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上海の貿易公司に勤めるドイツ人夫婦の娘・カティ。
彼女はある日、「自分が魔女の生まれ変わりだ」と言い出した。
それに周囲が困惑している内に、彼女は姿を消した。
カティを最後に目撃した夫人の証言によると、黒いマントを羽織っており、元帥杖とエジプトの人形「シャブティ」なるものを持っていたという…。


◆ ◆ ◆


ゴッサムシティの廃ビルにて。
闇に包まれたフロアの中心部に、おぼろげな光が灯っていた。
そこに鎮座しているのは蝋燭と、元は人の形をしていたグロテスクな何かとシャブティを乗せている祭壇。
荒削りの岩で構成された祭壇は、どこか異教の雰囲気を醸し出している。

その前で少女が1人、祭壇の前に魔法陣を描いていた。
絵具は黒ずんだ紅色。
祭壇に捧げられている胎児の血である。

「ムラクモ…我を利用したつもりであろうが詰めが甘いな。万が一のために別の策を練っておいて正解だった」

黒いマントに身を包み、金髪のツインテールが揺れる。
少しずれた眼鏡をかけなおした少女の姿は、他ならぬ行方不明になった少女・カティであった。
しかし、彼女はもはやカティではない。

なぜなら、「完全者」ミュカレによって身体を奪われたのだから。

「『救済』を以て我等は次の階段を上るのだ」

ミュカレは魔法陣の完成を確認すると胎児とシャブティが乗る祭壇から離れ、魔法陣の反対側へ移動し、祭壇と向かい合う。
そして、祭壇へ向かってサーヴァント召喚の儀を唱える。

「素に胎児と血――」

己が求めるサーヴァントを召喚し、悲願を遂げるために。

「――――告げる。
汝の身は完全者が下に、我が命運は汝の鎌に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

魔法陣が光りを帯び、強風が吹きつける。
ミュカレを包んでいたマントが開き、下に着用していたブレザーとミニスカートが露わになる。
その瞳はまったく動揺をみせず、ただ魔法陣を見つめるのみ。何にも動かされぬ冷たい目は狂気をも感じさせる。

「誓いを此処に。
我は常世総てを救済する者、
我は常世総てを新世界へと導く者。
汝、救済の神体を創造せし者、
人魔の扉よりファラオの傀儡へ宿れ、漆黒の救世主よ―――!」



この世界に、また1人のサーヴァントが、召喚された。



「――恐れてはいけない。私は最初であり、最後である――」

その英霊の名は、ジェダ・ドーマ
セイヴァーのクラスを冠する漆黒の救世主。


◆ ◆ ◆


ミュカレは完全者と呼ばれている。
完全者とは、異端とされる「ペルフェクティ教団」の厳格な教義において真理を極めた者に贈られる名前だ。
ミュカレは完全者となり『転生の法』を会得した。
たとえ死んでも別の肉体が存在する限り、他人の身体を器にして魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる秘蹟だ。
彼女は中世に火刑に処せられた、農夫の娘・ミュカレが『転生の法』により「完全者」として蘇った姿なのだ。
現代に至るまで数百年の月日を転生を繰り返し人々から「魔女」と恐れられ、人類の救済という教団の悲願のために暗躍していた。
ここでいう「救済」とは悪しき肉体を排し、天へと至る霊的救済…一般的に言われる「皆殺し」である。

第三帝国(ナチス)と協力関係を築き、
研究機関である秘密結社「ゲゼルシャフト」に属していたこともその一環だ。
ミュカレは本来、このゲセルシャフトの軍事力を用いて「救済」を実行する『プネウマ計画』に乗り出すつもりだった。
尤も、ミュカレがカティを乗っ取る前の肉体はムラクモらにより殺されてしまったが。

ミュカレは万が一のために、別の手段も用意していた。
聖杯を勝ち取るという単純な方法だ。
中世から生き、魔術に精通していた完全者はどこから伝え聞いたか、
シャブティを介して電脳空間『ゴッサムシティ』で執り行われる聖杯戦争の存在とそのルールを知っていた。
聖杯という万能の願望機を以てすれば、教団の悲願を叶えることができる。

そしてミュカレは今、もう一つの手段である聖杯の入手を実行に移そうとしていた。



衆愚の街・ゴッサムシティにも教育機関はあり、その中でも有名どころがゴッサム大学である。
ミュカレは大学内にある個人研究室で、コーヒーを片手に机に座る。
彼女が割り当てられた役割は『ゴッサム大学における考古学の権威である童顔教授』らしい。
実際、大学内で初対面の者と話した時は「学生よりも若そう」とさえ言われた。

「ミュカレ…君の願いは私と同じ…魂の救済、でいいのだね?」

ミュカレの発する女性の声とは違う、低い声が研究室に響く。
すると次の瞬間、研究室内で血飛沫が起きた。
血の量は次第に多くなり、床は血で満たされていない面積の方が少ない。
たった今、人が入ってきたらその者はあまりの恐怖に卒倒してしまうだろう。
その血は独りでに動き、渦巻くとその形を変え、やがて人型へとその形を変えていく。
実体へと姿を変えた血はミュカレのサーヴァント。ジェダであった。
顔色の悪い肌、学ランを彷彿とさせる服装、そして肩部から滴り出ている赤い血のような液体。
その姿はまさに魔の者であると否が応でも認識させられる。

「違いない。我ら完全者にとって肉体は仮初めの容れ物。魂をつなぎ留める牢獄に過ぎない」

ミュカレは眉ひとつ動かさずに答えた。

「人類は肉体から解放され、この不完全な世界から完全なる世界――天へと至らねばならんのだ」

それを聞いたジェダは「なるほど」と呟いた。

「確かに…このゴッサムシティのように同じ種が血で血を洗う低俗で醜き争いを繰り返していては彼らは自滅の道を歩むだけだ。
君はそんな人類に手を差し伸べ、君達が望む『理想郷』へ向かわせようということか。
……私もそれに異論はない。ならば『救世主』のサーヴァントとして現界した以上――君に手を貸さないわけにはいかないね」

ジェダはゆったりとした口調で、ミュカレに手を差し伸べた。顔には微笑みを浮かべているが、どこか不気味だ。
ミュカレはその手を取らず、半ば睨みに近い形でジェダを見つめる。
このジェダというサーヴァントは同じ『魂の救済』を目的としているが、何かを企んでいる気がしてならないのだ。

(セイヴァーの持つ理想と我が悲願…それは似ているようで全くの別物かもしれぬな)

これは万が一のために策を講じておく必要がある。そう思いながらミュカレはジェダの手に静かに触れた。


◇ ◇ ◇


――理想郷とは、私と一つになった先にあるのだよ。

果たして、ミュカレの予感は当たっていた。
ジェダの理想とは、魂と同化する能力を用いて、全世界、全ての魂と融合すること。
すべての魂を等しく救済するには、それらと完全同一化すればよい。
たったひとつの魂ならば、どんな争いも起こりえないからだ。

ミュカレの悲願は魂を完全なる世界――天へ至らせること。
ジェダの理想は魂と同化して唯一の存在になること。
皆殺しにする点は変わらないが、肉体から解放された魂の行方という点で両者は大きく異なっていた。

無論、ジェダの救済の対象にはミュカレ自身も入っているのは言うまでもなかった。


【クラス】
セイヴァー

【真名】
ジェダ・ドーマ@ヴァンパイア セイヴァー

【パラメーター】
筋力C 耐久A+ 敏捷D 魔力A 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
対英雄:C-
英雄を相手にした際、そのパラメーターをダウンさせる。
Cランクならば、相手のパラメーターをすべて1ランク下のものに変換する。
しかしダークストーカーもとい悪の属性を持つ英霊に対してはまったく効果を発揮しない。

【保有スキル】
液体:A
質量・密度を自由に変えられる液状の身体。
セイヴァーの身体は本来心臓や脳がある部位も含め、全て血液のような可変液体で構成されている。
一般的にサーヴァントの弱点と言われている心臓の破壊や首の切断を受けてもセイヴァーは消滅しない他、
魔力を消費することで液体を再構成し、肉体の損傷を短時間で修復できる。
液状の体を生かして身体の形状を変化させて攻撃することもできる。
ただし、大量の液体を展開すると魔力消費が激しくなる。

魂同化:A+
サーヴァント共通の能力である魂喰いが固有スキルに昇華されるまでに至った上位スキル。
セイヴァーは生前から魂と己が身を同化する能力を持ち、魔力を得ることができた。
通常の魂喰いよりも多くの魔力を回復できる。
A+ランクならば事実上の単独行動も可能となる。

飛行:B
翼を利用して空を飛ぶことができる。
空中において、敏捷のランクはこのスキルのランクが適用される。

【宝具】
『魂へ課す下僕の証(プロヴァ=ディ=セルヴォ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1
セイヴァーの背丈を超える巨大な契約書。契約書は何枚でも作成することが可能。
これに敵を巨大な赤い液体で構成した手で掴むなどして叩きつけることで敵との『契約』が成立し、魔力の大部分を奪うことができる。
本来は魂をそのまま抜き取ることも可能だが、セイヴァー自身が不完全な状態であるために魂の中の魔力回路から魔力を奪うにとどまっている。
『契約』が成立した場合、契約書には敵の姿が魚拓のように浮き出る。

『終焉の紅に沈め(フィナーレ=ロッソ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:4
地面から赤い液体の手を伸ばし、敵を捕獲するとセイヴァーの赤い液体で満たされた空間に引きずり込む。
その中では一切の抵抗が許されず、セイヴァーは一方的に攻撃を加えることができる。
だが、相手を大量の液体で飲み込むという都合上、魔力消費は『魂へ課す下僕の証』に比べて多い。

『神体(フィータス・オブ・ゴッド)』
ランク:- 種別:対界宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
セイヴァーが生前作り上げようとした膨大な数の魂を収めきる堅牢な器。
外見は頭が肥大化した巨大な胎児の姿をしている。
セイヴァーと融合することで全世界の魂と瞬時に同化し、その世界において唯一の完全体となる。
この宝具はセイヴァーが生存していた時点でまだ未完成で、
全世界の全ての魂を収めるにはセイヴァーが「価値ある魂」を集めなければならなかった。
よってこの宝具はセイヴァーの手に余るものであったため、失われている。

【weapon】
  • 身体を構成する液体。
赤い液体あらゆる形状に変化させる。
翼をもぎ取って鎌に変えることができ、
自分の首を切って飛び出た血飛沫を浴びせるという芸当も可能。

【サーヴァントとしての願い】
全ての魂の『救済』。同化。

【人物背景】
魔界三大貴族の一つ、ドーマ家当主。
「冥王」と呼ばれるS級魔族。年齢は6千歳を超えるが、三大貴族の中では最も若い。
ヴォシュタル家の当主ガルナン=ヴォシュタルの死去を機に、魔界の覇権を求めてベリオール・アーンスランドに戦いを挑もうと画策する。
その折りに当時は部下だったオゾムに騙されて、魔界と人間界を結ぶ扉から膨大な魔力を得ようとするが、
その際に自身の限界を超える魔力の量に呑まれて消滅する。

その100余年後、ベリオールの没後に復活を遂げると、争いが渦巻き、滅亡に瀕する魔界の惨状を憂い、
他者の魂を自分と同化する能力を用いて魔界全ての魂を融合させて唯一完全肉体を手に入れようと企む。
ジェダ自身はこれを「魂の救済」と称している。
ヴァンパイアセイヴァーのストーリーでは「価値ある魂」の持ち主を集め、我が身と同化して最終的な容れものとなる「神体」を完全なものにするために、
「魔次元」という特殊空間を作り出して他のダークストーカーを呼び込んでいる。

此度の聖杯戦争ではセイヴァーとして召喚されたが、その姿は復活したばかりの不完全な状態で現界している。
これは「魂の救済」のために動き出した時期が復活以降であり、復活前の全盛期の状態ではセイヴァーのクラスに当てはまらなかったことが原因。

性格は常に沈着冷静、紳士的且つ慇懃で理知的な話し方をするが、端々に相手を見下す態度が見られる。
勝利時に奇声のような高笑いを発するなど、狂気に満ちた行動も特徴的。非常な自信家であり自己陶酔者でもある。


【マスター】
ミュカレ@アカツキ電光戦記

【マスターとしての願い】
教団の悲願成就。
全人類の『救済』。肉体を排する霊的救済。

【weapon】
  • 元帥杖
第三帝国の元帥杖。鈍器として使えなくもない。

【能力・技能】
  • 魔術
魔女として、魔術を高水準で習得している。
主にあらゆる武器、獣の召喚術を得意とする。
また、魔力も魔女であるからか多い。

  • 転生の法
真理を知る者「完全者」が会得できるといわれる秘蹟。
擬似的な不老不死で、転生して完全者は現代へ生き永らえた。
たとえ肉体が消滅しても別の肉体が存在する限り、
他人の身体に魂を移し変え、精神を乗っ取って復活することができる。
聖杯からの制限により、サーヴァントと、『契約しているマスター』を乗っ取ることはできない。
令呪・魔力供給パスは転生先へ同時に受け継がれる。

【人物背景】
異端「ペルフェクティ教団」の教祖にして、秘密結社ゲゼルシャフトの元帥。

「完全者」とは先の教団において、その尋常ならざる教義を会得し真理に到達した者を意味する。
「完全者」は真理を得た事で死を超越し、肉体が消滅しても別人の体を乗っ取り転生する事が出来るとされた。
そして彼女もまた、中世に異端者として火刑に処せられた、農夫の娘・ミュカレが「完全者」として蘇った存在であり、
その後現代に至るまで数百年の月日を転生を繰り返し人々から「魔女」と恐れられながらも、
教団の悲願成就の為歴史の節目で暗躍していく事となる。

現在はムラクモらによって前の肉体を殺されたため、上海の貿易公司に勤めるドイツ人夫妻の娘・カティに転生している。

【方針】
聖杯狙い



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最終更新:2015年05月24日 19:38