インモラリスト ◆auiI.USnCE
――――わたしは、きみが、すき
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは一体何なのだろう?
私は夢をみていたのに。
泡沫の夢を。
私が望んだ夢を。
楽しい、楽しい、私が作った夢を。
私は、私の理想の姿を借りて、
好きなように、楽しんだ。
幻想を歌い、幻想の中で精一杯楽しんで。
その中で、大好きな人にも出逢えた。出逢えたんだよ。
たった一度きりの、最初で最初の私の恋。
初恋が最後の恋になるんだろうけど。
それでも、私は思いっきり楽しんだ。
私が謳った幻想と夢という舞台の中で。
其処で出逢った幻想ではないたった一人の大好きな人と生きていた。
その時間がとても、楽しかった。
楽しかったはずなのに。
けれども、楽しい夢は、私にとってのイレギュラー、世界にとっての創造主にとって破壊された。
それは、私にとって敗北だったのかもしれない。
いや、所詮借り物の世界で、手のひらの上で踊っていただけなのかもしれない。
でも、私はそれでよかった。
大好きな人の為に、大好きな人との願いを叶えられるなら。
例え、彼が私の想いを忘れていたとしても。
繰り返される世界で、何度も何度も死んだとしても私はそれでいい。
だから、私は立ち向かった。
願った、私の思いが届けって。
そして、そんな中。
私はこの島に呼ばれたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は草壁優季を連れて南下していた。
とりあえず市街へ。
それに彼女も乗ってくれて、私達は黙って進み続けている。
何か、話してもいいのだけれども、正直混乱していた。
(どういう事……?)
正直、訳が解らない。
私はもう終わっていたはず。
泡沫の夢を見ていただけなのに。
そして、最後の願いの為に抗い続けていたはず。
なのに、この殺し合いというのは、余りに唐突すぎる。
今、一緒に居る彼女だってそうだ。
彼女は普通で、今までの世界に出てくるようなキャラでもない。
生身の人間が私の目の前に居た。
驚いた、ビックリするくらい。
そして、思いっきり自爆した。
…………ああ、そうよ!
自爆したのよっ!……うぅ。
それも、この訳解らない世界のせいだ。
この世界の創造主も、私がいた夢と別物みたいだ。
もしかして、これは本当に現実の世界なのかな?
私は事故に巻き込まれなくて……なんて。
そんな幻想を抱いて、してしまう。
……でも、それは幻想。
所詮夢。
けれど、もし、この世界が夢なんかではなく。
ただの殺し合いの舞台で。
本当に、一人しか生きれないというなら。
その確証が取れたのなら。
取れたなら。
私は、君を生かす為に、闘いたいよ。理樹君。
だって、私は所詮もう終わった命。
そして、私は理樹君が好き。
理樹君にずっとずっと生きて欲しい。
私が終わった分まで、ずっと楽しんで欲しい。
出逢ってくれてありがとう。
君が居たから、楽しかったし強くなれた。
だから、私はきみのため、戦いたい。
例え人を殺す事が不道徳な事でも、構わない。
神の手に踊らされていても、それでも。
私は理樹君の為に戦って、生きて欲しい。
それが、君と出逢って導き出した答え。
止まるつもりなんて無い。
それが、私が「朱鷺戸沙耶」として、理樹君に好かれた人間として。
「あや」という人生を半端に楽しまなかった少女じゃない。
理樹君に愛された少女として。
精一杯、戦う。
何れ消える宿命でも、私は止める理由にはならない。
ねえ、理樹君。
私は君の為なら人殺しになれる。
なってみせる。
哀しみや苦しみ、憎しみにだって耐えられる。
だから、君の為に殺すんだよ。
だって、わたしは、君が好きだから。
――――私、まだ、頑張れるよ。 何度でも、何度でも、頑張ってみせる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろ休憩にしません?」
「そうね、そうしようか」
大分南下した後、草壁優季の提案に乗って私達は休憩する事にした。
彼女には悪いけど……暫く利用させてもらう。
何れ乗るかもしれないけど、一緒に居た方が情報交換などする時にも便利だし。
最悪盾にだってできるし。
……それに私今まともな武器ないし。
とりあえず銃かな。
私はそう思って水を口に含み、名簿にもう一度目を通す。
知り合いなんていないけど、とりあえずざっと誰か居るか把握したい。
そう思って、目を動かした瞬間。
「ぶっごふぁ!?!?」
「わ、水噴いて、どうしたんですか?!」
彼女が心配するけど、気にしない。
だって有り得ない。
どうして、どうして。
私は『朱鷺戸沙耶』であるはずなのに。
なのに。なのに。なのに。
だから、この殺し合いでも、『朱鷺戸沙耶』であるはずなのに。
どうして、どうして、どうして。
私は震える指で、その名前をなぞる。
『長谷部彩』
――――なんで、私の本名があるの!?
おかしい。おかし過ぎる。
ちゃんと『朱鷺戸沙耶』もある。
うん、ちゃんと書いてある。
なら、これが私だ。
私であるはず。
今のは見間違い。
OKOK。
息を吐いて、もう一度。
ほら……な……っ……あった。
『長谷部彩』
『あや』
それが私の本当の名前。
人生も録に楽しめずに。
恋もせずに、終わるはずの少女の名前。
なんで、そんな名前が、あるの?
私は『沙耶』
理樹君が愛してくれた『朱鷺戸沙耶』だよ。
今更、『あや』に。理樹君が愛してない『長谷部彩』に戻れない。
戻らない。戻りたくないっ。
これが、今度私に与えた試練というのか。
想像主が与えた罰か試練だというのか。
知らない。
知りたくもないっ。
私は『長谷部彩』に戻らない。
理樹君に愛してもらった『朱鷺戸沙耶』のままで。
闘って、闘って。
そして、死にたいよ。
そう、だから。
――――私は『朱鷺戸沙耶』だ。
【時間:1日目午後3時30分ごろ】
【場所:D-6】
草壁優季
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:健康】
朱鷺戸沙耶
【持ち物:玩具の拳銃(モデルグロック26)、水・食料一日分】
【状況:……今更、戻れない】
最終更新:2011年09月06日 18:07