少女偽装曲~事実から目を逸らして~ ◆5ddd1Yaifw
延々と続く灰色のアスファルトが目の前には広がっている。
「っ……ぁ……」
時たま足がもつれそうになるが、そんなのに気を取られるほど今のあたしには余裕がない。
必死に、必死に陽の光に照らされた街中を走る。疲れたら少し立ち止まって。そして調子が戻ったらまた走る。
そのルーチンワークを延々と繰り返しているだけ。
「はぁ……ぉ……」
この世界は何かがおかしい。今までの“日常”と百八十度違う。
日常が日常でない恐怖が此処にある。
「どうして生き返らないんだよ……!」
さっきあたしが
釘バットでどついた猪名川。頭から脳髄をまき散らして無様に死んだ。
周りには脳みそが飛び散り、どさりと体は崩れ落ちた。
だけど死は一時的。少ししたら復活する。そして平然と笑って何するんじゃーワレー! とか軽口言ってさ。
それがあたしの“日常”なんだ。
疑う余地などない、そのはずだった。
「おかしいじゃんか!」
だって、だって!
「此処は死後の世界でこの殺し合いもいつものミッションの延長線みたいなものだろ!? 蘇るはずなんだ、死んでも、死んでも、死んでも! なのに何で蘇らない!」
もう何もかもわからない。どうすればいい? いつもみたいにギターを弾けばいいのか?
馬鹿、今のあたしの手にあるのはギターじゃなくて釘バット、猪名川の頭を潰した凶器。
はは、“日常”を演じることすらできない。
「きっと蘇るって誰か言ってくれよぉ……」
あの血濡れの公園にいた時のことをあたしはふと思い出す。
いくら時間が経っても動かない猪名川の身体。血がべっとりとついたあたしの靴。その場に充満する鉄臭い匂い。
駄目だった。耐えられなかった、公園でずっと座っているのに。待っても待っても蘇らない猪名川の身体を見ているのに。
そしてあたしは自分のと猪名川の荷物を持って逃げ出した。
「何が正しいんだ、この世界では」
投げ出したかったんだ、全てを。目を閉じたらいつものあの“日常”が待っている。
あたしはそう信じたかった。だけど実際は違う。いくら苦しんでも、悩んでもこの地獄は続く。
「会いたい……」
今、ガルデモのみんな、いつも一緒に麻雀をやってる戦線メンバーの奴等――藤巻、TK、松下五段に無性に会いたい。
ユイ、関根、入江ならこんなの悪い夢だとかひさ子さん何寝ぼけてるんですかーとか言ってあたしの悩みを吹き飛ばしてくれるはずだ。
藤巻はばっかじゃねえのとかあたしをからかうようなこと言うけど何だかんだで慰めてくれて、TKは意味不明な言葉をしゃべりながら踊って、松下五段は豪快に笑い飛ばしてくれて。
「助けてよ――」
結局の所、あたしはただ。
「いつものあの場所に帰りたいよ……」
それだけを願うんだ。
【時間:1日目16時ごろ】
【場所:G-4】
ひさ子
【持ち物:血塗れの釘バット、
スリテンユシリ(解毒薬)、水・食料二日分】
【状況:健康?】
最終更新:2011年09月06日 18:09