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出逢ったのなら……仕方ない……よね? ◆auiI.USnCE







―――なんか、ふわふわっとした、不思議な感じがしたんだ。そんな気がしたんだよ。 









     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






ああ、いい日差しだなぁと僕は空を仰ぐ。
空は驚くくらい、青かった。
まるで殺し合う為だけの島じゃないみたいに。
あの日、あの時、見た空もこんなだったっけと思ってしまうみたいに。


「無視するんじゃないですわ!?」


いや、はい。
まぁちょっと現実逃避です。
僕――坂上鷹文は目の前でかなきり声上げるツインテールの少女をつい華麗にスルーしたくなっただけ。
何でかっていうと単純に関わりたくなかったタイプの少女だった。
全力でトラブルしか待ってないような気がしただけ、うん。
…………無視した方が余計にトラブルになる気がする。
……はぁ。

「えーっと……君は……」
「さっき名乗りましたわよ!?」
「荒ぶる獣――」
「だから、ケモノじゃないですわ!?」
「あ、はい。うん。解かってる」
「からかってまして!?」

顔を真っ赤にして耳みたいなリボンを立たして今にも噛み付きそうだ。
この人何回「!?」マークつけたような荒ぶりかたするんだろう。
というか、なんで僕がボケに回ってるんだろう。
…………はぁ、どうにもペースが崩れる。

えーと、はい、次にいこう。

舌を噛んで、僕の鼓膜が破けそうなぐらい叫んで。
そして言えた名前。
えーと、確か……


「笹かま弐式……?」


……うん、無いね。
つい浮かんだそのまま口に出してしまった。
笹かま美味しいよねと、この後の展開を考えたくなくてたそがれる。
しかも、弐式って……まあ多分ゲーム脳の性だろう。

「……貴方……いいですわ、もう一度わたくしの名前を教えてさしあげるわ」

おお、腰に当てた手がプルプル震えている。
明らかに怒りゲージがマックスっぽい。
そして、すうと息を吸って。


「笹瀬川! 佐々美ですわ!」


おお、今度はちゃんと言えた。
思わず僕はぱちぱちと拍手をしてしまう。
名前如き言えないでどうするだが、明らかに噛みそうな名前だからとりあえず拍手しよう。

「おーほっほっほ!」

彼女、佐々美さんはやっぱりイメージ通りの高笑いをし始めている。
ご丁寧に口に手を添えて。 まぁそんな感じだよね。
そして、僕は止め所を失った拍手を続ける。


ぽかぽかとした昼下がり。
誰も居ないビル街で。
響く高笑いと乾いた拍手の音。



「おーほっほっほっほ…………………………何やっているんですの……わたくし達は…………」



御尤もです。




◇ ◇ ◇



何をやっているんだと言われれば正しく何もやってなかった無駄な時間。
ずーんと沈みながら、佐々美さんは高笑いから現実に意識を戻していた。
そして、戻したからこそ、へこんでいた。
僕も何やってたんだろうと思うけど、何もやってなかったんだよね。
冷汗が頬を伝った気がするけど、僕は気にしない。
笑っていれば、いい事あるさ。
……御免なさい、ちょっと泣いていいですか?

「……甘いものも飲めないですしし、最悪ですわ」

うん、まぁこんな殺し合いに巻き込まれた時点で最悪なんだけどね。
ああいや、弱気になっちゃダメだ。さっきそう思ったし。
でも、流石に、まさかこんな子と一緒になるとは。
あっはっは、笑ってみよう。
………………特に何も無かった。いや虚しくなった。

「そうそう、貴方……坂上鷹文でしたよね。鷹が入っているのは珍しいですわね」

うん、僕もそう思う。
鷹が入ってる分、凶暴かもしれないよ?
……いや、まるで鳩のように温厚なんだけど。
温室育ちではないけど室内育ちみたいな。

「貴方、お金持っていませんこと? 何か飲みたいのですのよ」

彼女の細く白い指が指すのは何処にでもある自販機。
紙コップが出てくるタイプじゃなくて、普通の缶やペットボトルとかのだ。
というか、あれお金飲まれたと言われた自販機じゃないか。
またチャレンジするというのかな。
お金は飲まれるけどジュースは飲めない。
と、本当にどうでもいいくだらない事を考えながら、財布を取り出す。

「これしかないけど……」
「充分ですわ、借りますわよ」
「あ、ちょっとそれは……」

財布を問答無用で取られて佐々美さんは自販機に向かっていく。
ああーそれ、お金はお金なんだけど。全く使えないというか……
まさかこういう時の為のこども銀行だったんだろうか。
凄いや、こども銀行。

「さぁて………………って、使える訳ないですわっ!」

ああ、解かりやすいノリ突っ込みありがとう。
使える訳無いに決まってるよね。
流石だね、こども銀行。

「もう、使えないなら貴方言ってもらわなきゃ困るでしょう!?」
「ええーっ」

凄い勢いで責任転嫁されているっ!
ぷんすか怒ってる佐々美さんが可愛いとかはそんな事は毛頭も思わなく。
ただ理不尽な怒りをそのまま、一身に受けていた。
別にMってわけじゃないよ? 多分。

「というか、貴方。もしかしてこれが……」
「想像の通りです」

ああいや、うわっ使えねーみたいな顔で見ないで欲しいんだけど。
実際使えないんだけどね……うん。
いや、まだ使えるかもしれないよ。
…………雀の涙の更に十分の一ほどの可能性でしかないんだけどさ。

さて、なんかこのままだと延々と負のスパイラルになりそうだから、一旦話を打ち切ろう。
というか、さっきから気になってたんだけど

「というかさ」
「何ですの?」
「コンビニ、近くにあるみたいだし、使えばいいと思うよ? 誰も居ないんだし」

目に見える所に何処でもあるような、青と白の看板が真昼間から光っている。
アレって何で牛乳瓶なんだろうと気になって調べて、あんまり実になる情報じゃなかったなと思う。
実際理由を今でも思い出せないし。
まあ、それはおいておいて。
殺し合いの島、参加者以外は無人な此処。
別に食べ物や飲み物以外はとってもいいと思うのに、佐々美さんはそれを選ばない。
何でだろうか?目の前にあって気付かないわけないし。
それすらも気付かない馬鹿なのかと凄く失礼な事を考えたのはあえて伏せておく。
伏せないと悲惨な目にあいそうだし。

「いや、まぁ……それは……そうなのですけれども……」

視線を泳がせて、気まずそうに口を噤む佐々美さん。
流石に、コンビニがあるのは解かっていたようだ。
当たり前ではあるんだけど。じゃあ何でだろう。

「お金も払っていないないのに、お店の物を取るのが……気に引けて……」


…………ああ。

他の人から見るなら、彼女は現状把握してないように見えるのかな。
でも、僕は凄く彼女が『マシ』に見える。
あんな悲惨なの見せ付けられて、ちゃんとした常識倫理を失わないってのはとても大切な事だと思う。
きっといい子なんだろうなと思って、何となく嬉しくなってしまった。
現実が見えてないと笑うよりも、自然体で自分を持っている方がよっぽどましだ。
だから、僕は彼女の戸惑いを、なんだかとても評価してあげたくなってしまう。

僕は笑いながら

「じゃあ、このこども銀行のお金で払って買い物しようか?」
「玩具のお金ですわよ?」
「あの羽の人が用意した島だしコンビニもそう、そしてこれはあの人が用意したお金。別にいいんじゃないかな? 道理はあってるよ」
「それも……そうですわね」

そう言って、佐々美さんは嬉しそうに可憐に笑った。
じゃあ、それでいいかと僕も思い、笑う。
ほら、あった。
雀の涙の程でしかないけど。
実際、別に無くてもコンビニにあるものは取れるけど。

たった一人の少女を納得させるために、役に立ったじゃん。


持っててよかった、こども銀行。


僕たちは笑いながらコンビニに向かって歩き出す。


その時


ぐぅぅぅぅぅと鈍い音が。
佐々美さんから。
具体的には、佐々美さんのお腹から。


「~~~~~~~~っ!? 聞いてないですわよね!?」
「いや、無理だから」


……しまらないなぁ。
まあ、それでもいいけれど。

僕は苦笑いを浮かんだ。
佐々美さんは涙目で顔が真っ赤になってた。
ちょっと可愛かった。






◇ ◇ ◇





コンビニで僕らは適当に買出しして。
お握りやらパンやらお菓子やら飲み物をこども銀行のお金にて購入した。
ちょっとそれが滑稽で僕は思わず、笑ってしまった。
そして、そのまま流れで近くの空きマンションの3階ぐらいに陣取っていた。
部屋の鍵が閉まってなかったので凄いラッキーだと思う。
こんな時も佐々美さんは不法侵入じゃないかと怯えてたけど、まあ気にしない。
軽く部屋を探索して、誰も居ないことを確認すると僕らは落ち着いた。
一応、護身用に部屋にあった包丁とシャベル、金属バットだけ回収したけれども。
多分役に立たないだろうなぁと思う。
いや、振り回したって……ねぇ。
僕のやわい腕じゃ……ねぇ。
…………勝手に哀しくなってしまったので、打ち切る事にする。
まぁ、何とかなる。多分。

そして、僕たちはテーブルをはさみながら向かい合って休んで居居る。
よくよく考えれば、空きマンションの一室に男女が二人ずつ……という魅惑的な状況だけれども。
あんまり、そんな感じがしないのは何故だろう。

「そういえば……むしゃ……貴方は知り合いは……はむっ……いるんですの?」

多分十中八九佐々美さんの食い気のせいだろうなぁと思う。
テーブルに並べたサンドイッチを美味しそうに食べてるのは此方から見ても幸せそうだったけど。
けれど、色気と言う観点から全くを持ってゼロである。
どちらかというと餌にありついたボス猫…………

「……何か失礼な事考えてまして?」
「い、いえ別に」

お、恐ろしい嗅覚。
さすが女王猫というべきか。
また自然にケモノ扱いしてるけど、あえて気にしなかった。
間違って言った時には、きっと捕食されてしまう。
僕、温厚だし。

「まぁ、そんな事より……どうなのかしら?」
「……ん、一応ねぇちゃんと……それと……」
「それと?」
「まぁ……別にいいでしょ」
「…………そう、ならいいですわ」

……踏み込んでこなくて、正直助かる。
名前を見た時、僕自身どうすればいいかわからないかったから。
それはきっと、いつまでも続く後悔や失ってしまったモノなんだから。

そう、それは呪いみたいなもんだった。
僕にとってのね。

この島でも晴れない……過去の代償。
そして、思い出に縛られる、呪いだった。


「そういう佐々美さんこそいるの?」
「……顔見知りと憧れてる人ぐらいですわ」
「……佐々美さん友達いな」
「いますわ!」

強い否定の言葉。
ほぼムキになってる事は間違いないと思う。
それが短い付き合いでもわかった佐々美さんのことだ。

「いますけど……でも」
「でも?」

けど、ムキになったまま、そのまましぼんでしまう。
何でだろうと思って、僕は佐々美さんの言葉を待つ。

「別に……巻き込まれなくてよかった……それだけですわっ!」

赤くなってぷいと彼女はそっぽを向く。
けれど、僕は関心というか、納得してしまう。

そりゃあ……そうだよね。
誰も知り合いが居るっラッキーなんて思う方が可笑しい。
だから、きっと彼女は良くも悪くもマイペースで。
そして、当たり前と言えば当たり前だけど、普通の子なんだ。
それも、自分の不幸せより誰かの幸せを願える。
優しくて何処にでもいる普通の子。

あった時は面倒だと思ったけど、まぁこれはこれでいいかと思う。


「そういえば、佐々美さんが貰ったのはなんだったの?」

僕は何となく気恥ずかしくなって話題を変える。
指差すのはデイバック。
僕は本当にくだらなくて、ただ女の子を喜ばすだけだった。
まあ、それはそれでいいんだけど、これで佐々美さんがいいの当てられると……正直へこみそうだった。
というか、当たりじゃなくてもなんか負けそうだった。
………………なんか僕のこれ、特別なアイテムに進化しませんか。
………………無理ですか、そうですか。


「………………あ」


……気付いてなかったのか。
…………やっぱりマイペースだなぁ。
僕は苦笑いを浮かべると彼女は赤くなりながら無造作にデイバックを手繰り寄せる。
……うん、というか。

「そのデイバックなんか、動いてない?」
「う、動いてる……な、何ですの……?」

もぞもぞ動くデイバックを佐々美さんは恐る恐ると言った感じで開ける。
すると、そこから


「にゃーにゃー♪」


虎柄っぽい猫が這い出てきた。
………………これは、うん。

……可愛いな。

「可愛いね……少なくとも僕のよりは当たり……だね、って佐々美さん……?」
「…………………………」

佐々美さんは猫を見ながら固まっていた。
怖がるように、後悔するように。
ずっと見つめてて。

そして、僕が佐々美さんを見てるのと、猫が佐々美さんによってきてるに彼女は気づくと。

「…………猫が苦手ですのよ」
「……アレルギー?」
「いえ、アレルギーは無いのですが……」

猫を見ながら、哀しそうに。
悔しそうに、ぽつんと呟く。


「どれだけ悔やんでも……忘れようと……ふとした事で過去って思い出してしまうものですわね」


過去……。
猫で何かあったのかな。
もしかして、彼女も縛られているんだろうか。
過去と言う名の後悔。
そして、その呪いに。


わからないけど、何処かその姿は。
僕に少しだけ、似てるなと思った。
何故だか知らないけど。


「ですけれど」

佐々美さんは指で猫をあやしながら、気丈に言う。
その表情は笑顔でもなく悲しみでもなく。
何処か不思議そうな顔だった。

「折角出逢ったんですし……置いていくのは………………可哀想ですわよね?」
「……うん」

不思議な、言葉だった。
言ってる事は普通なのに。
篭っている感情は僕にはわからなくて。
だから、僕は頷くしかなかった。


「ですわよね……よろしくですわ……可愛い……猫ちゃん」
「にゃー♪」

猫は知ってか知らずか、返事をした。
佐々美さんは微笑んで。
僕もそれに釣られていた。




そう、誰にだって、縛られているモノがある。
彼女だってそうかもしれない。

それは呪いのようにいつまでも続くのかもしれない。


「ねえ、この後は、どうするの?」
「わたくしは……決まっていませんわ……どうしようもないですし」
「僕はとりあえず状況把握とパソコン探しかな……一応そっちが得意だし」
「……成程ですわ」
「まあ、もうちょっと休憩してから、なんだけどさ……それで、だけど」
「?」


でも、人は前を向いている。
最初はめんどくさい人だと思ったけど。
マイペースな人だけど。
普通のいい子だった。


それに、出逢ってしまったら………………


「どうせなら、一緒に来ない? 一人でいたってしょうがないでしょ」



置いていくのは……可哀想……だよね?



そう、僕は彼女の言葉で自分を納得させる。
まぁ、元々もう見捨てる気はないんだけど。
結構話してて楽しかったし。
女の子一人で置いていくのはなんかやだし。
…………ああいや、まぁ、そういうことで。
うん、そういうこと。


「……それじゃあ、お願いしますわ。一人じゃ心細いしですし」


佐々美さんは笑って手を差出す。
僕はそれに笑顔で手を握った。


まぁ…………なんか、凄いゆったりしたけど、彼女のお陰かな?
…………とりあえず、これから頑張ろう。


――――面倒だし、それでいいや。


「それじゃよろしく」



そして、僕は改めて彼女の名を呼ぶ。



「ささせぐぁさざ……ぐっ」


思いっきり噛んだ。




…………………………し、しまらない。


あ、ぷるぷると彼女が震えている。
や、やばい。


「あ、な、た~~~~またなんですの~~~~!?」


ええと、どうしよう?
こういう時の弁明の言葉は……


「どうせなら、笹かま弐式にしない?」
「 大 却 下 ですわ~~~~~!!!!」


地雷だった。





…………ま、まあ。


こんな感じで。
僕らのペースで。
いけたら、いいなと思ってます。




……そして、とりあえず、彼女の拳骨は痛かったとだけ追記しておく事にする。






 【時間:1日目午後4時45分ごろ】
 【場所:G-2 北部】

坂上鷹文
 【持ち物:こども銀行券の入った財布&プラスチックのコイン、包丁、シャベル、金属バッド、コンビニの食料品、水・食料一日分】
 【状況:健康】

笹瀬川佐々美
 【持ち物:猫(志麻)、水・食料一日分】
 【状況:健康】



097:でぃす・いず・じえんど 時系列順 086:I know it
109:Monochrome-モノクローム- 投下順 111:少年の主張、あるいは言訳
031:さみしげなさざなみ 坂上鷹文 144:ヒビ割れエクソダス
笹瀬川佐々美


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最終更新:2015年03月15日 08:49