Memento mori/Carpe diem ◆ApriVFJs6M
「珠美……俺達は大変なことになってしまったぞ」
「ほえ? どうかしたのかきょーすけ」
俺と珠美は昼下がりの森の中を歩いていた。
決して気温は熱くはないが首元には汗が滲み始めていた。
それもそうだろう、舗装された道路と違ってうっそうと繁る森。
そして見通しが悪い上に地面は斜面があり、さらに石や木の根っこででこぼことしてると来たもんだ。
運動神経も体力もあると自負している俺だったが、想像以上に歩きにくいことで体力が消費されてることを感じ始めていた。
一方、珠美はというと全く疲れを感じさせる仕草を見せることなくひょいひょいと身軽な動きで山を下っていた。
本当にサルみたいだった。
「とても大切なことなんだ……心して聞いていくれ……」
「むー、もったいぶらずにはやく話せよー」
せかす珠美に俺は大きく息を吸い込んで言った。
そう俺達が置かれている危機的な状況を――
「実は俺達……道に迷ってしまったんだよ! どっちに向って歩いているかさっぱりわからねえ!」
「な、なんだってー!! ってアホかああああああっ」
どげし、と鈍い音がして珠美の脚が俺の鳩尾に食い込んだ。
「げほっ、おま、何を、ぉぉぉ……」
「じゃあなんで『こっちだ珠美! 俺について来い』なんて言っていかにも道を知ってそうなそぶりで前を歩いてるのさ!」
「俺は肉食系だからな、女を引っ張ってこそ男という物だろう?」
俺は歯をキラリと輝かせ爽やかに笑った。
好青年ここに極まれりとやつだ。
「ねえ、きょーすけぇー」
珠美はニコニコとした笑顔で俺を見つめている。さすが俺の眼力(めぢから)だ……珠美は男らしい俺に心を奪われているに違いない。
「いっぺん、死んでこいやあああああああ!」
「ひでぶっ」
再び俺の鳩尾に強烈な衝撃が襲い掛かり俺は落ち葉が積もる土の上に崩れ落ちた。
「まったく……なんであたしがツッコミ役をやらないといけないんだか……おーい~きょーすけー」
「………」
「きょーすけー?」
「………」
「きょーすけー! きょーすけー! 変な冗談やーめーろよー!」
「………」
「うそっ! 今の一撃の当たり所が悪くてまさか……」
「………」
「あわわわ……どうしよう……あたし……あたし……きょーすけーを」
「………」
「やだ……やだよぉ……ねえ……起きて……起きてよきょーすけぇ……」
ぴくりとも動かない俺に慌てふためく珠美。くくく……俺の死んだふり作戦は完璧だな。
ちょいとばかり脅かしておしおきだ。くっ……こんなロリっ娘におしおきとはなんて卑猥な響きなんだ……っ!
あー……でも声が涙ぐんできたぞ。しょうがねえこの辺で目を覚ましてやるか。
「そうか……そんなに俺が目が覚まさないことが心配なのか……」
「だって……だって……あたしのせいできょーすけが死んで――あれ?」
今にも吹きだしそうになりながらも俺は珠美に優しく話しかける。
そして俺が死んだふりしていたことに気がついてきょとんとする珠美。おもしれえ……!
「やーいやーい! ひっかかったなアホが~! そんな簡単に俺が死んでたまるかってんだ!」
「あ、あれ……きょーすけ生きて……」
「あたりまえだろ。勝手に殺すな」
「きょーすけぇ……」
肩を震わせる珠美。ちょっと悪ふざけが過ぎたかな……こりゃ相当怒ってるぜ。
しょうがねえ蹴りの一発二発は覚悟しておくか。
そう思った俺だったが――
「ひぐっ……きょーすけ……」
「あれっ?」
おい、雲行きがおかしいぞ。この展開は予想してねえ
これが鈴だったら『何アホなことやってんじゃコラぁぁぁ!』ってハイキックが飛んでくるはずだぞ。
「うぐっ……よかったきょーすけ……あたし……きょーすけが目を覚まさなかったらどうしようかと……えぅっ」
「珠美……」
目に涙を浮かべすすり泣く珠美。やべえ……女の子を泣かせちまった……
完璧に鈴の場合と対応誤ってしまったぞ……
うう……素直に謝ろう……
「ごめん……珠美。俺の悪ふざけがすぎた。この通りだ泣くのはやめてくれよ、な?」
ぽん、と俺は珠美の頭に手を置くと優しく撫でた。
「ぷ……ぷぷぷ……!」
「あ?」
「うぷぷぷぷ……もーだめー! 笑いをこらえるの無理無理ー! きゃはははは! きょーすけのその顔さいこー!」
「ちょっ、おま、珠美!」
「やーいやーい! ひっかかってやんのー! さっきのお返しじゃーい」
「うぐ……くくく……」
何も言い返せず俺は敗北の味を噛み締めるだけだった。
つーか女の涙って反則すぎるよなあ……?
「ほんとーにきょーすけはアホだなあ」
「うるさいほっとけ」
「顔だけ見たらイケメンなのにのぉ……口を開いたら残念すぎるじゃろ」
「しょーがねーだろ、今さら性格直せるか」
「きょーすけって実はモテそうでモテないタイプじゃないのかに?」
「失礼なこというな! 俺だって……俺だって……あれ?」
待て、よくよく考えたら俺って女の子と付き合ったことってあったか……?
いつも理樹や鈴たちと馬鹿やっていたからそんなこと考えたこともなかったぞ……
「ごめんきょーすけ。図星を突いちゃったようだの。大丈夫大丈夫、きょーすけぐらいイケメンならまだまだ春は訪れるって」
「なんだその哀れむような目は!」
■
「ふぅ……やっと森を抜けられたぜ……」
「おおーっ! やっと姉ちゃんさがせるぜ!」
深い森の中で珠美と馬鹿なやりとりをしながらも俺達はやっとのことで街に出ることができた。
かれこれ二時間近く彷徨っていただろうか。頭の上にあった太陽は西に傾き始めていた。
「さすがに歩きっぱなしで疲れたのー」
「だな、どっか休める所探そうぜ」
しんと静まり返った街に佇む俺達は休めるところを探し始める。
十分ほど歩いたとことろに白い丸テーブルと椅子が並ぶオープンカフェを見つけそこに腰を落ち着けることにした。
「ふいー疲れたぁ~」
珠美はまるで潰れた蛙のように上体をテーブルを投げ出してくつろいでいた。
「おい、ちょっと気抜きすぎだぞ。こんな無防備な状態で誰かに襲われたらどうすんだよ」
「そんときゃきょーすけが何とかしてくれ。忍者セットがあるじゃろ? じゃろ?」
何とも無責任に言い放つ珠美。こんなクナイや小刀でどないせえと言うんじゃい。
「こんなもんでマシンガンとか持ってる奴に対抗できるかっ」
「大丈夫大丈夫。きょーすけならなんとかできるってー」
「そう言う珠美こそ何か武器らしいもの持ってるのかよ」
「さあ?」
「さあ? って何だよさあって」
「いやあ~、実はあたしもいまきょーすけに言われるまで自分の荷物のこと忘れてた。それじゃ何が入ってるか確かめてみるかの」
能天気すぎるだろお前……
珠美は状態を起こすと足元に置いてあった自分の荷物をごそごそと漁り始めた。
「懐中電灯~~っ」
「いや、それは俺も持ってるから。それとどこかのネコ型ロボットような声出さなくていいぞ」
「ちぇー、せっかく場を和ませようとおもったのに」
さらに珠美は荷物を漁る。珠美は筆記用具、コンパス、地図……参加者全員に配られたであろう道具を引っ張り出した後に、
拳二つ半ほどの長さの白い棒切れを取り出した。
「なんだこりゃ?」
「ちょっと待って。説明書があるね。えー……なになに……ビームサーベルだって」
「なるほどビームサーベルか」
「うぉぉぉ! すげーこれ超あたりだよきょーすけ!」
「ねーよ! なんでビームサーベルが現代に存在するんだよ! おもちゃに決まってるだろおもちゃに!」
「まあまあきょーすけ。説明書には続きが書いてるようだの。『単三電池三本を使用することにより、従来のバックパック式と比べて小型化を実現。かつ出力を50%アップに成功』だって」
「ウソくせー……」
「試しに使ってみるかに? 別に後で法外な使用料を請求されるわけじゃないんだし」
「ああ……使い方は?」
「グリップのところにスイッチがあるじゃろ?」
「おっ、ここか。ポチっとな」
物は試し。俺は柄のスイッチを押してみる。
するとヴォンといかにもな音を立てて緑色に輝く刀身が現れた。
「うおっ……マジで本物なのか……?」
「ささっきょーすけ。その辺のテーブルで試し切りをしてみるのじゃ!」
「ようし……」
俺は隣の丸テーブルに仁王立ちになるとビームサーベルを上段に構え大きく息を吸った。
「いくぞ――エーテルちゃぶ台返しッ!」
そして唐竹割りに刃を振り下ろした。
感触は思いのほかあっけなく。丸テーブルは真っ二つに切り裂かれていた。
切り口は黒く焦げており、相当な熱量で焼き切られていた。
「うお……っ、マジかよ……」
「すっげー! 超当たりじゃん!」
「アホか! こんなもん人に向って使えるか!」
「た、確かに……あっ、それとスイッチの側にある緑色のランプ、電池が無くなってくると黄色から赤に色が変わるらしいの」
「まあ、とりあえずお前に預けとくよ。あんまりおいそれと使うものじゃないからな」
「へーい」
俺はスイッチを切ると珠美にビームサーベルを預けることにした。
しかし――この武器どう考えても現代の技術で作れる代物じゃないよなあ……
こんな物を俺達に景気よく振舞えるあの翼の男は何者なんだ……?
果たして俺達はあいつに抗うことなんてできるのか……?
頭の中に諦めに似た感情が忍び寄る。だが俺が諦めたら理樹や鈴はどうなる?
あいつらを残して俺は死ぬわけにはいかない。だから俺達はあの世界を作り上げたんだ……!
「ーすけ! きょーすけ!」
「あ……? 珠美……?」
「何ぼーっとしてるの」
「すまん、少し考え事してたみたいだ……」
「しっかりしろよなー」
「ああ……さてと、これからどうする?」
「どうするって……あたしは姉ちゃんや友達を探す。きょーすけもそうじゃろ?」
「まあな、だが闇雲に歩き回ってもなと」
このまま闇雲に歩いて殺し合いに乗った奴らに出くわしたりでも大変だ。
あのビームサーベルを使えば人間の身体だって真っ二つにできるだろう。
だが俺にはそれを使う勇気も覚悟も足りなかった。
そして――
「そこの音無くんに似てるようで全然似てない人、ちょっといいかしら?」
背後から女の声がした。
■
「あなた達! SSS(死んだ世界戦線)に入りなさい!」
開口一番彼女はそうわけの分からないいことをのたまわった。
新たにやってきた来客者は二人組みの学校の制服を着た女だった。
一人は俺に向って意味不明な勧誘を行う女。俺と同じ高校生だろう、肩まで伸ばした髪と切り揃えた前髪、そして頭のリボンが特徴的だ。
もう一人はその後ろでやれやれといった仕草で肩をすくめている小柄な女だった。
まあなんだ、とりあえず俺は彼女の問いに対し答えることにした。
「だが断る」
「はぁっ? あんた何言ってるの馬鹿じゃない!?」
「初対面の人間にいきなりバカって呼ばれる筋合いねーよ!」
まさに傲岸不遜といった態度である。自分の行いに一片も間違いは無いのだという根拠の無い自信があふれ出している。
すげーやり辛え相手だ……
「きょーすけぇ……」
不安そうな視線で珠美が俺を見てくる。
くそっ……変にあしらって逆恨みされたら洒落にならん。
「あー……そこのイケメン氏。いきなりでごめんごめん。ちょっとこの娘、頭のネジが数本ぶっ飛んでちゃってるのよねぇ」
「なによまーりゃん。失礼なコト言わないでよ」
「だーかーらー! ゆりっぺはもう少し考えて発言しろっての! これじゃあ怪しい宗教の勧誘だってば。少しあたしに任せんしゃい」
「わかったわよ……」
見るに見かねたのか小柄な女のほうが助け舟を出す。
どうやらこっちの女のほうはまだ話が分かるらしい。
「おい、そこのイケメン! いまあたしのことを話の分かる人間だと思っただろっ」
「あ? ああ……」
「違うねん……違うんやで……あたしは本来ボケ役やねんで……! このゆりっぺがあまりにアレ過ぎて仕方なくフォロー役に徹してるんやで……」
「アレって言うなアレって!」
「とりあえずこいつの名前はゆりっぺ」
「仲村ゆりよ」
「んで、あたしは――」
「朝霧麻亜子だっけ?」
「ちーがーうー! あたしはまーりゃん! 朝霧麻亜子は世を忍ぶ仮の名……真名(まな)はまーりゃんだ!」
前言撤回。この女もおかしい。
くそっどうして俺がツッコミ役にならなければならないんだ。
これ以上ボケにボケを重ねると話が進まないのでとりあえず俺と珠美も自己紹介することにした。
「仲村と朝霧か……」
「朝霧って呼ぶなぁぁぁ! まーりゃんと呼べぇぇぇ! じゃないとお前のことグリーンリバーライトと呼ぶからなっ!」
「なんだよグリーンリバーライトって……わかったよまーりゃん」
「大変結構だぜぃ。きょーちん」
「…………」
グリーンリバーライトよりはマシだがきょーちんも相当恥ずかしいぞ……
「気にしないで。この娘、人にあだ名付けるのが大好きみたいだから」
「あたしはっ? あたしのあだ名はなんじゃらほい?」
そして珠美はというとなぜか目を輝かせて自らのあだ名をまーりゃんに聞く。
「そうだねえ……タマちゃん」
「うわっすごく普通」
がっくりと項垂れる珠美。お前ら同レベルだからな。
「とまあ悪ふざけはおいといて、あたしたちの目的はこうよ『クソッタレのコスプレ男をブッ倒して元の生活に戻ろうぜベイベー。じゃあそのために一人でも多くの協力者を募ろうぜい』ってやつ」
「『元の生活』ねえ……その表現は少しばかり語弊あると思うけど?」
「それを説明すんのが大変なんだよっ!」
「……一体どういうことだよ」
「まあ驚かないでね。棗くんに珠美ちゃんはとっくに死んでいるのよ、そしてここは死後の世界――正確に言うとここはあの世の一歩手前、煉獄とでも言うのかしら」」
死後の世界――俺の聞き違えでなければ確かに仲村はそう言った。
そんな馬鹿なと俺は彼女の言葉を否定したいが、否定し切れない事情を俺は抱えていた。
「な、なんだってー! じゃああたし達は死体なのか! ゾンビなのか! きょーすけぇー!」
「ふん……それを証明する手筈はあるのか? それが証明できなければただの妄言だぞ」
「ですよねー。あたしもゆりっぺから最初にそう言われてパニクったもんですよ」
俺の問いかけに仲村は不敵に笑うと自信たっぷりの表情で告げた。
「証明も何もあたし自身が生ける死者だからよ」
なんの根拠にもなっていない。だがなぜそこまではっきり言い切れるか俺には理解できなかった。
仲村はさらに続けてここに至る顛末を俺達に説明した。。
「じゃあ……あのコスプレ男は神様だったのかっ! あたし達はそんな物を相手にしないといけないのかっ?」
「神そのものか、神に準ずる存在……かしら」
「まあー、普通に考えたらお前頭おかしいだろバカなの死ぬの?だけどきょーちんは意外と冷静なんだねえ」
「まあな……」
ここが死後の世界だというのは否定する材料にとぼしい。
あの時のバスの事故で俺達は死んでおり、理樹と鈴のために繰り返される学園生活も所詮は今際の際の夢だった。
そう考えれば一応の辻褄は合う。だが俺が真に疑問の思うのはここが死後の世界かそうじゃないことなんてどうでもよく、
仲村曰く、『死後の世界で死んでも時間が経てば生き返る』ことだった。
「だが解せんな」
「何がよ?」
「斬られようが撃たれようが、ここで死んだ人間はみな生き返る。お前はそれを確認したのか?」
「いいえ、まだよ。でもあたしのいた所ではそれが普通だったわ」
「それが普通……か」
「いまいち信用してないって顔ね。いいわよ、それじゃあ確認しに行きましょうか?」
「えっ……マジであそこに戻るの……?」
朝霧の顔色が悪い。一体何があったんだろう。
「確認って……何を確認するんだよ」
「だから、死体が生き返るか生き返らないかの確認よ? 少し先であたしの知り合いが死んでいたから」
「は? お前何を言って……」
死んでいたと仲村は過去形で言う。まるで今は蘇って歩き回っていると言わんばかりだった。
■
「ほ、本物の死体だきょーすけぇ……」
「死体だな……」
俺達はカフェを離れ、仲村が言う場所で一体の死体を発見した。
アスファルトの道路に広がる赤黒い海の真ん中でうつ伏せに倒れる男の死体。
死因は横一文字に切り裂かれた首の傷。ぱっくりと切り裂かれたそれは首にもう一つの口が開いているようだった。
ちらりと仲村と朝霧に視線を移す。朝霧は真っ青な顔で肩を小刻みに震わしている。
一方仲村はというと、自らの理論の間違いがほぼ証明されていたにも関わらず不敵に唇を歪めていた。
「ふうん……大山くん、『本当』に死んだんだ」
まるで他人事のように仲村は言い放つ。
一体こいつは何なんだ……死に対する感覚があまりに俺達とかけ離れすぎている。
仮にも知り合いが死んでいて、そしてもう生き返ることはないというのにどうして平然としていられるんだ……!
「くっ……くくく……あはっ……本当に死んじゃったんだ。あっはははははっ!」
仲村は死者を前にして突然笑いだした。
心底愉快でたまらないといった笑顔で、俺にとっては狂気を孕んだ表情で彼女は嗤う。
「お前――!」
その態度に見かねた俺は仲村に詰め寄ろうとするが――
「どういうことだよゆりっぺ……っ!」
俺よりも先に朝霧が仲村の胸倉を掴みあげていた。
「あんた何がおかしいんだよ……! なんでこいつが死んでいるのがそんなに愉快なんだよ……!」
「いやあ、まーりゃんごめんねぇ~? あたしの考え間違っていたわ。くっくっく……」
「おい朝霧! 落ち着けって!」
「てやんでぃっ! これが落ち着いていられるかい! だってさ……こいつ殺したのあたしなんだからなっ」
「は……?」
おい朝霧、お前も何言ってるんだ。お前がこいつを殺した?
「ああ、棗くんは知らなくて当然よね? まーりゃんったら出会った時にあたしのこと殺すつもりだったのよ? で、大山くんはとばっちりを受けて死んだ。まあ大山くんが死んだのは半分はあたしのせいだけどね。あははっ」
「だから……! 何がおかしいのさ!」
「今まで普通に生きてきたまーりゃんや棗くんにはわからないでしょうね……不本意ながらもようやくあたし達に終わりが訪れるのよ? それが喜ばしい以外に何かある?」
駄目だ。仲村の言っていることが全く理解できない。
仲村は俺と同じ姿をして同じ言葉を話す人間のはずなのに、まるで話の通じない宇宙人を相手にしてるような気持ち悪さしか生じない。
「死んでは生き返り、また死んでは生き返る。首を斬られようが頭を潰されようが全身をミンチにされようがすぐに五体満足で復活できる。
それを何度も何度も何度も何度も何度もあたし達は繰り返してきたのよ。数えることも馬鹿馬鹿しくなるくらい!」
「仲村……」
「ふふふ……Memento mori――『死を想え』そしてCarpe diem――『今を楽しめ』とはよく言ったものね。何度も死んで生き返りながら神に抗う戦いを続けてるとダメなのよ。
失敗して死んでも次がある。次が失敗してもまた次がある。次があると思ってるうちじゃあ絶対にあいつらに勝てない。
志半ばで果てた大山くんには悪いけど彼が死んだことに感謝してるわ。死ねば何もかも終わり、だからこそ死者のあたしたちでもようやく生を実感できることを教えてくれのよ!」
「あんた……頭おかしいんじゃねーのッ!? だったら今すぐ殺してやろうか、ああ!?」
「やめろ朝霧! 今の言葉でわかったぜ……仲村は間違いなく『死者』だ。俺達とは死に対する価値観があまりにも違いすぎている」
「きょーちん……」
朝霧は胸倉を掴む手を放す。今となっては朝霧が大山を殺したことを責めるつもりなど無かった。
仲村がそうであるように大山もその死の瞬間まで、事実に気付かず後で生き返ると信じこんでいたに違いないのだろう。
仲村は乱れた服装を整えると、相も変わらず不敵な笑みを浮かべて言った。
「でも、勘違いしないで。あたしは別に死にたいわけじゃないわよ? 神の喉笛に喰らいつくまで死んでたまるものですか。本当の死が隣り合わせにいるからこそ、真の生を実感できるというだけよ」
「ま、どちらにせよ生きていることが当たり前な俺にとっては理解できん感情なのは変わらんさ」
「理解しろとは言わないわ。ただ協力してくれればそれだけでいいわ」
「断った所で俺たちが不利な状況は変わらん、か。……わかった協力しよう。珠美もいいよな?」
ずっと静かに状況を見守っていた珠美にも了解を得る。
「それでいいんじゃないかに? 仲間は多いほうが何かと役得だからじゃの」
「朝霧は……どうする?」
「ここにきょーちんやタマちゃんがいなかったら確実にケンカ別れしてたと思うけど……とりあえずはついていくよ」
「だそうだ。仲村」
「大変結構よ! さあ新生SSSの再始動よ!」
どうやら一触触発の事態は何とか回避できたようだ。
だがこの島に他にもいる仲村の仲間達はまだこの事実に知らない者がほとんどだろう。
いずれ生き返ると信じて疑わないからこそ問答無用で手荒なことに打って出てくることは十分にありえる。
まったく……厄介な連中が現れたもんだぜ……
「おう、ところできょーちんや?」
「なんだ?」
「あたしを朝霧と呼ぶなボケェェェェェェェェ!!!」
「あべしっ」
俺の側頭部に炸裂する朝霧のハイキック。
「し……しまパン……ぐふっ」
「あわわわ……きょーすけぇ~~」
ああ……そういえば朝霧も珠美ほどじゃないがかなりのロリ……
そんな想いを胸に俺は地面にゆっくりと崩れ落ちた。
【時間:1日目午後5時ごろ】
【場所:F-2】
棗恭介
【持ち物:忍者セット(マント、クナイ、小刀、傷薬)、水・食料一日分】
【状況:健康】
綾之部珠美
【持ち物:ビームサーベル(電池状態:緑)、水・食料一日分】
【状況:健康】
朝霧麻亜子
【持ち物:
オボロの刀、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2012年06月02日 03:53