どこか古めかしい、かつては人々が細々と暮らしていたであろう町並が広がっている。
閉鎖される前は車が通り、人々が行き来していたであろう大きな道も今では人っ子一人見当たらない。
否、一人いた。往来のど真ん中でマイペースに現状の不確かさに憂いを抱いている少女が此処に。
少女――ペパロニはうへーと何度目かもわからない溜息をつきながら、ぐったりと地面に座り込んでいた。
見上げた空はいつもと同じく明るく快晴。
朝焼けの青が目に染みて、思わず目を強く擦ってしまった。
目元がじんじんと鈍い感覚を訴えているが、そんなものは無視である。
自分は瑣末なことを気にするような細かい性格ではないし、直に元通りだ。
それにしても、今日は実に露店日和である。
いつものようにアンツィオ名物の鉄板ナポリタンを売るには絶好ともいうべき天気だというのに。
「はぁ、だっる」
別に、殲滅戦とかどうだってよかった。
おまえは何を言っているんだ、と例の顔を晒すぐらいにどうでもよかった。
今も、ただ漠然と、死ぬんだなあって朧げながらに思う程度だ。
話を額縁通りに受け止めると、生き残れるのは三人。
大体、学校の一クラス分が集められたというのに、生き残れるのはたった三人しかいない。
ざっと考えてはみたが、自分、姐さん、カルパッチョだけでもう枠が埋まってしまう。
(ウチらが全員生き残るってんなら、それ以外はぶっ殺さないと駄目とか冗談キツイッスね)
それ以外にもアンツィオの生徒がいたらこの計算はご破算だ、どうしようもない。
そもそもの話、他のメンツは何処にいるんだよって話だ。
渋い表情を浮かべ、ぐでんと横になる。
もうやってられない。まるで某ちょっとヤバゲなぶどうジュースを何本もラッパ飲みした時みたいだ。
(もしかしなくても、他に誰もいないって展開、あるかもしれねーってことも……うーわぁ、だぁるだるッス)
これで、支給された持ち物の中に某ちょっとヤバゲなぶどうジュースでもあったらよかったのに。
こういう自棄飲みをしたい時にないというのは一体全体あの文科省役人はどこまで舐め腐りやがってるのか。
もし、最後まで生き残ったらファッキンファッキンと中指を立てて抗議する所存だ。
もちろん、ペパロニはバカなのでそこに至るまで、まあいっかと忘れてしまうのだが。
「つーか、いい加減出てこいよなー。後ろ、隠れてるつもりだけどバレバレ。
いきなり襲ってこねーってことはノリノリヒャッハーでねーってわかっけどさぁ」
そんな全国お馬鹿選手権でもあったら上位入賞間違いなしのペパロニではあるが、肝心なことは絶対に外さない。
だからこそ、アンツィオの副隊長を任されるし、後輩達にも何だかんだで慕われるのだ。
「来ないってんなら、こっちから行くぜぇ?」
寝転がっていた身体を一気に起こし、その勢いのまま立ち上がる。
スカートの中身が見えるとかお構い無しだ。
ぐるりと振り返りつつ、腰に差したリボルバーを引き抜いて、銃口を気配のする方向へと向ける。
当然、弾丸は装填済だし、トリガーは指にかかっている。
どうだっていいとは言ったが、アンツィオに楯突こうっていうなら話は別だ。
自分達に危害を加える参加者に容赦をするつもりなんてなかったし、もし殺しでもしたら地獄の果てまでも追い詰めてぶっ殺す。
そう考えるぐらいには、彼女はアンツィオへの情がある。
特に、ドゥーチェと慕うアンチョビに傷でも付けてみろ。
ペパロニはその瞬間、狂犬と化し、このリボルバーで敵の風穴を開けるだろう。
「……すいません、ご気分を害されるような真似をして」
数秒間の沈黙が過ぎ、建物の影から現れたのはペパロニからするとまあさして興味が無い人物であった。
一応全くの面識がないという訳ではないが、繋がりで言うとかなり薄い。
そもそも、自分は鉄板ナポリタンを売る以外で、そんなに他校の生徒と交流をたくさん交わしていないので当然とも言える。
「テメー、確か大洗の」
「はい、五十鈴華と申します」
五十鈴華。確か、大洗の主力チームのメンバーだった気がする。
何となく、うっすらとではあるが記憶にある。
あの最初の会場でぶっ殺された女子生徒と同じ学校なのだ、恐慌していきなり襲い掛かってくるかと思っていたが、幾分冷静に振る舞えるようだ。
「まー、いいや。ごちゃごちゃと言うのはダルいッス」
「そう言ってくださるのであれば、幸いです」
何を言おうとも、自分では彼女の内心などわかりっこない。だから、ペパロニは何も言わず、ただ吐いた溜息をちょっと抑えるだけに留めておいた。
とりあえずは出会っていきなり襲われるといった間柄ではないのだ、少し声のトーンを落として一息をつく。
構えたリボルバーも今は大人しく下げておこう。
自分らしからぬ動揺は相手にはまだ悟られていない。
こういうバーリトゥードは舐められたら負けだ、相手と自分のポジショニングを崩してはならない。
「そんで、どういったご用件で? 言っておくけど、テメーんとこの生徒はまだ誰一人として見てないッスよ。
つーか、出会ったの、アンタが初めてだし。ご期待に添えられなくて、残念だったッスね。」
「そうですか。幸先良く出会えるとは思いませんでしたが」
「まー、まぁさ! 生きていたら会えるっしょ!!」
「そうですね。生きていたら、ですが」
それでも、しゅんとうなだれる華を見て、さすがのペパロニもちょっと申し訳なく思ったのか。
明るく声をかけるが、どうやら地雷を踏んでしまったらしい。
こういう空気を読むというのは中々に難しい。
いつもは相方のカルパッチョだったり、アンチョビだったり、色々とフォローをしてくれるが、生憎とこの場にはいない。
自分に降りかかる物事は全部自分一人で解決しなければならないのだ。
それは普段の倍以上、神経を使わなくてはいけないことを意味している。
ああ、めんどくさい。口には出さないが、非常にめんどくさい。
「つーか、アンタさ。これからどうするんスか。仲間を集めて~って感じッスよね?
あの場にはお仲間さんもいたことだし」
「ええ、そのつもりです。一刻も早く、合流して護らなければなりません。
大切で、失いたくない。…………もう、元通りにはならないとわかっていても」
けれど、このままだと空気がまずい。
こんな状況でスカッと爽やかとまではいかないが、必要以上に重苦しくなるのは勘弁願いたい。
加えて、落ち込んだ要因が自分の不用意な発言なのだときたら、ここは挽回するしかあるまい。
めんどくさくても、後々良くなることが回ってくるなら、不要な努力ではないだろう。
「わたくしは…………どうしたらいいのでしょうね」
「ふぇ? 何がッスか? さっき言った通り、仲間と合流するんスよね?」
「ええ。仲間を集めて、それからの話です。
そもそもの話、わたくし達はこの町から抜け出せるのでしょうか。
首輪、脱出――万事が上手く廻った所で、その先が見えない。
どれだけ考え抜いても、幸せな結末が見えないことが、怖くて怖くてたまらないんです」
出された弱音は聡明な華だからこそ、感じる不安。
目先の危難だけではなく、未来の不確かさがあまりにも大きすぎるのだ。
この殲滅戦を切り抜けた後、自分達は元の日常に戻れるのだろうか。
考え無しのペパロニでさえ、その言葉には何も返すことができなかった。
「それに、仲間を護る為に、人を殺してもいいのか。もしも、みほさん達に危害を加える人達がいると仮定して。
わたくしは、許せる自信がないんですよ。大切だからこそ、失いたくないからこそ、過剰に想いを募らせてしまう」
否定など、ますますできない。
華の言葉にはペパロニも同意見なのだ。
もしも、アンツィオの誰かが殺されたと聞いたら、自分は烈火の如く怒り狂うだろう、と。
頭の悪いペパロニでさえこのような認識なのだから、彼女を嗤うなんてできっこない。
「いけませんね、このようでは」
言ってやりたかった。拙い言葉ではあるが、自分の頭で考えて、下した返答を。
「正義とか、悪とか。そういう理屈は考えてもしゃーなしじゃないッスか?」
「――――えっ」
「だって、所詮は理屈じゃないッスか。幾ら考えても答えが出ないものを無理に結論付ける必要なんてねーってな」
だから、彼女の靄を吹き飛ばす一言を、ぶっ放してやった。
「それに、正直言うとッス。アンタの考えは別に否定する要素ないんスよね。
こっちだって、ウチらアンツィオ以外はどうなってもいいし。
ほら、身内が一番大事ってよくあることじゃないッスか」
これはペパロニが心から思う一言であり、嘘偽りは全く無い。
仲間を一番に置いて、何が悪いのだ。
人は無意識に優先順位をつけるものだし、それにケチをつけるのは全く持ってナンセンスだ。
「まー、結果がどうなろうとも、仲間を護るって想いに悪も善もないと思うんスわ。
大事なのは後悔しないこと。悔やんでこうすりゃあよかったーなんて振り返らないこと」
だから、ペパロニは殺し合いでどう動くと聞かれたら、躊躇なくアンツィオの生存が最優先であると豪語するだろう。
深く考えている訳でもなく、ただの直感的判断。
他者から見たら愚者の行動と思われてもおかしくはない感情的行動。
「グチグチと理屈を並べてる余裕があるなら、行動した方がいいってな」
それでも、ペパロニに後悔はなかった。
自分はアンツィオのペパロニだ。
後輩の姉貴分であり、アンチョビの妹分。
そのスタンスは殲滅戦においても絶対に変わらない。
「そう、ですね。ありがとうございます、ペパロニさん」
言うなれば、此処が岐路であったろう。
「――――わたくし、決心がつきました」
瞬間、身体に悪寒が迸った。俗に言う直感というやつだ。
何故だか知らないが、その平坦な口調にどこか違和感を覚える。
少し儚げに浮かべる微笑は、今生の別れを想起させる。
嗚呼、これはヤバい。掛け値なし、一等に危険だ。
拳銃のトリガーを引く余裕なんてなかった。
なにせ、彼女の【腰に下げた異物】は自分の持つリボルバーとは比較にならないシロモノ――短機関銃なのだから。
滑るように、迸るように。ペパロニはその場を横っ飛びで離脱する。
態勢なんて気にしていられるものか、できるだけ遮蔽物のある所まで一直線に。
「っぶねーもん振り回しやがって!」
軽い音と共に、数秒前までペパロニがいた場所を弾丸が穿ち、貫いていく。
間一髪、民家の影に身を滑り込ませて弾丸の雨を躱し切った。
そのまま壁を盾にして、弾丸が届かぬ場所へと避難し、ようやく一息がつけた。
あんなもん身体に受けたらもうパスタを茹でられねえッスとか、どうでもいい思考をつらつらと並べ、ペパロニは冷や汗を垂らす。
幸い、乙女の柔肌には傷一つつかなかったが、一歩間違えていたら今頃あの世行きであっただろう。
この時ばかりは自分の直感に全面感謝だ、これからもどんどん信じていこう。
「後もう一歩で死んでるとこだった!!!!」
「ええ、殺すつもりで向けましたので」
「開き直りとは質が悪い……ハッ、決意固めるの早すぎじゃないッスか?」
「ペパロニさんのおかげです。友と、明日の為に、わたくしは動きます」
「そいつはすごい。ったくもう、余計な一言で背中を押しちまったみたいッスねぇ」
にこりと典雅な微笑を浮かべる華を見て、とんでもない地雷を踏んでしまったことを嫌でも理解した。
彼女の想い、後悔、決意。全部が理解できるだけに、面倒くさい。
最終的な決断を一押したのは自分なのだ、神様に懺悔して時を巻き戻せるならぜひともといった具合である。
「仲間の為に、皆殺し――シンプルでわかりやすいことで。
こっちに火の粉が飛んでこなかったらなおよかったッスけど」
さあ、どうする。
自分の鼓動、自分の血流を意識して、決めろ、と押し上げる。
自分なら、判断よりも速く、直感頼りに引き金を引けるはずだ。
考えるよりも速く撃ち、見るよりも速く予想する。
それができる自負はあるし、だからこそペパロニはアンツィオでも副隊長をやっていらえるのだ。
ほんの短い時間の中に、ものすごくたくさんのものを、戦車乗りは戦場で見て、覚えて、学ぶ。
もっとも、忘れっぽいペパロニが理解していることなんてただ一つだ。
敵はぶっ殺して、仲間を護る。思想的にはペパロニと華はとても、似通っていた。
「短絡的、と罵りますか?」
「まさか。さっきも言ったっしょ。ウチら以外がどうなろうが全く興味ないって。
殺し殺され勝手にやっちまえっていうか、テメーみてーに無差別に殺す以外はほぼ一緒ッスよ?
仲間以外を切り捨てるなんて当然考えてる事だし?」
赤の他人とアンツィオの面々。
天秤にかけ、どちらを取るかなんて決まりきっている。
自分はアンツィオのペパロニだ。
だから、同胞を護る。その為に、過激な行動を取る可能性も否定はできない。
ただ、自分がそうやって敵を作っていくと、アンチョビ達に迷惑がかかるかもしれないのだ。
いつもみたいにアホ面で突撃は今回は封印である。
出来る限り、細心の注意を払って行動をするなんて、初めてだった。
「そうですか。わたくし達、気が合いますのね」
「その物騒なモノがなかったら、ダチになれたかもな」
「ですが」
「けれど、だ」
もっとも、その過程で敵対してくる少女がいたら容赦はしないけれど。
「一番はあんこうチームの皆様ですので」
「一番はアンツィオの奴等だから」
相対する奴は優先順位で言うと、格下だ。
それは華も変わらず、以心伝心言わなくても伝わる事実である。
ペパロニははっと軽く笑って、華もくすりと薄く笑う。
それだけで十分だった。自分達が殺し合う理由なんて、仲間の為というちょっとの言葉で片付けられる。
陳腐で青臭くて、瑞々しい想いだ。
今頃、文科省の役人が手を叩いて見ているのだろう。これこそが殲滅戦の縮図である、と。
「死んでもらいます、ペパロニさん」
「ぶっ殺すぜ、五十鈴華」
思いが強い方が勝つのではなく、実力と運と、ほんの少しの蛮勇。
これは、正義の味方様が誰も彼もを救う王道物語ではない。
お互い、幸福な結末は絶対に訪れないこともわかっている。
殲滅戦なんて惨劇がない世界がもしかしたらあったのかもしれない。
手を取り合って協力するといった可能性は絶対に存在した。
だって、自分達はこんなにも友人のことを想えるのだから。
(って威勢よく啖呵を切ったとはいえ、あんなん相手に真正面からは無理ッスよね)
ぎゅっと、手を握る。死ねない、何が何でも生き残るのだ。
尽きかけた運を無理矢理に引き寄せて、勝ちを拾ってみせる。
物陰からちらりと覗くと、銃口が此方へと即座に向いてくる。
華の指がかけられたトリガーは引かれない。無駄弾は撃たない主義なのだろう、弾切れを狙えないというのは非常に厄介だ。
しかし、戦の始まりにしては、外気は肌寒くて敵わない。
戦車に乗って熱く滾らせるものなんてないのだ、仕方がないのかもしれない。
大音量で咆哮を上げる戦車もおらず、街は静まり返っている。
静かで、寒くて、廃れきった、死街のように。
人通りも温かみもないその光景は自分達のバカ騒ぎを恋しくさせた。
センチメンタルな感情なんて自分とは無縁だったはずなのに、やはりいつもの調子はまだ戻らないみたいだ。
そんな中、朝焼けの光は赤々と降り注ぎ、いつもと変わらずに明るさを見せることにちょっとだけ腹が立った。
全てが麻酔にかかったような世界で、日光の温かみだけが肌にじんわりと伝わって気味が悪い。
(恥ずいッスけど、ここは―――逃げるっきゃない)
逃げる。簡単に言ってみるが、あの短機関銃に背中を向けるなんてそれこそ自殺行為だ。
幾ら自分の足が健脚といえども、放たれた弾丸より速く走るなんて不可能だし、そもそも相手も戦車道をやっている以上、身体能力はそれなりに高いはずである。
(消耗は避けたいんスけどね。ま、どうにかなるか)
もしも、自分の支給品に【有能なブツ】が入ってなければ事態はもっと面倒くさいことになっていだろうし、自分は短機関銃にリボルバー片手に突撃していたかもしれない。
だが、今はそんなことをしなくても逃げれる手筈は既に頭に浮かんでいるし、確実性を求める彼女を撒けるだろう。
やることはゆっくりと距離を縮めてくる華に向けて、【有能なブツ】を放り投げる。
ただ、それだけ。一動作で終わってしまうぐらいに呆気無いものだ。
別に当てなくてもいい。投げ入れたという事実が重要なのだ。
大きく振りかぶって、投擲。それと同時に全力でダッシュ。
投げたブツがどうなったかなんて考える暇なんてない。もたもたしていたら自分にまで被害が被ってしまう。
振り返らずに。揺らがずに。ペパロニは大洗の町を疾走する。
正義でも、悪でもなく。自分の信じるものを護る為だけに。
自分の尊敬する人は全員を救うなんて言うとわかっていても、自分にはそんな高潔さはない。
「やってやるよ、殲滅戦。アンツィオ全員――ッ、生き残ってやる……!」
その過程で手を汚そうが、アンツィオの仲間は自分が護る。
これでいい。こうでなくてはならない。ようやく、自分らしさを取り戻してきた。
獰猛に、自分勝手に。自分はクソッタレな人間なんだ、どうせなら、笑ってぶちのめしていこう。
いかにも俗っぽい笑顔を浮かべて、黎明を乗り越える。
固まった決意を胸に灯し、ペパロニはスタートを切った。
△
敵を逃がしてしまった。
非殺傷の兵器とはいえ、視覚と聴覚にダメージを与えるこの武器を無視する訳にもいかず、追撃をやめ、防御にあたったのは果たして正しかったのだろうか。
まだまだ未熟だ、と華は己を戒め、閉じていた目をゆっくりと開けた。
塞いでいた耳にもダメージはなかった。これで耳と目が使い物にならなくなったら洒落にもならない。
やはり、この先のことを考え、無理に追わず正解だった。
(さてと、どういたしましょうか)
五十鈴華はこの殲滅戦を許容した。誰かを切り捨てて、誰かを護り抜くという決意を固め、武器を人に向けた。
未だ、手は綺麗なれど、心はもうどす黒く汚れている。
仮に生きて帰れたとしても、あのひだまりにも、華道をつづけることもしないだろう。
自分はそれだけのことを今からやろうとしているのだ。
(わたくしの振る舞いはとてもじゃないですが、褒められるものではない。
みほさんも、沙織さんも、優花里さんも、麻子さんも怒るでしょうね。
こんなことをする必要なんてない、って。それでいて、わたくしを今までどおり迎えてくれて……)
そんな、甘くて温かい夢を見た。
未来に夢を見て、過去を懐かしんで。五人でずっといられる世界。
もう何処にもありやしない日常が、華の頭に過る。
世界はいつだって残酷だ。
取り戻せないと確定するや、尚更愛おしいものとして心の臓へと楔を打ち込むのだから。
「それでも、わたくしは決めました」
声に出して、改めて宣言する。
悪鬼羅刹となろうとも、華道の心を忘れようとも。
「生きてさえいてくれたら、いつか必ず――幸せになれるから」
大切な友人には生きていて欲しい。
辛いことも、悲しいことも。いつかは乗り越えられるって願いたい。
「大好きです、大好き、でした」
頬に伝わり落ちる涙を乱暴に拭い、華は少しだけ、嗤った。
今の自分は到底誰かに見せられない顔をしている。
鏡に映った己の姿を見て、真正面から向き合えるかと問われたら、無理だろう。
皆が大好きでいてくれた五十鈴華は、どこにもいないって気づいてしまうから。
彼女達が抱くであろう、反抗の決意に泥を塗ってしまうことを知っているから。
さようなら、と。呂律の回らない口で必死に呟いて。
華は戦うことを肯定した。後戻りなんて、必要ない。
「死なせませんから、絶対に」
彼女達を思い出になんて、させない。
【E-3/一日目・朝】
【五十鈴華@フリー】
[状態]健康
[装備]イングラムM10、予備マガジン×?
[道具]基本支給品一式 不明支給品(ナイフ、その他アイテム)
[思考・状況]
基本行動方針:大洗(特にあんこうチーム)を三人生かす。その過程で他校の生徒を排除していく。
1:友を護る、絶対に。
【ペパロニ@フリー】
[状態]健康
[装備]S&W M36、予備弾
[道具]基本支給品一式、スタングレネード×?、不明支給品(ナイフ、その他アイテム)
[思考・状況]
基本行動方針:巻き込まれたアンツィオの面子を生かす。
1:アンツィオの面子と合流。
2:1の方針を邪魔をしない限りは他校に関しては基本的に干渉しない。もしも、攻撃をしてくるなら容赦はしない。
[装備説明]
バトロワでお馴染みの桐山和雄が使う短機関銃。
小さくて軽いといった要素から女子高生でも安心して使うことができる。
ただし、使用者の五十鈴華のことを考えると別にそんな心配はしなくてもよかった。
女性の護身用としても使われたらしいリボルバー。
小型で女性でも安心して使うことができる。
爆音と閃光で相手を無力化する非致死性兵器。
ペパロニに何個配られたかは後続の書き手に任せます。
登場順
最終更新:2016年09月06日 01:58