移動中。
こうしている間にもバトルロワイアルの恐怖に震えている人間たちがいるというのに、会場を黙々と走り抜けていく一台のキャンピングカーの運転手達は随分と呑気なものだった。
……なんてそれっぽい地の文を打ってみたが、残念。語り部はおれ、
熊本潤平でした!
痛てっ! 石を投げないで!
全く、おれで何の不満があるってんだよ。これでも一人の女を早速ゲットしたんだぞ?
崇めよ讃えよ――うわ、ちょっと岩は勘弁して欲しいな。それ死ぬから。まず死ぬから。
……こほん。
真紀ちゃんとの劇的な和解ら数十分余り、おれはこうして助手席で車の揺れを感じ続けている。
目を閉じて瞼の裏であんなことやこんなことを考えてみたらどうだろう。
もしかしたら俺の心象風景が具現化して、美少女天国が生まれてくれるかもしれない。
みんなで圧倒的火力で、バトルロワイアルを力づくでぶっ潰してくれるかもしれない。
わーい、思い立ったが吉日。さあ、妄想タァイム……
「ぐほぉっ」
「女の子に運転させておいて寝るな」
「寝てなんかいないさ。心象風景をだな、」
「頭がおかしいのね。家に帰ったら黄色い救急車を呼んでもらったら?」
「な、なかなか辛辣なツッコミスキルをお持ちで……」
真紀ちゃんの肘打ちを受けてきりきりと痛む脇腹をさすりながら、おれは苦笑いした。
確かにあれだけ大見得を切っておいて、彼女に退屈な思いをさせてしまうのはまずかったな。
そいつは不誠実だ。反省反省。
でもでも聞いてくれよ。おれだって精一杯の配慮をしてるつもりなんだぜ?
全部が全部整った道じゃないんだから、運転経験が浅い真紀ちゃんには絶対安全ってわけじゃない。
もし事故ったりして、可愛い顔に傷でもついたらおれは首を括らなきゃならん。
ま、それが誰かの手によって起こされたものなんだったら、おれは鬼にだってなるけどな。
女の子の顔に傷をつけるような男は、クズ以下のゴミだろ。
断じて許さん。万死どころか億死、いや兆死に値する。
ましてやおれは女の味方。そんな輩がいたら只じゃおかない。
あ、男は別に。勝手に友情を深めあっててくれ。青春だな。
「……しっかし、なかなか人に出会さないもんだねえ」
「全くよ。幸か不幸かは分からないけど」
「多分幸運だよ。大体、さっきだって一歩間違えれば殺し合いに巻き込まれていただろう」
キャンピングカーで会場を走行していれば、良くも悪くも相当に目立ってしまう筈だ。
誰かしら接触してきてもおかしくないんだが、おれ達は未だ誰にも出会えてはいなかった。
ぐるぐると会場を巡って、死体らしきものも何体か目撃した。
セナちゃんみたいに、殺されてしまった人間がいる――殺し合いは確かに始まってる。
おれは改めてそんな当たり前を心に刻み付けてきた。
勿論、真紀ちゃんとの約束を果たすことは絶対だ。
遥光を捜すことも変わらない。
だけどそれに急いで、この娘を蔑ろにしてしまったら、それは只のクズ男だからな。
おれはそうはならないさ。
「ん、そういえば真紀ちゃん」
「なに?」
「真紀ちゃんは、信用できそうな人とかいないのか? ……ってのもおかしいけど、知り合いは?」
うーん、と唸り出してしまった。
居ないという訳ではなさそうだが、おれには分かるぞ。あれは説明に窮している顔だ。
さて、その間にひとつ捕捉説明をさせてもらおうと思う。
おれ達は今現在、つい数十分前まで目指していた目的地に『向かっていない』。
何故か、といえば、明らかに現在殺し合いの真っ只中ですよ危ないですから近寄らないで死んでもしりませんよ、むしろ万々歳ですけどねふふふ……と言わんばかりの物騒な音が響いてきたのだった。
何処から聞こえたのかは分からなかった。
このだだっ広い会場で反響する音だ、何処が出所かも分からない。
これは由々しき問題である。おれ達の乗っている車は、滅茶苦茶に目立つ。
駆動音だって隠し切れるものではないだろうし、徒歩ならまだしも確実にバレる。
……おれが真紀ちゃんに使ったように、車はタイヤを破壊されればどうにもならない。
チェックメイトが一瞬で成立。
マシンガンで掃射されでもしたら、抵抗する間もなく返り討ちになる可能性が微量以上にある。
乗っているのはおれだけじゃない。真紀ちゃんもいる。
なら―――危険は犯せない。それが、おれ達二人の決断だった。
それなら今どこに向かっているのか? ……知らん。
仲間を募るのは真紀ちゃんが若干嫌そうだし、お先は真っ暗である。無論そんな深刻な意味じゃない。
―――ポジティブに言う!
これはドライブだ。可愛い女の子に先導されてのドライブ! ひゃっほう!
いいねいいね、最高だねェ! あわゆくばあの華奢な足で膝枕して貰いたい!
お世辞にも清廉潔白とはいえない邪な考えを脳内妄想として垂れ流し、少し薄ら笑いが漏れていたかもしれない。そんな時、おれの問いに真紀ちゃんが静かに答えた。
「人を撃ちたくて警察官になった奴ならいるわ」
「……それ職権濫用じゃない?」
「間違いなく。あいつにそういう認識があるのかも分かんないわ」
この世は意外とバイオレンス。
人々の平和と安心を守る筈の警察官が嬉々として銃をぶっ放す。
江戸時代にも役人は野良犬だとか奴隷だとかを刀の試し切りに使ってたとも聞いたことがあるし、人間の根本的な部分にはそういう衝動がインプットされているのかもな。
バットの殴り具合を友達で試すガキ大将もいるくらいだ。……いや、それはおかしいか。
「あいつ、どうしてんのかな」
そう言って窓の外を少しぼーっとした様子で見つめた真紀ちゃんの目は、どこか哀愁を漂わせていた。
単なる見間違いと片付けるのは確かに簡単だ。
だけど、そんな風に片付けてしまうのは無粋というものだろう。
きっと真紀ちゃんが今脳裏に描いている人物(仮にジャイアニズム警官とでもしておく)は、彼女の以前参加していたバトルロワイアルで何かしらの関わりを持った人物だ、とおれは思う。
殺し合いの最中から呼びつけたり出来るんなら、死人を蘇らせることだって造作もない筈。
――人無は、それを賞品にも提示していたしな。
あの一瞬、
新藤真紀という一人の人間が、死んだ筈の知り合いに思いを馳せたのは間違いない。
その優しさがあれば真紀ちゃんはまだ大丈夫だと、引き返せると、その一瞬でおれは改めて確信する。
……でも辛気臭いのはあれだな。
やっぱり女の子には笑っていてほしいからなー。だけど今ちょっかいだしたら危ない……ぐぐ、我慢。
とりあえず適当に話を振ろう。
目指すは向日葵のごとき笑顔、ビューティフルスマイルだ。
「真紀ちゃん、ひとついいかな」
「ん? 何よ、何かここの道荒いから手短に済ませてね」
「改めて言うけど君って超可愛いよな」
「ぶはっ!?」
キーッ、ザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!と、壮絶な音が鼓膜を喧しく打ち鳴らした。
振動がおれの全身を揺らし、ドアに身体がぶつかって気の抜けた声が漏れる。なんか情けねえ。
でも真紀ちゃんも可愛らしい声をあげて慌ててくれたからどっこいどっこいだな……素晴らしい。
是非とも録音して、毎日の朝の目覚ましアラーム音源に使いたい。
退屈な時間にも、音楽プレイヤーにぶち込んで耳元で延々再生していれば永劫飽きることはない。
スピーカーで流してでも見ろ。大音量。もう最高だな。
……さて、現実逃避はこのくらいにしておくか。
まさか真紀ちゃんがここまで慌てるとは思わなかった……事故一歩手前じゃねえか!
無言で冷ややかな視線を某国民的ヒーローのレーザービームの如く送ってくる真紀ちゃんに向き合う。
「ご、ごめん。怪我はないか? 傷とかついてないか? よーしこれはもうおれが直々に」
「…………」
「あ、あの。無言って一番きつい精神攻撃だって知ってる?」
「…………」
「す、すいませんでした」
「…………」
「ぐうの音も出ねえや! 何も言われてないけど!」
暴力に等しい無言の静けさと、茨の棘のような氷点下の視線を浴びながら、おれは一人悶絶する。
うん、だけど今のは完全にこの熊本潤平、一生の不覚だったな。
遥光の奴のノリは誰でも彼でもに使える訳じゃないこと、危うく忘れてたぜ。
傷がないあたり安心しても良さそうだが、この失敗は墓にまで持っていくことにしよう。
でもおれだって健全――かは知らないけど青少年。
たまには異性にちょっかいをかけたくなる……え、たまにはじゃないって? そうだったかもしれん。
「……馬鹿、タイヤまたパンクしたらどうするのよ……はぁぁぁ」
嫌味っぽく長い溜め息をついて、またも真紀ちゃんはおれのメンタルに少しずつダメージを与える。
も、もうギブだ。
自分が一方的に悪いし危険に晒してしまっているしで、誤魔化すにも誤魔化せん。
ポ○モンだって瀕死状態のポケモンに攻撃しちゃダメだろ。おれに死ねと言うのか真紀ちゃん。
ん? よく考えてみればそんな真紀ちゃんもまた悪くない……むしろ良いぞ。
目の前の少女の無限の可能性に内心頬を緩めながら、表面上は真剣を装う。
何でってそりゃあなた、これ以上ふざけ倒したら鉛弾が飛んできそうだもの。
はぁ、ともう一度溜め息をついた真紀ちゃんは、無言でエンジンをかけ直した。
ぶろろろろろ、という音がエンジンが駆動したことを告げる。
少し走ってみると、どうやら致命的な損傷はないらしい。一安心。
「潤平、降りてさっきのところまで戻ってきてくれない? 部品とか落ちちゃってたら大変だし」
「え、車で戻ったらいいんじゃないのそれ」
「私は車の傷を見とくわ。潤平はさっきのとこまで戻ってきてね」
「じゃあ一緒に行けば……」
「……行ってくれるよね? じゅ・ん・ぺ・い・くん?」
「わ、分かった。分かったよ真紀ちゃん。おれ喜んで行ってくるぜ。うおおおお!!」
やべ、氷のような笑顔ってああいうのを言うんだな。勉強になった。
顔は可愛らしい笑顔を作ってるのに目だけが剣呑な殺意を放ちまくっていた。
でも元の素材がとんでもないからどんな顔しても可愛い! マジ天使!
凛々ちゃんはああいうキャラじゃなかったしな……あの子がああいう顔したらどうだろ。
……うん、ヤバいな。中学生の瑞々しい肌から作られる笑顔と、幼い色をまだ残した目から繰り出されるそれだけで人が殺せそうな視線……何か新たな道に目覚めそうだ。
勘違いしないでくれ、別におれはドMとかそういうのじゃないからな?
女王様の格好をした女も可愛いし愛せるけど、その専門家じゃないからな。ここ重要。
「って、結構遠いんだけど……」
軽く四百メートルくらいは離れてる。
全速力で半分近くは走れたけども、あんまり飛ばすと後々疲労が溜まりそうだ。
足をこんなことで怪我したりしてたら間抜けすぎるし、真紀ちゃんの冷たい瞳が優に想像できる。
一応小走りに速度を落として、さっきのキャンピングハリケーン(今名付けた)事件の現場に。
スリップの痕は若干残ってるけど、別に何か部品が落ちてるわけじゃない。
吹き飛んでしまっていたらそれは探しようがないが、そんな大きなパーツが飛んでいったらさすがに気付くだろうし、色んな意味で大事には至らなかったと見て良さそうだ。
「ふぅ、安心したぜ。戻るか……遠いなあ」
遥か彼方まで、道のりは長い。
これがバトルロワイアルなんかじゃなかったらきっと一分ちょいで済むんだろうか。
それでもさっき言ったように全速力で走って怪我でもしたら……ハッ!?
何てことだ、おれは今真紀ちゃんをみすみす危険に晒してしまっているじゃないか!
一度ならず二度までも……うおおおお、急がねば!
「全力、全力全力全力全力全力全力全力……!!」
端から見るとどう見ても不審者の様子だが、おれは至って正常である。
目を剥いて四百メートル先の美少女の元に駆けていたとしても、正常である。ご了承下さい。
時間にして一分三十秒くらいといったところだろうか。まあまあだな。
「真紀ちゃあああああああああああああああん!!!!」
「あらおかえり……って、どうして全速力なの。そりゃ四百メートルくらいならまだ短距離だけど」
「きみが心配だから全力で帰ってきたんだよ」
「ふーん、潤平って陸上選手志望だったのね。だから全力で走ってきたのね。すごいすごい」
「露骨に現実から……はぁ、目を逸らさない……!」
相変わらずつれない真紀ちゃんだけど、どうやら車体にも異常はなかったらしい。
なのにわざわざ外で待っててくれるなんて、そのささやかな優しさが心に染みるぜ。マジ天使。
「なんかすっごい心外なこと思われてる気がする……」
「実はおれは読心術師でね。きみの潜在意識までお見通しなんだよ」
「やっぱり潤平って頭おかしいわね。置いていこうかしら」
漫才めいたやり取りをしながら、おれたちは再びキャンピングカーに乗り込んだ。
一瞬「二人の愛の巣」ってネタが浮かんだけど、それを言ったら今度は車から叩き出されそうだ。
おれは女のためなら鬼にでもなれる人間だと自負しているが、別に陸上選手じゃない。
四百メートル一本……実質もっと走っておいて、息一つ切らさないような真似は無理である。
呼吸を整えて、今度は車を停めた後で思う存分楽しもう。そうしようそうしよう。
「でもま、丁度良かったかも。少し休憩にはなったしね」
「そうか。じゃあもっと休憩しようぜ」
「少し休憩にはなった死ね」
「すいませんでしたぁ―――――!!」
土下座の勢いで叫ぶおれを余所に、真紀ちゃんはエンジンをかけ、もう一度走り出そうとする。
しかしおれはそこで、今度は少し真剣な声色でもう一度促した。
「いや、真面目な話。これからどうするかも決めとかなきゃいけないだろ?
行く宛もないし、いくら何でもあんなヤバそうな音の真っ只中に乗り込んでいくのは無理だったし。
セナちゃんをどうにかしてあげたいけど、肝心のおれ達が殺られたら本末転倒だからね」
「……あなたってさ。何も考えてない女好きに見えるけど、何でそんなに切り替え早いの?」
方針を転換した時に、目的地に向かうのを止めようと進言したのも何を隠そうおれである。
『おれたち二人の決断だった』と言えば聞こえはいいけど、実は真紀ちゃんと意見が対立した。
一度殺し合いゲームを制している彼女は、正面突破を提案したのだ。
いざとなったら実力行使。
その躊躇いのなさは、やっぱり一度『優勝』しているだけあるな、と思うに足るものだった。
だけどそれは戴けない。
女の子にはやっぱり、人並みの生き方をして貰いたい――だからおれは、意見を曲げなかった。
人を殺さないにしても、リスクが大きすぎる賭けはしたくない。
もしもおれたちが徒歩だったら別……でも、まさかセナちゃんを担いだまま移動なんて出来ない。
気持ち悪いとかじゃない。
現実的に考えて無理だというだけで、おれはそんなことも分からないような馬鹿じゃない。
自分で言うのも何だけど、な。
「……まあいいわ。そういう理由なら乗ってあげる」
仕方ない、って感じで何度目か分からない溜め息をつく真紀ちゃん。可愛い。
おっと、さすがにもうふざけるのはやめにしよう。
そろそろ―――決めなきゃいけないことも、あるわけだしな。
「じゃあまず、これからどこに行くか、だな」
地図を広げて、今のおれたちがいるエリアを指差す。
適当に走っていたとはいえ、一応こまめに自分たちのいるエリアを確認してきたのがここで役に立つ。
まあ、これは真紀ちゃんの指示だったんだけど。
現在おれたちがいるのはC-3エリア。
平原地帯というだけあり、見通しはなかなかいい。逆に言えば、敵から攻撃される危険もかなりある。
車は便利だが、弱点を剥き出しにしていることを考えると安全では決してない。
「建物は……色々あるわね。ラブホテルかしら?」
「随分と豪華な作りだな……うーん。人は集まってる……かもな」
「じゃあ決まりね」
「何というかもうちょっと考えて……いや、でも悪くないか?」
うーん、とわざとらしく声を出しておれは腕を組む。
地図上で見れば距離は決して近い訳ではない、むしろ遠いが、こちらには『足』がある。
どのくらいかかるかは分からないが、急げばそんなに掛からないかもしれない。
「よし。じゃあこのホテルを目指そうか」
「異論はないわ。ただし、ホテルだからって期待しないことね」
「おれはそういうのはあんまりないんだ。安心していいよ」
「そう」
うむ、些か予定していたより早いけど、目的地はとりあえず決まったぞ。
これから早速そこを目指すことになるんだろう。
しかし、まだ決めておかなきゃいけないことはある。
「真紀ちゃん、仲間を増やすって言ったら怒るか?」
「………」
そう、これだった。
真紀ちゃんとおれの結んだ契約――約束と言っておこう、の条件には一つ、条項があった。
「面倒には巻き込まないこと」―――同行者を増やすと、何かと面倒なのは確かだ。
捜し人の遥光はまだしも、無作為に協力を求めていくのは条項に違反するといってもいい。
内部崩壊やら何やら、リスクも非常に高いからだ。
しかし、二人より三人、三人より四人の方が有利になるのは覆せない事実である。
案の定というか、真紀ちゃんは眉間に僅かに皺を寄せて、考え込むような素振りを見せた。
「……潤平の言ってた遥光さんのことだけじゃなくて、よね」
「そうなるね」
一度このバトルロワイアルの模倣、いやむしろそっちがアーキタイプなのかな。
とにかくそんなものに参加して勝ち抜いているから、若干人付き合いに警戒を覚えるのかもしれない。
無理はない。
仕事人紛いのことを七人分もやれば、自然と思考だってそういう殺人犯寄りに改革されるだろう。
真紀ちゃんに文句を言うのは筋違いである。
文句をつけるなら、こんな可愛い女の子を腐れゲームに巻き込んだ主催者の奴だ。
そう考えれば、遥光のことを了承してくれていたらしいことは彼女なりの譲歩だったのかな。
だとしたら、おれの言ってることはあまりに自分勝手、紳士の片隅にもおけない我が儘だ。
いくら真紀ちゃんの安全の為でもあるとはいえ、押し付けるのはちょいと傲慢が過ぎる。
思いやりと過保護は違う。前者は心からの善意だが、後者は自覚なき悪意だ。
女を愛でる『変態』のおれに限って、女に悪意を押し付けるなんて―――あっていい筈がないだろ。
だからこればっかりは、最初に真紀ちゃんの戦意を壊した時や、方向の転換を打診した時のように、真紀ちゃんの意思に異を唱えてねじ曲げることは出来ない。
彼女が嫌だと言ったらそれまでだ。すっぱりと諦め、また別の方法を考えればいいんだから。
「……ねえ、潤平。ひとつ聞いておきたいことがあったんだけど、いい?」
「ん、何? 何でもこのおれで良ければ答えてやろう」
新藤真紀という少女にしては珍しくおずおずとした様子で、彼女はおれにそんな許可を取ってきた。
無論、断る道理がない。それが女の質問であるなら、答えてやってこそのおれ。
様子を見る限り大事なことみたいだし、ここは一丁サービスして、何でも答えてやるとしようかな。
「ありがと。じゃあ、もし潤平の答えを聞いたら―――いいよ。同行者集め、了承するわ」
ふむ、交換条件というやつか。
こっちは対価なしで答えてやると言っているのにわざわざ提示してくるあたり、やっぱり良い子だ。
……勿論異論はない。
真紀ちゃんが良いと言っているんだから、ここは大人しくそれに甘んじさせて貰うとしよう。
問題はどんな質問飛んでくるかだな。はてさて、おれは彼女の望む答えを出してあげられるのかね?
「分かったよ。交換条件了解だ。どんな質問でもどんと来やがれ」
爽やかスマイル(自称)を浮かべて、もう爽やか過ぎる声色(自称)で、おれは真紀ちゃんに言った。
これからは国語辞典で爽やかってワードを引いたら『熊本潤平』が来るかもしれんな。
そんないつものおふざけ思考回路が稼働し始めたとき、真紀ちゃんはついにその問いを投げた。
「――――潤平は、遥光さんが死んだらどうするの?」
すぅぅぅううううううっ、と全身の熱が冷めるのを、おれは確かに感じていた。
その質問が紡がれた瞬間に強引に思考回路は繋ぎ直され、真剣なおれに戻された。
不思議とショックみたいなものはなくて、あったのはどこか分かりきったような寒さだけだ。
飯島遥光がどこの誰とも分からない馬の骨に殺される、言うならば最悪の未来。
おれが最も忌避し、忌避するあまり無意識にどうやら逃避さえ始めていたらしい、可能性の一つ。
おれは感情をなるだけ包み隠して、答えた。
「殺した奴を殺す。主催者も殺す。この上なく酷いやり方で殺す」
物騒な言葉を壊れた音楽プレーヤーのような調子で吐き出した。
その声はおれ自身でも鳥肌が立つのを禁じ得ないだけの寒気を孕んでいて。
真紀ちゃんもおれの感情が大きくぶれたのを目前で見て、一瞬だけびっくりしたように身を震わせた。
怖がらせちまった。こんなの、熊本潤平失格だな。
「……こんなこと聞くのもあれだけど、生き返らせようとは思わないの?」
「そりゃきっと、生き返って欲しいとは思うさ」
「なら――――」
違う。違うんだよ、真紀ちゃん。
おれはそんなことはしないし、あいつだっておれがそんなことをするのを望まない。
「おれが殺し合いに乗ることは未来永劫、絶対にない」
たとえば、自分の理由で真紀ちゃんを殺せるか?
そんなもの答えるまでもなく断じて否だ。有り得ん。
命ってのは、たった一人の願いの為に差し出されていいほど軽いものじゃねえんだよ。
おれとあいつが特別な理由なんて何処にもないし、むしろおれは女を殺していくとか、考えただけで首を括りたく程に有り得ない。おれは殺し合いに乗れないように出来ていると言っても過言じゃあない。
真紀ちゃんが何かを案じているなら、それは見当違いというものだ。
―――と、今のおれは言うが。
殺し合いに乗れないにしろ、万一、絶対にあってはならないことだがあいつが死んだりしたら―――おれは自分がどうなるか分からない。当然だ、そんなことあってはならないことだから。
狼狽するのはまあ間違いないとして、再起不能になる可能性だって存在する。
そう考えると、おれは心の底から怖いと思った。
「……ひょっとして心配してくれたのかな? だったらおれは感激の至りだけど」
「残念でしたー。心配とかじゃなくて、本当にちょっと気になっただけだから」
「またまた照れなくてもいいんだぜ? お兄ちゃんが心配で~とか、そういうのでも一向に構わん」
「さてと、次は何百メートル走りたい?」
だんだん殺気が籠ってきたのでこの辺にしておこう。あー楽しい。
「てか、あなたはどうしてそんなに私をおちょくるのかしら? 楽しいの?」
「そりゃ楽しいさ。可愛い女の子と戯れて楽しくない男なんていないだろ」
「可愛いねえ……ふん、だったら長台詞で説明してみるがいいわ。どうせ口だけでしょ」
その言葉が、おれの中のスイッチを押した。
控えていた感情が一気に溢れ―――口が開き、お決まりの『あれ』を吐き出す!
「まあ真紀ちゃんといえばまず目につくのはその綺麗な緑の髪の毛だよな。
下手なアクセサリーと比べても見劣りしないだけの価値がある、綺麗な色をしてる。素晴らしい。
風が吹いたときにふわっとなびく姿なんか、可憐以外の何物でもないよ。そしてその風に乗って鼻に届くシャンプーの芳しい匂いがまた最高なわけだ。スパイスみたいなものだな。
ただでさえ素材が最高品質なのに最高のスパイスを合わせることによって奇跡とも言うべき化学反応が起きて、互いの良さを数倍にまでも増幅している。高めあっている。
で、そんな良い匂いと色彩の髪の毛を撫でたいと思うのはまた必然。事実おれはずっと真紀ちゃんの頭を撫で撫でしたいと思っている……勿論逆も良いな。
膝枕されて、上から真紀ちゃんが見下しつつおれの頭を撫でてくれるってのも悪くない。むしろ良い。
だけどやっぱりおれも撫でてみたい。
願わくばその柔らかそうなほっぺたをむにむにと触ってみたいし、引っ張ってもみたい。
おれが真紀ちゃんを膝枕するってのも捨てがたい。
結局どんなシチュエーションでも、きみほどの逸材なら最高シチュエーションに仕上げてしまうんだ。
そしてこう言ったら怒るかもしれないが、真紀ちゃんの身体はとても凹凸に富んでいるとは言えないだろう。世間一般に言う『貧乳』『スレンダー』ってやつだな。
おっと、誤解しないでくれ。
別におれはきみを貶めようとしているんじゃない。むしろその逆だ。
この現代で貧乳は決して短所にあらず。むしろ長所と言い換えることも出来る立派なステータスさ。
考えてもみてくれ、確かに巨乳女子の胸には心地よいかたまりが二つある。だが、貧乳女子は間に物を挟まない分前者より密着することが出来るのだ。どちらも甲乙つけがたい逸材なんだよ。
その真ん中に『普乳』っていうのも挟まるんだけど、それはこの際置いておくとしよう。
おれはここに提唱する。
『胸の大きさで女の価値が落ちたりすることは絶対に無い』ッ!
どんな胸であっても例外なくその女のステータスを底上げし、魅力となって現れる。
そしてこの法則は当然真紀ちゃん、きみにも如何せんなく適用されるわけだ。
きみ自身が纏っているどこか物静かな凛とした雰囲気を、そのスレンダーな体つきがいい方向で増幅させてくれている―――故に、美少女の名に恥じないだけの可愛らしさを醸している。
見る者にか弱ささえ懐かせるスレンダー体型は、おれのような男に嫌でも保護欲を沸かせてくれるね。
さて、ここまで外見についてだけ触れてきたが、無論きみの魅力は外見だけにあらず。
さっきも言ったけど、どっちかといえばきみはクールアンドビューティーな感じだよね。
表面では冷静だけどその中にはちゃんと人らしい面が隠れている……どうだ、最高だろ?
よく似たものでこの世にはツンデレという属性が存在しているが、きみのはツンデレから派生したものだね。リアル次元ではちょっとレアな属性だ。
殺し合いを一回経験したからってのもないわけではないだろう。だけどそれはきみ自身の持ち味だから恥じることはないよ。むしろそれはそれで需要があるから。
謙遜することはない。少なくともおれにとっては最上級Sランクの需要がある。
さっきも言ったように、こうしている間にもきみと戯れたくて仕方ない。可愛いは罪だよ。
いや勿論そんな罪ならみんなじゃんじゃん犯してほしいんだけどね? おれは一向に構わない。てかお願いします。じゃんじゃんお願いします。
さて、少し話が横道に逸れてしまったからここで起動補正をかけて元の話に戻すことにしようか。
つまり、きみのそのどこか冷たげな雰囲気が、きみの可愛らしい外見と非常にマッチしているとおれは言いたい。言うならば物静かなエリート少女、って感じだ。
言葉にすれば簡単だが、おれが最初にきみを見たときに覚えた高揚はとても言葉じゃ表せん。
うおおおおおおぉおおおおおおお! と割りと本気で叫ぼうと思ったくらいだよ。
きみを怒らせてしまった時にきみがおれに向けてくるダニを見るような瞳もまた良し。
だけど時折覗かせる年頃の女の子らしい表情や素振り、それもまた甘い蜜のようにおれを癒す。
普段のクールな態度も本当に可愛いんだけど、冷たさの中に一瞬現れる温もりが、最初に言ったように冷たさと温かさの両方の価値を数倍にまで跳ね上がらせてくれるんだ。
よって、以上の事柄を根拠におれは唱える。
真紀ちゃんはめちゃくちゃ可愛い、以上証明終了だ」
ふう。少し足りなくなった酸素を吸い直しておれは真紀ちゃんの反応を見る。
ぽかーん、と口を開けている。
ははは、おれのあまりに完璧すぎる証明に言葉もないのか。
おや、右拳を握り締め始めたぞ。
それを振り上げて、何をするつもりなんだろう?
「初めて会った時からそういう目で見てたのかよっ!!!」
ごつんっ!
鈍い音と同時に、おれの頭に拳骨の痛みが押し寄せた。
◇ ◆
ぷるぷると、一人の女性がその身体を小刻みに震わせていた。
しかし、それが恐怖による身体の痙攣とは無縁のものであることは、恐らく誰の目にも明らかだろう。
白装束の女性の顔は、引き攣った笑顔。
元の素材は美人であろうに、怒りに満ちた引き攣りがその魅力を帳消しにしてしまっている。
そう――憤怒の称号を冠されし
巴御前にとって、今の状況は激怒に値するものだった。
「っっっ――――なぁんで迷うねん!!」
精霊である巴御前がこうして道に迷っているなどとんだお笑いだが、現にこうして、迷っていた。
記憶を思い返せば、確かに自分はデパートに向かおうとしていた筈である。
しかし、地図を一目見ただけですっかり慢心してしまい、余裕綽々で進んでみればこの様だ。
ラブホテル城を出て早数時間、暢気に歩きすぎたこともあり、目的地にはきっとまだ程遠いだろう。
(……しっかし、本当にけったいなもんに巻き込まれたもんやなぁ)
バトルロワイアル。
戦の時代を生きてきた彼女であっても、そのルールと趣向には嘆息するばかりであった。
精霊から人間まで、まさにごちゃ混ぜにしての殺し合い。
こう言うのは何だが、精霊である自分を人間の身で討ち果たすなど不可能もいいところだ。
出来レースとは言わないが、参加者の選定基準を間違えているのではないか、とは思ってしまう。
(何とでもなる……殺し合いに乗った奴がおっても、『最強の矢』を防ぐことは出来ん筈やからな)
巴御前は確かに殺し合いには乗っていない。
馬鹿馬鹿しいと思ったし、好き好んで一般人を虐殺したいと思うほど終わった発想も持っていない。
だが、それは『全てを救う』こととはイコールで結ばれないのだ。
殺し合いに乗って襲ってきたなら、丁寧に撃ち抜いてやれば済む話。
一撃必殺で、苦しむ間もなく終わらせられる――それが精霊の力なのだから。
今思えば、姿を見せることなく、無理にでもあの場で黒い少女を殺しておくべきだったかもしれない。
そうすれば血塗れの女が危害を被りかねない状況だけは回避できたろう。
……その分、自身の悪評が蔓延ることになるだろうが。
(あかんな……結構焦っとるみたいや)
そんな物騒極まりないことを考えつつ、彼女は自身がらしくもないことに焦っていると気付く。
まさか自分の首が地に落ちるようなことは起こり得ないだろうと高を括っているにも関わらず、生前経験したどんな戦いよりも、このバトルロワイアルが恐ろしく思えるのだ。
あまつさえ精霊の自分でも、油断は禁物なのではないか――そんなことさえ、考える。
放っておけばマイナス方面の泥沼にどんどん沈んでしまうので、ここは気分を切り替えよう。
何故だか安いプライドで封印していた会場の地図を確認して、目指す場所を改めて確認する。
というかこの地図自体も彼女に言わせれば、もう少し分かりやすくしてほしいものだった。
だが何とかデパートの場所を再確認し、そろそろ本腰を入れて目的地に向かおうと歩き出す。
時間は大分経過しているが、果たしてラブホテル城の二人は大丈夫だろうか。
出来ればあの誤解が解けないまま、互いの認識を違え続けてくれていればいいのだが。
「って、まさかあいつらはもう着いてるとか言わんよなぁ……!?」
そんなことになればいよいよ憤怒の精霊巴御前、激怒してしまいかねない。
デパートが蜂の巣同然の有り様になるかもしれない。
勿論そんなことをすれば後々困るのは彼女自身なので、そうなっていないことを祈るばかりである。
ざくり、ざくりと歩を進めていく内に、彼女はあることに気付いた。
(……おうおう、誰かいるみたいやな)
よく耳を澄ませば、自分のものではない足音が聞こえてくる。
殺し合いに乗っているか否かはまだ分からないが、別段足音を潜めているわけではないところを見るに、巴御前の存在にすら気付いていないと見るのが妥当だろうか。
無用心極まりないなぁ、と暢気に巴御前は思った。
一瞬迷いこそしたが、ここは一応接触を試みるのも悪くない、そういう結論に至った彼女は、ひとまずこちらに迫ってくる足音の主を待ってみることにした。
白装束姿の女ともなれば、幽霊と見間違われてしまうかもしれないが。
やがて十数秒が経過し、足音はだんだんと大きくなり、ついにその主の姿が現れた。
その青年の姿を見るなり、巴御前は本能的に確信した。
(ッ―――何や、アイツ!?)
――――あれとの和解の道は無いと。それどころか、交渉の余地すら無いと。
青年は精悍な顔立ちで、それ自体には何ら特別なところのない普通の人物だった。
しかしその手に収まっている刀は、それ自体が禍々しい気を放っている。
恐らくは悪霊、魍魎の類が宿った妖刀―――怨念の権化か。
例に漏れず彼自身の理性や自我は妖刀の怨念に侵されているらしく、放たれるのはまごうことなき殺気。それは人智を超えた精霊さえも怯ませるに足るだけのそれだったと言えよう。
正気を失った瞳。
幽鬼のようにふらふらとした足取りは、しかし弱さの印象をまるで懐かせない。
妖刀の支配下に置かれていることはもはや明白。
ならばと、巴御前は自分のすべき最善の行動を一瞬にして把握し、弓を取った。
矢の構成物質は概念。
概念武装たる最強の矢を装填し、迷うことなくあの妖刀を射ち、破壊する。
セオリー通りならばそれで妖刀の効果は消え、正気を取り戻す筈だ。
狙いをつける。
気掛かりなのは主催者、人無結によって何かしらの制限がかかっていないか。
精霊をそのままの実力で参加させでもすれば、そもそもゲームが成立しないのだ。
少し頭を使えばそのくらいは分かる筈――故にここは、油断をせずに狙いを定める。
「悪いなぁ、ちっと手荒な真似になるけど――恨まんといてやっ!」
引き絞った最強の矢を放つその瞬間に、青年は初めて巴御前の存在に気が付いた。
そして―――見る者全てを戦慄させるだろう狂気に満ちた笑顔で、微笑んで見せたのだった。
放たれた矢。
しかしその瞬間には妖刀は既に矢の照準を離れ、折角の一発は無駄射ちと帰す。
人間にしては速すぎる速度で、人間にしては異常すぎる笑顔で迫ってくる青年。
予想外の展開に、巴御前は驚愕の色を隠せなかった。
「っち! やっぱ制限かいな!」
「斬る――――」
最強の矢どころか、精霊の力自体に大きな制限が課されているようだ。
最強の矢を普段通りの威力と性能で放ったなら間違いなく避けられない一撃だったろう。
そしてその弱体化につけ込むように、妖刀は青年に殺すための力を注ぎ続けている。
速度、動体視力、躊躇いの無さ、今の青年の全てがまともとは言い難い状態に変化していた。
化け物。巴御前は自らが精霊であるにも関わらず、そんなワードを連想してしまう。
だが、だからと言ってあの青年に膝を折る理由にはならない。
最強の矢が弱くなっていようと、それでもその威力は折り紙つきの筈だ。
少なくともそんじょそこらの銃器と比べれば勝るだけの貫通力はある。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。
「ま、下手な撃ち手ってのは心外やけどな」
言うが早いか、巴御前は再度概念の矢を引き絞った。
今度こそ狙いは確実。
仮に外れたとしても怯むことなく、次の一発を当てればいい。
何も焦ることはない。黙って静かに弓を引いて、必殺を放ち続けていれば別段厳しい勝負ですらない。
構えた最強の矢をいざ放とうとした時、しかし彼女の計算はまたも狂わされることになる。
「ッ、ァァァアアアアアアアアアアアアアアアア――――!!!!」
突如轟く狂声が大気を揺らし、巴御前の注意を一瞬だけではあったが引き付ける。
僅かに逸れた矢はまたも妖刀の青年
野村和也には命中せず、銀色の刃が迫ってくる。
しかも背後から迫ってくるのは乱入者の男。
乱入者の方はどう見ても狂っていて、殺しでもしない限り解放されることはないように見える。
自暴自棄にも等しい攻撃の仕方だが、もう一人厄介な者を相手取っている巴御前にとって彼の乱入は、この上なく不味い、危険な展開だった。
これでは狙いを定めることさえままならない、まさに最悪というに相応しい状況である。
乱入者の名前は
石川清隆。
彼もまたバトルロワイアルに翻弄され、死への本能的な恐怖から狂った狂人であった。
だがその手には、狂人の手に渡っている時点でとんでもない危険物となる大型の軍用ライフル。
妖刀の青年の名前は野村和也。
元は殺し合いを決して認めない心の持ち主だったが、妖刀の支配によって狂いきった殺人鬼と化した。
銃弾をものともしない刀の強度に、身体能力も向上している。
そして精霊の名前は巴御前。
元来は源氏の武将であり、憤怒の称号を与えられた弓使い。
現状は二対一。二人の異常なる人間の前に、彼女はいよいよ絶対的な不利に置かれることとなった。
前方からは銃弾。
後方からは刃。
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最終更新:2012年06月27日 22:40