったけの空気を吐き出す。
気合を入れて、携帯電話を開く。

ルーラーから送られた聖杯戦争の開始を告げる題名。
この時点で目眩がしそうになった。
悪夢のような現実は蜘蛛の巣のようにきらりを絡めとった。
息を吸う、吐く。息を吸う、吐く。息を吸う、吐く。心を落ち着かせる。
攻撃されるのは恐ろしい、バーサーカーの戦う姿を見るのは悲しい。

それでも、未だ始まっただけで巻き込まれたわけじゃない。
それを強く意識する。

ルーラーから送られたメールの内容を確認する。
電子マネーは役に立つかもしれないし、少なくとも参加者の姿が一人はわかったことがありがたい。
掲示板は便利だが、少女の悪意に触れた今のきらりには恐ろしい。開くことはないだろう。
それより何よりも図書館に行けばルーラーと接触できるかもしれないこと、それがきらりにとっては何よりもありがたい。
バーサーカーを救う、元の世界に戻る、今までの探索の中ではその答えどころかヒントすらも見つからなかった。
それでも、聖杯戦争の運営側にいるルーラーならば、答えを知っているのではないか。
必死で頼めば教えてくれるのではないか、それが今のきらりにある唯一の希望であった。

玄関の戸を開く。
今の時間も忘れて、走る。
誰よりも先に図書館へ行かなければならない。
誰かと出会ってしまうのは恐ろしいから。

煉瓦造りの巨大な建造物は明治時代を思わせるモダンな雰囲気を漂わせる。
五階建て、蔵書数は不明、この街で唯一の図書館である。
客用の出入口は七つ、西、南に各三つずつ、北に一つ。幸福の数字である。
そして職員用通用口は東に一つ。合計で八つ、また末広がりで縁起が良い。
利便性というよりは、その数を意識してこの図書館の出入口は造られている。

開館時間は午前から夕方まで、休館日は無し。当然今は閉館中である。
だが、関係ない。
職員用通用口の横に付いたインターフォンを鳴らす。
何度も本を探しに訪れているために図書館自体には慣れているが裏口はどことなくきらりを気忙しい気分にさせる。
最も、裏口だからということだけが原因ではないが。

しばらく待っても、返事はない。
再度鳴らそうか、それとももう少し待とうか――少し考えて、きらりは再度、インターフォンを鳴らす。
普段よりも更に気が急いていることをきらりは自覚している。

待っていると不安になる。
やはりこの時間にルーラーはいないのではないか、そもそもルーラーはいないのではないか。
フェイトを捕まえて初めて、図書館にルーラーが訪れるのではないか。
こんな時間に訪れたから、ルーラーは気分を悪くして出てこないのではないか。
申し訳ないことをした。

熱病に浮かされていたかのような感情が急に冷めていく。
ありもしない希望にすがってしまっただけなのではないか、そう思ってきらりは自省する。
「かえろっか……」
霊体化しているバーサーカーに声を掛け、家に戻ろうとした――その時である!

「ドーモ、スミマセン」
通用口の門が突如として開いた、開けたのはダークスーツを着こんだ角刈りの男だ。
その目はサイバーサングラスによって隠されてはいるが、オニめいた眼光をしていることは想像するに難くない。
図書館の職員があからさまにヤクザなのだ!
見よ、ヤクザの体躯を!並みの男よりも尚高いきらりに匹敵せんとする身長と鍛えあげられたように見える筋肉を!
アイドルの卵とはいえ、所詮一般人であるきらりにとってヤクザは実際英霊よりも現実的で非現実的な恐怖である。
だが、気丈にもきらりは恐怖を抑え込み、尋ねた。

「えっと……アナタがルーラーさん?」
「…………」
それに対してヤクザは沈黙!コワイ!
緊迫した空気が数秒流れた後、ヤクザは口を開いた。

「ドーゾ。モロボシ=サン。オアガリクダッシェー」
そう言ってオジギすると、ヤクザは図書館内へと歩き出す。
数秒の沈黙によって生じた実際奥ゆかしい歓迎である。
きらりはオジギを返すと、図書館へと入場した。

何度見てもきらりはこの図書館に圧倒される。
視覚の暴力めいて並ぶ本棚は数を数えようとすら思うことが出来ないほどに多い上に、
その本棚一つ一つがアンティークであり、どこか格式の高さを思わせる。
それがずらりと五階まで並んでいるのだ、人間が本を読むための場所というよりも本に支配された場所で人間が生存を許されているようなものである。

それにしても――ときらりは気づく。
昼間にはいなかったダークスーツの職員達が本の整理を行っている、それだけならば良い。
だが、統一された髪型に服装、似たような体躯、遠目ではよくわからないがよく似た顔立ち。
職員たちが皆、同一人物のように見える。疲れているのだろうか。

心中の疑問に答えられることのないまま、ヤクザに促されてきらりとバーサーカーはエレベーターへと乗り込んだ。
「オタッシャデー!」
二人が乗り込むと同時に、ヤクザが外側から閉ボタンを押す。エレベーターの戸が閉まる。世界から隔離される。


「下ヘ参リマスドスエ」
合成マイコ音声がエレベーターの起動を告げると共に、奇妙な浮遊感を伴ってエレベーターが下降する。
エレベーター内は珍しいことに全面が鏡張りである、浮遊感を伴ってきらりはどこか神秘的な趣きを感じた。
「きっと……だいじょうぶだよねぇ……」

ルーラーに会えば、家に帰れる。
ルーラーに会えば、バーサーカーもきっと泣かずに済む。
ルーラーに会いさえすれば、全ては好転するはずなのだと、きらりはそう信じている。信じざるを得ない。
もしも何も変わらなければ、それは何よりも恐ろしい。
だからこそ今、ルーラーに会おうという段になってより不安になっていく。
望めば望むほどに裏切られることが怖い。

「■■■■■■」
身を竦めたきらりの肩にバーサーカーは手を置いた。
狂っていても、泣いていても、優しくて大きくて暖かかった。

「うん、ありがとにぃ」
きっと、何とかなる――そうきらりが思ったその時である。
エレベーターの鏡面に水面のような波紋が生じた、目の錯角か――否、現実である。
今、鏡に触れれば――あるはずのない鏡の中の世界に入り込めそうなほどに、現実から逸した様。

"This little piggy went"
(このぶたちゃん)
"Wee, wee, wee"
(ウィーウィ ウィーウィウィーと泣いている)
"All the way home?"
(おうちに帰りたい?)

歌が聴こえた。
きらりの発したものでも、マイコ音声のスピーカーから発されたものでも、もちろんバーサーカーでもないものが。
どこだろう――そう思ってきらりがきょろきょろと辺りを見回すと同時に、バーサーカーが戦闘態勢に入った。

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!正面鏡粉砕!

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!左部鏡粉砕!

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!右部鏡粉砕!

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!背面鏡面粉砕!

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!天井鏡粉砕!

「■■■■!」
「ンアーッ!」
二重の極み!床鏡粉砕!

バーサーカーは直感に従い、周囲の鏡面全てを破壊し、きらりを抱きかかえて天井からエレベーターより脱出!
負けを待って無駄死にとは平安時代の哲学剣士ミヤモト・マサシのコトワザである。
実際、敵の襲撃を受ける前にこちら側から仕掛けた方が有利である。

片腕できらりを抱き、もう片腕でエレベーターロープを掴んだバーサーカーが上昇を開始する。
だが……ブッダ!なんたるマッポー的光景か!
バーサーカーによって粉砕された鏡面の粒子が、吹雪のように辺りを舞い散り……バーサーカーときらりを包み込んだのだ!

フタエノキワミ=ホウグ破れたり!この宝具ならばあらゆるものを破壊出来よう!
だが、粉々に破壊されたものをどうして再度破壊できようか!

そして……皆さんの中にサーヴァント動体視力をお持ちの方がいれば、それを見ただろう!
鏡の粒子一つ一つより出た極細の茨を!それが互いに鏡を結びつけ、操っている!
「■■■■!」
一本一本破壊していっても意味なき程の量!そして破壊した側から新たな茨が出て、鏡同士は再度結び付けられる!

"This little piggy went"
(このぶたちゃん)
"Wee, wee, wee"
(ウィーウィ ウィーウィウィーと泣いている)
"All the way home?"
(おうちに帰りたい?)

再びきらりは歌を聴いた。
そしてきらりは見た。
鏡の粒子が一つの鏡となり映し出された白いロリータドレスのドール、普通の人間の半分ほどの背丈もない。
白薔薇の髪飾り、編み上げのロングブーツ、コーディネートは全身白が基調。
淡いピンクのようなクリーム色の髪をツーサイドアップにしている。
それにしても不思議なことに、右目が無い。
眼帯というわけでもなく、目の代わりに直接薔薇が生えているように見える。当然彼女の色、白い薔薇だ。
目が合った。
魔性の色――彼女の金色の目ときらりの目が合った。

「アナタが歌って……」
言葉を発し終える前に、鏡より出た茨がきらりを捉えた。

「■■■!」
バーサーカーが手を伸ばすよりも、茨は速かった。
誰が信じるであろう、鏡の中に世界があるなどと。
だが、鏡の中より出た茨は――きらりを鏡の中へと誘った。

「■■■■■■■■■■■■■!!!!」
「シ、シ、シ、下ヘ参リマスドス、ドス、ドスエ」
後に残されたものは、バーサーカーの絶叫と、狂ったように鳴り響くマイコ音声だけだった。


フローリングの床、手すりの付いた壁面鏡。
レッスン室と聞いて大多数が想像するような光景――そして、きらりが何度も何度も訪れるはずだった場所。
何故、ここにいるのだろうと思うよりも先に――今更この場所にいることにきらりは心のどこかがじくりと痛むのを感じた。

ぱあん。
誰かが手を叩く。

それと同時に、レッスン室には19個のマネキンが置かれていた。
マネキンは皆――ドレスを着ていた。
シンデレラが着るような――きらりが何時の日にか街頭ビジョンで見たような美しい衣装を。

ぱあん。
誰かが手を叩く。

マネキン達ときらりはそのままに、場所だけは多数の観客が収容できるホールに変わっていた。
観客席は皆、マネキンで埋まっている。
きらりは、マネキン達と共に――ステージに立っている。

気が付くと、あの曲が流れている。
かつて、街頭ビジョンで聞いたあの曲が。
きらりが、ただ漠然とアイドルに憧れていただけだった頃の曲が。
曲に合わせてマネキン達が踊っているのを、きらりは不思議と当然のことであると受け止めていた。
それよりもステージに上がっているのに、踊り方を知らない自分が辛かった。

ぱあん。
誰かが手を叩く。

きらりは多数のマネキンの観客とともに観客席に座っていた。
ステージではきらりの代わりに、あの白いロリータドレスのドールが踊っている。
踊っているマネキンたちへの憧れと、自分は踊れないのだからしょうがないという諦めと、それでも諦めきれない悔しさ。

"お願い!シンデレラ"
"夢は夢で終われない"

ああ、嫌だ。
夢が夢のままで終わらされてしまう。
今すぐ観客席から立って、ステージに上がりに行きたかった。
だが、両腕を両隣のマネキンにものすごい力で押さえつけられて観客席から動くことが出来ない。
何も出来ないまま、曲が終わっていた。

ぱあん。
誰かが手を叩く。

きらりは花束を持って、ステージに上がっていた。
目的はわかりきっている、白いロリータドレスのドールにこの花束を渡すためだ。

きらりが渡した花束を受け取ると、ドールは満面の笑みで言った。
「うぇえへ、きらりちゃん応援ありがとにぃ☆きらきー、もっともぉーっときらりちゃんの代わりに頑張りまっす!いぇいいぇいおー☆」
どこまでもどこまでも悪意を込めた自分の真似、表面上だけは完全に似せた主のいない腹話術の人形。

「違う……」
「何が違うんだよ、きらり?」
「だって……」
「ボクと違ってきらりさんは聖杯いらないんでしょ?だったら……ボクがきらりさんの代わりに使っていいじゃないですか?
フ、フフーフー……聖杯はすごい……からね……きらりちゃんの夢も……未来も……周りの人も……
みんな……みんな……私がもらうよ……?それが嫌なら……戦いなさい、諸星きらり」

ぱあん。
もう一度、誰かが手を叩く。

レッスン室も、マネキンも、ステージも無い。
アンティーク調のテーブル越しに、椅子に座ったきらりとドールが向かい合っている。
それ以外には何も見えない、闇が周囲を包み込んでいる。
テーブルの上には淹れたての紅茶が二つ、湯気を立てている。

「初めまして、諸星きらり様……私がルーラーですわ」
「…………夢?」
先ほどまでのことが何もなかったかのように、ルーラーと名乗ったドールは振舞っている。
何もかもが夢だったのだろうか、それとも今も未だ夢の中にいるのだろうか。

「くす、くす、くす、呼びつけておいて夢を見ておられるなんて……羨ましい立場ですわね、諸星きらり様」
「……ごめんなさい」
「いえいえ、馬車馬のように休みなく働くのがルーラーの仕事、無償の奉仕者であることこそ私の使命……
どうぞどうぞお気にせず、それで何の御用かしら?諸星きらり様?」
そう言ってルーラーは紅茶を口に入れた。
つられてきらりも紅茶を飲む、緊張で味がわからない。
聞かなければならないことがある、いや、その前に。

「1、2、3、4、5、6、7、よい子はみんな天国へ……バーサーカー様は、下へ、下へ、下へ……
ルーラーの立場から提案させていただきますが、バーサーカー様と再会されたならば、まずはじめに令呪を以て私を追うことを止めさせるべきでしょうね
今のバーサーカー様は自分のしっぽを追いかける犬のように、私だけを追い続けてアナタの話を聞きもしませんから、くす、くす、くす」
言っている意味がよくわからないし、バーサーカーの状況もよくわからない。
だが、きらりにはこれ以上ルーラーに聞いても無駄なように思えてならなかった。

「大丈夫、バーサーカー様は元気いっぱい……それで、きらり様、アナタの用事が聞きたいわ」

だが、ルーラーとバーサーカーを信じ、今はルーラーに聞くべきことを尋ねよう。
どうすればバーサーカーを元に戻せるか。
どうすればこの世界から元の世界に戻れるか。
紅茶のおかげだろうか、言葉は淀みなく紡ぐことが出来た。

「狂化を解きたいのならば……令呪に祈りを籠めて、何度も何度も何度も祈ってみてはいかがでしょう?
ただし、3画では足りないわ……もっと光を、もっと多くの令呪を集めないと何の意味も為さないでしょうね。
うふふ……でも安心しなさいな、きらり様……良い手段がありますわ、フェイト・テスタロッサの捕獲任務を見たでしょう?
嘘はつきません……フェイト・テスタロッサを引き渡していただければ、私はよろこんできらり様に令呪を差し上げますわ」
「…………」

ここに来てようやく具体的な道筋が見えた、だがその道筋は厳しい。
いや、わかってはいたことだ。
しかし――霧の中で惑うのと、険しい山々を越えるのとどちらが良かったのだろう。
だが、もう答えを知ってしまった以上――きらりはバーサーカーのために勇気を振り絞ることができるだろう。

「次に、どうすれば帰れるか、聖杯を手にすれば良い……と言いたいところですが、そういう答えを求めているのではないのでしょう?
でしたら、やはりフェイト・テスタロッサを捕まえることです。マスターがもしあの娘を気に入ったのならば……この聖杯戦争自体が中断される……か、も。
ええ、確証なんてありませんわ……でも、私から提案できるのはこれだけですわ、きらり様。
アナタ達の鍵を握るのはフェイト・テスタロッサ……以上です」
「その……フェイトちゃんを捕まえたら、どうするの?」

踏み込むべきではない。
見も知らぬ少女の事情など無視して、自分のために動くべきだった。
それでも諸星きらりはフェイト・テスタロッサを気にかけてしまった。
自分がいじめられたように、参加者から狙われる少女を。

「マスターと会って、仲良くお茶会をして……おしまい。
もちろん、マスターがフェイト・テスタロッサを殺すことはありえません……くす、というより不可能でしょう」
ルーラーの嘲笑は、サディズムの美を備えていた。
だが、そんなことはきらりにはどうでもいい。
命の保証がされても、それは恐ろしいことのように思えた。

「うふふ……きらり様、いいじゃないですかフェイト・テスタロッサのことなんて、
それよりもアナタと……アナタのサーヴァントを大切にするべきでしょう?」

そうだ、ルーラーの言っていることは正しい。
殺すわけではない、ただ捕まえるだけだ。
そしてルーラーに引き渡した後、どうなるかなどきらりの知ったことではない。
それでも、そう割り切れないから――きらりはここにいる。
バーサーカーの狂化を解除する方法、聖杯戦争から脱出する方法、そのようなものの答えを求めて。

だが、それでも悩む。
フェイト・テスタロッサを天秤にかけてもよいほどに、諸星きらりは追い詰められているということも真実。

諸星きらりは揺れている。

「……それではきらり様、お茶会はここまで。今度はお茶菓子をもっていらっしゃって」
そう言って、ルーラーは椅子から降りて、闇へと消えていこうとして、思い出したかのようにきらりに振り返った。

「そうそう、掲示板機能はご利用なさっていて?きっときらり様のお役に立ちますわ」

そして、それだけいうと再び闇へと消えていく。


ぱあん。
誰かが手を叩く。

きらりの意識が消える。



「きらきーぱわー☆」



「■■■■!」

殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。
殴っている。

バーサーカーはきらりを連れ去った鏡を殴っている。
粒子状になった鏡はこれ以上破壊することが出来ない、それでも殴っている。
バーサーカーは鏡の中に入ることは出来ない、それでも殴っている。
殴ることしか出来ない、だから殴っている。

目を覚ましたきらりが見たものは、そんな光景だった。

災害現場から必死で瓦礫を取り除いて家族を探すような、そんな悲痛な祈りにも似た光景だった。

「ごめんねぇ……」

バーサーカーは自分を守りたいのだろう。
バーサーカーは自分を傷つけたものを許せないのだろう。

だから、何も出来なくても――出来ることをし続けてしまうのだろう。

きらりの令呪が光り輝く。

「もういいよ……ごめんねバーサーカー」

きらりの言葉と共に、バーサーカーは拳を止め、霊体化した。

「ごめんねぇ……ごめんねぇ……」
道はひたすらに遠い。
そして、自分には謝ることしか出来ない。

きらりはヤクザがエレベーター災害救助用のはしごが降ろすまで、しばらく眠っていた。

【D-2/図書館/一日目 早朝】


【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)】
[状態]精神的疲労(中)、魔力消費(中)
[令呪]残り二画
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]不明
[思考・状況]
基本行動方針:バーサーカーを元に戻し、元の世界へと戻りたい
[備考]
※三画以上の令呪による命令によって狂化を解除できる可能性を知りました(真実とは限りません)
※フェイト・テスタロッサの捕獲による聖杯戦争中断の可能性を知りました(真実とは限りません)
※ルーラーの姿を確認しました
※掲示板が自分の話題で賑わっていることは未だ知りません


悠久山安慈@るろうに剣心(旧漫画版)】
[状態]霊体化
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
[備考]
雪華綺晶の存在を確認しました、再会時には再び襲いに行く可能性があります。


【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:???
[備考]
※アイドルの物真似が出来ます

BACK NEXT
009:ガール・ミーツ・ジンチョ・ゲーザーズ・ネクロマンス 投下順 011:空と君のあいだに
時系列順

BACK 登場キャラ NEXT
000:前夜祭 諸星きらり&バーサーカー(悠久山安慈 014:絶望少女育成計画Reflect
-003:泣いた赤鬼
000:前夜祭 ルーラー(雪華綺晶 014:絶望少女育成計画Reflect
OP:その愛は侵食

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年06月28日 00:06