むなしいさけび


この時俺は体を鍛えておいてよかったと、心の底から思った。
跳刀地背拳を使う為に、足腰と手を重点的に鍛えた結果、あの化け物のスピーディーな動きにもしがみつくことができたのだ。
体力が持てばの話だが。
俺に体力がないわけではない。むしろ人並み以上に多いと自負はしている。
というか拳法家なのだから、そのくらいの体力はむしろ備わっていて当然だ。
だが今回はワケが違う。

(化け物にしがみつく事を想定して体力作りなんてするかよ!)

自分の拳法は人を相手にし、尚且つ不意を狙う為のもので、獣と化け物を相手取るための拳法ではない。
宙を舞う技ではあれど、しがみつく技ではないのだ。
まあ、要するに。

(げ、限界いいいいいいい!!)

ヒグマと化け物の戦闘が終わる前に、フォックスの体力が切れてしまったのだ。
度重なる熱風と衝撃、ブラキのスピーディーな動き、まるで一種のアトラクションにでも乗ったかの如く、フォックスの体力を奪っていった。
それによりブラキもヒグマも、疲弊はしたのだがフォックス程体力を浪費しているわけでもない。
結果二匹の戦い終わることなく続き、ブラキがヒグマに飛び掛ったその時。
フォックスは手を放してしまい、地面へと叩きつけられたのだった。
肺の中の空気が全部外へ出て行き、呼吸ができなくなる。

「すーはー……く、くそ早く逃げねえと……!」

ようやく息が整ったので立ち上がり、爆発音が鳴り響く方向に背を向け、走り出す。
全速力で逃げた先も森、そのまた先も森。
段々と爆発音も小さく聞こえるようになり、ほっと胸を撫で下ろし速度を落とす。
やがて音は聞こえなくなり、足を止めその場へへたり込む。

「ぜーっ、ぜーっ、よしもう大丈夫だよな……!」

息も整ったところで、早速支給品を確認することにした。
本来なら最初に確認しようと思っていたのだが、初っ端から化け物にあってしまったからしょうがない。
兎にも角にもようやくこれで……これで?

「……無い」

さっきまで背中にしょっていたはずのデイバッグが無くなっていた。
辺りをくまなく探してみるが、やはり無い。
確かにさっきまで手元にあったはずなのだが……、まさか。

「あ、あそこにおいてきちまったぁぁぁぁぁーーー!!!」

ようやく思い出した。化け物あら振り落とされたときの衝撃で、デイバッグが背中からするりと放れてしまったのだ。
それに気付かないで化け物共から逃げようと必死になっていたから、忘れていたのだ。
想定外の事態に、フォックスは思わず頭を抱えてしまう。
あそこにはもう戻りたくないし、となると武器はこのカマだけになってしまう。
つまり不意打ちを狙う跳刀地背拳しか、自分に攻撃手段は無いのだ。
しかしそれを狙うにはあまりにもリスクが高い。ヒグマに遭遇してしまえば一発でボン!だ。
また狙いすぎるのもよくない。察しがいい奴に気付かれて、逆に殺される可能性が高いからだ。
万に一つも成功したとしても、先程の化け物と同じような硬さでもアウト。
加えて食糧も水も無いから、長期戦も厳しいであろう。
つまるところ、状況はかなり不利になってしまった。
まあ、あのデイバッグの中身が中身ならば、今の状態になってもおかしくはないが。

「しゃーねえな。あそこには戻りたくないし、このまま行くか」

いざとなったら友好そうな人間を装えばいいんだしな。
そう、まだ慌てるような時間じゃない。
世紀末では慌てたほうが負けなのだ。冷静になれ。
こんなときこそ、あの行動を取るのだ。


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       着   す       l l|,,ィ彡;;|''"゙゙'≦、、   :::l.|〉l',ll|     :   :
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「ふぅ……、さて行くか」

小便をしたことにより、フォックスの頭と心はスッキリとした。
下げたズボンを元の位置に戻しまた、あの場所から離れようと動く。
しかし二歩ほど足を進めた後、後方から物凄い強風がフォックスを襲った。

「うおっ!? んだよいきなり!」

どう考えてもこの風は自然のものではない。となると、これはヒグマと化け物が起こしたものだと考えられる。
もしあの場にいて風の直撃をくらえば自分の体は宙に舞い、地面へ叩きつけられ死ぬだろう。
死ななくても骨の四五本は折れるだろうし、どのみち致命傷は避けられない。
現にドサッという音がして、人が落ちてきたのだから、自分もこうなっていた可能性が高い。
当たり所が悪かったのだろうか。ピクリとも動く気配がなかった。

「おお、ラッキー! デイバッグもらっとくか!」

地に落ちてきた人など目もくれず、デイバッグを持ち去るフォックス。
世紀末を生き抜く為には、他者など気にするだけ損だと彼は学んでいた。
世は弱肉強食であり、強いものにと徒党を組んでこそ生き残れると彼はそう確信していたのだ。
まあ、今組んでいる奴が強い奴かどうかはさておき。

「とと、さっさと離れねえと。こんなのにはなりたくないしな!」

【こんなの(しんのゆうしゃ)@シャドウゲイト 死亡】

【D-8/森/深夜】

【フォックス@北斗の拳】
状態:健康
装備:カマ@北斗の拳
道具:基本支給品、ランダム支給品0~2(@しんのゆうしゃ)
基本思考:生き残り重視
1:あの場から離れる
※勲章『ルーキーカウボーイ』を手に入れました。
※フォックスの支給品はC-8に放置されています。

【C-8/森/深夜】
ブラキディオス@モンスターハンター】
状態:怒り
装備:なし
道具:なし
基本思考:目の前にいる敵を倒す
[備考]
※キングサイズです。更に恐ろしく怒りやすい固体です。
 またG級の固体であるために、甲殻は重殻へと進化しています。

【羅漢樋熊拳伝承獣ヒグマ】
状態:健康
装備:なし
道具:なし
[備考]
※羅漢樋熊拳を継承したヒグマです。
※過去百匹のヒグマを殺害したので、戦闘力は普通のヒグマより非常に高いです。
 加えて散弾銃では傷一つつきません。


No.065:ヒグマメタファー 本編SS目次・投下順 No.067:その男、逸脱者につき
No.061:呉キリカの大切なもの! 本編SS目次・時系列順 No.032:山の神の怒り
No.043:カウボーイ フォックス No.091:狼疾記
ブラキディオス No.096:打ち出す拳
羅漢樋熊拳伝承獣ヒグマ
しんのゆうしゃ 死亡

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最終更新:2015年01月19日 00:27