覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート) ◆gry038wOvE



 ────このあとすぐ、新番組!!






※このSSにでてくるじんめいは
 かくうのものでじっさいのひと
 とはかんけいありません



 ♪『OVER THE TIME ~時(いま)を越えて~』の二番


 第1話
 覚醒!超光戦士ガイアポロン


 涼村 暁 シャンゼリオン/ガイアポロン
  萩野 タカシ

 高町 ヴィヴィオ
  水橋 カオリ

 石堀 光彦 仮面ライダーアクセル/ダークザギ
  加藤 コウセイ

 レイジングハート・エクセリオン ダミードーパント
  ???

 おたく 闇生物ゴハット
  石黒 ヒサヤ

 暁美 ほむら(友情出演)
  斎藤 チワ

 原作
  八手 サブロー

 シリーズ構成
  井上 トシキ

 脚本
  荒川 ナル……じゃなくて木下 ケン

 プロデューサー
  白倉 シンイチロー

 監督
  蓑輪 マサオ

 ※以上のクレジットは全部嘘です。






「あー、楽しみだなぁ、シャンゼリオンのパワーアップ」

 D-6。グロンギ遺跡。殺し合い終了までの残り時間は四時間。
 この怪しげな山の頂上で、高町ヴィヴィオは謎の十字架型の置物に磔にされて、落ち着かないゴハットを見下ろしていた。

 とりあえず、台本のようなものの内容をヴィヴィオに細かく説明して、それから先は全部この調子である。突然後ろから捕まえられてここまでワープさせられた時はどうなる事かと思ったが、案外紳士的だった。
 場を盛り上げる為だから大人モードよりも子供モードでよろしく、とか色んな指定をしている時に少しでも口を挟むと怒る彼だったが、今はヴィヴィオの緊張を察してくれている。ミスをしないように、とまで声をかけてくれて……まるで殺し合いである事を忘れて気遣っているようだ。
 人質であるヴィヴィオに対してはわりとフランクで、特にヴィヴィオも不快感を得る事はない。確かに不気味ではあるが、それでもゴハットからは邪気のような物が見られないのである。

「じゃあ、君も打ち合わせの通りによろしく。あんまり危害は加えないからね。暴れたら別だけど」

 とはいえ、ヴィヴィオは今まで生きてきた中でも、物凄く混乱しているようだった。磔にされて人質にされているはずなのに、物凄く優しい。更にゴハットは、クリスやティオを優しく撫でてから磔にしたくらいである。
 ……こんな複雑な人間には初めて会った。優しいのに、他人を人質にする人間なんて今まで見たことがない。

「あ、あの……それは良いんですけど。こんな事して、ゴハットさんの方は大丈夫なんですか? だって、本当にこのシナリオ通りなら、ゴハットさん、死んじゃうんじゃ……」

 見せられたシナリオのラストでは、ゴハットが弱点を突かれてシャンゼリオンに倒されてしまうとある。それは即ち死ぬという事なのである。
 そもそも、こうやって参加者に積極的に介入してくるのも意外であった。
 彼ら主催陣は、この殺し合いを円滑に進めていこうとする為にある程度、介入してきてもおかしくはないかもしれない。しかし、こうまで話の展開を変えて介入してくる事など、あっていいのだろうか。
 主催者たちに殺されても、おかしくないんじゃないか……? と、彼女は思うのだ。

「いいんだよ! 僕は! ……だって、夢みたいじゃないか~♪ あんなにカッコいいシャンゼリオンに倒されるなんて」
「どうして、そんな……。そんなの、悲しすぎます。どうして、あの人の事がそんなに好きなのに……。それなら、力になってあげようとか考えるのが普通なんじゃないですか!?」

 ヴィヴィオが、割と真っ当な事を言った。
 シャンゼリオンはゴハットを嫌っているが、ゴハットの方は割とシャンゼリオンに対して親身に接しているようでもある。
 ヴィヴィオにも、暁より数倍良識のある人間に見えた。……まあ、ゴハットも多少デリカシーがなく、ちょっとおかしい所もあったが。

「君は優しい良い子だねぇ……。きっと君が大人になったら、スーパーヒロインとして、君のお母さんみたいに活躍できるよ、うんうん」

 そう言うゴハットの横顔は、どこか物憂げでもあった。
 結局は、後に活躍する事になるはずだった魔導師の少女を犠牲にしているのがこの殺し合いだ。その殺し合い運営の一端を担っていたのがゴハットである。

 実際のところ、ゴハットとしては、「ヒーローは死なない」という危ない幻想を持っており、それに則って考えるならば、「高町なのははヒーローじゃなかった」と割り切って考えるのが自然である。だが、その娘こと高町ヴィヴィオの様子を見ていると、やはり彼女はヒーローだったのではないかという思いもあるのだろう。彼は間近で見せられてきたドラマに関してケチをつけるほど悪質ではない。
 死して尚、生きている人間に影響を与えていくのもまたヒーローなのだ。
 それもよく、彼はこの戦いで理解し始めた。考えてみれば昭和ヒーローも戦死者は多い。

 一人の偉大なヒロインとしてのなのはの死には、それなりに敬服の意を表し、胸を痛めているゴハットである。

「……でも、僕たちダークザイドはね、人間の天敵としてしか生きられないんだよ。人間のラームを食べる事で命をつなげていくだけの儚い生物さ」

 ダークザイドという生物は、人間の魂をエネルギーに生きている生物だった。
 即ち、人間側にとって悪事にも見える殺傷行為は、全て彼らの生理現象の中に納まっている至極当然の行為なのである。
 ゴハットはその中でもとりわけおとなしい方で、あまり積極的に人間を喰らおうとはせずにヒーロー番組に夢中になる変わり者だったが、それでも時折人間を食わなければ彼も生きてはいけないのだ。
 本当は、人を襲うよりも幼稚園バスをバスジャックするとか、貯水池に毒を流すとか、そういう悪さをしたかったのだが……。

「ある時、君たちの世界のテレビを見ていたら、僕たちみたいな奴らを倒して、人間を守るヒーローがいたんだ。……カッコよかったなぁ。現実にあんなヒーローがいたら、僕たちなんて一ひねりだろうと思っていた。でも、実際にいたんだよ。人間の世界にもヒーローが」
「まさか、それが……」
「うん。僕たちの世界には、シャンゼリオンというヒーローがいたんだ! ……それから僕は、シャンゼリオンに倒されたいとずっと思っていたんだよ。ああ、シャンゼリオンに倒された先輩たちが羨ましいな~……」

 ヴィヴィオは、ゴハットの哀しすぎる事情に、思わず声も出なくなった。
 そう、彼は優しすぎるが故に、倒されなければならないのだ。
 そして、そんな悲しすぎる夢を見るようになってしまったのだ。
 とか、割とストックホルム症候群紛いな状況に陥っているヴィヴィオであったが、元来の優しさゆえの騙されやすさであった。

「ずっとずっと、僕の夢なんだ。カッコいいヒーローのシャンゼリオンに倒されるのが……。ましてや、もっと強くなったシャンゼリオンに倒される事ができるなんて、本望じゃないか」

 夢──という言葉が、そのまま死に直結する事が悲しかった。
 夢を持っている事は良い事かもしれないが、それが死ぬ事だなんていうのは悲惨だ。

「……違うと思います」

 ヴィヴィオは、無意識にそう返してしまった。

「何も知らない私がこんな事を言うのも何ですけど、ゴハットさんは、本当はシャンゼリオンと友達になりたいと思っているんじゃないんですか? 本当はヒーローになりたくて……だけど、それが絶対にできないから……あなたは人間と暮らせないから、そんな悲しい事を思うようになってしまったんじゃないですか?」

 何度も言うが、ヴィヴィオは、優しかった。優しく、ゴハットの気持ちを覗こうとした。
 彼とは分かり合えないのだろうか──いや、そんな事はない。
 彼を倒すしかないなんて嘘だ。ヴィヴィオは彼と分かり合いたい。
 だが、ゴハットは、ヴィヴィオの言葉を見て、眉を顰めたらしい。

「……残念だなぁ。それはちょっと違うよ。……僕はね、やっぱりシャンゼリオンに倒されたいんだ、一人のダークザイドとして! それが嬉しくてたまらないんだ! その展開を妨害するなら、君のような相手でも容赦はしないよ!」

 彼はそう答えた。
 ゴハットは、優しいように見えて、こういう厳しい部分もある。ある意味では、度を越したオタクの狂気であった。多少の傲慢もある。
 しかし、これほど小さな少女に声を荒げそうになった事は彼もすぐに反省したらしく、少し声を抑えた。

「……だんだんわかってきたんだ、これがシャンゼリオンに倒される最後のチャンスなんだって。夢の中の存在でしかない、全てが終わればまた夢の中に戻ってしまうような僕にはね……」

 彼は、倒されたがって、死にたがっている。
 それを前に、ヴィヴィオは何もできない。何も言う言葉がなかった。
 夢の中の存在、というのがどういう事かはわからないが、とにかく彼はそう言った。
 そんな一言一言を、ヴィヴィオは噛みしめる。
 彼をどうするのが正解なのか、ヴィヴィオにも答えなど出るはずがない。

「……あ、来た来た。じゃあ、後は打ち合わせ通りよろしく~」

 ヴィヴィオは、その時、息を飲んだ。
 バイクフォームになったアクセルに乗って、レイジングハートが山を登ってくるのが見えたのだ。
 まだ判断がつかない内心。そして、正しく演技できるのか緊張する想い。

「……」

 そして、彼らはすぐにグロンギ遺跡の前で止まった。
 ヴィヴィオは深呼吸の後、打ち合わせ通りの台詞を叫んだ。

「た、助けてー!! 悪い奴に人質にされちゃいましたー!! あ……で、でもシャンゼリオンにだけは助けてほしくないんだからねっ!(←申し訳程度のツンデレ要素)」

 その内面には、少し悲しい気持ちもあったに違いない。ヴィヴィオはゴハットも助けたかったが、まずはこうして話を進めなければならないのである。
 ゴハットは、まずヴィヴィオの第一声を聞いて、まず満足そうにすると、そのまま続けた。

「フッハッハッハッハッハッハッハッ!!! ようこそ諸君!!! 君たちに倒された同胞の雪辱、忘れてはいないぞ……って、ゴボェァッ!!!!!!!」

 そんな折、ゴハットを後ろからレーザー攻撃で砲撃する者があった。ゴハットを背中から貫いた光の束は、容赦なくゴハットの体を蝕む。
 どういう事だ、こんな物は台本にはない。

 レーザーが放射された所を見ると、空に青色の合金が見えた。──先ほど見た覚えのあるロボットだ。
 超光騎士、クウレツキ。
 彼がシャンゼリオンの命令でゴハットを後ろから砲撃したに違いない。
 思わず、ヴィヴィオはそちらを見て顔を顰めてしまう。悲鳴のような声も出ていたかもしれない。

「な……卑怯な、誰だ!? こんな……台本にはないぞ……!!」

 そう言ってゴハットがもがき苦しんでいる所に、仮面ライダーアクセルはエンジンブレードを持って容赦なく走ってくる。ゴハットが膝を立てて立ち上がろうとすると、真上からエンジンブレードが振り降ろされる。
 やっとの思いでの行動だった。

「真剣白羽取りぃっ!!」

 ゴハットが咄嗟に頭の上のエンジンブレードを両手で押さえる。両手の先がぶつかって跳ねた。
 防御のつもりだったが、やはりエンジンブレードの重量は相応に重いので、このまま更に力を込められると不利だ。重力+エンジンブレードの重量+アクセルの腕力の合計が明らかにゴハットの腕力より上である。しかも指紋がないのでつるつると滑り、指先の力を相当強めねばならない。

「お、おたくら、恥ずかしくないのっ!? 正々堂々戦ってもらわないと……! ちゃんと台本通りにやってくれないとさぁ……」
「お前の書いた台本通りに戦う必要はない。俺たちがしたい事はただ一つ、お前をこの世から消して人質を助ける」
「……そんな……! ……はっ! まさか、おたく、正体を知っている僕が厄介だから消そうと……!!」

 図星であるが、アクセルは構わずゴハットに向けて力強くエンジンブレードを握り続けた。
 石堀にとって、自分の正体を知るゴハットは生かしておけない相手なのは間違いない。
 そして、台本やシチュエーションなどを無視して、一刻も早くゴハットを消してやるのが彼のすべき事である。

「ぼ、僕から教えるなんて、そんなつまらない展開にするわけないだろう!? ヒーローは自分たちの手で悪の魔の手に気づかなきゃいけないんだ!!」
「教える? 気づく? さて、何の事やら……」

 アクセルは、レイジングハートが接近してくるのを感じて、恍け始めた。
 さて、アクセルは優雅にそこから待避する。

「はあああああああああああああッッ!」

 次にレイジングハートはフェイトの姿に変身して、ゴハットに突撃してくる。
 レイジングハートにはザ・ブレイダーのデータをファックスで教えておいただが……。
 バルディッシュがハーケンモードになり、ゴハットの体に向けて叩きつけられる。

「この魔力反応……あなた、まさか──」

 ふとレイジングハートが何かに気づくが、アクセルがそこに向かっていき、エンジンブレードでゴハットの肩に一撃斬撃を放つ。

「ぐあっ……!! そんな……こんな卑怯なやり方……!! いやだ、こんな死に方はしたくない……!!」

 ゴハットの叫びも無意味とばかり、次々とゴハットの体は痛めつけられていった。時折、無慈悲に怪物の息の根を止めるのもまた正義。情を切り棄て、理を掬った結果の行動であった。
 冷酷な男と冷静と女とが、同時にゴハットを──冷淡に削っていく。彼の言葉など耳に入れる価値もなく、当然、彼に従う道理もない。
 ヴィヴィオはその様子を呆然と見つめていた。声さえ出てこなかった。

「……ヴィヴィオちゃん! 助けに来たぜ」

 そんなヴィヴィオの後ろからシャンゼリオンが現れ、ヴィヴィオを縛っていた磔の鎖を解いた。彼もまた、平然とした様子で何か言っていた。
 冷淡というよりも、面倒だから従わないといった様子だ。

「まったく……馬鹿馬鹿しいったらないぜ。あんな中学生の妄想みたいな展開で助けると思ったら大間違いだっての。さあ、ゴハットの馬鹿はあいつらに任せて、俺たちは逃げようか」

 あまりにも突然の出来事に、ヴィヴィオは何も言えない。
 確かに、シャンゼリオンたちも悪意があってやっているわけではない。──それはわかっている。厭という程、それをわかっているから、彼らに何も言えなかったのだ。
 だが、それでも彼女は一方的甚振られていくゴハットを放っておけなかった。とにかく、彼女は、そのまま、感情に任せて、ようやく言葉を発した。

「──そんな……みんな、やめて」
「え? 何? 聞こえない」

 ヴィヴィオは、悲しげな表情で、俯いてちゃんと声も出せないまま、小刻みに震えてそう言った。
 しかし、それでは誰にも声が届かない。無慈悲な戦闘音とゴハットの悲鳴がそれを掻き消していた。それなら、もっと大きな声で言うしかない。
 ここにいる暁にさえ届かないのだ。
 それならば、もっともっと大きな声で──。



「やめてーーーーーーーーーっ!!!!」



 それは、偶然その中に生じた無音の一瞬に響いた。
 ゴハットを取り囲む人間たちが、五月蠅い戦場に舞い降りた、優しくも険しい女神の声に、動きを止める。
 それはある意味、この場においては一つの攻撃であったと言えるかもしれない。
 人質による制止。人質を救う大義名分が為に殺し合っている者たちに、それほど効果的な一撃はない。

「やめて……やめてください!!」

 今度は確かに、それだけ小さな声でも響き渡った。
 ここまで巻き込まれて大事な人を奪われてきた怒りは、確かにヴィヴィオの中にある。主催者は憎いかもしれない。
 それでも、この時、ゴハットに感じていた気持ちは違う。

「私、こんなやり方で助けてほしくなんてありません!! この人の言う通りにしてあげて!! ゴハットさんの夢を……」

 ヴィヴィオは、ただ、やられているゴハットを黙って見ている事ができなかった。
 ゴハットには夢がある。その夢を叶えさせずに死なせてしまうのは、彼女にとっても後味の悪い結果になるだろう。
 ゴハットが抱えている孤独や悲しみだって、ヴィヴィオは理解しているつもりだった。
 だから──

「ゴハットさんの夢を、みんなで叶えてあげて!!」

 彼女は、無音の戦場にそう叫んだのだった。

 シャンゼリオン的には、今までで一番わけがわからない方向に話に持って行かれた気分だった。
 誰も彼もが目を点にしながらヴィヴィオの方を凝視していた。

「ヴィヴィオ、ちゃん……」

 ただ一人、ゴハットだけが、思わず呆然と彼女の方を見上げていた。



シャンゼーリオン






【超光騎士のCM】

 超光戦士シャンゼリオン!
 超光騎士たちよ、戦闘準備!
 リクシンキ!
 クウレツキ!
 そして、ホウジンキ!
 完全変形! 誕生! 超光騎士!

 走る! クリスタルステーション

※現在は取扱いしていません。


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最終更新:2018年02月05日 01:18