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リビングデッド・ユース

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heikoie

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 静謐な空間に、一人の男がいた。抜き身のナイフのような鋭さを感じさせる、すらりと伸びた長身の男である。
スリムな細い足を組むその男は、二十代前半といったところだろうか。瑞々しさを総身から感じさせる、若盛り真っ只中であることがこれでもかと彼の周囲に清々しい雰囲気として発散されていた。
椅子に座り背もたれに身体を預け本を読む、といった仕草だけでも絵になる、正真正銘の美形である。

 そんな男が、これ以上なく顔を歪ませていた。整った吊り上がった目元と、口元から鳴る歯軋りは、彼の前を通った図書館の客の肝を大いに冷やすであろう。
事実、不運にも彼に近づいてしまった客は、間違いなく寝る頃にはその光景が悪夢として蘇るであろう、と客自身に強い確信を抱かせた。それ程までに鬼気迫るものであるのだ。

 結果として、彼の周辺には人が寄り付かなくなってしまった。
だが、そんな周囲の異変など知らぬとばかりに男はページを捲る、捲る、捲る。

「…………こ、れは」

 男が、唐突に声を発した。図書館では私語は厳禁である、という当たり前のルールすら頭から抜け落ちてしまっている。
その様を見て、図書館の司書は頭を傾げた。そんなに可笑しな本を読んでしまったのだうろか、と。
今は深夜、客もまばらで余裕があったから、ふとした興味の赴くまま、男に声をかけてみることにした。

「申し訳ございません、館内ではどうかお静かに……」

 あくまで、男からどめどなく垂れ流される歯軋りを注意する、といった風を装い、男の読んでいる本のタイトルに目を通して……さすがの司書も、困惑を露にした。

『ジョジョの奇妙な冒険・恥知らずのパープルヘイズ』

 そう、銘打たれた所謂ライトノベルである、と認識し眉を寄せた司書が男の顔を見ると。

「……」

 まるで、ドス黒いクレバスを思わせる深みを湛えた瞳で、こちらを一瞥するなり無言で立ち去っていってしまった。たったの一瞥、それだけでぞっとするような悪寒が頭頂から足先まで全身に染み渡るように脳髄を駆け巡る。司書は実に数秒間、思考がフリーズしていたのだった。
これが、抑えきれない程に増幅された『憎悪』と『殺意』であることを、司書が知ることはきっとないだろう。

◇◇◇◇◇◇◇

 男、『マッシモ・ヴォルペ』が“観測都市”に招かれて感じたものは、驚愕と憤怒だった。
基本的には物事に興味を示さない彼が、果たして何に其処まで心をかき乱されるというのか?
もしもこの場に麻薬チーム─────ヴラディミール・コカキに、アンジェリカ・アッタナシオ、ビットリオ・カタルディの目があれば、彼のらしくない様相に驚愕の念を零すだろう。
そんな彼らが零すであろう驚愕すら、ヴォルペが感じたものの足先にも及ばないとなれば、彼が“観測都市”へと招かれてから感じた激情も少しは推して測れるか。

「ありえない……ありえない……どうなっているんだ……だが、あれは……」

 蚊の鳴くような声で、うわ言を呟き続けるヴォルペ。
深夜帯、周囲が夜の闇に包まれているからか、その形相は、幽鬼のそれだ。
彼は一体何を見たのか?
天上より地を見下ろす魔人は、笑みを浮かべたままだった。

【F-2/マッシモ・ヴォルペ(ジョジョの奇妙な冒険)/0:30】

GAME START マッシモ・ヴォルペ

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