あっ、こいつ、育ちが違う人間だ!
初っ端に抱いた印象は、それだった。
確か、名前はお茶の名前……アールグレイ……だかなんとかいったっけか。
確かどっかのお嬢様高校だったはず。セン……なんちゃら高校とかいう、強豪の。
馬鹿な自分とは合わなさそうだ、と偏見でふと思う。
価値観とか、なんかそういうのが。
「どうも」
「……ドーモ」
他人行儀でぶっきらぼうな返しに、
ダージリンは手を口に当ててくすりと笑う。
磯の香りに混じり、美味しそうなハーブ系の匂いがしたから来てみれば、これだ。
まさか本当に悠長に料理をしている生徒が居たとは思わなかった。
あまりの危機感のなさに、流石に片腹大激痛。ある意味誰より大者だ。
不意に、脳裏に過ぎるはクリスティー式、6ポンド砲、猪突猛進。我等が誇りし暴走戦車クルセーダー。
どこかその車長の間抜けなところに似た面影を感じつつ、彼女は果たして大丈夫かしら、とふと思う。
「……アンツィオの副隊長さん、よね? お一人かしら?」
ダージリンが店のドアを開けたまま、建具枠に背を預けて訊す。
ペパロニは訝しげな表情をしたまま、フォークを置くと首を縦に振った。
静かに、机の下に下げた腕を腰に回す。汗ばんだ指が、もしもの為にベルトに挟んでいた包丁のグリップにゆっくりと触れた。
敵……それにしては殺意らしきものを感じないが、なにせこっちは袋の鼠。
状況的に分が悪い、とペパロニは思った。
窮鼠とて、いつも猫を噛めるとは限らないのだ。
「見ての通り、ぼっちメシっスよ」ペパロニがにへらと笑い、応えた。
「そう?」
ダージリンが首を傾げる。
「そっちも一人みてーっスね?」ペパロニが訊して、
「そうね……」僅かに言い淀んだ。
顎に手を当て、視線を上げて暫く考えるように目を泳がせていたが、やがて
ダージリンは数拍置いて口を開く。
「……でも、わからないわよ? 貴女を罠には嵌めようとしているのかも」
口角が上がった口から溢れるその音は、心なしかやや白々しい。
ブジーア(嘘)、とペパロニは胸の中で呟いた。幾ら私が馬鹿でも、それはねーよ常識的に考えて、と。
そもそもこの場合、戦地で料理をしていた側の方が罠を仕掛ける可能性の方が高いのに。
「あのさーあ? 罠に嵌めようとしてる様な人間がそんな事言わないの、流石に自分でも判るっスよ~?」
視線を離さないまま、椅子の位置を手で直す振り。
ナイフを背から太腿の間に素早く挟んだ。
ひやりとした鋼の嫌な温度が、ペパロニの柔らかい部分を伝わって、胸の奥をチクチクと痛めた。
「ふふ、それもそうね」
ダージリンは口を隠しながら笑った。獲物は右にも左にも握られていない。
「殲滅戦には?」
ダージリンが、軽く朝の挨拶でもする様に尋ねる。
ペパロニは少々面を食らうが、成程それは最早真っ先に確認すべき事であるのだ。
「んあ~……なんつーか、説明が難しいんスけど」
ペパロニは腕を組んで眉間に皺を寄せた。
答え方を選ぶような、そんな仕草だった。
「乗ってるといやぁ乗ってるし」編まれたもみあげをくるくると指で弄る。「乗ってねーっちゃあ乗ってねーっス」
その答えは彼女が望むものではなさそうだとペパロニ思っていたが、しかし
ダージリンは喫茶店の扉を閉めながら、
「あら奇遇ね、私もそんなとこよ。
一応は、乗っていないつもりではいるのだけれど」
そう言って少しだけ笑った。
僅かにそれに安心をして、太腿に入った力が僅かに抜ける。包丁の刃は体温を吸い、僅かに暖かい。
ダージリンはゆっくりとペパロニの方へ足を進める。
こつ、こつ、とローファーの踵がリズムよく床を叩いた。
そうして五歩進んで、
「私を殺すんスか?」
靴の音が、止んだ。
いつもより声色が数トーン低いその科白が、
ダージリンが想像していたものよりも遥かに軽い表情で、あまりにも自然に吐かれたからだ。
進んで戦うつもりもないが、殺すというなら仕方がない―――そんな表情だった。
落ち着き払ったその淡白さは、目の前の所謂“ノリと勢いだけはありそうな”彼女から酷く乖離して見えたし、
剰え死を享受しているとすら思えるその言葉が、まさかアンツィオの生徒の口から漏れるとは思わなかった。
怖い。
故に、
ダージリンはらしくもないが素直にそう感じる。
“こわい”恐怖とはまた違った種類の、“わからない”怖さだった。
彼女の琥珀色の目が、真っ直ぐに
ダージリンの双眸を射抜く。
一瞬で光も闇も映さなくなったその瞳は、鋭くも柔らかくもなく、ただただ熱の宿らぬ虚無だった。
「……貴女」
「あん?」
ペパロニが色の失せた相槌を打った。悪態ともとられかねない、品が死んだ相槌だった。
「まるで、息を吸うみたいに言うのね」机を挟んで、
ダージリンはペパロニの前に立つ。「“何か”見たのかしら?」
今度は体が強張るのは、ペパロニの番だった。思わず吐こうとしていた息を飲み込む。
カマをかけたつもりは、一方の
ダージリンにはさほどなかった。
それでもその言葉に対してペパロニが明らかに“違う”雰囲気を醸し出したのは本当で、
ダージリンは成程、と納得せざるを得なかった。
明確な答えが直ぐに来ないのが、即ち答えである。
対するペパロニは口をまごつかせた。
見透かされた事よりも、自分がこうも動揺している事実の方が、遥かに胸に深く刺さっていた。
かさぶたを爪で剥がされる様な、そんな鈍く不快な痛みが芯に走る。
「まぁ、それなり、っスかね」
不規則な呼吸からやっとの事で平静を装い吐き出した言葉は実にありきたりで、思わずペパロニは吹き出してしまいそうだった。
それなりってお前、そりゃねーよ。
口下手な西住ンとこの妹でも、もうちょっと上手く言うぜ、と。
「それに、さぁ。そうするしかねーってのは、馬鹿なりにわかってるつもりっスから」
そんな風に考えながら、ペパロニは続ける。
こっちは、本音だった。
そうするしかない。これは本当にそう思うのだ。
「そう。貴女、意外と冷たいのね」
だから、続くその言葉に少しだけ、きょとんとした。
「“つめたい”?」
ペパロニが間の抜けた顔で鸚鵡返しをすると、
ダージリンは微笑んだ。
凍てついた向日葵の様な笑みだった。
冷たいのはどっちだ、と思う。
「薄情ともいうけれど」
ダージリンは笑みを浮かべたまま続ける。「貴女みたいな人は、義理堅いタイプと偏見があったから」
―――もしかして、貴女、自分の学校の誰かが死んでも、割と平気なのではなくって?
さしもの
ダージリンも、その台詞は喉の奥に飲み込んだ。
空気を読むとかそれ以前に、そんな莫迦みたいな言葉が浮かんでしまう自分が心底厭になった。
けれども、怯えず震えず呑気に料理をする時点で、ある意味既に十二分に狂ってるのだ。
まあ、真っ先に人を殺めてしまった自分が言う科白ではないのだけれど、と
ダージリンは胸の奥で自嘲する。
「あのさぁ~……喧嘩売るっつーなら買うっスけど、飯食ってからにしねぇっスか?」
ペパロニが肩を竦めながら言った。
ぱちり、と
ダージリンは瞬きを、一回。
青い瞳が机の上のパスタへとくるりと動く。トマトとハーブの混ざり合った匂いが鼻腔をくすぐった。
「安心して、貴女と同じ。自分から売るつもりはないの。
ただ売られたものはちゃんと購入した上で、きっちりおかえしするつもりではいるのだけれど、ね」
「さっきのは挑発って取られてもしかたねーと思うんスけど……ま、いっか」
「……」
「……」
無言。
無言が続いた。
出来立ての大量のトマトスープパスタから立ち昇る湯気だけが、暗い部屋の中で騒がしく踊っている。
パスタは大皿に、どう見ても過多な量が盛ってある。
目の前に居る女性の腹に入るとは到底思えない、漫画みたいな量だった。
ダージリンは思案する様に口元に手を当てて、大盛りパスタとペパロニを交互に見る。
ペパロニの手にはいつの間にかくすんだ銀色のフォークが握られていた。
「……待ち人でも、いるのかしら?」
沈黙に音を上げたのは、
ダージリンの方だった。
放っておけば恐らく良い方には行かないであろう彼女の未来が気がかりなのは確かだったが、
状況的に自分は明らかに邪魔者で、居心地は決して良くはない。
「まぁ、そんなとこっス」
質した言葉に数拍置いて、ペパロニは当たり障りのない声色で答える。
僅かに含みのある言葉だった。
邪推すれば幾らでもその含みに対する答えはあったが、しかし考えることはしなかった。
「あら、そう」
ダージリンは故に、安心した様に笑う。「邪魔をしたわね」
「別に」ペパロニは素っ気なく答えて、肩を竦めながら続けた。「多分スけど、此処じゃもう会えそうにもないっスから」
ペパロニは視線を落として、椅子に背を深くもたげると、フォークをくるくると回した。
僅かに店の外から漏れる光を、フォークが鈍く反射して、机を柔らかな白で染める。
ダージリンは溜息を小さく吐いた。油とハーブのフレーバーと“何か”が混ざり合い、奇妙な匂いで店の中は満ちている。
それを長く長く吸うと、ゆっくりと口から吐く。鼓動はいつもより少しだけ早かった。
「もう行くわね」
「久しぶりに人とゆっくり会話した気がしたわ。ありがとう」
少なくとも、それで、終わりのつもりだった。
女の勘、というやつだ。
彼女の浅からぬ事情には、深く入ってはいけない予感がした。
とは言え、一人でも多く救う方針の
ダージリンにとって、彼女が放ってはおけない気配を纏っていたのも事実だった。
しかし、待ち人という言葉が意味する事情とその態度には、不思議と“まだこの人は大丈夫”と思える雰囲気があった。
言うまでもなく、彼女、ペパロニが自分と似ても似つかぬタイプであることには変わりはない。
が、どこか冷めて一歩引いている様に見えるその姿は、何故か自分と少しだけ重なっているように見えてしようがなかった。
自分が喋る後ろで自分が俯瞰している様な、舞台から見下ろす様な―――もしかしたら、彼女にもそんな景色が見えているのかもしれない。
ただ、そんな重なる立ち位置であっても、何か決定的な違いがあるように見えたのだが、
それを考えることは酷く億劫で、何より推論の域を出ない。
故にペパロニから足を背ける。存外、自分は面倒臭がり屋なのだ。
銃撃の音がする。
ドア一枚隔てて、此処は戦場だ。
ダージリンはドアの前に立ち、押し棒を押す。軋む扉が鉛の様に重く思えた。
手に視線を落として、はっとする。指が小さく震えていた。
それを隠す様に、左手を添える。
それはまるで自分の体がこの空気を名残惜しんでいるようで、
ダージリンは口を歪めて自嘲した。
何を今更、下らない。
戦場に出るのが、厭だなんて、そんな。
水族館を出る事が意味する現実を、あの紅茶を飲んだ時から、散々お前は知っていただろうに。
「―――――――――――――待った」
そんな風に思っていたところへ背後から急に声がかかるものだから、少しだけぎょっとして、肩が跳ねた。
「……何か?」
ダージリンは開きかけた扉を閉めると、動揺を隠しながらそう言って振り向く。
ペパロニは怪訝そうに小首を傾げていた。
ダージリンは思わず唇を尖らせる。首を傾げたいのはこっちだ。
「何って、アンタ……食ってかねェんスか?」
「……はい???」
しかも、それがただの食事の誘いだというのだから、本当に笑える。
「私が?」
ダージリンは自分を指差しながら質した。
「私が? って……オイオイ冗談キツイっスねぇ」ペパロニは笑う。「他に誰もいるわけねェじゃないっスかぁ〜」
―――そんなことは言われなくともわかっている。
ダージリンはむっとしてペパロニを見た。
「見たら分かるっしょ? 1人じゃ食い切れねーっスから、コレ。
いつもの癖でさ……たはは、笑っちまうっスよね」
ペパロニは頭を掻きながら笑っていた。
ポモドーリ・セッキの様な嗄れた笑みだった。
「三人分もさ、作っちまうなんて……一人しか居ねーってのに、ホント、バッカみてー……」
ダージリンは腕を組んで、彼女の元に足を蜻蛉返りして、見下ろす。
項を垂れて自嘲するその様に、哀れみの様な感情を覚えた。
「そう……でも、悪いわ。一応私にも支給された食料があることだし」
しかしそれはそれとして、一体どういう風の吹き回しか?
ダージリンは訝しんだ。
“ある意味では乗っている”側の人間がする態度として、彼女のそれは酷く矛盾して見えたのだ。
突き放す用な素振りと、中身の無い笑み。昼行灯の様な態度と、向かうべき方向を失ったような言葉。
全てがちぐはぐで、奇妙だ。
真意が解らない、と思った。
「細けぇ事ぁ気にすんなって。私はただ食っていってくれって言ってるんス」
ペパロニは掌をひらひらと振りながら、ぶっきらぼうに言って、続ける。
「“メシは一人で食うな、食事の席では敵も味方もない。皆と楽しみながら食え”ってね。それが……うちの姐さんの教えっスから」
嗚呼、と
ダージリンは一人ごちる。
成程そういう事。つまるところ、彼女はただ自分よりも、アンツィオのその教えを優先していただけなのだ。
ずっと感じていた違和感や二面性の正体はきっとそこだった。
しかし、それは彼女が終わった試合の続きをするように―――或いは、失いたくない何かに縋っているように、
ダージリンの目に映った。
遵守、同調、尊敬。
きっと、いずれにもそれは当たらず、意味を失くした何かの約束をただただ惰性で履行しているようにさえ感じたのだ。
「……そう? なら頂こうかしら。実を言うと私もお腹はペコペコに減っていたの」
そんな風に考えながら、組んだ腕を解いて、
ダージリンは目の前の椅子の背を引く。
今頃オレンジペコもお腹がペコペコなのかしら、となんとなく思う。
あまりにセンスがないギャグに一番自分が驚いた。サンダースの隊長の方がまだギャグにキレがある。
ペコがペコペコてお前。やかましいわ。
「いただきます」
「どーぞ、おあがりなさいっス………っと、皿とフォークがねーっスね。持って来るっスよ」
台所に一度引っ込むと、ペパロニは深めの皿と銀色に光るフォークとレンゲ、それと水の入ったガラスコップを持って小走りで戻ってくる。
そうして大皿のパスタを取り分け、トッピングを乗せると、それを
ダージリンに差し出した。
「味には自信あるっスよ」
ダージリンはフォークとスプーンを手に、皿を覗き込む。
平打ち麺のトマトスープパスタだ。上にはミンチとオクラが乗っている。
スープパスタ自体はよく見るが、オクラとトマトの組み合わせは初めて見た。
おずおずとフォークで麺を巻き、レンゲに乗せる。その上にミンチと輪切オクラを少し乗せ、口に運んだ。
―――――――――瞬間、真夏の野山に広がる青々しい草叢のような爽やかな風味が口の中に広がる。トマトと白ワインの深みのある酸味だった。
風で、背の揃った新緑がサラサラと揺れる。
規則正しく、鮮やかに。空は雲ひとつない青空。どこまでも、どこまでも。
地平線の向こうまで緑は続いていて、その中心に、白い道が見える。うねりながら伸びて、細く細く消えてゆく。
しかしその印象はすぐに搔き消える。
二口目にはまろやかなチーズの香りと、ピリッと辛い肉味噌と鷹の爪。力強く、暑さが伝わってくるような味だった。
言わば、岩山、である。
太陽がじりじりと照らす、夏の岩山だ。土は赤っぽく、草はほんの少ししか生えていない。
足場は、酷く悪い。岩は大きく、普段人が通らないのだろう、道は無いに等しかった。
白いシャツを着たまま、そこを走ってひたすら登る。足には乳酸が溜まっている。筋肉が震えている。
滝のように汗が吹き出る。拭っても拭っても止まらない、シャツが肌に張り付く、蒸し暑い。
地面を蹴る、蹴る、蹴る。大地は少し湿っている。土の匂いがする。僅かに鉄っぽい。
登りきって、遠く広がる景色を見て息を飲む。雲の下には平原が広がっていた。さっきの野山だった。景色は繋がっていたのだ。
麦わら帽子を取って、深呼吸をする。
風の音がする。僅かしかない草がざわめく音がする。石が転がる音がする。遠く鳥の声がする。
深呼吸、風の噂話、草のざわめき、石のおしゃべり、鳥の歌。
旋律となって、鼓膜を揺らす。自然のリズムと、夏の予感。一心不乱に丘を登ってはまた降りる。
降りる、登る、降りる、登る、降りる―――――――――。
ダージリンは我に帰った。
気付けば、一心不乱に貪るように食べていた。心の底から本当に美味しかったのだ。
決して上品な味ではない。しかし忘れられない何かがその味の奥にあった。
人を虜にする味だった。
「……美味しい」
何気なく言って、目の前を見た。
「あーあ。クチ、つけたっスね?」
するとそう言ってペパロニが嗤うものだから、一瞬にして悪寒が走る。
ダージリンは思わず唇に指を這わせた。
―――毒!?
一抹の不安が脳裏に過ぎり、ひやりと背筋に冷たい汗が這った。
立ち上がろうとして、身体が動かないことに気付く。
存外そういう時は考えが全く回らないもので、毒だとしてもどうにかすればなんとかなる、だなんて思ってしまう自分に胸中で拍手を送った。
「……いやいやいや。本気にしたんスかぁ!?
嫌だなあ〜冗談に決まってンじゃねーっスかぁ〜! 毒なんか入ってねーっス!」
そこまで考えて、腹が立つくらいのお気楽声。
柄にもなく強張った
ダージリンの表情を見て満足したのか、ペパロニが頭の後ろで腕を組みながら笑っていた。
思考が徐々に現実に帰ってゆく。
五秒ほど上の空のままペパロニを見つめて、自分がからかわれたのだと気付くと、人生最大の溜息を吐いた。
「……悪い冗談ね」
呼吸が覚束ないままようやく吐けた言葉は月並みなそれで、まったく戦車道履修者とは戦車がなければこうも弱い人間なのか、と苦笑する。
「なぁんだ。ポーカーフェイスばっかだと思ってたけど、意外と怖がりなんスね」
ペパロニが白い歯を見せてにかりと笑った。
ダージリンはむっとして頬を少し膨らませる。
「女子高生ですもの」
「そんな顔すんなって。わりーわりー!
まあ、もっかいちゃんと食ってみてくんねー? ソレさ」
不服げに目を細めながら、平打ち麺を口に運ぶ。
悔しいけれど、これが本当に美味いのだ。
「癪だけれど、とても良い味ね」
「そうだろそうだろー? ウチらアンツィオが作るものはどんなものでも最ッ高の味なんだぜ。
なんせ心込めてるっスから」
「こころ?」
「そ。料理は"心"っスよ! 手間を惜しまず少しでも美味いものを出す! それが料理人の心ってもんっスから!」
そういうと、ペパロニは胸を前に出して、どんと拳を打ち付ける。
「ふぅん」
ダージリンはそんな彼女を見て微笑む。「いい言葉ね」
「だろー?」
「戦車道も、そうだったらよかったのに」
空気が変わった、と。
ペパロニはそう思った。
夏休みの夕方、ヒグラシの鳴き声のような切なく寂しい音が、その科白には篭っていた。
昔、陸に降りた時、何回か聞いたことがあった声だ。
蝉は自分より五月蝿いから好きじゃないが、ヒグラシの声は少しだけ好きだった。
「貴方にとっての戦車道は、何かしら?」
“どうしたんすか、いきなり”。
そう言おうとしたが、
ダージリンのその言葉に遮られる。
戦車道。
聞き慣れたはずのその単語に、言葉が詰まる。
自分にとって戦車道とは、なんだ。
数年やっておきながら、それはペパロニが初めて向き合う話だった。
それを考えるのは、頭の悪い自分ではなく他の誰かなのだ、と。
きっとそんな思いが何処かの片隅にあったのだ。
「今のこの状況を、あの男は“殲滅戦”と言った」
フォークでスープパスタに乗っているオクラを刺しながら、
ダージリンがぼそりと呟く。
視線は真っ赤などろりとしたスープに落ちている。
「そう、スね」
ペパロニは麺を啜りながら応える。
ダージリンは器用に、くるくるとオクラごと麺をスプーンの上で巻いた。
「そこで頷くのは、違うと思うの」
「違う、っスか?」
「違う、のよ」
スプーンを口に運び、
ダージリンは上品にそれを食べた。
子供の頃に題名も忘れたアニメで見た、どこぞのお姫様のようだ、とペパロニは思った。
パスタを食べる時にスプーンを使うのは日本人だけらしいが、ペパロニはさしてそれを気にしない。
イタリアは好きだが、別に彼女はイタリア信者ではないのだ。
「少なくとも、これを“殲滅戦”と言っている事が、それを認めている人がいるのが。
―――そして油断すると許容してしまいそうになる自分が、私は何より許せない」
「どうしてスか」
「だってこれは殲滅戦でもなんでもない、ただの殺し合いでしょう? 貴女はそう思わない?」
確かに。ペパロニは頷いた。
「逆に言えば、だからこそ私は甘い考えは捨てたいと、そう思って街に歩いて来たの。
だってこれ、戦車道じゃあないんですもの。
私はそう思った。だから、それなりの覚悟と態度をする必要があるって、ね?」
入口の窓から射す光が、急に弱くなる。空は曇っているようだった。
嵐でも来るのかもしれない。ペパロニはそんな風に思いながらパスタを口に運んだ。
そうして津波でも来れば、覚悟も態度も戦車道も関係なく、全部どうでもよくなるのに。
「ごめんなさいね、楽しい食事が不味くなるわよね」
「別にいいっスよ〜」ペパロニは左手をひらひらと翻しながら続けた。「そこまで小難しい事わかんねーし」
「……こんな格言を知ってる? “食べるために生きるな。生きるために食べよ”」
知らない、とペパロニは胸の中で呟く。
彼女は頭が良くないのだ。
「ソクラテスよ。生きるために、貴女は何か考えているかしら?」
「生きるために、スか?」
生きる為に、考えていること。胸の中で反芻して、何もないと気付く。
生きる事は目的ではなく、なんとなくそこにあるものだったのだ。
普段、意識もせず酸素を吸って二酸化炭素を吐くのと同じに、生きる事はペパロニにとって考える事には繋がらなかった。
「生きる意味を持て、ってコトなの。さっきの言葉」
ダージリンは静かにフォークを置いて、ゆっくりと言う。
生きる意味とは、何だろうか。
ペパロニは足りない頭で考えようとして、馬鹿馬鹿しくなって直ぐにやめて麺を啜ってオムレツを食べた。
「貴女、覚悟している割に、少し浮いて見えたから」
「浮いて見える?」
ペパロニは尋ねながら、曇ったグラスに注がれた水を飲む。僅かにカルキ臭い。
「そ。上手く言えないのだけれど。でも少なくとも、そんな目で笑うのはやめたほうがいいわ」
ダージリンがレンゲでスープを掬いながら言う。
「空っぽの笑顔は、怖いだけよ」
少し、ぽかんとする。
空っぽの笑顔。そんな風に笑っているつもりは、ペパロニには毛頭なかったからだ。
「そんな顔、してたっスか」
頭を掻きながら、ペパロニは苦笑する。
ええ、と
ダージリンは相槌を打ちながら笑った。
種類的にそれは愛想笑いだったが、少なくとも空虚とは程遠い笑みのように見えた。
無意識に、唇に指を這わせる。ほんのりと生暖かい。血が通っている。生きているのだ。
決して感情が無くなったわけではない、とペパロニは思った。
料理をする事で、現実の問題を考えないようにしていた節は、確かにあった。
どこか上の空。よく言えば、楽観。
何となく馬鹿げた現実を考えるのが嫌で、だから煙草を吸って煙に巻いたのだ。
扉を閉じて暗がりに篭って、一心不乱に料理をしたのだ。
「らしくないっスかね」
「そうね。何をもって貴女らしいというかは分からないけれど」
「……うーん。私らしいって、なんなんスかねぇ〜」
頭の後ろで腕を組み、ペパロニは椅子の背に体をもたげた。ぎしりと椅子が軋む。
「じゃ、訊くけれど。貴女に足りないものは、なんだと思う?」
少し考えるようなそぶりをして、
ダージリンが温和な声で質す。
あまりに脈絡の無い質問で、ペパロニは目を白黒させた。
「足りないモノぉ?」
「そ。足りないモノ」
ダージリンは微笑むと、頬杖をつきながら繰り返す。
頭の後ろの腕を解き、ううんと唸りながら、ペパロニは腕と足を組んだ。
なかなか無いという意味の唸りではなく、ありすぎて選べないといった類のそれだった。
視線を落として、テーブルの上を見る。向かい側にある皿は綺麗で、自分の皿は酷く食べ方が汚かった。
足りないものは色々とあるが、きっと一番はそういうところだ。
「女子力ぅ……ッスかねぇ……」
ペパロニは小難しそうに小首を傾げながら応える。
ペパロニおねえさんに限らず、アンツィオちほーのフレンズが女子力をつけるのが苦手というのは、皆に言えることではあるのだが。
「そう? なら、それで十分じゃなぁい?」
「へ?」
「……考えるだけ無駄ってことよ」
ダージリンは微笑みながら言うと、コップの水をゆっくりと飲んだ。随分と余裕のある表情だった。
「ふーん? ま、良いや。
あ、そうそう! ところでその料理さあ――――タダとは言ってねぇんスよねえ」
あまりに突然の宣言と、悪巧み顔。こちらが完食するのを待って居たと言わんばかりのそれだった。
何やら不穏な空気を感じてか、コップを置いて
ダージリンが顔を曇らせる。
「……一応、聞くわね。どういうつもりかしら?」
「借りっス」
そうして投げた問いに対して呟かれた言葉は、完全に
ダージリンにとって埒外で、
「は?」
思わず裏返った声で聞き返す。
勿論、聞き間違えでないのはわかっていた。
わかっていたが、解せないのも本当だった。
「だから、借りっス」
「借し、ではなくて?」
「あー、ソレ!」
あっけらかんとそう言い放ちながら笑うペパロニに、
ダージリンは溜息を吐いて肩を竦める。
日本語くらいきちんと言ってほしいものだ。
「ランチを借しって言われたのは初めてだわ」
「じゃあ……取引っス。昼メシの代わりに、一つだけいいスか?」
「なんだか流れが唐突だけれど、どうぞ」
ダージリンが促す。
別に相談を受けるくらい、とは思う。安請合いはしないが、ある程度の事ならばと思った。
ところが、である。
「頼んます、アンチョビ姐さんを、守ってやってください」
卓に手をついて、ペパロニはそう言って頭を下げたのだ。
予想外の願いに、
ダージリンは呆気にとられて閉口する。
言うに事欠いて、守ってくれ、だなんて。
その願いこそ、こんな世界では守れる保証なんて何処にもないのに。
しかもよりにもよって、そんな事頼みそうにもないアンツィオの副隊長が、それを他校の人間に。
「ええと……」さしもの
ダージリンも、柄にもなく言い淀む。「プライドとかないのかしら?」
「自分さあ、馬鹿っスから。だからこうするしか分かんねーんスよ。
だって人間一人の力じゃあ、もうどうにも……どうしようもねェんじゃねーかって。
あー、ほら私ってさぁ、頭も悪けりゃ、記憶力もからきしなんスよ。しかもどだい女で、力も知れてるんス。
それにウチらは……悔しいスけど、弱小高校のアンツィオだ。そればっかりはどうしようもねー。
オツムは足りない。金もない。統率力もイマイチないし、忍耐は弱い。すぐに喧嘩する奴らばっか。
まぁ知っての通りそんなどうしようもねえ学校でさ、ウチって。
こんな馬鹿げた殺し合いで頼りになる奴なんて、せいぜいカルパッチョのヤローくらいしかいねェんスよね。
だからもし、ウチの姐さんを見つけたら守ってあげてほしいんス」
ペパロニは両手の指先同士をくっつけて動かしながら、続けた。
視線は動く指先に落ちている。
いやに饒舌だ。
ダージリンはそう思った。
まるで、こちらに口を挟まれたくないかのような。
「姐さん、人見知りっスから。
簡単に騙されたりするだろうし、誰かが死んだら悲しむし。
それに自分で行動しちゃうし、後先考えないトコ、たまーにあったりするし。
誰にでも優しすぎるからなぁ、あの人は。うん、そーゆーとこあるわー」
そこが良いところなんだけど、と付け加えて、ペパロニは口を真一文に閉じた。
悪態とは相反して彼女は嬉しそうに、本当に心の底から嬉しそうに自校の隊長を語っていた。
ダージリンは少しだけそれを羨ましく思う。
慕われている事を見て嫉妬だなんて、と胸中で苦笑。
「……貴女の口からそんな言葉が出るとは、夢にも思っていなかったわ」
言うべき言葉は、何からにしよう。
散々迷った挙句、
ダージリンが最初に選んだ科白は、ありきたりなそれだった。
「そうスか?」
ペパロニはテーブルの下に手を下ろすと、太腿に挟んでいた包丁をテーブルに置き、顔を上げる。
“色”の違う視線が、交差した。
「自分でも正直、どうかしてると思ってるっス。
でも考えて考えて、どーしよーもなく考えまくって。
んで、私が料理でもしたら匂いにつられて姐さん達が来るんじゃないかなぁ~、なぁんて……はは、馬ッ鹿みてー。
それで三人前も作っちまうんだから、たまんねーっスよね、マジで」
情けない自嘲が、ペパロニの半開きの口から溢れる。
大皿には、パスタがまだ余っていた。二人では到底食べきれない量だった。
「でもそんな馬鹿なこと思いついて、実際やっちゃうくらいには参ってるんスよ」
ペパロニは頭を掻きながら、続ける。
P40の砲身の様に真っ直ぐで、真摯な声色だった。
「それを受け入れてくれるなら、私はアンタら……セン……センチ……? ……グロ……グロテ…スク……? の仲間になってやるっス。
そっちの生徒にゃ手は出さねーっスよ。あっちが手を出してきても見逃してやるっス。
まあ、アンツィオ以外とはチームは組まないっスけどね」
そういう取引ね、と
ダージリンは納得する。
色々言いたいことはあるけれど、と顎に手を当てるが、何より先ずは、
「聖グロリアーナ」
「へ?」
そう。何より先ずは、この失礼なおバカに正しい校名を認識させるところからだ。
なんだ、センチグロテスクて。どんなカテゴリだそれ。TSUTAYAの万年準新作コーナーのB級アメリカ映画かよ。
「学校の名前! 交渉するならそれくらい間違えないで頂戴」
「あー、聖ゲロバナナ?」
「グロリアーナ!」
「アロエリーナ」
「グロリアーナ!!!」
「はいはい、ぐろりあぁな、ね」
分かっているんだか分かっていないんだか。
正しい音をペパロニが発したところで、
ダージリンは荒い息を整えるように一旦咳払いをして、口を開いた。
「こほん。……貴女の意見はわかったわ。でも」
そう、でも、なのだ。
ダージリンは表情筋の裏側で笑った。
アンツィオの隊長がお人好しの甘い人間だというのは、解る。
ペパロニが嘘をついていないであろう事も、勘だが、解る。
しかしながら取引とは、立場が対等ではない。
提案する側は縋りたいからこそ提案するのであって、言われた側にこそイニシアチブはあるのだ。
なればこそ、その戯言をすんなり受け入れられるほど、
ダージリンは人が好くはなかった。
ましてやこの場所この状況だと、尚更だ。
「私が―――――――――――――――――“嫌だ”と言ったら?」
故に
ダージリンは、フォークを手に取って、そう問いながら目前に向ける。
ぎらりと光る四本の針先が、ひゅん、と風を切ってペパロニの鼻先に届いた。
「……へ? あー、やだ、っスか……えっと、それは……」
あからさまに狼狽するペパロニに、思わず
ダージリンは目を丸くした。
何故そこまで慌てるのか、と考えて直ぐに、はっとする。
成程、目前の副隊長は断られるなど最初から微塵も思っていなかったのだ。
真摯過ぎる素直さ、或いは、ただの阿呆か。
何れにせよそんな馬鹿げた交渉があるか、と思い、思わずフォークを落としそうになる。
どうしてやるのが正解か、と腹の底から黒いものが滲み出すが、視線を落とせばトマトソースに汚れた空の取り皿。
これを借りと呼ぶにはあんまりではあるけれど、確かに、ある意味彼女は素直で真っ直ぐな人間だった事は証明された。
隠していたであろう獲物をわざわざ見える位置に置いたのも、彼女なりの礼儀だろう。
それに応えるのもまた、淑女の努めではある。
さて、ならば。
「こんな格言を知ってる? “空腹では、隣人は愛せない“」
ダージリンはフォークを下ろし、静かに言った。ペパロニは小首を傾げる。
紙ナプキンを手に取り丁寧に口を拭くと、
ダージリンは肩を竦めて小さく笑った。
「ウッドロウ=ウィルソンよ」
「はあ」
「逆を言えば、満腹なら、隣人を愛せる。
……ランチ、御馳走様。美味しかったわ。だから協力も辞さない。
これは本当にそう思ってるの。受けるのは吝かではないとも――――――――ただし」
人差し指を、立てる。
ペパロニが眉間に皺を訝しげに寄せた。
「さすがにアフターティーとウェルシュケーキ抜きのランチだけでは釣り合わないから、条件があるわ。
誰も彼も、無償の愛を万人に与えられるほど、聖人君子ではなくてよ」
じょうけん、とペパロニが繰り返す。
ダージリンは頷いた。
「―――――――――貴女の武器と食料と情報、スマホも含めて全て渡しなさい」
ホント、意地が悪いわよね、と。
自分でも思って、胸の内側で深い溜息。
■
入り口の扉の小窓から、日の光がテーブル上の空の皿を柔らかに照らしている。
街は静かだ。銃声も一旦止んでいた。
束の間の静寂は、まるで世界が時を止め凍て付いたかのようだった。
「は?」
ペパロニは横暴な条件に困惑した。
武器、食料、情報。その全てを手放す事の詰み具合を判らない程、彼女も馬鹿ではない。
それが意味するのは、事実上の死。
目の前の人間は、つまるところ“隊長の為にお前は野垂れ死ね”と、そう言っているのだ。
「そうすれば考えてあげてもいいわ。貴女のとこの隊長を先ず探して、見つけ次第保護してあげる」
ダージリンはテーブルに肘を置き、手を組んで口元を隠す。顔には深い影が落ちていた。
髪の隙間から、深い青色の瞳が覗く。獣のような眼光に、思わずペパロニはぞっとした。
風の噂で、怒らせれば一番怖いのはあのイギリスかぶれの学校だ―――なんて、アンツィオの不良からは聞いてはいたけれど。
だけどそんな条件、飲めるわけがない。
ペパロニは思わず立ち上がった。グラスが揺れて、水が溢れる。
ダージリンはピクリとも動かない。
脚と手を組み、黙ってペパロニを真っ直ぐに見据えている。まるで品定めをする様に。
「だからって、そりゃ……!」
「飲めないとは言わせないわ」
ペパロニの荒ぶる声に、間髪入れず
ダージリンはぴしゃりと吐き捨てるように言う。
遠く、町から銃声が轟いた。命を奪う音だった。
ペパロニはぎりりと奥歯を軋ませる。
その銃口が、殺意が、自分の敬愛する隊長に向いているかもしれないと思っただけで気が狂いそうだった。
「人の命を助ける約束よ?」
ダージリンは嗤う。思わずぞっとする残酷な笑みだった。
「重いも軽いもない、“命”なの。解る?」
朝の市場で魚を値踏みするような視線に、ペパロニは固唾を飲んだ。喉がごくりと音を上げる。
「なら、そのくらい妥当ではなくて? それとも、その覚悟すらなくそんな頼みを?
だとすれば―――」
―――随分と、甘い考えをお持ちで。
そう続いた胸を抉るような言葉に、ペパロニは黙って俯くしかなかった。
唇を噛み震える拳をぐっと握るが、返す言葉は見つからない。悔しさがじわじわと込み上げてくる。
……そうだ。自分は見ず知らずの命を助けろと他校の隊長に恥を承知で頼んでいる。
それはきっと、彼女のような人間からすればとんでもなく失礼な事で、あり得ない事なのだろう。
だからこそ、今、覚悟と対価を問われている。
誰かに命を救う事を頼むという、本当の意味を。
「言っておくけど、私、こう見えて優しくないのよ。妥協するつもりはないから。
さて……どうするの?」
コチ、コチ、コチ。
沈黙と暗がりに満ちた部屋の中、蜘蛛の巣のかかった壁掛け時計の秒針の刻むリズムが、ペパロニの鼓動と重なる。
それは動揺した彼女のそれよりも僅かに早く、選択を急かされているようで、無性に息が詰まった。
断る事は隊長への裏切りに近いもののように思えた。
しかし受け入れる事は、自分の命をドブに捨てるのと同じだ。
少なくとも、ペパロニはそんな下らない事で死にたくはなかった。
死ぬ事への覚悟は出来たつもりだったが、無様に死ぬ事を善しとしたわけではないのだ。
切り込み隊長である自分が戦わずして死ぬ事は納得いかなかったし、何よりもアンツィオへの裏切りに思えた。
考えろ、とペパロニは爪を噛みながら席に座る。
コチ、コチ、コチ。
嗚呼、時計の音が、煩い。
■
三分。
沈黙が続いた時間だ。
悪趣味な質問だったとは、さしもの
ダージリンも思っている。
しかしそれでも、これだけは聞いておきたかったのだ。
“考えない彼女の考え”を、言語として知っておきたかった。
「――――――――――――嫌っス」
そうして漸く捻り出された第一声は、実にあっけらかんとした表情から零れ落ちた。
ダージリンは一瞬意外そうな顔をしたが、すぐにポーカーフェイスに戻る。
「……ふぅん。どうして?」
「よく考えたら考えるまでもなかったっス。
だって、武器を渡したら、私が姐さんを守れねー。
空腹になっても、姐さんのとこまで歩けねー。
スマホなくしたら、姐さんと連絡が取れねー。
それは嫌っス」
単純な話っスよ、とペパロニは白い歯をにかりと見せる。
「副隊長の私が守れなくて、一体誰が姐さんを守るんスか?」
瞬きを、一回。
ダージリンはペパロニの目を見る。真っ直ぐで芯のある光が灯っていた。
彼女のことを少し勘違いしていたのかもしれない。
「そう」
ややあって、肩の力を抜いて少しだけ微笑み、続ける。
「安心したわ。そこでのこのこ武器を差し出す愚者なら、私、貴女を軽蔑していてよ」
正直なところ、
ダージリンはペパロニが素直に武器を渡してくるのではと思っていた。
そんな自分の至らなさを僅かに叱る様に、
ダージリンは顎を擦る。
「いいわ。その提案、受け入れてあげる」
「マジっスかぁ!?」
「マジっスよ」
「ありがとな〜ダジ様〜!」
ころころと変わるその表情に、妙に安心感を覚えた。
やはり、どこか彼女は落ち着きのないあの子に似ている。
それは聖グロリアーナの生徒にはないもので少し羨ましくもあったが、
しかしそれが必ずしも善であるかと問われれば、そういう話でもないのだ。
特にこういった催しの中では、それはある意味で弱さでもある。
素直さは、時に愚直だ。故に
ダージリンは、彼女へ心を許さない。
「でも、別に助けられることが決まったわけじゃないのよ」
冷たい水を道に撒くように、言い放つ。
それは厳しい響きをしていたが、
ダージリンなりの優しさでもあった。
「悪いけど、もう死んでるかもしれないし、ゲームに乗っている側なら“対処”する必要もあるわ。
……そんな顔はやめなさいな、仮定の話よ。
約束はできないけど、約束はするから。だから安心して」
その言葉へ訝しげに首を傾げるペパロニに、善処するということよ、と
ダージリンは言葉を付け足した。
「よっし。そんじゃ決まりっスね」
「休戦協定ね」
「ブロア条約っスね!」
「……そうね」
当時のナポリがどういう状況だったか知っているのかしら、と
ダージリンは思いながら手を合わせる。
「ごちそうさまでした」
腹八分目。この島でこんな上等な食事にありつけるとは思っていなかった。
深く息を吐いて、少しだけ、迷う。
先程まで戦っていた相手が誰であったのかを言うべきか言わないべきか。
それもあったが、彼女をどうしたいのかと言う一点が特に強く胸の奥に引っ掛かっていた。
「……来る?」
僅かに迷って、切り出す。
後悔したつもりはなかったが、言ってしまった、と自分で思った。
「へ?」
思った通りの間の抜けた返事が、部屋の中に沁みていった。想定の外の提案だったのだろう。
「一緒に来る気はありますか、と聞いているのよ。
勘違いしないでね? 別にチームとかそういうのじゃなくて……とは言えチームは組むのだけれど、体裁上のものよ」
「ていさいじょう」ペパロニは意味もなく繰り返す。「どういう意味スか?」
「一人より二人の方が生存率は上がるし、お互いのチームメイトの信頼が得やすいと思わない?
敵は少ないに越した事はないでしょう?」
ダージリンが頬杖をつきながら言った。
ペパロニは頷く。確かにその話には一理あった。
「まぁ……そうっスねぇ……」
しかしペパロニは渋い顔で呟く。
正直なところ、その提案にはあまり乗り気ではなかったのだ。
他の学園艦の人間に協力する気が更々無かった事もあったが、それにより自分の行動が制限される事も嫌だった。
ただ、やはり
ダージリンの言う通り、敵は少ない方が良い。
勿論敵が出来れば戦う事への覚悟はあったが、戦っただけ傷を負う可能性も上がり、即ち死ぬ確率も上がる。
それを考えれば、素直に提案を呑んで一時的にでも組んだ方が良いとも言えた。
なにせ自分は生身の人間。間違っても戦車ではない。
弾丸から身を守る特殊カーボンなんて、この島には存在しないのだ。被弾すれば到底白旗では済まない。
履帯が剥がれても直せる戦車とは、わけが違うのだから。
「それに」
思案に耽るペパロニを急かすように、
ダージリンが続けた。
ペパロニは机に落としていた視線を上げる。
「放送―――
ルールは呼んだかしら? ……その顔は読んでないわね……。
ルールの放送内容はこうあるわ。
“禁止エリアの指定”“死亡者の読み上げ”“残存チーム”“チームに入っていない人物の名前”“気紛れ雑談”」
「ぁ」
「そ。気付いた? “チームを組まなければ、私達は名前を呼ばれてしまう”のよ」
「あ、あ〜……ん? えーと、で?」
「……。人を殺すような人間が、チームを組むと思う?」
ダージリンが人差し指をくるくると回しながら言った。
ペパロニは口を半開きにしたまま首を振る。
「えーと、多分組まないスね」
「つまり、呼ばれた人間は殺人鬼だと思われる可能性が高い。人の心理に付け込んだふざけた
ルールよね」
「おー!
ダージリンセンパイ頭良いっスね〜!」
「どうも……」
思わず、なるほどと拳を掌に叩く。
それもそうだ、とペパロニはスマートフォンの
ルール画面を初めて開きながら思った。
殺人鬼だと思われるのは構わないが、恐らく自分はそれなりに他校に顔が割れている。
そうなると些か動き辛いものがあった。
「まぁ、だからこそ放送の時だけでもチームを組んだ方が得策なの。
そして何より、残存チームの読み上げ。これがポイントね」
「ふんふむ」
「チェス盤をひっくり返しましょう」
ぱちんと指を鳴らすと、
ダージリンは人差し指を顔の前にすっと立てる。
綺麗な指先だ、とペパロニは思った。
「これを逆手に取るならば、私達はあのいけ好かない役人に“チーム名を読み上げさせ、全員に伝えさせることができる”。
つまり“チーム名を暗号にすれば、私達は知り合いにだけ通じるメッセージを送ることができる”の。
こちらがどんな状況でも定時にそれが自動配信される意味は大きいわ」
ダージリンの唇が僅かに弧を描く。
ルールを逆手に取ったその作戦は、彼女なりの細やかな反骨心だった。
脱出の為の小さな可能性に過ぎないが、それがこの箱庭の中で今できる精一杯の足掻きだ。
「ちなみにこの会話、盗聴されてるかもしれないから、暗号を使うには注意がいるかもね」
「はぇ!? 盗聴っスか!?」
ペパロニは身を乗り出して目玉を剥く。
どうしてと思ったが、なるほど自分がこれを主催する立場なら、安全圏から参加者を違反がないように観察するのは自然だ。
しかしそれにしても、である。
「でも、ならなんでわざわざ声に出して……」
ペパロニは顎に手を当てて首をひねる。
もしそうだとするならば、先程の話も今の盗聴のことも、あえて声に出す理由はなんなのか。
闇雲に口に出す事は、役人に自分達のカードを見せびらかす事に等しい愚行なのではないか―――そう思って顔を上げた瞬間、息を飲んだ。
「……ああ、それはね――――――――――――――――――」
戦慄が、ペパロニの全身を襲う。
ぞわりと悪寒が脳天から爪先まで掛け抜けて、文字通り身の毛がよだった。
目の前にあったのは背筋が凍りつくような、そんな表情。
それは、声も上げない小さな微笑みだった。
天使のようにさえ見えたその笑みだったが、しかしよく見れば濡れた獣の皮のような、生物的な滑りがある質感をしていた。
されど、その表情はほんの半秒でいつもの当たり障りのない微笑みに戻る。
“誰だ?”
ペパロニは固唾を飲みながら思った。
“今、目の前に居るのは、一体どこのどいつだ?”
「――――――――――――――――――その方が、戦線布告になる<面白い>でしょう?」
ダージリンはにこやかに微笑みながら言った。
世界の全てを敵に回したような、そんな底知れない深淵を臭わせたのは本当に一瞬。
瞬きをすればいつも通りのすまし顔で―――だからこそ、ペパロニは恐怖した。
きっと彼女は怒っているのだ。
この状況に、この現実に、あの役人に、無力な自分に。
「貴女はそう思わない? こそこそ手を回して自分は高みの見物をしている政府の犬に対して。
それにどうせこれがバレても、彼等はきっと何もしないわ。
だって私達みたいな女子高生が吠えたところで、
役人さんは“自分の思い通りにいかないから女子高生を殺し合わせるくらいには”オトナなんですもの。
安い挑発に乗って自分が設定した
ルールを覆して首輪を爆破させるほど子供のはずがないわ。
ねえ?? お役人さん???」
白銀に光る首輪を指でとんとんと叩きながら、くすくすと
ダージリンは笑う。
相当キレてるなこりゃ。ペパロニは苦笑しながらそう思った。
「こえーっスね、アンタ……」
「そうかしら?
それで、どうするの? 組む? 組まない?」
ダージリンがグラスの水を飲みながら言う。
ペパロニは眉間を揉みながら少し悩んで、
「……いいっスよ。組んでも。
こまけぇことはどうでもいいんスけど、弾除けにもなりますし」
組む事を選択した。
隊長へ会える可能性が少しでも上がるのであれば、やはりそちらを取るべきだと思ったからだ。
「あら、どっちが弾除けかしらね?
何はともあれ、決まりね。賢明な判断だと思うわ。
それとまずはチーム名だけど……何が良いかしら?
隊長さんにメッセージとかあるんでしょう? 決めていいわよ」
「マジスか?
じゃあ……“姐さん! ペパロニっス! 15時にA5っス!”チームとかどうスか?」
「貴女馬鹿? そんなの乗ってる側の人間からすれば良い餌じゃない。
蜂の巣にされて、待ち合わせ相手が貴女の隊長じゃなくて閻魔大王になるのがオチよ。
……まぁ、逆にあからさま過ぎて罠にも見えるけれど」
肩を竦めてかぶりを振ると、溜息混じりに
ダージリンが言う。
「アンツィオの生徒だけに伝わる暗号とかはないの?」
……暗号。
ペパロニは腕を組み、むう、と唸った。
アンツィオで隠語といえば作戦名の類だが、いかんせんペパロニがアホなので作戦内容を殆ど覚えていないのだ。
マカロニ作戦―――あー……なんかハリボテ作るやつだよなぁ?
分度器作戦―――んー、知らん!
コンパス作戦―――聞いたことあるけど、ウチにそんな作戦あったっけ?
貧乏ゆすりをしながら暫く考え、あっ、と声が漏れる。
頭の上に電球マーク。oh! LED!
「T型定規作戦……!」
そうだそれがあった、と指をぱちんと鳴らす。
それは最後のあの試合で初めて成功した作戦だった。
直後に島田車に撃たれ戦闘不能になったことも含めて流石に印象は浅くなく、故にペパロニは思い出す。
思い付いたら即実行、ペパロニは直ぐに
マップを起動し、テーブルの上にスマホを置く。
「“15時にDでT型定規”」
数拍置いて、ペパロニがぼそりと呟く。
「意味は?」
ダージリンが訊した。
ペパロニは机上のスマホを手に取ると、画面を翻して見せる。
ダージリンはそれを覗き込んだ。
「T型定規作戦ってのは、簡単に言えばタンケッテで湖を水切りして渡る作戦っス。つまり……」
「“15時にDのT型定規”……15時にD3の湖、ってこと?
マップでDの付くエリアで、その作戦ができるのはD3だけ……良いんじゃないかしら?
ああ、あとそれに便乗したいから、最後にイギリスの事にも触れておいて貰えると嬉しいわ。
私もオレンジペコ達とは合流しておきたいから」
「そうと決まりゃ、とっとと行くっスよ!」
スマホをポケットに入れると、ペパロニは欠伸をしながら立ち上がる。
しかし
ダージリンは、そんなペパロニを尻目に、
「待って頂戴」
「んあ?」
ぴしゃりと言い放った。
ツンとした表情で、こほん、と咳払いを一つ。
「……紅茶」
そうしてゆっくりと呟かれた言の葉に、ペパロニは溜息を吐いて頭を掻く。
案の定と言うか、まあ、せやろなって感じだ。
「食後には紅茶を淹れる。それが聖グロリアーナの決まりなの。食事のお礼も兼ねて用意するわ」
心底楽しそうに
ダージリンは言う。
その表情を見て、ペパロニは肩を竦めて諦めるしかなかった。
やれやれこれだから紅茶信者は、と。
■
茶葉の匂いが、鼻腔をくすぐっていた。
欠伸をしつつ、ペパロニは生気の無い店内でスマートフォンを弄る。
チーム名を入れて、自分の指紋を認証した。これで晴れてチームを組んだと言うわけだ。
やれやれとペパロニは自分の肩を揉んだ。まだ昼だというのに、全身にはどっと疲労感が押し寄せていた。
「お待たせしました」
ほどなくして、
ダージリンがキッチンから顔を出す。手には淹れたばかりの紅茶のカップとソーサー。
かちゃかちゃと二つのカップとソーサーが唄う様に声を上げている。
白い湯気を上げるそれをテーブルに置くと、
ダージリンは椅子に腰を下ろした。
そうして、自分のカップの縁周りに指を這わせながら、告げる。
「貴女の学校の生徒さんに会ったわ」
空白。
のちに、動揺。
金の縁取りがされた白いティーカップの中で、琥珀色に澄んだ紅茶が波紋を立てる。
あまりにも唐突だった。
ペパロニは呆気にとられたが、直ぐに開いた口を塞ぎ、かぶりを振って我に帰る。
「誰に」
「カルパッチョさん、だったかしら? 貴女のところのもう一人の副隊長」
「……どうだったっスか」
「乗っていたわ」
あまりにも淡々と、アンツィオの生徒が台所で玉ねぎでも剥くように、
ダージリンはそう告げた。
その発言はペパロニにとって少なくとも軽々しく流せる様なものではなく、思わず腰の銃、ブリスカヴィカを抜く。
抜いてから、何をしているのかとペパロニは半ば呆れながら思った。
馬鹿げているが、まったくの無意識だった。別に抜くつもりなどなかったのだ。
殺意もないし、それで
ダージリンを脅迫しようだなんて気も更々なく、ただただ動揺しての行動だった。
「安心なさい。殺さなかったわよ。その物騒なものは仕舞って頂戴」
ダージリンは眉一つ動かずに言って、目を閉じて上品に紅茶を飲む。
その悠長さ加減が余計にペパロニを苛立たせた。
「でも、もう彼女は戻ってこれないと思うわ。残念だけれど」
カップを唇から離すと、
ダージリンは紅茶の味の感想を言うかの様に続ける。
ブルーハワイ色をした真っ直ぐな視線が、心拍数の上がった胸を射抜いた。
感情の見えないその色が、“戻ってこれない”という悪気のない言葉が、ペパロニの神経を逆撫でる。
「……ウチの副隊長を侮辱するんスか」
端的に言って、棘のある言い方だった。
侮辱だなんてそんなつもりが
ダージリンにない事は、他でもないペパロニが一番分かっていたが、
あまりにも普段と変わらぬその冷静さが、酷く鼻についたのだ。
お前の仲間はなるべくしてそうなって、私は別に驚きすらしなかったのだと。暗にそう言われている気がした。
「そうじゃないわよ。でも、だってそうでしょう? 貴女も“見た”から、そこまで肝が座っているんでしょう?」
「……」
「その沈黙、肯定と取るわね。
でも残念だけれど、今カルパッチョさんがどうしているかは知らないの。
私、負けたのよ。彼女に」
ダージリンは肩を竦めて言うと、紅茶を静かに含んだ。
ペパロニはそれを黙って見ている。どちらかといえば睨みつけていると言いたくなるような、おっかない面だった。
「誰も彼も、戦車を降りたらただの人ね。
間抜けに気絶させられて、起きたら辺りはもぬけの殻だったわ」
ダージリンはソーサーの上にカップを置き、左手を目の前に手招きするように翻すと、
「貴女もどうぞ」
そう言って微笑んだ。
手が白くなるほど強く銃を持ったまま硬直していたペパロニが、その声にはっとして銃を下ろす。
銃を握りっぱなしだったことすら今気付くのだから、本当にどうしようもない。
恥ずかしくなって、思わず視線を落とした。
湯気を上げながら琥珀色に輝く紅茶の表面に、自分の顔が写り込んでいた。
腐りかけのパンのように、ひどく肌の色は悪く見えた。
「……毒とか」
「入ってるかもね?」
ペパロニがぼそりと呟くと、間髪入れず
ダージリンが冗談めいた口調で言う。さっきの仕返しのつもりなのだろう。
ペパロニはティーカップをすっかり汗ばんでしまった手で持つと、一気に紅茶を飲み干した。
無論、紅茶は一気にいくものではない。
そんな事はいくらペパロニでも知っていたが、それでもそうしたかったのだ。
味は正直、分からなかった。
辛うじて分かる事といえば、種類がアールグレイである事くらいだった。
ペパロニは紅茶に詳しいわけではなかったし、そこまで繊細な味覚もしていないのだ。
だからだろうか、舌の上で碌に転がさずに飲んだ紅茶は、ただの焦げた茶葉色の苦いお湯のように思えた。
不味い時の煙草と一緒だ、とペパロニはなんとなく思う。
「多分コレうめーんだろうけど、今は味なんて全然わかんねースね。気の利いた感想は言えないっスよ」
「そうでしょうね。
……ホントに似てるわね、そのわんこそばみたいに平らげるところも」
誰に? ペパロニは思ったが、質す事はしなかった。気力と余裕が残っていなかった。
「……ひとつ」
ややあって、
ダージリンがぽつりと零す。喧嘩した友人に謝るように、何かに渋った声色をしていた。
ひとつ? とペパロニは繰り返すように訊く。
ダージリンはペパロニを真っ直ぐ見ている。
「ひとつ謝ることがあるとすれば、さっきの話。
結果的に私が負けた挙句気絶して、そして奇跡的に生きていたのだけれど。
でももしかしたら、私は彼女を殺していたかもしれないの。
きっと救世主気取りで、驕っていたところもあったのかもしれないわ」
ペパロニは空のカップを口に運んで最後の一雫をぐいと口に入れると、勢い良くカップをソーサーに置く。
そうしてへの字に曲げた口のまま腕を組むと、何かに納得した様に頷いた。
「アイツ、生きてんスよね?」
「え? ええ、そうね。きっと」
「だったらそれでいいや。
その事にぐちぐち言うつもりもねーし、関係ない私に謝られても正直なんかムカつくだけっス。
それになんだ。多分スけど、謝るならアイツに謝るのがスジっしょ。
……ま、今のアイツもそんなん望んでねーだろうけどさ。
自分がやりたいコト選んだんスから、今更っスよね。アイツはやりたいことやってるだけっスよ。
だから戻ってこれないとかじゃなくて……なんつーかさ、うん。
きっと、戻るつもりがないんスよ」
そう言うと、ペパロニは小さく笑ってみせる。
それが空元気である事も、きっと本当の気持ちがきっと別のところにある事も、
ダージリンは分かっていた。
分かっていたから、
ダージリンはただ一言、そう、と呟く。
「―――――――――――――――――――――私ね、もう、汚れているの」
ダージリンは右手をさすりながら、続けて呟いた。千切れてしまいそうなくらいに細く繊細な声だった。
吐露と言うには独りよがりで、懺悔と言うにははっきりと迷いも悔いもなさそうな声色だった。
その言葉の意味を、突然ではあったがペパロニは直ぐに察した。
だから、黙って耳を傾ける。目の前の得体のしれない淑女の感情が、始めて見える気がしたから。
「つまり、実のところ私も一緒。
自己弁護の趣味はないから深く語るつもりも許しを乞うつもりもないし、その事に後悔はしていないわ。
むしろしてはいけないとも、思っているし。
だから貴女の言う通り、確かに戻れないんじゃなくて、戻るつもりはないのよね。
……だから、ごめんなさい。さっきの言葉は軽率だったわね。謝るわ。
そういう意味では侮辱にも聞こえる失礼な発言だったわよね」
ダージリンは笑った。
眉が下がった力の無い笑みは、言葉とは裏腹に何かを謝るようにも見えたし、何かを諦めてしまったようにも見えた。
ペパロニはここで思い出す。
そうだ、目の前の少女は遠い世界に住む特別な貴族でもなんでもない。
自分と一歳かそこらしか変わらぬ、ただの少女なのだ、と。
「“羅針盤は手の中にではなく、目の中に持つことが必要だ。何故なら、手が実行し、目が判断するからだ”」
そんな風に考えていると、不意に思い出した様に
ダージリンが言った。
多分何かの引用なのだろうとペパロニは思ったが、いかんせん分からなかった。ペパロニは歴史が苦手なのだ。
「すみませんっス、馬鹿だからわかんねースわ」
ウチらは今を生きてる。だったらとっくにくたばった人間の名前やらやった事やらなんかに用はねぇよな。
それがペパロニの自論だった。
「ミケランジェロよ。
……貴女は確かに馬鹿かもかしれないけど……白痴ではないと思うの」
「かぁ〜っ、参ったなあ。まーた喧嘩売られたっスわ〜〜」
「ごめんなさいね。でも貴女を見ていると、たまには馬鹿なフリもやめてみたらと思うわ」
馬鹿なフリ、という単語に思わず苦笑する。
そんな風に見えていたのか、と。
「放送まであと十五分。
戦車を降りた時点で、役割はもう意味をなさない事態になりつつある。
役者もそろそろ脚本を捨ててアドリブで動かないと。
嫌でも皆、この舞台では主役女優になるんだから」
そう言って涼しい顔で微笑む
ダージリンを、心底ペパロニは自分とは合わないと思った。
ペパロニはロマンチストでもなければ、頭も良くないし、口も良くない。
これでもかというくらいに真逆な性格で、けれども不思議と彼女の事は嫌いにはなれなかった。
きっと彼女はああ見えて意外に自分に正直な人間で、けれどもムカつくぐらいたまにしか隙を見せない。
誰にでも親切に接している様な顔して、そういう奴なのだ。
そういうところが堪らなく嫌いで、本当に癪で。
―――ああ、きっとそれは自分にもそういうところがあると、理解していたからだろう。
■
食事のティータイムを終えて暫くして、何をするでもなくペパロニは席を立った。
じっとしている事は出来なかった。
気持ちの整理をつけるために、何かをしていたかったのだ。
何やらメモを走らせている
ダージリンを置いて台所へ出向き、水道水をコップも使わず直接口をつけて飲む。
支給された水はすっかりぬるくなってしまっていて、飲む気にすらならなかった。
袖で濡れた口元を拭うと、ふと卓の上の灰皿が目に入った。
すぐ側に、さっき吸った煙草の箱が置いてある。
思う事はあったし、未成年の知り合いは隣の部屋に居た。駄目なことだというのは解っている。
だが次の瞬間には、もう体が勝手に動いてガスレンジで煙草へ火をつけ、換気扇の下で床に座り、背中を丸めて吸っていた。
ところが料理をする前にはあんなにも美味かったはずの煙草が驚くほど不味くて、思わず噎せてしかめっ面を浮かべる。
頭の中には、暗く重い煙が満ちていた。
ダージリンの言葉は、どうやらペパロニが自分で想定していたよりも心をぐちゃぐちゃに掻き混ぜていたようだった。
胸の中は様々な感情で悶々としていた。
きっと一種のパニック状態のようになっていたのだ。
煮詰め過ぎたデミグラスソースの様な思考の中、ペパロニは長く肩を並べ共に戦ってきた少女の事を思い出す。
彼女は自分に比べてとても聡明で優しく、他人が思うよりも遥かに強い人間だった。
ところがペパロニは彼女の事を碌すっぽ知らない。
親友と呼べるような立派な間柄ではなかった。
それでも、彼女の事はきっとアンツィオの誰よりもずっと近くで見てきた。
その自信があった。
次の隊長はアイツが継ぐべきだ。
ペパロニはそう思っていたし、彼女は殺し合いをある意味認めた自分ほど馬鹿ではないとも思っていた。
だから彼女がこのゲームに乗ったのは、きっと何か理不尽な理由があったからなのだろう。
もしかしたら、アンツィオの生徒が襲われているところを見た、とか。
……。……それこそ、姐さんに……何か、あった、とか……、……、……。
かぶりを振って、煙草を口に運んだ。
焦げた薬包の味がして、咳き込む。
足音がした。もしかしなくとも
ダージリンだ。
嗚呼、と思う。今は、駄目だ。来ないでくれ。頼むから、来るな。来ないでくれ。
「昼。本当はさ、見るのが辛かったんスよ、三人分の食事」
こんな情けない表情、誰にも見られたくはないのに。
何も喋りたくない。これ以上、何も知られたくない。何も、何も、何も。
「だから、姐さんのことダシにして、辛い景色を消して貰った。勝手なわがままで」
うわごとの様に、ぼそりと呟く。何を言っているんだ、と目を見開く。
言いたくない事をボソボソと、一体どこのどいつだ。
「……なあ。アイツ、何か言ってたっスか」
ダージリンが二人分の汚れた食器を持って、暖簾の向こう側から現れた。
上がる白い煙を見て、僅かに眉間に皺を寄せて何か言いたげにこちらを見ている。
ペパロニはそれを敢えて無視して天井を見上げた。
油で固まった埃が、白煙の向こう側に見えている。
「知ったところで、どうにもならないと思うのだけれど」
ダージリンが淡々と答えた。煙草については触れられすらしなかった。
「はっ。確かにもうどうにもなんねーか」
ペパロニは肩を竦めると、煙草を咥えてくつくつと苦笑した。
「……アイツ、さ。私なんかよりよっぽど頭が良くて優しい奴なんスよ」
ペパロニは煙を吐きながら、寂しそうにぽつりと言う。
遺言のようだ、と
ダージリンは思った。
「でもあんまりウチらって、二人でいる事はなかったんスけど。
ホラ、知ってるっスよね?
アンツィオはいっつも姐さんがいて、姐さんで回ってるみたいなとこあるっスから。
普段つるんでるツレも違ぇし趣味も違ぇっスから、休日遊ぶこともそんなないし。
それにさ、二人きりでいそこらに居てもあんま話す事ねぇんスよ。同じ副隊長だってのに。
でも、不思議と嫌いとかじゃあねーんだよなアイツの事はさ。
……ああそうそう! ちょっと聞いて下さいっスよ〜。
この前なんかさ、姐さんと三人でメシ……なんかセンコーがうまいパスタがあるっつーんでね?
んでわざわざ休日に陸に食いに行って、で、途中に姐さんが戦車道ニュースの記者から電話があって。
あー、これはP40の修理費カンパ口座をネットに出すって話があってっスねぇ、まぁそれは置いといて。
んーと、どこまで話したっけ? あ、ちょっと今喉まで出かかって……あー、あーー! 思い出したっス!
んでさぁ、長電話だったから二人残されたんスけど、見事に話す話題がねーの!
アイツなんか、たかちゃんからラインがきた〜とかなんとか言って一人でスマホ触り出すし。
なんだぁオメーオタクかあ? って言ったら、何て言ったと思うっスか?
アイツ、違いますぅ〜とか画面見たままほっぺ膨らませて言ってやがんの。
マジウケるっスよねぇ〜!
まぁなんつーかそんなでもさ、アイツ本当にもう出来過ぎじゃねーかっつーくらい人間出来ててさぁ!
やる時はやるし、責任感強いし、賢いし、女子力高いし、お菓子とか作るのうまいし、スタイルいいし。
美人だし、なんかいい匂いするし、冷静だし、戦車に乗るとほんと強いし。
ちょーっとアンツィオノリは控えめっスけど、あとはびっくりするくらいにもー完璧。
マジノに勝ったのも実際アイツのおかげみたいなとこあるんスよ。
ウチらが豆戦車で掻き乱して、アイツが横からどーん! って! そりゃあもう、豪快に!
いや、姐さんの作戦もマジですげぇんスけどね? マジノだけに! ガハハ!
しっかしアレはびびったなー。
マジノ戦車に無線が無いとは言え、まさかウチらも勝てるだなんて全然思ってなくてさ!
勝てる勝てるって言ってた姐さんが一番驚いてたっけ〜。
お、おい!? 夢じゃないよなペパロニィ!? ってさ!
相当ビクってて、マント脱いだり着たり繰り返してんの! たはは。姐さんそりゃねえよって!
で、その後はもうみんなでパーティだよな。当然アンツィオ秘伝のブドウジュースも交えてさあ。
なにせウチみたいな弱小校が一回戦突破っスよ!?
オイオイオメーさては夢だなって感じでさ。
もう金星に貢献したカルパッチョ様々で、その日の夜は夜通しハジけたなぁ。
次の日は当然全員遅刻! いやあ、ブドウジュースが効いたね! あっ勿論ノンアルっスよ〜? へへ。
でもさ。アイツ、みんなから散々褒められても割と涼しそうな顔してたんだ。
もっと喜べって私らで背中バンバン叩いてやったら、顔トマトみたいに赤くして、みんなのおかげですから、だって!!
かぁーっ! 真面目ちゃんかよ! もーテメー馬鹿じゃねーのっつー話!
……まぁ、さぁ。ホントにさ……そんくらい良い奴なんだ。
良い奴なんだよ」
早口で捲し立てたその言葉には、けれども形容できない感情が詰まっていて、
ダージリンはそれ以上彼女の事を何も告げる事が出来なかった。
それきり、何かを考える様に虚空に漂う煙を見つめたまま、ペパロニは口を噤んだ。
ダージリンも黙ったまま、暫く食器を洗い続けた。窓の外の景色は曇っている。
カチャカチャと器達が囀る声だけを聞きながら、二人は台所での時間を過ごした。
「煙草はやめた方がいいと思うわ」
五分ほどして、ふと思い出した様に
ダージリンが呟いた。
ペパロニは紫煙を吐きながら顔を上げる。
「貴女のところの隊長も、きっとそう言うと思うの」
ダージリンは炊事場で、一心不乱に皿を洗い続けている。視線はこちらに向いていない。
「貴女はそう思わない?」
使い古されあまり綺麗ではないスポンジが、泡と一緒に皿を撫でていた。
皿には名前も知らない青い花模様が金色の意匠と一緒に焼き付いている。
「思う」
ペパロニは床に置いた灰皿に灰を落としながら、短く答えて
ダージリンを見上げた。
病的に白く細い彼女の両手は、トマトソースの色に染まった泡に埋もれてしまっている。
「どうして」
ダージリンが蛇口をひねりながら言った。水がじゃあと流れる。
彼女の視線は相変わらずペパロニへ向かない。
「何がスか?」
ペパロニが訊く。煙が狼煙のように上がって、窓へ吸い込まれてゆく。
「なら、どうして吸うのってこと」
ダージリンは、皿一枚ごとをスポンジで撫でたあと、水で流していた。
自分なら全部をスポンジで拭いてから一気に水で流す、とペパロニは思った。
ダージリンの横顔を見る。三ツ星シェフが作ったメレンゲの様にきめが細かい肌をしていた。
「どうしてスかね。自分でもわかんねーっスわ。
別にさ、めっちゃ美味い時ってかなり稀で、殆ど割とそこまでかぁ? って感じなんスよね。
ただふとした時にさ、あの日姐さんに誘われて戦車道を始めた時、夕暮れの校舎裏で吸った味とか。
あと、それを姐さんに見つかってこっぴどく怒られた時の気持ちとか、そういうの思い出すんスよ。
まあ吸ったところで、あの日と同じ景色も見えなきゃ気持ちにもなれねェしさ。
そもそもあん時に親のタスポかっぱらって買った銘柄なんて覚えてないのにさー。
馬鹿みたいっスよね、ホント」
ペパロニはぶっきらぼうに答えて、床に視線を落とした。
長年張り替えていないであろうチョコレート色のウッドフローリングは、焦げたように黒く汚れている。
「叱ってくれる人がいなくなっても、貴女は吸うの?」
ダージリンが独り言のように言った。
ペパロニのタバコを挟む指が小さく跳ねる。深く刺さる言葉だった。
「吸うね、多分スけど」
ダージリンの横顔を一瞥すると、ペパロニは答える。「吸う理由が変わるだけじゃないスか?」
「なるほど」
ダージリンが呟いて、タオルで手を拭きながらペパロニを見た。洗い物が終わったのだ。
「……ねえ、知ってるかしら?」
「何をスか?」
ペパロニは間抜けな顔で煙をくゆらせる。
「煙草、一本吸うとだいたい五分くらい寿命が縮まるそうよ」
「へぇ」
ペパロニは興味がなさそうに言った。散々誰かから言われ聞き飽きた文句だった。
「貴女、緩やかな自殺をしているのよ」
“緩やかな自殺”。それは初めて聞いた。
ペパロニは煙草を咥えたまま、その科白を頭の中で何度か呪文を唱える様に繰り返した。
なるほど、そういう考え方もあるのか。
「一瞬で命が奪われる町でそんなことをするのは、ひどく滑稽だと思わない?」
ダージリンが言う。
ペパロニは肩を揺らしながら表情だけで笑うと、咥え煙草を灰皿に乱暴に押し付けた。
吸える部分はまだ随分と残っていた。
「馬鹿言えって。生き残って、それから死ぬんスよ」
ペパロニは乾いた表情で嗤うと、静かに立ち上がった。
鉛玉一発で命を落とす世界で十数年単位の自殺は確かに馬鹿げていて。
しかし逆を言えばそれはきっと――――――生き残って寿命を全うするという意思表示にも、似ていた。
「吸ってみるスか?」
「嫌よ」
「だろーな」
彼女達は残された時間を生きる。生きる。生きてゆく。
飛ぶ榴弾のように愚直で、砲撃の中進む戦車のようにまっすぐに。
何かに迷い、何かに嘆き、何かに泣いて、時に醜く見窄らしく。
そうしてとことん、滑稽に。
【一日目・昼 C-5/喫茶ブロンズ】
【☆ペパロニ@姐さん!ペパロニっスよ!15時にDのT型定規作戦っス!って言えって一緒にいるイギリスの偉い人が言ってましたよ!】
[状態]健康
[装備]S&W M36、予備弾
[道具]基本支給品一式、スタングレネード×3、メッツァルーナ、ブリスカヴィカ(残弾32) 、包丁数本
乾燥パスタ三人分、トマト缶、粉チーズ、煙草(残り3本)、フライパン、フォーク三人分、スプーン三人分、マッチ
[思考・状況]
基本行動方針:巻き込まれたアンツィオの面子を生かす。
1:アンツィオの面子と合流。積極的な殺しはしないつもり。
2:1の方針を邪魔をしない限りは他校に関しては基本的に干渉しない。もしも、攻撃をしてくるなら容赦はしない
3:
ダージリンと暫く行動するが、弾除けみたいなつもりでいく。仲間になったつもりもないので不利益があれば同行を終える。
4:カルパッチョが気がかり。
5:集合時間に遅刻だけはしないようにがんばる。
【
ダージリン@姐さん!ペパロニっスよ!15時にDのT型定規作戦っス!って言えって一緒にいるイギリスの偉い人が言ってましたよ!】
[状態]背面に打撲(応急処置済)
[装備]聖グロリアーナ女学院の制服、ワルサーPPK(4/6 予備弾倉【6発】)
[道具]基本支給品、M3戦闘ナイフ、生命権、後藤モヨ子の支給品、水族館の制服 水族館で調達したいくつかの物資
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1:まずは昼の放送を慎重に聞く。
2:
河嶋桃と
島田愛里寿を助けるために、町を探索する。
3:できるだけ多くの参加者を救う(約束もあるので、ややアンチョビが優先)。戦って死ぬのは怖いが、仲間に死なれるよりはマシなはず。
4:ペパロニに同行。彼女の安全を確保しつつも、彼女の立場を最大限使い生存率を上げる。
5:何故まほの存在を幻視したのか? 彼女の安否が気がかり。
6:猪突猛進であろうペパロニもいるし、家を出る前に一度方針を決めたい。
[備考]
後藤モヨ子の支給品の内、昭五式水筒、信号灯、スマートフォン、不明支給品(銃器)を獲得しています。
[装備説明]
生命を不法に奪われない権利。
この殲滅戦においては、名刺サイズの紙に記されたQRコードを読み込むことで、『生命権アプリ』をスマートフォンに入れることが可能。
生命権アプリを使用することで、7時間だけ『指紋認証した人物の生死』を偽ることが可能になる。指紋認証する相手の生死は問わない。
簡単に言えば、擬似的に『死亡状態』か『生存状態』を作り出すアプリである。
擬似死亡状態であれば生存していても放送時に死亡者として読み上げられるし、擬似生存状態であれば死亡していても生存者として放送される。
ただ偽っていることは主催側にはわかるようになっているので、あくまで騙せるのは他参加者のみである。
擬似死亡状態の場合、チームは組めるし、解除されない。但し本人が死亡した場合、擬似生存状態でもチームは解除される。
一度インストールしてしまうと、記されたURLは無効となる。
名刺サイズの紙の表はQRコードだが、裏面は上記のようなアプリの簡単な説明が書かれている。
730mm・3.22kg・9×19mmパラベラム弾・シンプル・ブローバック方式・装填数32・
有効射程約200M
『イナズマ』の異名を持つ銃。ステン式機関銃ベースのポーランド製短機関銃。ショルダーストックが折りたたみ式なのが特徴だろう。
命中精度は悪く品質は粗悪、動作不良も多々あるが、反面コンパクトで軽量、組み立ても簡単で隠しやすい。
ドイツに反抗するためのレジスタンス銃だが、MP38/MP40の弾倉を流用しているため、ドイツから弾丸を闇購入して出来るという皮肉が効いた銃。
「よお。オメーの国の弾丸で殺される気分はどうだ?」的なあれが出来るぞ。
名前とその無骨さ、そしてレジスタンスしか使わなかったという謎さがかっこいいロマンあふれる銃。
半円型の刃を持つイタリアの包丁。
日本では馴染みがないが、イタリアはこれでバジルを刻んだりニンニクをみじん切りしたりする。
ペパロニに支給されたのは、持ち手がひとつだけのクレセントアクス形状のタイプのもの。
でもこれ見た目がどう見ても拷問器具の類なんだよなあ。
使い方は実に適当。半円型の刃をグリグリ食材へ押し付けるだけ。そんなんでいいのかイタリア。
というかそんなんでも十分切れてしまうし、思ってるより早く簡単にみじん切りできてしまう。
雑に見えてもこれ、実はすごい。
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最終更新:2018年08月02日 02:17