766オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/06/20(土) 21:11:02.55ID:Qhdm6nuU0
日登町中央区:高校の体育館
ガンダム兄弟とフル・フロンタルの対話は、他の端末でも生中継されていた。
学校に避難していた多くの人々は、現状を知るため固唾をのんでその様子を見守っている。
フロンタル『“そう、汝の名は……チナパパなり!”』
チナパパ(メタル)in
デビルガンダム『…………』
キララ「ちょっと……これって近所の喫茶店のマスターでしょ? あのデビルガンダムを使ったゲテモノ料理で有名な」
レイジ「ゲテモノ言ってやるなよ。気持ちはわかるけどさ」
アイラ「そうよ。ああ見えて意外と食べると美味しいのよ脂が乗って」
レイジ「おまえ……アレ喰ったのかよ……」
フレイ「おじさん……
90でデビルガンダムに連れ去られたと思ったらあんなことに……」
ミリアリア「う~ん、こっちかな? それともこっち……あ、これは構図がダメだわ」
フレイ「ちょっと、それでアンタはさっきから何してるの?」
ミリアリア「何って、おじさんがデビルガンダムに連れ去られた決定的瞬間の写真を選んでるんじゃない。私たち、唯一の目撃者なのよ」
フレイ「それはそうだけど」
ミリアリア「この事件の規模、これは歴史に残る一枚になるわ。ふっふっふ、これで今年の
カイ・シデン賞はいただきよ!」
フレイ「ほんとアンタって娘は転んでもただじゃ起きないっていうか……」
フレイが呆れているところへ、眼鏡姿の姉弟が声をかけてくる。
ユウマ「あの、すいません。できたらその写真、僕たちにも見せてくれませんか?」
ミリアリア「それは構わないけど……あなたたちは?」
チナ「わたしはコウサカ・チナ。こっちは弟のユウマです。今、デビルガンダムに乗っている人……あれ、私たちのお父さんなんです」
767オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/20(土) 21:11:48.72ID:Qhdm6nuU0
学校:地下格納庫
不安に駆られる人々をよそに、ガンダム兄弟とフロンタルの対話は続いていた。
今では
ハロ長官をはじめとする警察の幹部、鉄華団の団長であるオルガやCBのメンバーも参加している。
ハロ長官「それじゃあ、アムロ・レイと
シャア・アズナブルの喧嘩を発端とする一連の騒動は、すべて君が仕組んだんだね?」
フロンタル『そうだ』
オルガ「なら、歳星からの通信で俺たちを火星に呼び出したのも」
フロンタル『私の仕業だ』
スメラギ「コロニーで紛争が起こりそうという偽情報をヴェーダに流したのも」
フロンタル『私がやった』
キャプテン「日登町全域に通信障害を起こしたのも」
フロンタル「私だ」
アルレット「MAや
ELS、シド、デビルガンダムを暴れさせたのも」
フロンタル『それも私だ』
シン「くそっ! いけしゃあしゃあと言いやがって」
キラ「気に入らないよね。なんでもかんでもすべて自分の思い通りっていうのが」
ウッソ「そうですよ! “それも私だ”って、どっかのSRPGのラスボス気取りですか」
ティエリア「バカな! イノベイターでもイノベイドでもない人間がヴェーダにアクセスできるはずが……」
フロンタル『それに関しては
リボンズ・アルマークがいい仕事をしてくれた』
マイ「兄さんたちのパイロットスーツに仕込んだ『ヅダエール』といい、あなたはこの計画のため、随分入念な準備をしていたようですね」
フロンタル「お褒めに預かり光栄だよ、オリヴァー・マイ。君の作った『ヅダエール』なしではこの計画は成立しえなかった」
フロンタルの謝辞に、マイは一瞬複雑そうな表情を浮かべる。
マイ「……まだわからないことがあります。あなたは、これだけの事件をどうやって同時に起こしたのですか?」
アセム「同時に……ってどういうことだ?」
マイ「考えてもみてくれ。アムロ兄さんとシャアさんのケンカも、デビルガンダムの覚醒もELSの大暴れも、一つだけならこの町じゃよくあることだ」
オルガ「いや、一つとしてよくあることじゃねえからな普通の町なら!」
ジュドー「オルガさん……残念ながらこの町普通じゃないのよね」
ベルリ「そうそう」
マイ「それでも、この騒動がここまで大きくなったのは、そのよくあることが“同時に起こった”からだ」
カミーユ「そうだよな。初めはアムロ兄さんとシャアさんのケンカを止めるだけのはずだったのに」
フリット「デビルガンダムたちが現れたせいで、僕らや警察も手が足りなくなって、ここまで対応が後手後手に回ってしまったんだ」
マイ「この騒動が、全てあなたの計画通りだとしたら、いったいどうやって様々な事象を“同時に起こした”んですか?
あなたはまだ、僕たちの知らない『何か』を隠し持っているんじゃないですか?」
マイの問いかけに、フロンタルは薄ら笑いを浮かべるばかりで何も答えない。
フロンタル『おや、もうこんな時間か。明日も忙しいのでね。私はそろそろ休ませてもらうよ』
マイ「待ってください! まだあなたには聞きたいことが……」
フロンタル「続きは明日、直接会ってからにしよう。楽しみにしているよ、ガンダム兄弟」
そう言い残し、通信は切断された。
768オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/20(土) 21:14:14.93ID:Qhdm6nuU0
ドモン「くそ、フル・フロンタルめ……!」
アルレット「結局、肝心なことは何もわからなかったわね」
ヨナ「そうだな」
アセム「そんなことはない!」
バナージ「アセム兄さん……」
アセム「この騒動は、すべてアイツが仕組んでいたんだろ? なら、アイツを倒せば解決だ!」
フリット「はあ、アセム兄さんが言うほど、単純な話じゃないんだけどな」
シロー「だが、一理はある」
ガロード「そうそう。目的を探るにしたって、結局直接会わなきゃ始まんないだろ。なら、今度はこっちが乗り込む番だ」
シン「フロンタルのアジト、
ネオジオン社にか……」
キラ「ま、多分罠だと思うけどね。100パーセント」
アセム「なら、その罠ごとあいつの計画を叩き潰してやるだけだ!」
劉備「随分燃えてるな、アセムのヤツ」
キャプテン「ゾルタン・アッカネンに家を襲撃されたのが原因だろう。あの出来事で、
アルとシュウトは随分悲しんだ」
リタ「兄弟の中で、一番弟想いだからねアセムは」
アルレット「どのみち、セレーネだって助け出さなきゃだし、ネオジオン社に行くのは決定か」
俄然盛り上がるガンダム兄弟。そこへ、ずっと黙って聞いていた三日月が口を挟む。
三日月「で、どうやって行くの?」
シン「どうやってって、そりゃあ……」
三日月「ネオジオン社があるのって、確か西区の端っこだよね。そこまで歩いてくの? デビルガンダムの中を?」
ベルリ「ああ……その問題があったか……」
シロー「明日はデビルガンダムの掃討作戦もある。日登町警察署にある本体を叩くためにも、それは避けられない問題だな」
オルガ「なら、俺らが行くぜ。イサリビなら装甲も厚いし、ネオジオン社まで殴り込みをかけてやる」
アルレット「正直それはオススメしないわね。いくら装甲が厚いと言っても、戦艦クラスが空を飛んでちゃいい的になるだけだわ」
スメラギ「私たちのトレミーでトランザムを使っても?」
アルレット「多分たどり着くのは厳しいでしょうね」
ドモン「ならば! バーニングガンダムの超級覇王電影弾で活路を……!」
キラ「出たよドモン兄さんの脳筋発言」
アルレット「いや、いくらアンタでも普通に問題外だから。もっとこう、少数の部隊をピンポイントで送り込む方法があればいいんだけど」
バナージ「それも極力目立たないように、ですか」
マイ「…………」
ヨナ「ずっと黙っているな、マイ」
シロー「ひょっとして、何か手があるのか?」
マイ「ええ。実は一つだけ考えていることがあります。……僕、ちょっと電話してきていいですか」
そう言ってマイは席を立った。
マイ「……もしもし、ワシヤかい? うん、僕だ。……うん、こっちは平気だよ……
そうか、みんな会社に集まっているんだね。それは都合がよかった。……うん、うん、わかってる。
それで、この事態を収拾するためにも、『アレ』を持ってきてくれないか? そう、地下に分解して置いてある『アレ』だよ」
769オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/20(土) 21:18:29.90ID:Qhdm6nuU0
日登町中央区:学校 AM02:00
学校の体育館で、ミネバたち小学生は折り重なるように寝ていた。
今日一日いろいろなことがあったせいか、皆泥のように眠っている。
そんな中、マリーメイアだけが不意に目覚めた。
マリーメイア「う……ん? なんだか外がうるさいな」
「よーし、おまえらドンドン運び込め!」
「20数年ぶりに、小学校にエントリイイィィィィィィ!!」
「貴様ら! いまは夜中だぞ! もう少し静かに作業できんのかウジ虫ども!」
「いや、姉さんの声も相当うるさいから」
不思議に思ったマリーメイアが外をのぞくと、いつの間にか、校庭には巨大な構造物がいくつも運び込まれていた。
アルミリア「ふわああ、どうしたんですのマリーメイア?」
ミネバ「なんだかそとがうるさいな。ん? 校庭になにかあるぞ? たいほう、か?」
マリーメイア「あ、あれは……」
その巨大なシルエットを見て、マリーメイアの脳裏にはいつかのトラウマが思い起こされる……。
日登町:学校の校庭
ヨナ「これか、マイ。おまえがヨーツンヘイムの連中に持ってこさせたのは」
マイ「はい。試作早朝出勤用人間大砲QCX-76A、通称『ヨルムンガンド』です」
ジュドー「ああ、前にトレーズさんから発注されたヤツね」
シロー「あの時は試射で通りがかりのMAは撃墜されるし、砲弾役のトロワは
ミンチになるし、後始末が大変だったぞ……」
ガロード「アレ? でも前見た時よりずいぶん大きくない? コレ」
モニク「前回のタイプはあくまで試作型。これがヨルムンガンドの本来のサイズなのだ」
兄弟の会話へ入ってきたのは、気の強そうな赤毛の女性。
マイの同僚のモニク・キャディラックだ。
マイ「モニクさん。こんな夜中に呼び出してすいません」
モニク「かまわんぞ。私たちも丁度会社で暇を持て余していたからな!」
エルヴィン「そんなこと言って姉さん……ずっとマイさんの無事を心配してたくせに」
モニク「う、うるさい!」
アセム「それで、これが本来のサイズってどういうことなんですか?」
モニク「元々、このヨルムンガンドは人間大砲ではなく、MSを打ち出すカタパルトとして開発していたものだからな」
マイ「まあ、企画当初は普通のプラズマ・ガンだったんだけどね。MSの台頭で方針転換せざるを得なくなったわけさ」
ヨナ「MS用カタパルト……そうか、これで!」
マイ「はい。僕たちのMSを、ネオジオン社と警察署にピンポイントで送り込みます」
770オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/20(土) 21:23:10.89ID:Qhdm6nuU0
ジュドー「うわあ……いかにもマイ兄らしい無茶な作戦だな」
ヘンメ「くくく、開発したはいいが結局決済がおりず、地下で眠ってたコイツが、巡り巡って日登町を救うとはなあ」
マイ「こちらは同僚のアレクサンドロ・ヘンメさん。ヨルムンガンドの発射オペレーションを担当します」
シロー「よろしくお願いします」
ヘンメ「任せな。こんな大仕事、大砲屋冥利につきるってもんだぜ」
そういって髭面の男は豪快に笑った。
『ヨルムンガンド』で打ち上げたMSによる、超高々度からの強襲。
それがシローとマイが立案した、反撃のための作戦だった。
マイ「それで、強襲作戦に参加する人員は決まったんですか? シロー兄さん」
シロー「ああ、それなんだが、まずネオジオン社の方は……」
アセム「そっちは俺が行くよ」
マイ「アセムが?」
アセム「ああ。フル・フロンタルのせいでアルやシュウト、弟たちは散々辛い目に遭ったんだ。一発殴ってやらなきゃ気が済まないよ」
ヨナ「確かにアセムなら腕も立つし、AGE-2は損傷も少ないしな。フロンタル相手でも引けは取らないだろう」
シロー「アセム。最低でも、セレーネ姉さんさえ救出できればそれでいいんだ。くれぐれも無理はするなよ?」
アセム「わかってるつもりだよ、シロー兄さん」
ガロード「なら、俺もアセム兄さんについていくよ」
アセム「いいのか? ガロード」
ガロード「俺もフロンタルのやり方は頭に来てるしね。……それに、向こうにはフロスト兄弟もいるだろうし」
ヨナ「これでネオジオン社は決まりだな。デビルガンダムの方はシローが行くんだろ?」
シロー「ああ、俺と08小隊が担当する。それと、イオがフルアーマーガンダムをもって後から合流してくれるって話だ」
ジュドー「う~ん、でもデビルガンダム相手じゃまだ心もとない感じだね」
デュバル「ならば! 我々が手を貸そう!!」
マイ「デュバルさん!」
モニク「おい貴様ら、なに作業を放り出して……」
カスペン「ヨルムンガンドの組み立て作業は滞りなく進んでいる! 何も問題はない!」
ヨナ「ヒソヒソ(誰だ、この異様にテンションが高い人たちは?)」
ジュドー「ヒソヒソ(あの人らもマイ兄の同僚だよ、一応ね)」
ソンネン「へっへっへ、坊主、ドロップ食うかい?」
ガロード「前々から思ってたけど、それ本当にただの飴なの?」
ホルバイン「こう周りをデビルガンダムに囲まれてちゃあ、オチオチ漁にも行けやしねえ。それじゃ困るのさ」
アッガイタン「モキュ!」
デュバル「日登町を襲った、前代未聞の大事件……。今こそヅダの活躍を見せつけ! ジオニックに一泡吹かせるとき!」
モニク「ええい、貴様はまだそんな私怨で動いて!」
ギャーギャー!!
プルツー「うるさい……」
プル「も~全然眠れないよ~!」
こうして、決戦に向けて日登町の夜は更けていく……
セイ「……本当にいいんだねセカイ」
セカイ「そんなの、とっくに腹は決まってるさ」
セイ「じゃあ行こう! 僕らも、デビルガンダムのところへ!!」
771オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 01:38:15.08ID:tDAqQ86V0
日登町中央区:学校の裏庭 AM03:00
セイ「あ、いたいた委員長!」
チナ「イオリくん……」
セカイ「どうしたんだよユウマ。突然いなくなったって、フミナ先輩が探してたぜ」
ユウマ「セカイ、セイさん……」
セイ「ここはデビルガンダムに近くて危ないよ。僕が作ったドムシェルターに一緒に戻ろう」
チナ「うん……」
しかし、コウサカ姉弟は一向に動こうとしない。
ただ、悲しそうな表情で、遠くで蠢くデビルガンダムヘッドを見つめていた。
チナ「ねえイオリくん。イオリくんは知ってるよね。今、デビルガンダムに乗ってる人が誰なのか」
セイ「え?! え、あ、うん……」
セカイ「え? なに? 三人とも知り合いなのか? なんかおっさんが乗ってたけど」
ユウマ「はあ……セカイ。今、デビルガンダムに乗ってるあのオジサンはな……僕たちの父さんなんだ」
セカイ「へ~親父さんか。そういえば似てるな眼鏡とかって……えええ!??」
突然告げられた事実に、セカイは驚きを隠せない。
セカイ「な、なんで!? なんでおまえの親父さんがデビルガンダムなんかに乗ってるんだよ!?」
ユウマ「そんなのこっちが聞きたいよ!」
セイ「委員長、君たちのお父さんに一体何があったの?」
チナ「昨日はお父さん、
ラジオの収録が終わった後、南区の山に新鮮なデビルガンダムヘッドを取りに行ったんだけど……」
ユウマ「その途中で、目覚めたデビルガンダムに攫われたらしいんだ」
そう言って、ユウマはミリアリアから借りた写真を見せる。
ユウマ「これが、そのとき一緒にいた人が撮った、攫われる瞬間の写真だ」
セカイ「マジかよ……」
セイ「待って! その写真僕にもよく見せて」
チナ「なにかわかったの? イオリくん」
セイ「うん。この端の方に、なにか白いものが見切れてない?」
ユウマ「本当だ……なんでしょう、これは」
セイ「これはプロペラントタンクだよ。大きさと角度からして、多分シナンジュタイプのものだ」
セカイ「シナンジュって……あの全裸野郎の機体か!」
ユウマ「じゃあやっぱり、父さんをさらった仕掛け人は……」
セイ「うん、フル・フロンタルで間違いないと思う」
チナ「ああ、そんな……」
772オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 01:39:00.41ID:tDAqQ86V0
チナはショックのあまり、膝からがっくりと崩れ落ちる。
チナ「どうして? どうしてお父さんが攫われるの? お父さんはMSのパイロットでもなんでもない、ただの料理人なのに……!」
セイ「委員長……」
ユウマ「くそっ! きっと罰があたったんだ。僕たちがやめろっていうのも聞かず、デビルガンダム料理なんて作るから!」
セカイ「やめろよユウマ。親父さんのこと、そんな悪く言うもんじゃねえ」
ユウマ「だけど……!」
重苦しい雰囲気に周囲が包まれる中、
同じように二人を探しに来ていたホシノ・フミナがセカイたちを見つける。
フミナ「あ、こんなところにいた! ユウくん! セカイくん!」
マオ「こんな夜中になにしてたんですか? 逢引きですか?」
ユウマ「フミちゃん……みなさん……」
ギャン子「夜更かしは美容の大敵でしてよ。さっさと戻りましょう」
チナ「でも……」
ラルさん「チナくん、それにユウマくん。君たちの不安な気持ちもわかる。だが、無理して倒れでもしたら、それが一番お父さんを悲しませるのではないかね」
ユウマ「ラル大尉……」
マオ「心配せんでも大丈夫ですよ! あんなデビルガンダムの一体や二体、ベルリはんたちガンダム兄弟がパパッとやっつけてくれますって!」
ミライ「明日、警察とガンダム兄弟がデビルガンダム掃討作戦をやるって私も聞いたわ。だから、安全なところで一緒に応援しましょ、ね?」
チナ「……はい」
フミナ「さあ、ユウくんも」
ユウマ「はい。……すいません迷惑かけて」
ミライ「そんなの全然気にしなくていいから」
セカイ「なあユウマ。それなら気晴らしに……」
セカイが何気なく声をかけようとしたとき、ユウマは小さく呟いた。
ユウマ「くそ……僕がMSのパイロットだったなら、父さんを助けに行けるのに……!」
それは、他の誰も気づかないような小さな独り言だった。
だが、セイとセカイだけは、その言葉を聞いて足を止める。
セイ「…………」
セカイ「…………」
セイ「ねえセカイ。ぼく、今考えてたんだけど。明日のことについて」
セカイ「奇遇っスね。俺もです」
二人は顔を見合わせ、お互いの意思を確認した。
そして一つ頷くと、並んで校庭の方へ向かっていった。
773オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 04:36:27.76ID:tDAqQ86V0
日登町中央区:学校の校庭のテント
AM03:15
学校の校庭では、マイの指示でヨルムンガンドの組み立てが着々と進んでいる。
その近くに張られたテントには、作戦に参加する08小隊のメンバーが集まっていた。
ミケル「はあ……」
エレドア「どうした、ため息ついて」
カレン「ビビってんのさ。ほっときな」
ミケル「なんですかその言い方! 仕方ないでしょ?! あと数時間で、僕らデビルガンダムの中心に行くんですよ!」
サンダース「なんだお前。本当にビビっていたのか」
ミケル「そりゃビビりますよ! 隊長の無茶な作戦は慣れっこですけどね、今回はさすがに無茶が過ぎますよ!」
エレドア「まあ確かにな。さすがの俺も、初めて作戦を聞いた時は驚いたぜ」
サンダース「まさか人間大砲とはなあ……」
ミケル「ですよね!?」
「嫌なら、やめたらいいんじゃないの?」
そこへ、ギョロ目にタンクトップ姿の、不愛想な少年がテントへ入ってくる。
サンダース「君は確か隊長の弟さんの……」
エレドア「覚えてるぜそのタンクトップに愛想のない表情! お前確か、ヒイロ・ユイだよな!?」
三日月「違うけど? 俺は三日月。ヒイロなら昨日自爆してそれっきりだよ」
エレドア「あ、そうだっけ……」
カレン「あんたかい、隊長がいってたもう一人の作戦参加者ってのは」
三日月「うん。シロー兄さんもそうだけど、オルガに言われたからね。昨日半日寝てた分、明日はしっかり働けって」
サンダース「三日月……そうか、彼は昨日シドに捕まっていた……!」
エレドア「なのに目覚めた途端、逆にシドをブッ壊したっていうあのガンダムのパイロットか!」
ミケル「ていうかなんなんだよ、背中のそのコード」
三日月「あ、これ? 邪魔だったらゴメンな。俺、今これでバルバトスと繋がってないと動けないんだ」
三日月の背中に接続された長いコードは、現在テントの外にいるバルバトスまで伸びている。
阿頼耶識システムが外せない現状での苦肉の策だ。
三日月「それで、さっきも言ったけど、嫌ならやめればいいんじゃない? 別に俺は困らないし」
三日月のまっすぐな目で見つめられ、ミケルはうろたえる。
だが一瞬の逡巡の末、彼は覚悟を決めたようにパイプ椅子に座りなおした。
ミケル「言っとくけどね! この小隊の要は実は僕なんだよ! 僕がいなくなったら、みんな困るの! だから! やめませんよ!」
エレドア「お、言うなあこいつめ!」
カレン「ふ……」
そこへ、シローを先頭に、アセムとガロード、それからモニクたちヨーツンヘイムの面々も入ってくる。
シロー「よし、みんな揃っているな。それじゃあ作戦ミーティングを始めるぞ!」
774オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 04:43:44.41ID:tDAqQ86V0
AM 03:50
シロー「……以上が今回の作戦の概要だ。
俺たちは夜明けと共に、ヨルムンガンドでネオジオン社と警察署にそれぞれ向かう。
何か質問はあるか?」
三日月「ないよ。大体わかった」
ミケル「ホントかよ。お前、隊長が話してる間メモも取らずにぼんやりしてただけじゃないか」
三日月「え? メモなんて取らなくても一回聞けばそれで全部わかるでしょ」
エレドア「マジでか」
ガロード「三日月兄の場合、本当にわかってるんだよなあ」
アセム「一応、俺たちは後でもう一回タイムスケジュールを確認しておくか」
カレン「意外だね。ヨーツンヘイムの連中が来るとは聞いてたが、アンタまで参加するとは」
モニク「ふん、私以外にウチの連中をまとめられる人間がいないのでな。面倒だが仕方ない」
ソンネン「へへっ、よく言うぜ。マイのヤツに頼まれて、二つ返事で答えたくせに」
モニク「黙れウジ虫!」
シロー「それじゃあみんな、作戦開始まで、各々機体の整備と補給のチェックを……」
「「ちょっと待ったあああ!!」」
ミーティングが終わりかけたその時だった。
勢いよく、少年が二人、テントに入ってくる。
シロー「お前たちは……セイとセカイか」
アセム「どうしたんだ? こんな夜中に」
セイ「あの、実は……」
セカイ「俺たちも、デビルガンダム掃討作戦に入れてください!」
シロー「なんだって!?」
モニク「おい、どういうことだ」
サンダース「わからん。俺たちも何も聞いてない」
ミケル「ていうかあの二人、ただのガンプラファイターでしょ!? なんでこんなところに……」
そこへ、ヌッ、と強面の男、ヘルベルト・フォン・カスペンが二人の前に立ちはだかる。
カスペン「貴様ら、我々の部隊に入りたいというのだな?」
セイ「は、はい!」
カスペン「歳は!?」
セイ「13です!」
セカイ「14です!」
カスペン「実戦経験は!?」
セカイ「生身での格闘と、あと
ガンプラバトルを少々であります!」
セイ「ぼ、ぼくもガンプラバトルならちょっとは」
カスペン「敵を見たことはあるのか!?」
セイ・セカイ「「ありません!!」」
カスペン「このような子供が入隊希望とは。これは、私の栄光を侮辱するものである!」
775オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 04:47:47.90ID:tDAqQ86V0
カレン「まあ確かに、いくらこの町と言えど、これはちょっとお話にならないね」
モニク「この作戦はガンプラバトルのような遊びじゃないんだ! MSもない子供は帰れ!!」
セカイ「俺たちは遊びに来たんじゃありません! 仲間の親父さんを、助けるために来たんです!」
ホルバイン「仲間の親父……? そうか、今デビルガンダムに乗ってるオッサンは……」
セイ「それに! MSならあります!!」
カスペン「なんだと?」
セイ「出ろおォォォォ!! ガンダアァァァァァァム!!」
セイはテントの外に出ると、ガンダムファイターよろしく空に向かって指を鳴らした。
すると、校庭にあったドム型の遊具が割れ、中からMSが現れる!!
三日月「へえ……」
アセム「あれは……セイのビルドストライクガンダム! しかも実機だって!?」
セイ「こんなこともあろうかと! ネットオークションで買ったストライクを、ビルドストライクに改造してたんです!!」
ガロード「あ、キラ兄に頼まれてオークションに出してたストライク。落札したのセイだったんだ」
アセム「アレ、本物のストライクガンダムの改造機かよ!」
シロー「どうりで最近、ウチの格納庫でストライクガンダムを見ないと思ったわけだ……」
セイ「このビルドストライクがあれば、僕だってデビルガンダムと戦えます! だから……」
カスペン「そっちの赤い髪の小僧はどうだ。貴様もMSを持っているのか?」
セカイ「俺!? 俺はMSは持ってないけど……でも、俺には次元覇王流があります! だから、絶対に足手まといにはなりません!」
モニク「拳法だと? ダメだ、MSで無ければ話にならん!」
セカイ「そんな……」
デュバル「よし、わかった少年。心意気に免じて、君に一機ヅダをやろう。それで私と一緒にゴーストファイターの汚名を……」
ドモン「待ってくれ」
窮地に陥ったカミキ・セカイ。
そこへ突然、ドモン・カッシュが現れる。
シロー「ドモン!」
セカイ「アニキ……どうしてここに?」
ドモン「思いつめた顔で歩くお前の顔が気になってな。悪いが話は全て聞かせてもらった」
驚くセカイをよそに、ドモンはシローに向き直った。
776オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/06/21(日) 04:50:45.13ID:tDAqQ86V0
ドモン「俺からも頼む、シロー兄さん。友の父親を救うため、セカイを作戦に加えてやってくれないか?」
シロー「ドモン、いくらお前の頼みでも、機体をもってない一般人を同行させるわけには」
ドモン「機体ならある」
シロー「え?」
ドモン「俺のバーニングガンダム。あれをセカイに託す」
セカイ「え、ええええ!!?」
シロー「バーニングガンダムか……」
ドモン「あれにはモビルトレースシステムが積んである。たとえMS戦が素人でも、次元覇王流を使えるセカイなら足手まといにはならんはずだ」
セカイ「い、いいの本当に? 俺がバーニングガンダム使っても」
ドモン「なにを言う。元々バーニングガンダムはお前の方が使い慣れているだろう? それに、お前にはELS戦で励ましてもらった恩もあるしな」
セカイ「師匠……!」
そう言ってドモンは世界の肩に優しく手を置いた。
思いがけず差し伸べられた救いの手を前に、セカイは感極まって涙ぐむ。
それでもなお、シローは渋い顔だ。
シロー「しかし……」
カレン「いいんじゃないか、隊長」
サンダース「ただでさえ人手不足なんです。この際、練度には目を瞑りましょう」
エレドア「むしろ、俺としちゃやる気を評価したいね。なんせ救出する対象が、名前も知らねえモブみたいなオッサンじゃあ、どうもテンションが上がんなくてさ」
ミケル「あ……」
モニク「言ってしまったか……」
カレン「アンタ……みんな薄々思ってたけど空気読んで黙ってたことを……」
エレドア「え、あ、ごめんなさい」
カスペン「話は決まったようだな。貴様ら、名前は!」
セイ「イオリ・セイです!」
セカイ「カミキ・セカイです!」
カスペン「よかろう。本日この時より、貴様ら二名を我がカスペン戦闘大隊の一員として迎え入れる!」
セイ・セカイ「「はい! よろしくお願いします!!」」
カスペン「うむ、いい返事だ」
シロー「いや、あの、一応この部隊は08小隊と協力者ってことで、戦闘指揮官は俺なんだけど……誰も聞いてないな」
ガロード「うん、無理だよシロー兄。あっち無駄にキャラが濃すぎるもん」
アセム「よかったな、セイ、セカイ……」
こうして、デビルガンダム掃討作戦にセイとセカイが加わった。
時刻は AM 04:00
作戦が始まる夜明けまで、あと一時間……!
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最終更新:2023年04月12日 10:15