滝谷は静かに昇りきった朝陽を眺める。
夜通しのネトゲや、デスマーチを終えた朝とかの気分以上に重いものだ。
こうも簡単に人が死んでいくのは分かるが、それにしてもあっさり過ぎる。
世間的には自殺、事故、他殺問わず日々多くの人が死んでいくが、基本それは縁遠いものだ。
一日中ずっと歩いていればの話だが、壱日もあれば外のエリアぐらいは一周できるはず。
その範囲内で死ぬのは別だ。海の向こうの国でも、数百キロ離れた土地の人間でもない。
人。龍。魔法少女。他にもいるであろう存在が一堂に他者の意によって集められ死んでいく。
鋼人七瀬みたいな怪異とかでもなければ、その道を選ばなかったかもしれない人でも、
殺すと言う選択肢が生まれてしまった世界で、そうせざるを得なかった理由を抱いて挑む。
そういった人達の思惑の一時的な結果。ただの言葉の羅列。しかし聞き流すことはできない。
律が提示したカエデと言う少女は、自分達の預かり知らぬ場所で命を落としたようだ。
彼女を警戒するようにと言った発言はなかったのを見るに、元は温厚な人物だったのだろう。
恐らくその道を選ばざるをえなかった側。姫神によりコミュニティを破壊された被害者と言ってもいい。
事実、滝谷自身も姫神達によってそのコミュニティを破壊されてしまったようなものだから。
「……そっか……」
トールの死。
小林でも自分でもなく、ドラゴンである彼女が真っ先に。
ファフニールの方が強いとしても、そもドラゴンの力は別格だ。
制限はされていようともその強さは並の人間の比にならないのは、
カエデや鋼人七瀬との交戦からも十分に伺うことができる。
トールも同じぐらいの強さにオミットされてる可能性は高い。
あれだけあれば大概は殺せる。別に殺してほしいわけではないが、
今まで出会った人物であればほぼ全員一人で倒せてしまうだろう。
それでも死ぬ。あってほしくなかった現実を突き付けられたが、
「随分落ち着いているようだな。」
思いのほかあっさりとした一言だけで終わったことにファフニールが訝る。
ドラゴンにとって人間の生は余りに短いし、同時に長すぎるファフニールにとっては、
人の死と言うものに対する感情は希薄になりやすい。滝谷が死ぬ場合は分からないが。
一方で人は人の死を重くとらえるものだ。どのような経緯であっても基本は揺るがない。
だからこそ葬式、埋葬と言った儀式のような行為が存在している。
昔から続く人の習わしでもある。
「そもそも、ファフ君たちがいる時点予想できたことだからね。
参加者か支給品か、ドラゴンキラーができる人がいるのは予想できるよ。」
予想するべきことでもないけどね、とぼそりと呟く。
と言うより、最初の襲撃を考えればこれは予想できた話である。
姿を変えれず、ドラゴンが使えるやりたい放題な魔法もあらかた制限。
左腕がなかったとはいえ続けて出会った鋼人七瀬も(一応)ヒナギクと協力もあった。
これだけの制限を受けていては、エルマやトール、カンナでも十分殺せる。
もっとも、滝谷が仮に殺し合いに乗ったところで勝てる気はしないが。
支給品のアレを使わない限りは、と言う注釈もつけて。
「それでいい。奴らの言葉を鵜呑みにするつもりはないが、
仮にそうであるならばそれぐらいの冷静さを持っておくことだ。」
脳内に送られたキュウべぇと名乗った放送の人物は、
マイナスの感情が増幅している人たちが次第に増えている様子を伝えた。
いかにどれだけ平常心を保っていられるかもこの戦いの鍵になるはずだ。
だから、そういう意味でも表であろうとそういう風に装える気概が必要だと。
(なお、テレパシーをやられたことでファフニールは露骨に不愉快な顔になっている)
「奴がもし死んだとするならば、人を知りすぎたかもしれんな。」
共に生きることを後悔しない。その為に彼女は戦って死んでいった。
もし彼女が死ぬビジョンがあるとするなら、そういうものだと思える。
昔のように自身やケツァルコアトル、神々の軍勢に殴りこんだような、
ただの混沌派なドラゴンとは違う、何かを守るために抗ったのだと。
人間にかぶれた故に死んだかもしれないと考えると、
それは皮肉なものだが同時にそれはらしくもあった。
だから悼みはしない。仮にらしくなかろうと悼むことはないが。
「さて、放送も聞いて何処へ行くのが先決か。ファフ君は何かあるかな?」
当面の方針通り、放送を聞いてから動く考えをするものの、
放送の死者にはカエデやさやかなど、気になる名前は他にもあった。
しかしそれを聞いたとしても具体的に何かが変わるわけでもなく。
あるとするならばヒナギクも杏子達も他の人達は南の方角へと進んでいる。
西から東へ行くように行った今、行くとするならば北か東の二択だろうと。
尋ねてみても返事がなく、顔を向けるとファフニールは南へと顔を向けていた。
普段不機嫌そうな視線ではなく、どちらかと言えば凝視する類の眼差しで。
「どうしたんだい?」
「変な魔力を感じている。」
「魔力はさっぱりだから分からないけど、
南なら魔法少女である杏子ちゃんってことは?」
魔女の結界。
渚の手によって発生したそれは、
多くの参加者が認識するのは容易ではない。
魔女の結界は普段は外からすれば何の変哲もない空間だ。
条件を満たしたりこじ開けたり引きずり込まれると空間ががらりと変わる。
あくまでドラゴンであるファフニールだから揺らぎを感じただけのもの。
「どうだろうな。異なる世界の魔力だ。
これが呪いの類かどうかも判断がつかん。」
一方であくまで揺らぎ程度だ。
本来ならばもっと細かく把握できたかもしれないが、
現状ではその程度のことしか認識できなかった。
「どうする? 弓原さんやまどかちゃんも一般人みたいだし加勢も……」
窮地の可能性だってある。
救援要請で魔力を発したのも否定できない。
滝谷としては行こうと思っていたところだったが、
「その話、詳しく聞かせてもらえる?」
後頭部に硬いものを押し付けられながら、
背後に突如として現れた少女が冷徹に呟く。
後頭部のそれが何か見えずともすぐに理解し両手を上げる滝谷。
(気配は感じていたが、この小娘……今のは時間に干渉したのか?)
ファフニールが行くかどうかを尋ねなかったのは、
その前に人の気配が近くにあったからと言うのはあった。
だが高速移動と言ったものではない。ケツァルコアトルのような、
時間に干渉でもしなければなしえないような気配の移動をしている。
つくづく此方が後手に取られるような相手ばかりに出会い舌打ちをかます。
(シャドウ、か。)
インキュベーターが主催
それについてほむらは余り驚かなかった。
いてもおかしくはない。そういう奴だと認識してるから。
問題はシャドウ、認識。それらのワードが何を意味するのか。
それがほむらにとってはどういう意味かはまだ分からなかった。
此処まで出会えた参加者は道を違えた少女ただ一人だけ。
その少女だってまともに話し合っていないのだから、
彼女は致命的なまでに情報戦において乏しい領域にいる。
事実上誰一人として参加者の情報を持ち合わせていない。
何より、まどかの名前が出た以上知っていると思って動いた。
……なのだが、まどかの名前を聞いたことで少しばかり先走りすぎて、
交流すればいいだけの所を半ば脅しをかけるようになってしまっている。
「そいつを殺した瞬間貴様を殺す。」
インキュベーターが主催。
それについてほむらは余り驚かなかった。
いてもおかしくはない。そういう奴だと認識してるから。
問題はシャドウ、認識。それらのワードが何を意味するのか。
それがほむらにとってはどういう意味かはまだ分からなかった。
此処まで出会えた参加者は道を違えた少女ただ一人だけ。
その少女だってまともに話し合っていないのだから、
彼女は致命的なまでに情報戦において乏しい領域にいる。
事実上誰一人として参加者の情報を持ち合わせていない。
何より、まどかの名前が出た以上知っていると思って動いた。
……なのだが、まどかの名前を聞いたことで少しばかり先走りすぎて、
交流すればいいだけの所を半ば脅しをかけるようになってしまっている。
「そいつを殺した瞬間貴様を殺す。」
オーラを醸し出しながらファフニールは拳を作る。
魔女と何度も、飽きるぐらいに戦ってきたほむらでも気圧されそうな殺意。
先の少女も偶然が重なって勝てた。だがそれが今回もとは限らない。
選択肢を見誤ったかと頬に汗が伝うも、
「まあまあ。見たところまどかちゃん達と同学年みたいだし、
友達の安否って言う可能性もあるかもしれないんだからさ。
だから銃を降ろしてもらえないかな? 時間的にも精神的にも不安だから。」
先の魔力が何かを知りたい。
そういう意味でも早く話し合いのテーブルにつけたい。
勿論現代的な武器と言う存在はドラゴンと交流こそあれど、
終焉帝に出会った小林みたいな危機的状況とは縁遠い彼なので、
銃と言う武器であれば彼女以上に驚くべきものではあるし不安もある。
下手に動けば撃たれる焦燥感をずっと維持されると、
本当にもしもだが変な気を起こしそうなのも含めての提案だ。
ドラゴンと人間が一緒に過ごす非日常的な日常を過ごしていても、
滝谷はどちらかと言えば小林程踏み込んでもいない人間なのだから。
「戦闘はそっちの彼に、交渉はこっちに……仲がいいみたいね。
少し急いでたから、そこについては謝るわ。それで、話を伺いたいのだけど。」
かなりふてぶてしい態度ではあるが、
別に滝谷もファフニールも気にしない性格なのと、
時間も押してる可能性があるので搔い摘んでではあるが話し合う。
カエデを仕留めたのは彼女であったことが分かってもさして驚くことも、
精々狙われたことをちょろっと話す程度でそれ以上のことはなく。
一方でほむらにとっては今までの分を巻き返せるだけの人物を、
更に杏子とまどかの認識のずれも含めて多くの情報を得られている。
「それで南へ行ったはずんだけど、
ファフ君が魔力を感じたみたいだからどうしようか、って状態だね。」
「……まさか、魔女化?」
ファフニールが感じ取った魔力。
単なる魔力ではない可能性を考えると、
最もありうるのであれば魔女化が妥当だと思えた。
「小娘が言ってた奴だな。さやかと言う奴もそうなったと。」
「……答えが分からないわね。」
放送で死亡と言われたさやかは、魔女になっただけで死んでないとか。
マミか杏子のどちらかが何らかの原因で魔女になってしまったのか。
或いは、まどか自身が魔女……なんてことはさすがにないことは分かっている。
あれが出てしまえば世界が終わる。殺し合いそのものが破綻してしまう最早核爆弾。
これだけはないにせよ、此処に来る時間のずれが明確な答えを出すことはできない。
「どちらにしても、まどかがいるなら私は行くわ。
来るかどうかは好きに任せるけど、もし魔女ならやめておきなさい。
何があってもおかしくない。そこの彼を死なせたくないなら、尚更ね。」
一途に想うまどかと言う存在の居場所を教えてくれたからか、
或いはファフニールの在り方が何処か自分に似ていたからか。
その忠告と共にほむらは時間停止を使いつつ移動を始める。
「とのことだが、どうするつもりだ?」
「餅は餅屋かな。それに、魔法少女と関係が深いなら、
杏子ちゃんとも連携はうまくできるだろうから安心だと思う。」
「そうか。」
とりあえず人探しに北か東に行く。
結局のところその方針に何が変わるわけでもなかった。
何も変わらない。二人の関係性のように、ただ淡々と。
此処でついていかなかったのは、ある意味幸運かもしれない。
ファフニールが観測した先にある結界の中にはまどかの死体もあるのだから。
それを見れば、ほむらが何をするかは……最早語る必要はないだろう。
【C-4/一日目ㅤ午前】
【滝谷真@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品×0〜2(確認済み)、試作人体触手兵器@暗殺教室
[思考・状況]
基本行動方針:好きなコミュニティーを維持する
一.北か東へ。
二.ファフ君がドラゴンとして殺し合いに乗るのを防ぐためにも、まずは自分が死なない。
三.小林さんの無事も祈る。
四.そっか、彼女が……
五.餅は餅屋、向こうの事は彼女に任せよう。
[備考]
※アニメ2期第6話(原作第54話)より後からの参戦です。
【大山猛(ファフニール)@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:左腕喪失(再生中) 人間に対するイライラ(低)
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品×0〜3(本人未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:姫神を殺す。
一.放送に耳を傾けて今後の方針を考える。
二.ひとまずは滝谷を守りながら脱出の手段を探す。
三.……トール、逝ったか。
四.あの小娘(ほむら)時間に干渉してるのか?
[備考]
※アニメ2期第6話(原作第54話)より後からの参戦です。
※ほむらの能力を何となく感づいてます。
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(大)
[装備]:89式小銃@現実
[道具]:基本支給品×2 不明支給品(0〜3)、ゴーストカプセル(エクボ)@モブサイコ100
[思考・状況]
基本行動方針:まどかを保護し、主催側と接触する方法を探す
一.まずはまどかの安全を確保しに南へ向かう。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
最終更新:2024年08月25日 08:09