「やれやれ、大惨事ですね。これでは実験どころではないでしょう?」
それなりに安全そうな保護者の登場でれいの安全も確保できたのでひとまず他の場所の様子を
見に行くことにしたカラスは全方位津波によって大打撃を受けた会場の有様を上空から眺めていた。
「もはや有富が制御できているとは思えませんね。過ぎた力を行使した罰ということですか?」
島の全容を大体把握したカラスは水没した街に生えたそれなりの高さがあるビルの屋上に着地する。
「主催本拠地がどうなっているのか気になりますね。一旦戻った方がいいでしょうか?……おや?」
カラスがこれからの予定を考えているとき、異変が起こった。
突然、屋上のコンクリート床に波紋状の亀裂が走り出したのだ。
「水圧がビルの耐久力を超えてしまったのでしょうかね?……いや、違う、これは!」
激しい爆発と共に屋上の床が弾け飛び、瓦礫と共に巨大な生物が跳んできた。
「何者です!?」
「パルルルルルアアアアアアアア!!!」
強靭な体、俊足の足、耳だけ何故か丸くて斑模様の毛が生えているが、
その生き物は見紛うことなくヒグマだった。
かつて
パッチールだった生き物、ヒグマールは雄たけびを上げながら
持てる全ての力を両前足に収束してカラスに突撃した。
ヒグマールのばかぢから!
元々の威力に加え、特製あまのじゃくによる能力上昇効果によって
もはやケッキングのギガインパクトと互角以上のパワーになった一撃。
カラスが慌てて空を飛んで避けると、足場にしていた屋上の手すりが瞬く間に砕け散り、
衝撃が階下に伝わったのかビル全体に亀裂が走って建物の倒壊が始まる。
「流石ヒグマですね。見かけない顔ですがその力、初期ナンバーの誰かでしょうか?」
次々と瓦礫に飛び移りながら尚もカラスに追撃を仕掛けようとするヒグマール。
ギガインパクトと違いばかぢからは連続使用が可能な上、ヒグマールの場合は
使えば使うほど威力が増すというチート性能。
その実力はもはや島内のヒグマ達すら超えていると言えるだろう。
だが、そんなヒグマールを見てもカラスは涼しい顔をしていた。
カラスは両翼を左右に広げ、その翼を何十倍もの質量に巨大化させる。
そして広がった翼から無数の羽を弾丸のようにヒグマールに飛ばす。
「パルルルルルアアアアアアアア!!?」
そのような攻撃など今のヒグマールは避けるまでもない。
強靭な体毛で次々と弾き飛ばしながら瓦礫を足場にして跳び上がり、
再びカラスにばかぢからを叩き込む!これが神をも超えた究極のポケモンの力!
スカッ!
カラスにはこうかがなかった!
すべての力込めたヒグマールの一撃は大きく空中で空振りをしていた。
既に翼を元の大きさに戻したカラスがポケモンのわざのそらをとぶのように
はるか上空へ飛翔していたのだ。どんどん遠ざかるカラスを見上げるヒグマール。
そしてカラスは空を飛んだまま一向に降りてこない。
「パルァ!?」
だが悲劇はそれで終わらなかった。先ほどカラスが放った羽が周囲の瓦礫を全て破壊していたのである。
残念ながら飛行属性は身に付けていないヒグマールはなすすべもなく落下していく。
その様子をみてカラスは空中でため息をついた。
「なんですかその様は?単純にパワーを上げただけですか?野生の神秘も感じない。
いくらヒグマとはいえそのような強化でこのゲームを生き残れる訳がないでしょう?」
まだぎりぎりパッチールだった頃には辛うじて残っていた知性。
がむしゃらに力を求めるあまりそれすら消去してしまった今のヒグマールは
地形も考えずただただ力任せに突撃を繰り返す戦法しか取れなくなっていたのだ。
落下と共にどんどん小さくなっていく上空のカラスの姿。
それが、突然黒い球体になり、どんどん大きくなっていく。
「パルッ!?」
それは、巨大な六枚の翼と真紅の単眼を持った怪獣だった。
カラスの姿をした謎の超存在の戦闘形態。
黒騎れいが
カーズに襲われている時には使わなかった真の姿。
最も『始まりと終わりに存在するもの』の代弁者を名乗る彼女が、
単なる手駒ごときに本来の実力など出す訳ないのだが。
「あのカーズとかいう下等生物を取り込んだ時の力。
れいの矢程ではないですが、あなたごときには十分ですね」
カラスの単眼に真紅のエネルギーが収束していく。
「私はあなたになど興味はないのですよ、消えなさい」
全力で放てば宇宙を丸ごと消滅させると噂される光線を、落下していくヒグマールに向けて発射した。
ヒグマールは殆ど消えた理性の中で、どうせならはかいこうせん覚えときゃ良かったと後悔しながら、
破滅の光に飲み込まれていった。
「おや、まだ息があるのですか?紛い物とはいえ流石はヒグマの技術」
元の姿に戻って地面に降りたカラスは、黒こげになりながら倒れ伏すヒグマールの傍に近づき、
何かを思いついたかように両目を光らせた。
「棄てるのは惜しいですね――――私が使ってあげましょう」
「……パ……!?」
朦朧としたヒグマールが顔を上げると、頭だけが大きくなったカラスが大きく口を開けているのが見えた。
身動きが取れないヒグマールはどうすることも出来ず、頭から丸呑みにされ、嚥下する音と共に彼女の体内に取り込まれた。
【ヒグマール 死亡】
「なるほど、これがヒグマの力ですか。紛い物とはいえ、この力も悪くはないですね……んん?」
カラスは違和感を感じ、喉から丸い塊を口内に戻す。
ぺっ!
そして、その異物を吐き出して遠くへ飛ばした。
「危ない危ない、妙な不純物が混じっていましたか。
あんなものを摂取すれば却ってパワーダウンしてしまう」
その小さな物体は水流の上に落下し、そのまま波に飲まれてどこかへ流されていった。
「じゃあ、島の状況は大体把握できましたし、れいの所へ帰りましょうかね。
あの娘も使えなくなった時は今のヒグマの様に……」
新たな力を手に入れたカラスは、可愛い手駒の元へ戻る為に飛び立った。
【E-4:上空/昼】
【カラス@ビビッドレッド・オペレーション】
状態:正常、ヒグマの力を吸収
装備:なし
道具:なし
基本思考:示現エンジンを破壊する
1:れいにヒグマをサポートさせ、人間と示現エンジンを破壊させる。
[備考]
※黒騎れいの所有物です。
※ヒグマールの力を吸収しました
「氷で結構防いでるけど、やっぱ流れてるなぁ、津波」
アニラの作ったオレンジシャーベットを食べ終わった
北岡秀一は、
少し見回りに行ってくると言ってレストラン街から少し離れた場所まで歩いてきていた。
すっかり回復し、若返った以前より若返ったようなウィルソンさんや
見た目とは裏腹に非常に優秀な軍人である皇さんの前では現在の自分は少々立場が悪い。
だから佐天お嬢ちゃんと友好な関係を築くためにもう少し話さなきゃいけないのは分かっている。
分かっているのだが……。
『あ、皇さん丸くなって寝てるね』
『あははっ、なんだ可愛いじゃん♪』
おはぎ形態のアニラを「カワイイ」と連呼しながら背中をつついてむっちゃ和んでいる
女子中学生ズに流石についていけなくなってきたのでちょっと頭を冷やしに来たのだ。
確かに佐天ちゃんの容姿等の女性的なスペックはあの年にしては相当レベルが高い。
どんなに中身がよくても見た目だけで生理的に受け付けないという女性も多い中、
あの怪物のような容姿でも受け入れる心の寛容さは非常に魅力的だ。
「でもなぁ……ん?」
北岡は流水のギリギリまで足を運ぶと、何か痙攣している小さな物体が瓦礫に引っかかっているのが見えた。
それがなぜか妙に気になった北岡は物体に近づき、拾い上げた。
「……ぱ~……」
それは、ぬいぐるみのような生物だった。
全身がずぶぬれになった斑模様の毛を持つ熊の子供のような生き物、パッチールが
目をぐるぐるに廻して気を失っている。
「おお……これは……!!」
その庇護欲を刺激するキュートさに吊り橋効果でおはぎの様に丸まったアニラが
だんだん可愛く思えてきた北岡の脳に衝撃が走る。
目に涙さえ浮かべながら気絶したパッチールを抱きしめた。
「見なさい!可愛い生き物とはこういう奴の事を言うんだぞ!
早く帰ってクリーチャー萌えに走っているJC達に見せてやらなくちゃな、まったく!」
北岡は気絶したパッチールを大事そうに抱えてレストラン街へと戻って行った。
ボクは今まで何をしていたんだろう?
頭がぐるぐるしてあんまし思い出せない。
でも多分、もうボクには何も残っていない。
ボクは全てを失ってしまった。
でも、ひょっとしたらこれでよかったのかもしれない。
ボクは一体何に駆り立てられていたんだろう?
とりあえず、なんかもう色々疲れたからゆっくり休みたいな。
『さあ、こっちに来て!大丈夫!ずっと一緒だよ!』
「……ぱ~……」
北岡弁護士に抱きかかえられたパッチールは幸せだった頃の夢を見て嬉しそうに笑った。
【D-4 街/午前】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
状態:仮面ライダーゾルダ、全身打撲
装備:カードデッキ@仮面ライダー龍騎
道具:血糊(残り二袋)、ランダム
支給品0~1、基本支給品、血糊の付いたスーツ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いから脱出する
0:ウィルソンさんも皇さんも、俺の予想以上に有能だったわ……。考えを改めよう。
1:お嬢さんたちともしっかり情報交換して、行動方針を立てられるようにしないとな。
2:皇さん、弁護してくれよ……? 俺も弁護してあげるからさぁ……。
3:佐天って子はちょいと怖いところあるけど、津波にも怪我にも対応できるアレ、どうにかもっと活かせないかねぇ……?
4:なんだこの可愛い生き物は?
[備考]
※参戦時期は浅倉が
ライダーになるより以前。
※鏡及び姿を写せるものがないと変身できない制限あり。
【パッチール@穴持たず】
状態:重傷、気絶
装備:なし
道具:なし
基本思考:寝る
0:おやすみなさい
[備考]
※ばかぢから、ドレインパンチ、フラフラダンスを覚えています
※カラスに力を奪われてステロイドの効果が切れました
最終更新:2017年02月25日 14:55